今日の産経ニュースほか(10/15分)(追記・訂正あり)

■五十嵐仁*1の転成仁語『10月15日(日) 総選挙についての『日刊ゲンダイ』でのコメント』
http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2017-10-15

〔以下のコメントは、この間の夕刊紙『日刊ゲンダイ』の記事でつかわれたものです。参考のために、アップさせていただきます。〕
 「希望の党は、事実上『自民党小池派』ですよ。小池さんは今は安倍政権を批判し、対決するようなフリをしていますが、選挙が終われば状況によっては連携もあるとにおわせている。安保法や改憲賛成だけでなく、規制緩和による経済成長など、自民党と共通する政策は多い。有権者は『小池劇場』に惑わされることなく、政党の立ち位置や本質を見極める必要があります。疑似餌に引っかからないようにしなければなりません」(10月6日付)
(中略)
 「予想通り自民大勝となれば、憲法違反といわれる大義なき解散を認めた上、これまでの約5年間の安倍政権の暴走政治を肯定したことになる。つまり、特定秘密保護法や安保法、共謀罪などの国会審議を無視した政治手法を認めたということです。自民党は消費税引き上げ後の使途を選挙争点にしているわけですが、それをOKというのは、どんなに不景気であろうと引き上げて構わないとゴーサインを出したのに等しい。さらに言えば、トランプ大統領は11月に来日すると報じられていますが、その時、仮に安倍さんが首相であれば何を言い出すか分かりません。北朝鮮に対して『あらゆる選択肢』と言っているわけですから、それこそ米国と一緒に戦争を仕掛ける、とも言い出しかねないのです。日本は内政でも外交でも、とんでもないことになるかもしれない。国民にとっては地獄の扉が開けかけている、と言っていいでしょう。」(10月14日付)

 全くもって五十嵐先生の言うとおりだと思うので紹介しておきます。


山口二郎*2のツィート

山口二郎‏ @260yamaguchi 10月13日
 今日は、池内さおりさんの応援で、池袋駅前にて演説。不破哲三氏とご一緒する。不破さんの演説を横で聞きながら、戦後政治の展開と安倍政権下における急速な劣化を理解。昔の自民党には、不破さんに「敵ながらあっぱれ」と言わしめた政治家がいたのだ。不破さんの明晰な言葉に感服。

赤旗『疑惑にフタをせよというのか:山口二郎氏の的外れな共産党非難』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-04-09/2009040904_01_0.html
を考えると山口氏も共産党への態度が随分と変化したものです。


【ここから産経です】
■【衆院選】立憲民主人気で埋没感募らせる共産党 思わぬ「同士打ち」に
http://www.sankei.com/politics/news/171015/plt1710150066-n1.html
 共産党&支持者としても、立憲民主によって「比例票がどうなるか、議席や得票が前回と比べて減らないかと悩ましいところ」ではあるでしょうが不幸にして減ったとしても、産経が言うほど「共産にとって不幸」でもないでしょう(仮に減ったとしてどの程度減るかにもよりますが)。むしろ「立憲民主的な党」が「選挙前に」何一つできない方が共産にとって怖いでしょう。
 そうなると「選挙直後、最大のリベラル系は共産」となりますが、「共産+社民+民進系が選挙後どうなるか分からない」よりは「共産+社民+立憲民主」の方がある意味マシではある。
 まあ、共産にとっては「民進+共産+社民」でうまく棲み分けができれば良かったんですがそれ今さら言ってもどうにもならない。当初の予定が狂ったとは言え、その条件下で「立憲民主+共産+社民」でそれなりの共闘が成立したことは共産にとって良かったんじゃないか。
 もちろん「京都1区*3」で「候補者調整」ができ「統一候補として穀田氏」となればよかったですが、民進党でそれができた保証もないし、相手はベテラン議員の伊吹*4元幹事長です。野党共闘が実現してもそう簡単には勝てない。
 まあ、枝野も「京都1区で共産の顔を立てる」くらいできねえのか、立憲民主の陣笠が当選しても*5ベテラン・穀田氏*6ほどの力量もねえだろうが、大体当選可能性なら穀田氏の方が上じゃねえのか、的な「枝野への怒り」は共産支持者としてありますけどね。
 まあ、それでも枝野は前原や細野よりはマシでしょう。小生も「理想をもちながらも現実派でありたい」とは思ってますのでその程度の寛大さ(?)はあります。


