新刊紹介:「前衛」2月号

「前衛」2月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。「興味のある内容」のうち「俺なりになんとか紹介できそうな内容」だけ簡単に触れます。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
■繰り返される米軍基地被害と新基地建設反対の戦いの現局面(赤嶺政賢*1
(内容紹介)
 赤旗記事の紹介で代替。

赤旗
■相手は国 総力結集を、名護市長選必勝へ緊急議員集会
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-31/2017123101_02_1.html
■安全な空を子どもに、米軍ヘリ部品落下に抗議、宜野湾で市民大会 49団体が集結
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-30/2017123001_01_1.html
■新基地反対は県政の柱、年頭あいさつ 翁長知事「あらゆる手法で」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2018-01-05/2018010506_01_1.html
■主張『18年沖縄の政治戦:新基地阻止、未来を開く年に』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2018-01-05/2018010501_05_1.html

 決して楽なことではないですが、まずは名護市長選での現職勝利でしょう。


核兵器禁止条約成立がひらく新たな段階(川田忠明*2
(内容紹介)
 核兵器禁止条約の成立を評価すると共に、条約に反対した核保有五大国(米英仏露中)と米国に追従して反対した日本を批判している。

参考
赤旗
■主張『核兵器なき世界へ:歴史的成果を力に前進さらに』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-30/2017123002_01_1.html
核兵器禁止条約を歓迎 国連総会で決議:賛成125カ国 日本は反対
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-06/2017120601_01_1.html


■座談会「メディアは総選挙をどう報じたか」(岩崎貞明、砂川浩慶*3、徳山喜雄*4
(内容紹介)
・「いつものこと」ではあるのだが今回も「ワイドショー型報道」であり「小池*5新党(希望の党)」「枝野*6新党(立憲民主党)」などの「話題性重視」であり政策報道ではなかった。
・選挙予測が悪いとは言わないが「勝った負けた」のみではこれまた政策報道とはいえない。
NHKクローズアップ現代」の国谷キャスター、TBS「ニュース23」の岸井キャスター、テレ朝「報道ステーション」の古館キャスターの降板以降、明らかにテレビが萎縮しているように見られる。
・今のマスコミに「争点形成による政策報道」を望むのは「八百屋で魚を望む」ような物かもしれないが批判せざるを得ない。


■2017年総選挙はどのように戦われたか
(内容紹介)
共産党が共闘をして一定の成果を得た衆院福島1区(無所属の金子恵美*7候補が比例復活で当選)、大阪2区(立民の尾辻かな子氏が比例復活で当選)、10区(立民の辻元清美*8が当選)、11区(無所属の平野博文*9が当選)などが紹介されている。


堺市長選挙、総選挙:大阪における「維新」との戦いと展望(中村正男
(内容紹介)
 近年の選挙で維新の退潮が進んでいることが指摘されている。大阪での維新の退潮は必ずしも「野党の進展」につながっていない点(たとえば2017年衆院総選挙で大阪の小選挙区議席の多くは自民でとっている点)で野党の一層の努力が必要であるし、また維新も「完全に滅亡したわけではない」が一時のブームは完全に終わり下り坂に入ったとみていいのではないか。
 やはり「大阪都構想住民投票敗北による橋下の市長辞任」、そして「希望や立民の登場により維新の新党イメージが薄れてきたこと」、また「維新が国政において自民に露骨にすり寄ったことで『コウモリ政党』扱いされ、自民支持層からも野党支持層からも離反されたこと」が大きいと思われる。

