新刊紹介:「経済」5月号

「経済」5月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
■随想『OKINAWA1965』(嬉野京子*1
(内容紹介)
 映画『OKINAWA1965』の紹介。

参考
公式サイト
http://longrun.main.jp/okinawa1965/index.html

https://digital.asahi.com/articles/DA3S13429131.html?rm=150
朝日新聞『都鳥拓也さん、伸也さん 沖縄の戦後をたどるドキュメント映画を撮った双子の兄弟』
 米軍車両にひき殺された女児の写真。この1枚から、復帰前と現在の沖縄を銀幕上で交錯させた。「OKINAWA1965」を制作したのは、東北出身の双子だ。
(中略)
 沖縄との出会いは偶然だった。東京での滞在先を探して知人に紹介されたのが、轢殺(れきさつ)された女児の写真を1965年に撮影した写真家、嬉野京子さんだった。
 沖縄を見つめるレンズの目が世代を超えてつながった。寄付を集めて撮影を始め、2人が感じたのは「無知の知」。伸也さんは「自分たちが沖縄を何も知らなかったからこそ、本土の若い人のために撮ろうと思った」。作品は全国で自主上映され、東京、大阪の映画館でも公開の話が進んでいる。
 「カメラを通して、より深く沖縄の人が見えてきた」と拓也さん。次の映画も沖縄を舞台にして、若い世代に焦点を合わせようと考えている。

http://blog.livedoor.jp/ikedakayoko/archives/51424388.html
■1965年沖縄 「少女轢殺」 報道写真家嬉野京子の証言
 1965年に私が沖縄に行ったのは、沖縄で米軍がやっていることを知らせるためでした。 25歳の時です。米軍占領下の沖縄のことは、本土では全くわかりませんでした。米軍が統制していたからです。
 沖縄が日本でないことをまず思い知らされたのは、飛行機の中でした。沖縄本島が眼下に見えはじめると、スチュワーデスが「カメラをしまって下さい」。撮影が禁止されました。一人でも写真を撮るものがいると、フライト自体が許されないのです。
 4月中旬、私は祖国復帰行進団といっしょに、本島最北端の辺戸岬に向かって歩いていました。中部の嘉手納基地にさしかかった時、行進団の人に、「持っているだけで逮捕されるし、行進団にも弾圧がかかるから」と、カメラを預けるように言われました。
 4月20日宜野座村に入りました。小学校で休憩に入ったとたん、「子どもがひき殺された!」。なんと行進団の目の前で、小さな女の子が米軍のトラックにひき殺されたのです。手に通園用のバッグを持ったまま。死んだ女の子の側に突っ立っているだけのアメリカ兵。しかし驚いたのは、駆けつけた日本の警察でした。米兵を逮捕するでもなく、軍用車がスムーズに走れるように交通整理をはじめたのです。
 これを目の前にして何もしないわけにはいきません。「撮らせてほしい」と懇願しました。「生きて帰れないよ」と言われましたが、引きさがれませんでした。「わかった、見つからないようにぼくの肩越しに撮ってくれ」、一人の男性が肩を貸してくれ、たった一度押したシャッターがこの写真です。


■世界と日本
【米国の鉄鋼輸入規制(大場陽次)】
(内容紹介)
 米国の鉄鋼輸入規制をWTO違反の疑いが強く、「海外の鉄鋼製品を利用する米国産業界にとってかえって不利益になるのではないか」として批判している。


【中国の環境改善対策(平井潤一)】
(内容紹介)
 中国の大気汚染対策に一定の評価をしながらも、大気汚染物質の大きな原因である「石炭利用の規制」について現状の臨時措置にとどまるのではなく、「石炭利用を天然ガスや電気にうまく切り替えていく」という恒久的措置にすることが問題としている。


【韓国の労働時間短縮(洪相絃)】
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

■レイバーネット日本『スーパー労組「イーマートの労働時間短縮、企業の腹を肥やす小細工」:「イーマート、週35時間制で年500億の人件費節減」』
http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/knews/00_2017/1513533785601Staff