■【衆院選】連合左派の立憲民主支援鮮明 衆院選後の主導権確保睨む
http://www.sankei.com/politics/news/171015/plt1710150051-n1.html
 連合も今後「立憲民主党に近い左派」と「希望に近い右派」に分裂するかもな、という気はします。


■【衆院選】希望・細野豪志氏、民進党「再結集」を否定
http://www.sankei.com/politics/news/171015/plt1710150059-n1.html
 「誰も手前や前原が枝野*7立憲民主党)と一緒になると思ってねえよ。そもそも枝野が受け入れるか疑問だしな」ですね。
 想定されてるのは元民進党の無所属議員だの、「希望からの離党者」だのつう話です。実際、希望の選挙結果が不振なら離党者(右派は自民、左派は立憲民主を目指す)はかなり出るんじゃないか。
 つうか今さら細野も前原も「それを認めたくない」だろうし今さら何もできないでしょうが、このままなら「解党しない方がずっと良かった」でしょう。小池の軍門に降ったが、大して成果は上がらず、当の小池*8も「都政に専念する」といいだしたら、前原や細野には打つ手はないでしょう。「立憲民主党の選挙結果にも寄りますが」、むしろ「前原や細野より枝野の株が上がること」になるでしょう。


■【衆院選希望の党、各党幹部出席の討論番組で「無役」登場
http://www.sankei.com/politics/news/171015/plt1710150061-n1.html
 「幹事長などが出た他の党と違い無役」とは言っても、さすがに陣笠ではなく、元民進党幹部の細野*9ですが、「なんで役職がないんだ?」「執行部人事くらい決めろよ」ではあります。


■【衆院選】TBS「サンデーモーニング」で野党に投票促すかのような発言
http://www.sankei.com/politics/news/171015/plt1710150027-n1.html
 いつもの産経の言いがかりです。
 「自民圧勝予測だが棄権だけは辞めましょう」&「希望や立憲民主といった新党がどれだけ議席とるか注目してる」&「安倍自民への審判がどうなるか注目してる」というだけの発言が「野党に投票促すかのような発言」になってしまういつもの産経です。まあさすがの産経も「かのような」としか書けないわけですが。まあ、「加計森友報道でTBSは偏向してる」とか抜かすバカが調子のらないためにも今度の選挙で最低限「自民大幅議席減」で安倍には退陣して欲しいんですけどね。


■【書評】日本国際問題研究所研究顧問・高木誠一郎*10が読む『習近平永楽帝 中華帝国皇帝の野望』*11山本秀也*12
http://www.sankei.com/life/news/171015/lif1710150031-n1.html

 現代中国はしばしば過去の王朝に、最高指導者は皇帝に例えられる。

 毛沢東蒋介石ならともかく、今の中国政府トップは「絶対的カリスマ」ではないし、皇帝とは言えないと思いますけどね。世界各地の首相、大統領と比較しても権限や権威はあまり変わらないでしょう。

 多くの場合、取り上げられるのは清朝で、中国の拡張主義的行動の目的は清朝最盛期に最大化した版図の回復とされる。

 おいおいですね。
 「拡張主義的行動」といったところでそれはせいぜい「南シナ海での領土紛争」でしかないし、それも「フィリピンやベトナムがAIIBに入ってること」でわかるように産経が言うほど「拡張主義的」でもないでしょう(AIIBや一帯一路も広い意味では「拡張的行動」でしょうがここでの意味は軍事行動でしょうから、AIIBなどは考慮しません)。
 「清朝最盛期に最大化した版図の回復」というのも意味不明です。文字通りの「領土拡張」ならそれは侵略に該当するわけでそんなことはできる話ではない。一方で「中国経済圏に組み入れる」程度の話なら非難されることではないでしょう。