参考
赤旗堺市長に竹山氏3選、維新「都」構想に痛打』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-09-25/2017092501_03_1.html
日経新聞
■2017年衆院選:維新、大阪で苦戦 小選挙区勝利、3どまり
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22565170T21C17A0000000/
■2017年衆院選:維新退潮、都構想に波紋 地元大阪で議席
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22617340U7A021C1AC8000/
毎日新聞『維新政治塾、応募者減 第三極乱立、存在感に陰り』
https://mainichi.jp/articles/20171207/k00/00e/010/289000c
 まあ、維新が落ち目で「維新にいっても政治家になれそうにない」のなら、塾に入らないでしょう。維新塾希望者なんてその程度の連中でしょう。
産経新聞
■橋下氏不在補えず…「何で希望と組んだんや」罵声浴びた候補 維新低調に「崩壊の始まり」指摘も
http://www.sankei.com/west/news/171024/wst1710240043-n1.html
■「橋下氏は必ず衆院選に出る」辛坊氏、維新の講演会で
http://www.sankei.com/west/news/171209/wst1712090068-n1.html
 こうやって橋下を持ち出すしか注目を集める手がないのだから哀れなもんです。
 ただ
1)市長辞任後、国政進出する可能性があるとさんざん吹きながら、今までの国政選挙では結局出馬せず
2)そもそも次の国政選挙があるまで維新が続いてるか疑問
3)関西はともかく関東のテレビでは橋下を取り上げることがほとんど無くなった
つうことでまあ、維新の衰退は止まらないでしょうね。
■【歴史戦】大阪市議会、サンフランシスコ市との姉妹都市解消決議を否決
http://www.sankei.com/west/news/171213/wst1712130008-n1.html
 まあ、自公の場合「慰安婦記念像の何が問題なんや、反対すること自体が河野談話の精神に反してておかしい(共産の立場)」ではなく「我ら自公のご主人様・安倍様も維新の考え同様、撤去してほしいけど、姉妹都市関係解消とか無茶苦茶やろ。今までの関係を全部ちゃらにすべきではないし、そんなんしても慰安婦記念像は何もどうにもならんがな」つうものでしかないですが、いずれにせよここまで無茶苦茶な維新の吉村市長の主張「姉妹都市関係解消」は否定されたわけです。
大阪市立大と府立大の大学法人統合は継続審査に 大阪市議会が閉会
http://www.sankei.com/west/news/171213/wst1712130011-n1.html
 あまりにもでたらめな統合案であるが故に共産どころか、自公からもダメ出しされ「否決はされなかった」ものの継続審議になる有様です。


■相次ぐ大企業の品質不正とその背景(森岡孝二*10
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

https://mainichi.jp/articles/20171021/k00/00m/020/148000c
毎日新聞神戸製鋼不正:根深い隠蔽体質 副社長「信頼大きく失墜」』
 関西大の森岡孝二名誉教授(企業社会論)はその要因について、「企業が人件費削減のため、ベテラン従業員を減らし、非正規職員を増やしてきた結果、現場に熟練と技能が蓄積されにくくなっている」と指摘する。新興国企業の台頭で世界的な競争が激化する中、日本企業は競争力を高めるためにコスト削減を急いでいる。人材に十分な投資をしなかったツケが、各社のデータ不正などの形で表れているという。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201710/CK2017101102000114.html
東京新聞神鋼アルミ、防衛産業にも データ改ざん 経産省が防止策指示』
 大企業で不正が相次いでいるのはなぜなのか。企業不祥事に詳しい関西大学名誉教授の森岡孝二氏(企業社会論)は「日本を含む先進国の製造業が、新興国の台頭で優位に立てなくなってきていることが背景にある」と分析。「厳しい競争にさらされる経営陣は現場に厳しいノルマを課す一方で、ベテラン技能者を外し非正規化するなどリストラを進めた。現場にしわ寄せがいくことで不祥事が起こりやすくなる」と指摘している。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201712/CK2017122802000142.html
東京新聞『会見せず「幕引き」か 東レ不正検証「おおむね妥当」』
 関西大の森岡孝二名誉教授(企業社会論)は「組織的ではないと言うが、長期の不正は企業の自浄能力が働かなかったということ。トップは知らなかったではすまされない」と指摘。その上で記者会見を開かないなど、情報公開に消極的な姿勢についても「経団連会長を出す企業なら、なおさら率先して説明責任を果たす必要がある」と批判した。


■パリ協定の歴史的意義とCOP23の成果と課題(早川光俊)
(内容紹介)
 赤旗記事の紹介で代替。

赤旗
■主張『COP23の議論:温暖化対策の実効性を高めよ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-11-09/2017110901_05_1.html
■主張『COP23閉幕:日本は後ろ向き姿勢を改めよ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-11-19/2017111901_05_1.html
■温暖化防止へ資金動員:「パリ協定」2周年サミット 100カ国超が参加
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-14/2017121403_01_1.html