【ドイツ大連立内閣発足(宮前忠夫*2)】
(内容紹介)
1)極右政党「ドイツのための選択肢」が「0→94」と第三政党に躍進し、第一党「ドイツキリスト教民主同盟メルケルの党)」、第二党「ドイツ社民党」がそれぞれ「311→246」「192→153」と議席を減らした
2)メルケルが連立していた自由民主党が「ドイツのための選択肢」躍進のあおりで前回失った議席を回復したものの、80議席にとどまったこと
3)ドイツ社民党以上に、「ドイツ左翼党(64→69)*3」「緑の党(63→67)」との間にはメルケルは連立がしがたい
という事態では「残念ながら」大連立以外に手はなかったのだとは思います。
 大きな問題の一つはもちろんどうやって「極右政党を封じ込めていくか」ですね。連立への不満が極右政党をアシストするようでは困ります。
 野党の立場である「自由民主党」「緑の党」「ドイツ左翼党」なども「極右政党封じ込め」という意味では可能な限りメルケルに協力してほしいと思います。


ジンバブエ政変と対外関係(佐々木優)】
(内容紹介)
 ムガベ大統領を失脚させた政変が取り上げられています。
 ムガベ後継のムナンガグワ大統領はムガベ政権で法相、国防相、副大統領を務めた人物であり、しかも軍クーデターという「非民主的手法での奪権」のためなんとも評価しがたい、「ムガベよりはマシだと思うが」というのが現時点での佐々木氏の評価のようです。

参考

http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20171204-OYT8T50029.html
■読売新聞『ムガベ氏を退場させた「ソフト・クーデター」の力』日本貿易振興機構ジェトロ)理事 平野克己*4
■記者
 今回、ムガベ氏が辞任に追い込まれた直接のきっかけは何か。
■平野氏
 11月6日に突然、ムナンガグワ副大統領を解任したことだ。その意図は明らかで、今の妻であるグレース夫人に大統領職を譲ろうとした。それを一番深刻にとらえたのは軍で、行動を起こしたというのが真相だろう。

 奥さんに変な肩入れをしたが故に立場がおかしくなると言えば我が国の「森友の安倍」もそうでしょう。まあ、安倍の場合、妻がいなくてもあの男は森友に肩入れしたでしょうし、十分、人として異常ですが。

■記者
 好調なジンバブエ経済がおかしくなったのは何が原因か。
■平野氏
 政権基盤が揺らいだ時、ムガベ大統領は最大の政治基盤である元ゲリラ兵たちの支持を取り戻そうと、ポピュリズムに走った。白人の土地を取り上げて強制収用し、「補償はしない。欲しければ英国に言え」とうそぶき、本当に白人を追い出した。ムガベ氏の論法では、ジンバブエ経済が悪化したのは白人と英国のせいなのである。
 その結果、ローデシア時代に築き上げた高い農業生産力は失われた。外貨は稼げず、食糧も足りなくなって援助をあおいだ。ところが、私有財産を否定したということで、英国からの援助は止まり、他の国もそれにならった。そうなると海外からの投資も来なくなり、経済は坂道を転げ落ちるように悪化していった。
■記者
 国際的な孤立の中で、近年は中国との関係が強化されていたようだが。
■平野氏
 国際的に孤立したジンバブエを助けてくれたのは、南アフリカと中国だ。南アフリカマンデラ元大統領やムベキ*5元大統領はムガベ氏に批判的だったが、ジンバブエからの亡命者や難民の多くは南アフリカに来るので、できるだけ安定していてほしい*6と考えている。
 一方中国は、胡錦濤*7政権の前半にアフリカで資源を獲得しようとしていたころは、ジンバブエもターゲットだったことは間違いない。彼らが関心を持っていたのはクロムだ。ジンバブエはアフリカ大陸で南アフリカに次ぐ産地だ。
(中略)
 とはいえ、ムガベ政権については(ボーガス注:ムガベ政権末期には、必ずしも中国の言うことを聞かないので)中国もうんざりしているように見える。
■記者
 ムガベ氏の後任として、ムナンガグワ前副大統領が大統領に就任した。新大統領の下で、ジンバブエはどう変わると思うか。
■平野氏
 (ボーガス注:ムガベ政権で法相、国防相、副大統領を歴任したという)これまでのキャリアから、ムナンガグワ氏は民主的な人とは言えない。むしろ、強権的な政治家として知られてきた。ムガベ氏の政策がおかしくなった後、「ジンバブエ政治はもはや政治学では理解不能だ」と言われてきた。ジンバブエ政治は心理学、つまり、ムガベ氏の個人的な事情が国政を左右するという時代がずっと続いてきた。その点から言うと、少なくとも政治学には戻るだろう。問題はそこからどうするかだ。
■記者
 アフリカには長期政権の国がたくさんある。ムガベ氏の辞任はそうした国々にどう影響すると考えられるか。
■平野氏
 今回のソフト・クーデターは非常に興味深い。アフリカ連合(AU)内には、どんなに悪辣あくらつな政権であってもクーデターによる政権交代は認めないという取り決めがある。今回、ジンバブエ軍の行動に対してAUは一切、批判しなかった。軍は重要施設を制圧したが、大統領を力づくでは辞任させなかったからだ。辞任勧告はしたが、政権はとらなかった。もしかしたら、このやり方が波及するかもしれない。
 今回ジンバブエ軍は、(ボーガス注:クーデター前に)南アフリカや中国とあらかじめ協議したと言われている。南アとの間では、南アは介入しないか、どこまでなら許されるか、その辺りを詰めたのではないかと思う。中国もムガベ辞任を歓迎しているはずだ。
■記者
 ムガベ氏の37年をどう総括するか。
■平野氏
 彼は、その治世を通じて最終的には、独立前より国をだめにしてしまった。政治指導者が結果責任を負うものだとすれば、厳しい評価をせざるをえない。私はムガベという政治家を評価しない。

