■【産経抄】マンデラとムガベ「歴史上の巨人」と「最悪の独裁者」 11月17日
http://www.sankei.com/column/news/171117/clm1711170003-n1.html
今回の政変については、国軍の司令官が先週北京を訪問して説明しているようだ。
▼つまり後継者が誰であれ、中国政府の眼鏡にかなった人物であることだけは確かである。
産経らしい陰謀論です。クーデター実施前に軍幹部が訪中して、中国政府にクーデター計画を説明していたなんて決めつける根拠は何でしょうか。普通に考えてそんなことはないと思いますが。
参考
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017111501226&g=int
■時事通信『中国外務省「通常の軍事交流」=ジンバブエ国軍司令官の訪中』
中国外務省の耿爽・副報道局長は15日の記者会見で、クーデターとみられる動きを起こしているジンバブエのチウェンガ国軍司令官が先週訪中していたことについて、「通常の軍事交流だ」と述べた。同司令官が中国側に「クーデター計画」を伝えたかとの質問に対し答えた。
■自民の二階俊博*1幹事長 アベノミクスを批判するなら「提言でもしてみなさい。情けない」野党を酷評
http://www.sankei.com/politics/news/171117/plt1711170047-n1.html
「アベノミクスは成功しています!」といえばすむ話でこういうことを言い出すのは事実上「アベノミクスの失敗」を認めてるのも同然ですね。
■【阿比留瑠比の極言御免】「東京裁判」史観克服の遺言 日米同盟の深化が必要だからこそ占領の影響を克服せよ
http://www.sankei.com/premium/news/171117/prm1711170009-n1.html
阿比留が非常識すぎて呆れますね。
まず第一に「東京裁判史観克服」なんてもんに米国が応じるわけもない。
第二にこの阿比留の価値観では「阿比留ら産経が建前では一応支持しているはず」の戦後自民党政治が「GHQ統治下での吉田茂*2政権」「田中*3内閣の日中国交正常化」「宮沢*4内閣での河野談話」などを理由に否定されることになります。いや戦後自民党政治どころか今の安倍自民だって否定されるでしょう。安倍だってさすがに米国やEU、中国や韓国など相手に「戦前日本のした日中戦争、太平洋戦争は正しかった」なんていえないし、いわないからです。
つうかそもそも「東京裁判史観克服」というならそれこそ在日米軍撤退、日本単独武装を唱えるべきでしょう。
「学界では1960年代までは東京裁判肯定論、すなわち戦前の日本は侵略と残虐行為を重ねたという見方が主流だった」
「いまだに戦前の日本は、残虐な国家だと言い募るメディアもある」
シンポでこう訴えた篠原氏
唖然ですね。
「1960年代までは」て、1970年代以降だってそれが学会の主流でしょう。つうか学会つうより日本社会、国際社会の主流ですけど。
「言いつのるメディア」も何も残虐行為(南京事件、731部隊など)したのも事実ですからねえ。
「1960年代までは」つう理由がよくわかりませんが1960年代に出版された林房雄『大東亜戦争肯定論』のことでしょうか(林は学者とはいえませんけど)。
それとも1968年に佐藤内閣が行った明治100年記念式典のことか。まあ、佐藤も学者ではないですし、明治維新美化それ自体は「太平洋戦争肯定」とは必ずしも直結しませんが。
ちなみに安倍は「明治150年記念式典」とやらを2018年にやる気のようですね。
篠原氏の報告は学者らしく資料の引用元を明示していた。例えば政治学者の日暮吉延氏*5の著書を引いて、次のように紹介していた。
「東京裁判はアメリカにとって広義の『安全保障』政策だったというのが私(日暮)の見方である」
「アメリカ政府は『指導者=被告個人の有罪』を媒介にして、日本人全体に『自責の念』を抱かせようとした*6のです」
あるいは、歴史学者の山本武利氏*7のこんな言葉も引用していた。
「アメリカ側は日本占領を戦争の延長と認識していたことを日本人は気付かなかった。日本人には平和な時代を迎えたと誘導しながら、実は冷戦下での日本の隷属化を画策していた」