 数年前、『エコノミスト』は表紙絵で習近平を(ボーガス注:清朝の領域を最大にした)清朝「盛世」の乾隆帝になぞらえて話題を呼んだ。
 しかし、著者が習近平を理解するための比較の対象としたのは、1つ前の明朝の永楽帝である。この選択は、著者が両者の間に(1)権門の出身という血統の良さ(2)権力掌握前の苦節(3)正統性証明のための通常以上の実績追求(4)「法治」を掲げた苛烈な政敵排除や国内統制(5)政権の威光を高めるための対外拡張・アジア秩序構築−という共通性を認識していることによる。

 バカバカしい。乾隆帝だろうが永楽帝だろうが、清朝だろうが明朝だろうが、政治状況が大きく違う以上、習近平氏と比べることに意味はないでしょう。

(1)権門の出身という血統の良さ

 初代皇帝でない限り、永楽帝に限らず、皇帝は皆「皇帝一族」という「権門の出身」だし、一方、「二世政治家」は習氏に限らず「アメリカのブッシュ子」「日本の安倍晋三」「韓国の朴クネ」など世界的に珍しくもない。

(2)権力掌握前の苦節

 永楽帝はともかく古今東西、「苦労しないでトップにつく政治家」はまずいません。中国の場合、習氏(浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記など)だけでなく、江沢民氏(上海市党委員会書記・市長など)にせよ、胡錦濤氏(貴州省党員会書記、チベット自治区党委員会書記など)にせよ、地方の党書記などのドサ回り経験者です。
 中国の場合「二世政治家なら有利な立場」といっても「日本の安倍」のように「ろくに下積み経験もせずにトップに立てる」程甘くはありません。習氏の父親「習仲勲」は「副首相」「全人代委員長」経験者とは言え、毛沢東主席、周恩来首相、劉少奇国家主席トウ小平国家中央軍事委員会主席ほどのビッグネームではないからなおさらそうです。
 周恩来の養子である李鵬も「義父・周恩来との関係だけで首相になったわけではない*13」でしょうし、周恩来というビッグネームの養子・李鵬ですら当然に国家主席、党総書記になれるわけではない。
 また、文革経験を苦労と呼ぶ場合もそうした経験をしたのは習氏だけではない。江氏も胡氏もそうです。
 つうか「甥の政権を打倒して、自分が皇帝になる」つう永楽帝の行為(靖難の変)は外形だけ見れば、習氏の「政権への道」よりもむしろ「日本の壬申の乱」に似ています。いやもちろんだからといって永楽帝天武天皇を比較しても意味はないでしょうが。

(3)正統性証明のための通常以上の実績追求

 これも「なんだかなあ」ですね。「通常以上の実績追求」の「通常」とはなんなのか。
 というか、何処の国のトップだって「自己の権力の正当性」をアピールする最も有効な手段は「実績追求」ですし「実績追求すること」は悪い事ではない。

(4)「法治」を掲げた苛烈な政敵排除や国内統制

 習氏の政敵排除とは「周永康*14・元党中央政法委員会書記(元党常務委員)」「徐才厚・元国家中央軍事委員会副主席」らの収賄容疑による逮捕・起訴のことでしょう。
 永楽帝はともかく習氏ってそんなに苛烈なんですかね?
 というか「毛沢東文革」「トウ小平天安門事件」と比べてそう言う事は言ってるのか?
 というか「独裁的国家」での国家統制なんて古今東西、何も珍しいことでもないし。

(5)政権の威光を高めるための対外拡張・アジア秩序構築

 AIIBと一帯一路のことなら「何か問題なのか」つう話です。
 なお、ウィキペ「永楽帝」いわく

 永楽帝の治世の特徴は積極的な対外政策にあった。モンゴル方面への親征を行い、5度にわたる出征でタタール部・オイラト部を威圧した。また南方ではベトナムに出兵し胡朝を滅ぼし、直接支配を実現、東北方面でも女真族の勢力圏、黒竜江河口まで領土を拡大、西方でもティムール帝国と国境を接しティムール没後の帝国と国交をもち、チベットの間接統治も実現した。さらに李氏朝鮮琉球王国服従させ日本に対しても足利義満日本国王に封じ朝貢貿易を許可、また宦官鄭和をして7度にわたり大艦隊を南海方面に派遣し(1405年〜1433年)、東南アジアからアフリカ東海岸に及ぶ30以上の国々に朝貢させ、明朝の威信をアジア中に及ぼした。