http://www.sankei.com/world/news/171124/wor1711240043-n1.html
■産経【ジンバブエ情勢】ムガベ氏を見限っていた中国 ダイヤ採掘事業の国有化で関係悪化か
 ジンバブエで事実上のクーデターが起きる直前、国軍トップの司令官が訪中していたため、中国は事態を知らされていたのでは−という臆測が欧米メディアで広がった。真偽は不明だが、中国は終始目立った発言もせず、静観する姿勢を取った。長く親密な関係にあったムガベ大統領(93)=21日に辞任=をすでに見限っていたとの見方が根強い。
(中略)
 ジンバブエと、最大規模の投資国である中国との貿易高はここ数年、下降気味で、昨年は前年比15%減の約11億ドル(約1200億円)だった。中国側は、低迷する経済を一向に立て直さないムガベ氏を快く思っていなかったようだ。
 AP通信はムガベ氏が昨年、ダイヤモンド採掘事業を国有化したことが関係悪化の一因だとする記事を配信した。2つの中国企業が事業に参加していたが、許可を剥奪されたという。

https://www.newsweekjapan.jp/youkaiei/2017/12/post-7.php
■ニューズウイーク日本版『中国の「虎の尾」を踏んだ、ムガベ大統領の哀れな末路』(楊海英*8
・今回の辞任劇は軍部のクーデターから始まるが、その軍の高官が直前に中国の首都・北京を訪問し、常万全(チャン・ワンチュアン)国防相と会談していた。折しも、中国がジンバブエで巨額の資金を投じて運営してきたダイヤモンド採掘企業が国有化される危険にさらされたことから、ムガベ排除に動いたのではないか、との報道も欧米から出ている。
ムガベは経済利権を獲得しようとなりふり構わずダイヤ鉱採掘に突進。ついには中国の利権まで国有化しようとし、最終的には政治生命を絶たれた。
 ムガベは古き良き友人・中国に突き放されて、失意の晩年を送ることだろう。かつてはムガベの忠実な部下だったムナンガグワ新大統領もまた、独立闘争時に中国で極秘の軍事訓練を受けていた経歴から、老朋友であることに変わりはない。

 どうなんですかねえ、平野氏や楊*9が言うように中国や南アに「クーデター前に軍部からの内密のお話(クーデターが起こっても黙認してくれ的な話)」があったんでしょうか、どうなんでしょうか?
 まあいずれにせよ「世界に冠たる政治大国、経済大国」中国と「アフリカの地域大国」南アが見捨てたからムガベがぽしゃったつう面はあるでしょう。
 裏返せば「ロシアとイランが熱烈支持してるシリアのアサド」「中露がそれなりに支えてる北朝鮮金正恩」はムガベのようにはぽしゃらないだろうつうことです。


