今日の産経ニュースほか(12/21分)(追記・修正あり)

ニューズウィーク日本版『日馬富士暴行事件で見えた、日本の相撲ナショナリズム』(楊海英)
http://www.newsweekjapan.jp/youkaiei/2017/12/post-8_1.php

 日本には今、相撲ナショナリズムの嵐が吹きすさんでいる。
(中略)
 対外的にはここ数年、国技館で観衆から起こる「モンゴルに帰れ」という罵声だ。これは(ボーガス注:今回引退した日馬富士を含む、日馬富士白鵬鶴竜の)横綱3人をはじめ大勢のモンゴル出身力士への排除思想の表れで、ヘイトスピーチと言える。
 もしアメリカの大リーグでイチローや他の日本人選手が「日本に帰れ」と怒号を浴びせられたら、日本の愛国主義*1は「人種差別」と抗議するだろう。一方、「モンゴルに帰れ」というヤジに対し、正面から批判する識者を私はまだ知らない*2
(中略)
 日本人力士の優勝を夢見る相撲ナショナリストたちの暴走はあちこちに及んでいる。モンゴル出身で05年に日本国籍を取得した旭天鵬が12年に初優勝した際も、メディアは「今度は日本出身力士の優勝を」と期待を寄せた。日本国籍を得ただけでは「日本人」ではないと、暗に言わんとしている。こうした「純血主義」を求めるナショナリストは、日本人とフィリピン人との間に生まれた高安にも不満なようだ。
 外国人力士に厳しいナショナリストはよく「国技」を持ち出す。しかし、1909年に明治政府が国技館を造る*3以前は興行としての性格が強かった。近代国民国家の成立に伴い、興行から「健康な国民を鍛え上げる体育」に変質。国民の統合を促すために政治化したにすぎない。
 「相撲は神事だから品格が求められる」との意見もある。しかし政治的ナショナリズムを帯びた「国技」に対し、過度に神事としての性質を強調するのは危うい。日本はいまだに政治と宗教が混然一体となった前近代的な国家だと見られかねない*4
(中略)
 「モンゴルに帰れ」という声が日本から草原にも届くにつれ、両国関係も壊れる恐れがある。
 (ボーガス注:日馬富士の実行した)暴力は絶対否定すべきだが、同時に相撲ナショナリストによる言葉の暴力も許されない。日本は本当に20年の東京オリンピックを開催できるのか。国同士がぶつかる国際試合ではフーリガンなど排外主義的行動も懸念される。東京の競技場で、せっかく招いた外国人選手や観光客に対する「国へ帰れ」という声を誰も聞きたくないはずだ。

 言ってることは内容的には
■ちきゅう座『恐るべし。貴乃花アナクロニズム』澤藤統一郎
http://chikyuza.net/archives/79421
とかなりかぶると思います。また俺的に珍しく楊に賛同できます。
 しかし普段は日本ウヨの「排外主義ナショナリズム(攻撃対象は主として中国、韓国、北朝鮮)」に迎合する楊も今回ばかりは「全くモンゴル人力士てのは下劣だな、日本から出て行けばいいのに」「そもそも力士に限らず、モンゴル人自体が下劣なんだろう」などと「モンゴルが攻撃対象である」が故に「内モンゴル出身」として黙ってられなかったようです。