■福島の現実と生業訴訟が問いかけるもの(馬奈木厳太郎
(内容紹介)
 赤旗記事の紹介で代替。

赤旗
■国と東電を断罪、原発事故・生業訴訟で判決 福島地裁
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-10-11/2017101101_03_1.html
■福島生業訴訟 「勝ったぞ」大歓声、救済の足がかりに、響く「再稼働反対」コール
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-10-11/2017101115_01_1.html
■主張「生業訴訟福島判決:国は原発推進姿勢あらためよ」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-10-12/2017101201_05_1.html
■被害救済の法整備を、生業訴訟原告・弁護団 党本部に要請
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-10-13/2017101314_01_1.html
福島地裁判決 政策にいかして、生業訴訟原告団が志位委員長に要請
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-10-14/2017101415_03_1.html


■「世界一企業が活動しやすい国」のための首都圏空港「機能強化」を斬る(山添拓*11
(内容紹介)
 赤旗記事の紹介で代替。

赤旗
■住民の生活を脅かす、田村智子氏*12 羽田増便撤回求める
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-29/2016042904_03_1.html
■都心上空飛行は危険、羽田増便計画 住民が国交省ただす
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-10/2017121004_05_1.html


■年金相談事例から見る最低保障年金制度の必要性(渡辺穎助*13
(内容紹介)
 現行制度では貧困者が「年金保険料を支払えず無年金者になる危険性があること」から「最低限の年金については税金で手当てし無年金者をなくす」(保険料支払い金額については最低年金額に加算することとなる)という考えが最低保障年金制度である。
 もちろんそうなれば年金の税負担が増えるが「無年金者をなくすことは国として当然の責務であり、負担が大きいから最低保障年金制度は実施しない」というのは問題が転倒しており「最低保障年金」を当然の前提とし、どう財源を確保していくかという問題の立て方をすべきとしている。
 なお、いきなり高い水準を目指すことは困難であり、共産党は一応の目標として、「月額5万円の最低保障年金」を提唱している(『「最低保障年金制度」を実現し、いまも将来も安心できる年金制度をつくる』(http://www.jcp.or.jp/seisaku/2004/040331_nenkin.html)、『2014年総選挙各分野政策
3、年金』(http://www.jcp.or.jp/web_policy/2014/11/post-627.html)参照)。


■なぜホロコーストを記憶するのか(石岡史子*14
(内容紹介)
 ネット上の記事の紹介で代替。

https://mainichi.jp/articles/20160826/ddl/k23/040/204000c
毎日新聞愛知版『ホロコースト、悲劇知って NPO代表・石岡史子さん 歴史たどる「旅ガイド」出版』
 NPO法人ホロコースト教育資料センター(東京都新宿区)代表で愛知教育大非常勤講師の石岡史子さん(45)らが、「『ホロコーストの記憶』を歩く:過去をみつめ未来へ向かう旅ガイド」(子どもの未来社)を出版した。【花岡洋二】
 石岡さんは、同大で講義「平和と人権」を担当したり、東海3県の小中学校でホロコーストで犠牲になった少女や岐阜県八百津町*15出身の杉原千畝さんを題材にした訪問授業を実施したりしてきた。共著者はフランクフルト日本人国際学校事務局長の岡裕人さん*16
 ホロコーストは、独ナチス政権が1940年代前半に欧州で行ったユダヤ人らの大量虐殺をいう。33年に政権に就く前後から市民への思想統制が始まり、ユダヤ人や精神・身体障害者らへの差別意識が醸成され、差別的な法律も制定されていった。「旅ガイド」は、独ベルリンを中心にポーランド、オランダなど欧州各地と日本で設置された記念碑や資料館を紹介しながら、こうした歴史を説明している。
 石岡さんによると、自国の加害も含めた歴史を記念碑などで記憶にとどめ、歴史から学び、今と未来について考えることをドイツでは「記憶の文化」と呼ぶ。石岡さんは「私たちにも大切なヒントがある」といい、毎年4回、現地へ大学生を案内するツアーを実施している。