特集「マルクス経済学のすすめ」
■革命家マルクスと経済学のすすめ:マルクス生誕から200年(石川康*10
マルクスの世界観:世界は変えられる*11(牧野広義*12
マルクスと自然(稲生勝)
■現代資本主義の金融化と格差問題(高田太久吉*13
■「資本論」から日本の労働事件を考える:過労死問題を中心に(森岡孝二*14
■現代資本主義分析と「資本論」:「少子化」の原因と法則性を分析する(関野秀明*15
■環境問題と21世紀資本主義(野口義直)
マルクス社会理論の生成と構造(渡辺憲正*16
■私とマルクス雨宮処凛*17池田香代子、武居利史、日野秀逸*18山田敬男*19
(内容紹介)
 マルクスについていろいろ論じられているがうまく説明できそうにないので、「一部を除いて」目次だけ紹介しておく。「一部について」は後で俺なりに紹介します。

【ということで紹介】 
■私とマルクス
【青春時代のマルクスとの出会い】(暉峻衆三*20
(内容紹介)
 暉峻氏はマルクスとの出会いを「大原社会問題研究所所員だった父・暉峻義等の影響」としている。
 当時の大原社会問題研究所には「櫛田民蔵、森戸辰男*21大内兵衛*22、久留間鮫造*23宇野弘蔵*24ら」マルクス系統の研究者が多数おり、そうした人間と父親との交流が自然と自分にも影響したと思う、とされている。
 なお、親の影響と言えばマルクス経済学者である大内力氏*25大内兵衛の息子)、久留間健氏*26(久留間鮫造の息子)もおそらくそうなのでしょう。


■「資本論」草稿に見るマルクス(大谷禎之介*27
(内容紹介)
 何で草稿研究するのかが具体的事例を挙げた上で簡単に説明されています。
 具体的事例の紹介はややこしいので省略します。
【理由1】
 資本論2部、3部はマルクス死後の発行であり、エンゲルスが草稿を誤読して編集してる危険性があるから
・2部、3部は残された草稿をエンゲルスがまとめて発行したわけですが、草稿は必ずしもすぐに印刷できる状態ではありません。エンゲルスが「マルクスの意図を推測して」まとめあげたわけですが、それが本当に正しいのかという話です。
 なお、エンゲルス編集については「草稿を分析した結果、一部不適切なところがあった」というのが大谷氏の見方です。
【理由2】
 マルクスの研究の経過が把握できるから
【理由1】だと2部、3部の草稿研究は必要でもマルクス生前に刊行した1部は「草稿研究不要」となりそうですがそうはなりません。
 そこで出てくる新しい別の理由が「研究経過の把握」です。刊行された1部は最終結果ですからそこに至るまでの経過は「刊行された1部(最終結果)」だけ見ても解りません。「研究経過」を把握することでより資本論が深く理解できるという話です。


■「共産党宣言」という表題にした理由(橋本直*28
(内容紹介)
【1】「党」について
 ウィキペ「共産党宣言」では当時、共産党は存在しなかった*29ため、『共産主義者宣言』と呼ぶべきとする見解が紹介されている。実際、『共産主義者宣言』(金塚貞文訳、2012年、平凡社ライブラリー)とする翻訳書もあるが筆者は、「マルクスエンゲルスが宣言執筆当時において、共産党の創立を展望していたことは明白であり、従来の翻訳で何ら問題ない」とし「共産党宣言」という呼称を採用している。
【2】「共産」について
 筆者は「社会党」としなかった理由について、「いわゆる空想的社会主義シャルル・フーリエ、アンリ・ド・サン=シモン、ロバート・オウエンなど)の立場ではない」ことを示したかっただけであり、「社会主義共産主義」についてそれほど明確な差異は、少なくともこの時点でのマルクスエンゲルスにはなかったとみている。


マルクス経済学の研究にとりくんで(林直道*30
(内容紹介)
 1970年代までの林氏の研究について『史的唯物論と経済学』(1971年、大月書店)、『国際通貨危機世界恐慌』(1972年、大月書店)、『史的唯物論と所有理論』(1974年、大月書店)、『フランス語版資本論の研究』(1975年、大月書店:1977年・野呂栄太郎*31受賞)といった著書に触れながら説明されている。1980年代以降については「与えられた原稿分量をオーバーしたこともある」ので後日触れたいとされている。


不破哲三*32インタビュー『『「資本論」探求』*33マルクス
(内容紹介)
 不破氏が2018年に刊行した著書『「資本論」探求』(新日本出版社)についてのインタビュー。