■ちきゅう座『恐るべし。貴乃花アナクロニズム』澤藤統一郎
http://chikyuza.net/archives/79421

 貴乃花が池口恵観なる人物に送ったメールが話題になっている。
(中略)
 週刊朝日に掲載されたこの貴乃花メールの内容には心底驚いた。どうしてこんな人格が育ったのか、不気味でもあり、寒々しい思いに堪えない。
「国家安泰を目指す角界でなくてはならず“角道の精華”陛下のお言葉をこの胸に国体を担う団体として組織の役割を明確にして参ります」
「角道の精華とは、入門してから半年間相撲教習所で学びますが力士学徒の教室の上に掲げられております陛下からの賜りしの訓です、力と美しさそれに素手と素足と己と闘う術を錬磨し国士として力人として陛下の御守護をいたすこと力士そこに天命ありと心得ております」
「角道、報道、日本を取り戻すことのみ私の大義であり大道であります勧進相撲の始まりは全国の神社仏閣を建立するために角界が寄与するために寄進の精神で始まったものです」
「陛下から命を授かり現在に至っておりますので“失われない未来”を創出し全国民の皆様及び観衆の皆様の本来の幸せを感動という繋ぐ心で思慮深く究明し心動かされる人の心を大切に真摯な姿勢を一貫してこの心の中に角道の精華として樹立させたいと思います」
 「国家安泰」「国体を担う団体」「角道の精華」「陛下のお言葉」「陛下から賜りし訓」「国士として力人として陛下の御守護」「日本を取り戻す」「陛下から命を授かり」…って、この語彙の羅列はいったいなんなのだ。
 とりわけ見過ごせないのは、「陛下のお言葉をこの胸に国体を担う団体として組織の役割を明確にして参ります」との一文。貴乃花にとっては、現在の相撲協会のあり方は、「陛下のお言葉」を体していない。「国体を担う団体」ともなっていない、というのだ。自分こそが天命を帯びて、「その組織の役割を明確にして参ります」と見当違いの使命感が語られている。
(中略)
 もしかしたら貴乃花は本気で「万世一系天皇が統治す」る、「富国強兵」の大日本帝国を取り戻そうとしているのかも知れない。軍国主義が跋扈したあの天皇制権力の時代の軍国日本。時代錯誤の貴乃花の脳裏にある、角道の精華とは、陛下のお言葉を体し国士として陛下の御守護することにあるのだ。相撲協会は、そのような国体を担う団体であることを明確にしなければならない、と言っているようにも解せるのだ。
(中略)
 しかし、公益財団法人日本相撲協会が、貴乃花が唱導するような極右思想集団になってはならない。 
(ボーガス注:極右以外の)大相撲ファンは、そんな国技館に足を運びたくはない。そんな相撲に拍手は送らない。

 もちろん澤藤氏も「日馬富士の暴力行為」は批判していますし、俺も批判します。
 しかし貴乃花のこの異常性を目にすると澤藤氏が嘆くように彼がモンゴル人力士を敵視してるのは「国家主義者にして外国人差別者だから」ではないのか、と疑いますね。
 そして彼のような異常者より相撲協会現執行部の方がおそらく何倍もまともでしょう。つうか貴乃花みたいなバカがでかい面したらほぼ確実に多くの外国人力士(モンゴル人に限らない)が相撲界を去り、また相撲界に新しい「外国人入門者」はこなくなるでしょう。そして人気もがた落ちする。要するに相撲界はもはや外国人なしではやっていけないつうことです。
 そして「内柴が逮捕されたときにも思ったこと」ですが「日馬富士の暴力行為」「貴乃花の異常な極右性」を見るに、スポーツが強いことと人間性は全く関係ない、つうことですね。


【ここから産経です】
■連合が衆院選総括「野党分裂で組織力発揮できず」 
http://www.sankei.com/politics/news/171221/plt1712210036-n1.html
 「共産党を不当に敵視したあげく、希望の党結党で野党共闘をぶっ壊したのは連合だろうが!。なんだその他人事の総括は!」と本当に腹が立ちますね。

 神津里季生会長は21日の記者会見で、民進党が目指す立民、希望との統一会派結成に関し「3党連携の足掛かりになる一つの形だ。簡単にうまくいかなくても、そういうメッセージを出すことの意味は大いにある」との認識を示した。

などと抜かし、未だに共産党を敵視してるのだからバカにつける薬がないとはこのことでしょう。
 大体、「立民と民進」や「希望と民進」ならまだしも、「枝野*5立民党代表らリベラル派を敵視し排除した希望」と「敵視された立民」、「九条改憲を主張し、共産を敵視する希望」と「護憲を主張し、共産との共闘を模索する立民」との間にどう統一会派が成立するのか。
 そんなことは希望、立民の執行部も、支持者層も求めてはいないでしょう。どこまで神津ら連合執行部は非常識なのか。