■論点『欧州調査で浮き彫りになった安倍会見の企みの欺瞞性』(大平喜信)
(内容紹介)
 赤旗記事の紹介で代替。

赤旗
衆院憲法審査会の欧州調査、「自衛隊が攻撃できるようになるのか」、安倍改憲 政治家らが危惧、参加した 大平前衆院議員に聞く
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-13/2017121304_01_1.html
■主張「2018年の憲法:安倍改憲許さない正念場の年」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2018-01-04/2018010402_01_1.html


■暮らしの焦点『就労継続支援A型事業で相次ぐ障害者解雇』(赤松英知)
(内容紹介)
 赤旗などの記事紹介で代替。

赤旗『障害者220人を解雇、岡山・倉敷 経営悪化で事業所閉鎖』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-08-01/2017080101_04_1.html

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201708/CK2017082302000124.html
東京新聞『就労事業所で障害者大量解雇 廃業急増、補助金頼みの業者も』
 障害者が働きながら技術や知識を身に付ける就労事業所が、経営悪化を理由に廃業し、障害者を大量に解雇するケースが相次いでいることが二十二日、関係者への取材で分かった。七月には同一グループが運営する岡山県倉敷市高松市の計七事業所で約二百八十人が解雇された。名古屋市や関東地方で事業所を展開する企業も八月末までの廃業準備を進めており、さらに計百人前後が影響を受ける可能性がある。
 就労事業所を巡っては受け入れる障害者の人数に応じて補助金を受け取れるため、事業の収益を確保できなくても参入できる構造がある。国はこうした状況を是正するため、四月に補助金の支給要件を厳しくしており、大量解雇に影響を与えた可能性がある。
 厚生労働省は各自治体を通じ、経営改善が必要な事業所の実態調査を進めるとともに、障害者が解雇された場合は、別の事業所へ引き継ぎを徹底するよう通知を出した。
 問題となっているのは「就労継続支援A型事業所」。


メディア時評
■テレビ『最高裁判決とNHKの存在意義』(沢木啓三)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗『NHK受信料「合憲」、「支払い義務 合意必要」、最高裁
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-07/2017120715_01_1.html


■文化の話題
【演劇:加藤健一事務所『夢一夜』】(鈴木太郎)
(内容紹介)
加藤健一事務所『夢一夜』(公式サイト:http://katoken.la.coocan.jp/100-index.html)の紹介。

参考

http://www.sanspo.com/geino/news/20171214/geo17121412000018-n1.html
 米ニューヨーク州のモーテルに、異性の服を身につけることを趣味とするトランスベスタイト(異性装)のジャッキー(加藤)とバービー(横堀悦夫)が宿泊した。隣室には、電気や車を使用しない保守的な生活を送るアーミッシュの父・エイモス(新井康弘*17)と16歳の娘・レベッカ(吉田芽吹)が。バスルームを共有することになったことで交友が始まり、それぞれの生き方を見つめ直す一夜が幕を開ける。

 「アーミッシュ」とか「女装趣味」とかまたマイナーネタを選んだもんです。
 「アーミッシュ」というと『刑事ジョン・ブック 目撃者』(1985年、ハリソン・フォード主演)を思い出します。いや「アーミッシュが出てくる」ということを知識として知ってるだけで見たことはないのですが。
 しかし「電気や車を使用しない」なんてI濱女史が「伝統を維持して素晴らしい、感動した!」とか言い出しそうです。いやあの人が感動するのって「チベット仏教限定」で別に「アーミッシュには感動しない」のか。

参考

アーミッシュウィキペディア参照)
 アーミッシュは移民当時の生活様式を守るため、自動車は運転しない。商用電源は使用せず、わずかに、風車、水車によって蓄電池に充電した電気を利用する程度である。移動手段は馬車によっているものの、ウィンカーをつけることが法規上義務付けられているため、充電した蓄電池を利用しているとされる。
■規律
・読書をしてはいけない(聖書と、聖書を学ぶための参考書のみ許可される)。
・賛美歌以外の音楽は聴いてはいけない。
・避雷針を立ててはいけない(雷は神の怒りであり、それを避けることは神への反抗と見なされる)。
・義務教育以上の高等教育を受けてはいけない(大学への進学など)。
・化粧をしてはいけない。
・派手な服を着てはいけない。