■黒田総裁下の日銀の金融政策を総括する(建部正義*34
(内容紹介)
 『なぜ異次元金融緩和は失策なのか』(2016年、新日本出版社)という著書がある著者が「日銀の金融政策=異次元緩和」が「消費増や賃金増」という意味では景気回復をもたらさなかったこと、しかし「マネーゲーム的な形での株価高と円安」はもたらしたこと、「既に金融緩和が限界に近付いているため」いわゆる出口戦略、撤退戦略を検討する必要があるが、「下手に緩和政策を終了させる」と反動で急激な株価安と円高をもたらしかねないことが批判的に指摘されている。
 なお、「細部はともかく」アベノミクスの異次元緩和自体に対する批判者は何も月刊「経済」に寄稿する建部氏のようなマルクス系、共産党系の研究者のみでないことは
・加藤出『日銀、「出口」なし! 異次元緩和の次に来る危機』(2014年、朝日新書)
・河村小百合『中央銀行は持ちこたえられるか:忍び寄る「経済敗戦」の足音』(2016年、集英社新書)
木内登英*35『異次元緩和の真実』(2017年、日本経済新聞出版社
・白井さゆり『超金融緩和からの脱却』(2016年、日本経済新聞出版社
野口悠紀雄*36『金融緩和で日本は破綻する』(2013年、ダイヤモンド社)、『異次元緩和の終焉:金融緩和政策からの出口はあるのか』(2017年、日本経済新聞出版社
といった著書があることでもわかる。


参考

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2018-02-17/2018021702_01_1.html
赤旗『“異次元の金融緩和”総括こそ、黒田日銀総裁再任案 笠井政策委員長が強調』
 日本共産党笠井亮政策委員長は16日、国会内での記者会見で、政府が衆参両院に提示した国会同意人事案件のうち、4月に任期満了を迎える黒田東彦日銀総裁の再任案について問われ、「大きな問題になってきた『異次元の金融緩和』をこのまま続けるのか、その総括が問われている」と述べ、両院の議運委員会での黒田氏に対する所信の聴取を行うなかで、しっかりとただしていきたいと述べました。
 会見で笠井氏は、アベノミクスの「異次元の金融緩和」によって景気が回復せず、出口戦略もないことを指摘。「金融緩和によるデフレ脱却は行き詰まっているのが現状だ。このやり方は限界で、転換が必要だということが大きく問われている」と強調しました。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2018-03-03/2018030302_03_1.html
赤旗『異次元緩和を続行、黒田日銀総裁が再任案で所信、衆院議運委 塩川議員ただす』
 衆院議院運営委員会は2日、国会同意人事案件のうち、政府が再任案を示した黒田東彦*37日銀総裁候補(現総裁)の所信を聴取し、各党が質疑を行いました。日本共産党塩川鉄也議員の質問に対し、黒田氏は、大規模な金融緩和による低金利が家計に与える悪影響を否定しませんでした。
 黒田氏は所信の中で量的・質的金融緩和(異次元の金融緩和)について「政府と連携して2%の物価目標実現の総仕上げを果たす」と述べ、大規模な金融緩和の継続を強調しました。
 塩川氏は「異次元緩和によって経済の好循環が生み出されるとしてきたが、円安・株高によって大企業や富裕層に巨額の利益をもたらしたものの、実質賃金はマイナスとなり、消費は落ち込んだ」と批判しました。黒田氏は「経済の好循環が始まっている」としつつ、「確かに賃金の上昇は鈍い」と認めました。
 塩川氏は、低金利が家計に与える影響について「日銀の試算でも、1991年を起点として比較すると、家計部門から企業部門に巨額の所得が移転している」とマイナス面をただしました。黒田氏は「15年前、20年前と比較すると負担は事実」と答えました。
 また、塩川氏は日銀のマイナス金利政策によって地域金融機関の収益が悪化し、金融仲介機能に悪影響を与えていることを指摘しました。
 塩川氏は「金融緩和によってつくられた低金利を背景に安倍政権は大型公共事業の促進や後年度負担を含む軍事費の拡大で財政悪化のリスクを高めている」とし、「日銀が財政をファイナンス(政府の財政赤字の穴埋め)しているとみられても仕方がない」と批判しました。