「働く者の政治勢力を大きな固まりとして形成していくことが極めて重要」

 共産党を不当に敵視するような連中が「働く者の政治勢力」を口にするとは笑わせてくれます。共産支持の、あるいは「共産を含む野党共闘支持」の、つまり連合執行部のような「反共ではない」労働者は連合執行部にとって労働者じゃないのか。
 反共ウヨ労組・連合はなくなった方が世のためじゃないか。


ユネスコ分担金40億円、支払い留保を見直し…政府、年末までに手続き
http://www.sankei.com/politics/news/171221/plt1712210033-n1.html
 「南京事件資料の世界記憶遺産登録」という何ら問題の無いことでこうした無法をやる日本の評判は既に最低最悪でしょうが、これ以上ふざけたこともさすがにできないという話でしょう。
 しかし安倍になってからの外交の無茶苦茶さには本当にうんざりします。これをリカバリーするのは相当時間がかかるんじゃないか。まあまずは安倍の退陣ですが。


■「自民党は居心地良くなかった」 護憲派河野洋平元総裁が心情吐露
http://www.sankei.com/politics/news/171221/plt1712210005-n1.html
 今の「極右反動」安倍自民党は明らかに居心地良くないでしょうが、宮澤*6内閣官房長官、小渕*7、森*8内閣外相という要職にいたときはそうでもないんじゃないかと思いますが違うんでしょうか?


■【単刀直言】希望の党細野豪志*9憲法調査会長「改憲理念揺らげば党存在意義なし」
http://www.sankei.com/politics/news/171221/plt1712210003-n1.html
 細野にとってはそうなんでしょうが、ほとんどの所属議員にとっては「小池*10についていけばメリットがある」程度の話に過ぎないでしょう。そうした「細野と所属議員のずれ」が「先日の選挙」において敗北をもたらしたわけです。
 まあ「改憲理念」とやらを強めていけば希望はさらに沈没していくでしょうね。改憲派は自民を支持すればいいわけですし。一方野党支持層は護憲派が多い。希望が最大野党・立憲民主どころか共産の支持率をも下回ってる理由の一つはそういうことです。


■【安倍政権考】官邸籠絡し増税ラッシュ実現 周到な財務省の作戦 真の狙いは政権弱体化!?
http://www.sankei.com/premium/news/171221/prm1712210008-n1.html
 安倍が増税したくなければ「俺は増税しない」で終わる話をこういう陰謀論で「増税しても安倍さん悪くない、財務省が悪い」にしようとするのだから産経のでたらめさにはいつもながら呆れます。

*1:右翼と書かないのが楊らしい。

*2:「楊が知らないだけ」でしょう。あるいはその「批判する識者」が左派、リベラル派であるが故に「常日頃、日本ウヨにこびてるが故に」名前が出せないのかもしれません。まあ「楊が知る限りではそうした右派がいないこと」だけは確かでしょうが。

*3:明治政府は「建設を支援した」かもしれませんが、直接の設立者は相撲関係者であって政府ではありません

*4:もちろん「政治家の靖国参拝」が問題視されるのも「日本はいまだに政治と宗教が混然一体となった前近代的な国家だ(つまり政教分離されてない)と見られかねない」からです。日本ウヨにこびてる楊にはそうした靖国批判はできないでしょうが

*5:鳩山内閣行政刷新担当相、菅内閣官房長官、野田内閣経産相民主党幹事長(海江田、岡田代表時代)、民進党代表代行(前原代表時代)を経て立憲民主党代表

*6:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相

*7:竹下内閣官房長官自民党副総裁(河野総裁時代)、橋本内閣外相などを経て首相

*8:中曽根内閣文相、自民党政調会長(宮沢総裁時代)、宮澤内閣通産相、邨山内閣建設相、自民党総務会長(橋本総裁時代)、幹事長(小渕総裁時代)などを経て首相

*9:野田内閣環境相民主党幹事長(海江田代表時代)、政調会長岡田代表時代)、民進党代表代行(蓮舫代表時代)など歴任

*10:小泉内閣環境相、第1次安倍内閣防衛相、自民党総務会長(谷垣総裁時代)などを経て都知事