【映画:ナチス批判の力作相次いだ一年】(児玉由紀恵)
(内容紹介)
・映画『アイヒマンを追え!:ナチスが最も恐れた男(公式サイト:http://eichmann-vs-bauer.com/)』、『ヒトラーへの285枚の葉書(公式サイト:http://hitler-hagaki-movie.com/)』、『否定と肯定』(公式サイト:http://hitei-koutei.com/)の紹介。
 なお児玉コラムでは紹介されていませんが2017年に公開されたナチ関係映画としては『ユダヤ人を救った動物園(公式サイト:http://zookeepers-wife.jp/)』があります。

参考
アイヒマンを追え!:ナチスが最も恐れた男】

http://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/1031828/122800074/?rt=nocnt
日経トレンディ『“ナチスが最も畏れた男”、バウアーとは何者か:映画『アイヒマンを追え!』』
 舞台は1950年代後半のドイツ・フランクフルト。主人公はヘッセン州検事長フリッツ・バウアー(ブルクハルト・クラウスナー)だ。彼はナチスによる戦争犯罪の告発に執念を燃やしていたが、遅々として進まない捜査状況にいら立ちを隠せないでいた。
 そんなある日、彼のもとにアルゼンチン・ブエノスアイレス在住のユダヤ人亡命者から1通の手紙が届く。そこにはアイヒマンが現地に潜伏しているという驚くべき情報が記されていた。このことを友人でヘッセン州首相のゲオルク=アウグスト・ツィン(ゲッツ・シューベルト)に相談。ナチスの残党が巣食うドイツの捜査機関が信用できないため、イスラエル諜報機関モサドに情報を提供すると伝える。
(中略)
 物語の背景にあるのが、当時のドイツの国内事情だ。第二次世界大戦後のドイツは、大勢の元ナチス党員が、政治やビジネスの世界でまだまだ幅を利かせていたという。バウアーがドイツ捜査機関にアイヒマンの所在に関する情報を提供しなかったのも、提供することでその情報がアイヒマン本人に伝わり、逃げられてしまうことを恐れたからだ。
(中略)
 話を元に戻そう。映画はそうした元ナチがはびこるなか、自分の部屋からファイルがなくなったり、情報が筒抜けだったり、脅迫されたりというさまざまな抵抗を受け、時に「復讐に燃えるユダヤ人」と揶揄されながらも、脅しにひるむことなく前に突き進んでいくバウアーの姿が描かれていく。
 ところでバウアーが追いつめたナチスの将校、アイヒマンとはどんな経歴の持ち主だったのか。
 ドイツで1906年に生まれたアイヒマンは、26歳でオーストリアナチス党に入党する。その後、ドイツに亡命すると1934年から親衛隊(SS)情報組織の保安部(SD)で活躍し始める。1939年には秘密国家警察(ゲシュタポ)とSDが統合した国家保安本部のユダヤ人問題課長に抜てきされ、収容所へのユダヤ人強制移送の総元締めとしてユダヤ人虐殺に関与した。戦後、海外へと逃亡。ブエノスアイレスで暮らしていることを密告されたことは、冒頭にも記した通り。
 実はここ数年、ナチスを扱った映画が数多く作られているのだが、なかでもアイヒマンを取り上げた作品が目立っている。例えば、2015年にはアイヒマン裁判の模様を映像で世界に伝えようとした者たちの姿を描いた『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』(公式サイト:http://eichmann-show.jp/)が公開されている。また2017年2月25日からは、アイヒマン裁判が始まったのと同じ年に実際に行われた「アイヒマン実験」の全貌を描く実録作品『アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発』(公式サイト:http://next-eichmann.com/)も公開となる。