*1:著書『戦場が見える島・沖縄:50年間の取材から』(2015年、新日本出版社

*2:著書『人間らしく働くルール:ヨーロッパの挑戦』(2001年、学習の友社)、『企業別組合は日本の「トロイの木馬」』(2017年、本の泉社)

*3:旧東ドイツが有力地盤という問題はあれども、もはや、ドイツの政党として一定の地位を固めたと言っていいのでしょう。

*4:著書『経済大陸アフリカ』(2013年、中公新書)など

*5:マンデラ政権で副大統領

*6:北朝鮮が崩壊したら困る、うちに難民が来ても嫌や(中国、ロシア)」つうのと同じ構図ですね。

*7:共青団中国共産主義青年団)中央書記処第一書記、貴州省党委員会書記、チベット自治区党委員会書記などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会主席

*8:著書『墓標なき草原:内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録(上)(下)』(2009年、岩波書店)、『植民地としてのモンゴル:中国の官制ナショナリズムと革命思想』(2013年、勉誠出版)、『中国とモンゴルのはざまで:ウラーンフーの実らなかった民族自決の夢』(2013年、岩波現代全書)、『狂暴国家 中国の正体』(2014年、扶桑社新書)、『ジェノサイドと文化大革命内モンゴルの民族問題』(2014年、勉誠出版)、『日本陸軍とモンゴル』(2015年、中公新書)、『「中国」という神話:習近平「偉大なる中華民族」のウソ』(2018年、文春新書)など

*9:楊の場合、平気で反中国のでたらめ言いますからね。

*10:著書『マルクスのかじり方』(2011年、新日本出版社)、『若者よ、マルクスを読もう:20歳代の模索と情熱』(共著、2013年、角川ソフィア文庫)など

*11:いわゆるフォイエルバッハ・テーゼ、特に第11テーゼ『哲学者たちは、世界を様々に解釈してきただけである。肝心なのは、それを変革することである。』が説明されている。

*12:著書『「資本論」から哲学を学ぶ』(2007年、学習の友社)、『世界は変えられる:マルクスの哲学への案内』(2016年、学習の友社)、『「資本論」と変革の哲学』(2017年、学習の友社)など

*13:著書『マルクス経済学と金融化論』(2015年、新日本出版社)、『引き裂かれたアメリカ:富の集中、経済危機と金権政治』(2017年、大月書店)など

*14:著書『働きすぎの時代』(2005年、岩波新書)、『貧困化するホワイトカラー』(2009年、ちくま新書)、『就職とは何か』(2011年、岩波新書)、『過労死は何を告発しているか』(2013年、岩波現代文庫)、『雇用身分社会』(2015年、岩波新書)など

*15:著書『現代の政治課題と「資本論」』(2013年、学習の友社)、『金融危機と恐慌』(2018年、新日本出版社)など

*16:著書『近代批判とマルクス』(1989年、青木書店)、『イデオロギー論の再構築』(2001年、青木書店)など

*17:著書『生き地獄天国:雨宮処凛自伝』(2007年、ちくま文庫)、『プレカリアートデジタル日雇い世代の不安な生き方』(2007年、洋泉社新書y)、『排除の空気に唾を吐け』(2009年、講談社現代新書)、『ロスジェネはこう生きてきた』(2009年、平凡社新書)、『生きさせろ!難民化する若者たち』(2010年、ちくま文庫)、『右翼と左翼はどうちがう?』(2014年、河出文庫)など

*18:著書『憲法がめざす幸せの条件:9条、25条と13条』(2010年、新日本出版社)、『マルクス・エンゲルスレーニンと協同組合』(2010年、本の泉社)、『「被災者目線」の復興論』(2011年、新日本出版社)、『憲法を生かす社会保障へ』(2013年、新日本出版社)、『これからの日本と社会保障、そして私たち:「生活大国」スウェーデンに学ぶ』(2017年、あけび書房)など