そうですが、「朝貢貿易」のような経済交流ならまだしも、「ベトナムに出兵し胡朝を滅ぼし」のような軍事行動は今の中国ではあり得ないでしょう。


■「ひるぜん焼そば」中国で出店、日中国交正常化45周年イベントで
http://www.sankei.com/west/news/171015/wst1710150029-n1.html
 もちろん「観光アピール」でしょうね。
 失礼ながら岡山県真庭市に中国人が行きたがるか疑問ですが、中国と日本の関係は今や産経が中国を悪口したところでこういう関係の訳です。


■【沖縄「正論」友の会】日中最優先課題は「冤罪邦人の帰国」
http://www.sankei.com/life/news/171015/lif1710150011-n1.html
 冤罪とか言っちゃう当たりが産経は本当にどうしようもない。
 まあ、冤罪と当人が訴えてるのかも知れませんが、そこは単に「早急な解放を要求する」でいいでしょうに。冤罪云々と言って中国の反発を買う危険性をおかす必要もない。


■【衆院選民進党再結集論、前原誠司*15代表が批判「有権者を愚弄」
http://www.sankei.com/politics/news/171015/plt1710150012-n1.html
 前原の「突然の民進党解党→希望合流」のほうがよほど「有権者を愚弄」「共闘の相手方(共産、社民、市民団体)を愚弄」している上に、「現時点での選挙予想」では「安倍を有利にし、前原の政治生命がほぼ終了する」愚行ですが、まあ前原のバカにはそういう認識はないのでしょう。
 こんな男を民進党代表にした連中には怒りを禁じ得ません。
 大体「安倍批判そっちのけ」で民進党リベラル派批判とかこの男は正気なんでしょうか。

*1:最近の著書として『対決 安倍政権:暴走阻止のために』(2015年、学習の友社)、『活路は共闘にあり:社会運動の力と「勝利の方程式」』(2017年、学習の友社)など

*2:最近の著書として『ポピュリズムへの反撃:現代民主主義復活の条件』(2014年、角川oneテーマ21)、『徹底討論 日本の政治を変える』(共著、2015年、岩波現代全書)、『民主主義をどうしますか。』(2016年、七ツ森書館)など

*3:京都市(北区、上京区、中京区、下京区、南区)

*4:橋本内閣労働相、森内閣国家公安委員長、第一次安倍内閣文科相自民党幹事長(福田総裁時代)、福田内閣財務相衆院議長を歴任

*5:する保障はないですが

*6:国対委員長

*7:鳩山、菅内閣行政刷新担当相、菅内閣官房長官、野田内閣経産相民主党幹事長(海江田、岡田代表時代)、民進党代表代行(前原代表時代)を経て立憲民主党代表

*8:小泉内閣環境相、第一次安倍内閣防衛相、自民党幹事長(谷垣総裁時代)を経て都知事

*9:野田内閣環境相民主党幹事長(海江田代表時代)、政調会長岡田代表時代)、民進党代表代行(蓮舫代表時代)を歴任

*10:著書『米中関係:冷戦後の構造と展開』(2007年、日本国際問題研究所

*11:2017年、新潮新書

*12:著書『本当の中国を知っていますか?:農村、エイズ、環境、司法』(2004年、草思社)、『南シナ海でなにが起きているのか:米中対立とアジア・日本』(2016年、岩波ブックレット

*13:首相就任前に電力工業大臣、国家教育委員会主任(日本の文科相に当たる)を経験している。

*14:国土資源大臣、四川省党委員会書記、公安大臣などを経て党中央政法委員会書記(党常務委員)

*15:鳩山、菅内閣国交相民主党政調会長(野田代表時代)、野田内閣国家戦略担当相などを経て民進党代表