 ドイツにおいてもナチス戦犯追及は決して簡単に行われたのではなかったわけです。
 なお、

ドイツ捜査機関にアイヒマンの所在に関する情報を提供しなかったのも、提供することでその情報がアイヒマン本人に伝わり、逃げられてしまうことを恐れたからだ

となっていますが「ナチス残党がごろごろしている状況」はアルゼンチン政府の側も同じでした。そのためイスラエルモサドは「アルゼンチン政府に正式にアイヒマン引き渡し」を要求してアイヒマンに逃亡されることを恐れ、「モサド工作員アイヒマンを拉致する」という荒技を強行します。

https://www.asahi.com/articles/ASKB1575KKB1UTIL010.html
朝日新聞『「ナチスが最も畏れた」検事長の評伝に脚光 没後半世紀』
 ナチス戦争犯罪を追及したドイツの法律家が今年、映画や書籍で取り上げられ、話題になっている。ホロコーストユダヤ人虐殺)があった強制収容所の幹部らに対する裁判を主導した西ドイツ・ヘッセン州検事長、フリッツ・バウアー(1903〜68)だ。
(中略)
 今年に入り、バウアーの実話をもとにしたドイツ映画「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」が日本でも公開された。
(中略)
 さらに今夏、評伝(2013年)の翻訳「フリッツ・バウアー アイヒマンを追いつめた検事長*18が刊行された。過去の克服と向き合いながらも高く評価されなかったバウアーが近年ドイツで再び脚光を浴びている背景には、極右勢力伸長に対するドイツ国内の反動があるとみられる。


ヒトラーへの285枚の葉書

ヒトラーへの285枚の葉書ウィキペディア参照)
・2016年制作のフランス・ドイツ・イギリスの映画。
・ペンと葉書を武器にナチス政権に抵抗した夫婦の実話を基に、ドイツ人作家ハンス・ファラダゲシュタポの文書記録から終戦直後に書き上げた小説『ベルリンに一人死す』(邦訳:2014年、みすず書房)の映画化。
■あらすじ
 第二次世界大戦中の1940年、オットーとアンナのクヴァンゲル夫妻は、ナチス政権下のドイツ・ベルリンで暮らしている。街はフランスへの勝利で沸き立っているが、夫妻の元に最愛の一人息子ハンスが戦死したという知らせが届き、2人は悲しみのどん底に沈む。またそんな折、隣家のユダヤ人老婦人が連行しにやって来たゲシュタポの前で自殺するという事件が起きる。息子や隣人を死に追いやったナチ政権が許せないオットーは、葉書に「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう」などの怒りのメッセージをしたため、街の一角にこっそり置き残すというレジスタンス運動を始める。アンナは当初、夫の身を案じて冷ややかだったが、次第に協力して活動するようになる。
 ゲシュタポで捜査を担当するエッシャリヒ警部は、増え続けるカードの出所に頭を悩ませていた。国家親衛隊 (SS) のプラル大佐に急かされ、エッシャリヒは誤認逮捕したクヴァンゲル夫妻の隣人エンノを殺すことになるが、真犯人にはたどり着けずに終わる。
 ベルリンの街が空襲で荒廃してきた1943年、オットーは非番の日に工場に呼ばれ、そこで自分で書いたカードを落としてしまう。オットーはこれを誤魔化すためナチ党員に届け出させるが、エッシャリヒらによって逮捕される。妻アンナも連行されたことを聞いたオットーは、今までに285枚のカードを書いてきたと告白する。クヴァンゲル夫妻がギロチンで処刑された後、(ボーガス注:内心では夫妻の行為に共感していた?)エッシャリヒは、回収された267枚のカードを窓から撒き、拳銃自殺するのだった。


否定と肯定

否定と肯定ウィキペディア参照)
・2016年に製作された歴史映画で、デボラ・リップシュタットの書籍『否定と肯定ホロコーストの真実をめぐる戦い』(邦訳は『ホロコーストの真実』(1995年、恒友出版))を原作とする。作品ではアーヴィング対ペンギンブックス・リップシュタット事件が扱われ、ホロコースト学者のリップシュタットが、ホロコースト否定論者のデイヴィッド・アーヴィングに名誉毀損で訴えられた裁判の様子を描く。
・裁判に敗れたことで、アーヴィングにはリップシュタットとペンギンブックスに対し200万ポンドを超える支払義務が生じた。これにより、2002年に彼は破産宣告を受けた。
・2006年、アーヴィングはオーストリアで逮捕された。彼が1989年に行った演説が、ホロコーストの否定を禁じるオーストリア法に違反していたためであった。これについてリップシュタットは、「検閲が勝利しても嬉しくはないし、検閲を通じて戦いに勝つことなど信じない。ホロコースト否認論者と戦う方法は、歴史と真実に寄り添うことだ」とコメントしている。