*19:著書『新版・戦後日本史』(2009年、学習の友社)、『社会運動再生への挑戦』(2014年、学習の友社)など

*20:著書『日本資本主義の食と農』(2011年、筑波書房ブックレット)、『わが農業問題研究の軌跡』(2013年、御茶の水書房)など

*21:片山、芦田内閣で文相

*22:著書『マルクス・エンゲルス小伝』(1964年、岩波新書)など

*23:著書『恐慌論研究』(1965年、大月書店)、『貨幣論』(1979年、大月書店)など

*24:著書『「資本論」と社会主義』(1995年、こぶし文庫)、『価値論』(1996年、こぶし文庫)、『「資本論と私』(2008年、御茶の水書房)、『恐慌論』(2010年、岩波文庫)、『増補・農業問題序論』(2014年、こぶし文庫)、『資本論に学ぶ』(2015年、ちくま学芸文庫)、『社会科学としての経済学』(2016年、ちくま学芸文庫)、『経済原論』(2016年、岩波文庫)など

*25:著書『国家独占資本主義』(2007年、こぶし文庫)など

*26:著書『貨幣・信用論と現代』(1999年、大月書店)、『資本主義は存続できるか』(2003年、大月書店)など

*27:著書『マルクスに拠ってマルクスを編む:久留間鮫造と「マルクス経済学レキシコン」』(2003年、大月書店)、『マルクスのアソシエーション論』(2011年、桜井書店)、『マルクスの利子生み資本論(1)〜(4)』(2016年、桜井書店)など

*28:著書『「共産党宣言」普及史序説』(2016年、八朔社)、『1850年マルクスによる経済学研究の再出発』(2018年、八朔社)など

*29:存在したのは共産主義者同盟

*30:著書『景気循環の研究』(1959年、三一書房)、『史的唯物論と経済学』(1971年、大月書店)、『国際通貨危機世界恐慌』(1972年、大月書店)、『史的唯物論と所有理論』(1974年、大月書店)、『フランス語版資本論の研究』(1975年、大月書店)、『恐慌の基礎理論』(1976年、大月書店)、『現代の日本経済』(1976年、青木書店)、『経済学入門』(1981年、青木書店)、『日本経済をどう見るか』(1998年、青木書店)、『恐慌・不況の経済学』(2000年、新日本出版社)、『強奪の資本主義』(2007年、新日本出版社)など

*31:1974年、野呂栄太郎の没後40周年記念行事の一つとして、日本共産党によってもうけられた。社会科学とこれに関連した各分野での業績が対象とされた。2006年6月、「21世紀の社会・文化・理論の新しい状況を迎え」たことなどを理由に、文学分野の多喜二・百合子賞とともに終了が発表された。

*32:共産党書記局長、委員長、議長など歴任。著書『歴史教科書と日本の戦争』(2001年、小学館)、『古典研究・マルクス未来社会論』、『古典研究・議会の多数を得ての革命』(2004年、新日本出版社)、『私の戦後六〇年:日本共産党議長の証言』(2005年、新潮社)、『小林多喜二 時代への挑戦』(2008年、新日本出版社)、『マルクスは生きている』(2009年、平凡社新書)、『マルクスエンゲルス革命論研究(上)(下)』(2010年、新日本出版社)、『不破哲三 時代の証言』(2011年、中央公論新社)、『「資本論」はどのようにして形成されたか』(2012年、新日本出版社)、『マルクス資本論」発掘・追跡・探究』(2015年、新日本出版社)、『科学的社会主義の理論の発展』(2015年、学習の友社)、『「資本論」刊行150年に寄せて』(2017年、日本共産党中央委員会出版局)、『「資本論」探究:全三部を歴史的に読む(上)(下)』(2018年、新日本出版社)など

*33:不破哲三著、2018年、新日本出版社

*34:著書『貨幣・金融論の現代的課題』(1997年、大月書店)、『金融危機下の日銀の金融政策』(2010年、中央大学出版部)、『21世紀型世界経済危機と金融政策』(2013年、新日本出版社)、『なぜ異次元金融緩和は失策なのか』(2016年、新日本出版社)など

*35:著書『金融政策の全論点:日銀審議委員5年間の記録』(2018年、東洋経済新報社

*36:著書『アメリカ型成功者の物語:ゴールドラッシュとシリコンバレー』(2009年、新潮文庫)、『世界史を創ったビジネスモデル』、『戦後日本経済史』(2017年、新潮選書)、『入門 ビットコインブロックチェーン』(2017年、PHPビジネス新書)、『日本経済入門』(2017年、講談社現代新書)など

*37:財務省国際金融局長、アジア開発銀行総裁などを経て日本銀行総裁