いちいち確かめる気もないですが、阿比留が詐欺的な引用をしているのでない限り、日暮氏も山本氏も「阿比留や篠原氏の同類」、つまり非常識右翼なのでしょう。
しかし「日本の隷属化を画策」とまで米国に悪口しながら沖縄基地問題での米国批判を反米呼ばわりするのだからこの種のウヨは全くでたらめです。
日米同盟は、周辺国に恵まれないわが国の存立に欠かせない。
「戦前日本の侵略を非難する周辺国→周辺国に恵まれない」という与太ですがそれはさておき。
「周辺国に恵まれなくても米国と仲良しなら無問題、周辺国と悪い関係でもかまわない」つう話ではないし「戦前日本の侵略を非難する周辺国→周辺国に恵まれない」という理屈なら米国だって「そんなことでは阿比留の立場になんか立ちません」。むしろ中国、南北朝鮮、ロシア同様戦前日本の侵略(日中戦争、太平洋戦争)を非難する立場に米国は立つ。
なお、お断りしておけば「天皇や皇族の不訴追が最初から決まっていた*8」「荒木貞夫(犬養内閣陸軍大臣、近衛、平沼内閣文部大臣など歴任。終身刑)、板垣征四郎(関東軍参謀長、近衛、平沼内閣陸軍大臣など歴任。死刑判決)、木村兵太郎(関東軍参謀長、ビルマ方面軍司令官など歴任。死刑判決)、土肥原賢二(奉天特務機関長、第7方面軍(シンガポール)司令官など歴任。死刑判決)、東条英機(関東軍参謀長、近衛内閣陸軍大臣、首相など歴任。死刑判決)、松井石根(南京事件当時、中支那方面軍司令官。死刑判決)、武藤章(陸軍省軍務局長、第14方面軍(フィリピン)参謀長など歴任。死刑判決)など被訴追者のほとんどが陸軍関係者」などといった裁判の問題点は、研究者から指摘されており今時東京裁判を手放しで評価する学者はいません。
「東京裁判」でググってヒットする
などを読めばいいでしょう。
しかし「明治時代は日英同盟」「戦前昭和は日独伊三国同盟」「そして今、日米同盟」と日本人の「親分と認めたものへのべったりぶり」は「親分が誰かが変わっただけ」で全く変わらない気がします。
*1:小渕、森内閣運輸相、小泉、福田、麻生内閣経産相、自民党総務会長(第2次安倍総裁時代)などを経て自民党幹事長
*2:東久邇、幣原内閣外相を経て首相
*3:岸内閣郵政相、池田内閣蔵相、佐藤内閣通産相などを経て首相
*4:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相。
*6:むしろ自責の念が日本人に全くなかったらその方が異常ですが。それはともかく「昭和天皇や皇族の不訴追」「荒木貞夫(犬養内閣陸軍大臣、近衛、平沼内閣文部大臣など歴任。終身刑)、板垣征四郎(関東軍参謀長、近衛、平沼内閣陸軍大臣など歴任。死刑判決)、木村兵太郎(関東軍参謀長、ビルマ方面軍司令官など歴任。死刑判決)、土肥原賢二(奉天特務機関長、第7方面軍(シンガポール)司令官など歴任。死刑判決)、東条英機(関東軍参謀長、近衛内閣陸軍大臣、首相など歴任。死刑判決)、松井石根(南京事件当時、中支那方面軍司令官。死刑判決)、武藤章(陸軍省軍務局長、第14方面軍(フィリピン)参謀長など歴任。死刑判決)など被訴追者の大部分が陸軍軍人であること」を考えれば全てを陸軍に押しつけて「天皇、皇族、政治家、財界人、陸軍以外の官僚機構(海軍含む)など」陸軍以外を守ろうとした側面が明らかに大きいのですが、そのようにはウヨは理解しないわけです。
*7:著書『GHQの検閲・諜報・宣伝工作』(2013年、岩波現代全書)など
*8:例えば南京事件当時、現地軍幹部だった朝香宮鳩彦王(上海派遣軍司令官)は起訴されませんでした。これを笠原十九司氏は「天皇、皇族は絶対に訴追しないという米国の政治的判断」と見ています。なお、東京裁判では南京事件当時、中支那方面軍司令官だった松井石根が訴追され死刑判決が出ています。また、南京でのBC級戦犯裁判では南京事件当時、熊本第6師団長だった谷寿夫に死刑判決が出ています。ちなみに、「南京事件による死刑」ではなく「陸軍省軍務局長として侵略戦争を推進」「第14方面軍(フィリピン)参謀長としてマニラ虐殺に関与」が死刑理由ですが、東京裁判で死刑となった武藤章は南京事件当時、中支那方面軍参謀副長であり笠原氏は「南京事件で訴追されてもおかしくなかったと思う」「法的責任はともかく、武藤は少なくとも事件に対する一定の道義的責任は免れないと思う」と評価しています。