■ニューズウイーク日本版『「ホロコーストはなかった」とする否定論者との闘い:『否定と肯定』』
https://www.newsweekjapan.jp/ooba/2017/12/post-46.php

志位和夫@shiikazuo
2017年12月29日
 「ホロコーストは実在したのか?衝撃の裁判を描く 映画『否定と肯定』」
 https://www.youtube.com/watch?v=IR78MmN7IFo&feature=youtu.be
 差別主義者が自分の歪んだグループでフェイクを言い募り喝采あびる。日本の現実とも重なり合う。歴史の事実を否定するものといかにたたかうか。多くの示唆を与えてくれる秀作。一見をお勧めします。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2017120800210
時事通信『最初に試す人がいる=映画「否定と肯定」公開−主人公の米女性教授語る』
 過去に目を背ける行為は世界中にあると指摘する教授は「日本の若い人たちにも伝えたい。日本が過去に間違えたと認めることは、日本を小さくするのではなく、一段高い所へ引き上げることになるのではないか」と訴えた。

 リップシュタット氏が言う「日本が過去に間違えたと認めることは、日本を小さくするのではなく、一段高い所へ引き上げることになるのではないか」つうのが「婉曲な安倍批判」「安倍を首相にして恥じない日本社会への婉曲な批判」であることは言うまでも無いでしょう。
 リップシュタット氏は「彼女が戦ったホロコースト否定論」と同様の言説として「南京事件否定論」「河野談話否定論」を見なしてるわけです。

 現在の世界について「憎悪と偏見に満ちた発言を試してみて次々『意外といける』と思ってしまう時代に残念ながらなってしまった」と述べた。さらに「以前から差別的な考え方を持っていたわけではない人たちまで、空気が変わって『このくらいなら言ってもいい』と面白がって安易に考えるようになり、それが増えている」と警告した。その先導役が「私の国では指導者*19だ」と述べて、深く嘆息した。

 小生もリップシュタット氏同様に『その先導役が私の国では指導者(安倍)だ』と深く嘆息せざるを得ません。


ユダヤ人を救った動物園】

ユダヤ人を救った動物園 〜アントニーナが愛した命〜(ウィキペディア参照)
・2017年に公開された映画。詩人のダイアン・アッカーマンが2007年に上梓したノンフィクション『ユダヤ人を救った動物園:ヤンとアントニーナの物語』(邦訳:2009年、亜紀書房)を原作としている。
第二次世界大戦中のワルシャワ動物園で飼育員として勤務していたジャビンスキ夫妻が、ナチスに追われてきたユダヤ人を動物用の檻に匿うとともに、飼育されている動物の命をも守り抜いた姿を描き出す。


■スポーツ最前線『雪崩事故の教訓は生かされるか』(青山俊明)
(内容紹介)
 赤旗などの記事紹介で代替。

赤旗
■栃木雪崩事故1週間、甘い対策・認識 常に危険想定を、専門家“絶対安全はない”
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-04-04/2017040412_01_1.html
■主張『山での安全:事故防止は指導者養成がカギ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-08-12/2017081201_05_1.html
東京新聞『栃木雪崩事故の悲劇繰り返すな 高校山岳部顧問ら研修会』
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201712/CK2017121602000153.html

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO24708900V11C17A2L60000/
日経新聞『自民栃木県連 栃木の雪崩事故、再発防止へ提言』
 自民党栃木県連は15日、栃木県那須町で3月に高校生ら8人が死亡した雪崩事故の再発防止に向けた提言書を、栃木県の福田富一知事や宇田貞夫教育長に提出した。安全な登山のための訓練用教材としてビーコン(電波受発信器)などの装備を整え、学校に貸し出すことなどが内容。栃木県は提言を踏まえ、2018年度予算案などでの具体化を目指す方針だ。
 装備以外では、危機管理のための県教育委員会の組織改編や、研修などによる指導者の資質向上を求めた。県教委が設けた学識経験者らによる雪崩事故の検証委員会も、10月にまとめた最終報告書のなかで同様の提言を行っている。

https://mainichi.jp/articles/20171226/ddl/k09/040/095000c
毎日新聞『伝えたい・那須雪崩事故:冬山登山を考える/上 四季通じた危険教える 安全確保へ土台作りを /栃木』全国高体連登山専門部常任委員・大西浩さん(57)
 長野県では事故後、冬山・春山の指針を検討する委員会を設置し、その目的と活動を維持するための安全確保の取り組みを再確認しました。
 その中の一例で、長野県教委は貸し出し用の(雪崩遭難時に備え電波を発信する)ビーコンの確保をいち早く進めました。ビーコンは1台約5万円と高額で、個人や学校での購入が困難ですが、今冬から約50台のビーコンが利用可能となりました。複数校の同時利用や大人数の講習会などにも対応できます。ビーコンは持っているだけでは意味がなく、使えるように教育していくことが必要な機器です。今後は他県でも行政が主体となって活動を支える動きが広がってほしいと思います。

*1:衆院議員、日本共産党沖縄県委員長

*2:著書『それぞれの「戦争論」』(2004年、唯学書房)、『名作の戦争論』(2008年、新日本出版社)、『社会を変える23章』(2015年、新日本出版社

*3:著書『安倍官邸とテレビ』(2016年、集英社新書

*4:朝日新聞写真部次長、『AERA』フォトディレクターなどを経て現在、立正大学文学部教授(ジャーナリズム論)。著書『フォト・ジャーナリズム:いま写真に何ができるか』(2001年、平凡社新書)、『報道危機:リ・ジャーナリズム論』(2003年、集英社新書)、『安倍官邸と新聞:「二極化する報道」の危機』(2014年、集英社新書)、『「朝日新聞」問題』(2015年、集英社新書)、『安倍晋三「迷言」録:政権・メディア・世論の攻防』(2016年、平凡社新書)、『新聞の噓を見抜く:「ポスト真実」時代のメディア・リテラシー』(2017年、平凡社新書)など

*5:小泉内閣環境相、第一次安倍内閣防衛相、自民党総務会長(谷垣総裁時代)などを経て都知事

*6:鳩山内閣行政刷新担当相、菅内閣官房長官、野田内閣経産相民主党幹事長(海江田、岡田代表時代)、民進党代表代行(前原代表時代)などを経て立憲民主党代表

*7:現在は岡田克也・元民進党代表が代表を務める「無所属の会」に所属

*8:社民党政策審議会長、国対委員長鳩山内閣国交副大臣菅内閣首相補佐官(災害ボランティア担当)、民進党役員室長(岡田代表時代)、幹事長代行(前原代表時代)などを経て立憲民主党国対委員長

*9:鳩山内閣官房長官、野田内閣文科相など歴任。現在は岡田克也・元民進党代表が代表を務める「無所属の会」に所属

*10:著書『粉飾決算』(2000年、岩波ブックレット)、『働きすぎの時代』(2005年、岩波新書)、『貧困化するホワイトカラー』(2009年、ちくま新書)、『就活とブラック企業』(2011年、岩波ブックレット)、『過労死のない社会を』(2012年、岩波ブックレット)、『過労死は何を告発しているか』(2013年、岩波現代文庫)など

*11:日本共産党参院議員

*12:日本共産党参院議員、党副委員長

*13:著書『年金の根本問題とその解決の道を考える』(共著、2005年、あけび書房)

*14:NPO法人ホロコースト教育資料センター(https://www.npokokoro.com/hana)理事長。著書『「ホロコーストの記憶」を歩く:過去をみつめ未来へ向かう旅ガイド』(2016年、子どもの未来社

*15:なお、ウィキペディア杉原千畝」によれば「本籍が八百津町」だが「出生地は岐阜県美濃市」とのこと。

*16:著書『忘却に抵抗するドイツ:歴史教育から「記憶の文化」へ』(2012年、大月書店)

*17:元・ずうとるびメンバー(ドラム&ボーカル)。1982年のずうとるび解散後は俳優に転身。TBS愛の劇場『大好き!五つ子』シリーズ(1999〜2009年)の父親役で広く知られるようになる。

*18:2017年、アルファベータブックス

*19:もちろんトランプのこと