新刊紹介:「経済」6月号

「経済」6月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
■巻頭言「家族農業の10年」
(内容紹介)
 国連によって「2019年〜2028年」が「家族農業の10年」とされたこと、しかし日本においてそうした家族農業への注目が十分されていないことが批判的に指摘されています。

参考
赤旗・主張『18年の農業・農村:暴走農政の転換で展望開こう』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2018-01-12/2018011201_05_1.html


■随想「科学者総がかりの軍事研究阻止を」(長田好弘*1
(内容紹介)
 安倍政権が「軍学共同」を進めていることへの批判。

参考
赤旗
■主張『学術会議の新声明:軍事研究への明確な拒否回答』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-04-01/2017040101_05_1.html
■大学での軍事研究反対、学術会議声明1年で集い
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-01/2018040101_03_1.html


■世界と日本
【イギリスのEU離脱交渉】(宮前忠夫*2
(内容紹介)
 英国のEU離脱交渉が未だ過渡期段階にあり、全く見通しが立っていないことが指摘されている。
 場合によっては「離脱不満の声が高まり、再度の国民投票→やはり残留」の可能性すらありうる。
参考
NHK『混迷するイギリスEU離脱交渉』
https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2017/12/1214.html


【中国全人代憲法改正】(平井潤一)
(内容紹介)
 中国の憲法改正についての簡単な説明。具体的には

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018031100298&g=int
一、前文に「習近平*3の新時代の中国の特色ある社会主義思想」「社会主義現代化強国の建設」「中華民族の偉大な復興」を追加
一、第1条に「中国共産党による指導は中国の特色ある社会主義の最も本質的な特徴」を追加
一、第27条に「国家公務員は就任時に法律の規定により憲法に対して宣誓しなければいけない」を追加
一、第79条の国家主席と国家副主席に関する「2期を超えて連続して就任できない」とする規定を削除
一、全公職者の汚職を取り締まる「国家監察委員会」に関する条文や規定を追加。

などである。
 なお、「国家主席の任期制限撤廃」「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想(憲法上に個人名が記載されているのは今回の習氏以外では毛沢東トウ小平のみ)」という点について「終身主席だのなんだの」と無茶苦茶なことを言う物言いが日本では「ウヨメディアを中心に」大変多くて、俺的に非常に呆れるが、平井氏が「こうした習氏の権威強化については、危惧する声もあり、今後を注目したい」程度にとどめているのが、俺的に評価できる。
 もちろん「任期制限撤廃がいいこと」だとは平井氏も俺も思わないし、こうした中国の情勢について危惧や疑問などが全くないわけではないが、「終身主席だの、文革の個人崇拝だの」と言い出すのはまともな習氏批判ではあるまい。

参考

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018031800155&g=int
時事通信『初代監察委トップに楊暁渡氏=李首相を再選−中国全人代
 中国の全国人民代表大会全人代、国会に相当)は18日午前、全体会議を開き、李克強*4首相(62)を再選し、国務院(中央政府)と同格となる新設の汚職摘発機関、国家監察委員会トップの初代主任に楊暁渡・共産党中央規律検査委員会副書記(64)を選出した。楊氏は習近平国家主席の看板政策である反腐敗闘争の新たな司令塔の役割を担う。


特集「社会保障を社会安定の土台に」
■「分断社会」を超え、分かち合いの社会保障へ(高端正幸*5
(内容紹介)
 日本の社会保障政策において「自己責任的な考え」が強いことが批判され、「分かち合いの社会保障」への転換が主張されている。


生活保護を全て生活安定のために(田川英信)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
生活保護引き下げ中止を、全生連が国会要請
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-27/2018042714_01_1.html
生活保護利用者を差別、法改定案 与党などが採決強行
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-28/2018042804_10_1.html
■“過払い”天引きは権利侵害、生活保護法改悪法案、利用者が提訴、裁判勝訴も
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-05-06/2018050601_04_1.html


■消費税は社会保障に使われているか(梅原英治)
(内容紹介)
 過去において消費税が社会保障に使われた事実はなく、また現在、政府が主張する「社会保障に消費税を」という口実での消費税増税も「そのような使用目的の限定は制度上されておらず、そうした保障はない」として批判されている。
 なお、筆者は「政府の消費税・社会保障目的税化は全く事実に反する虚言」としながらも、一方で「仮に社会保障目的税化されたとしても」それは消費税の逆進性に適切ではないとしている。
 法人税所得税などにより「高額納税者(高収入の法人や個人)から定額納税者に再配分するのが社会保障のあるべき姿」としている。

参考
赤旗
社会保障と消費税をリンクさせるのは やめよ、志位委員長が会見
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-06-03/2016060302_02_1.html
■主張『社会保障充実財源:消費税増税との連動断ち切れ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-06-08/2016060801_05_1.html


朝鮮半島の平和、韓国の政治、日本の憲法(小木曽陽司、安京煥)
(内容紹介)
 新聞赤旗に掲載された小木曽陽司・赤旗編集局長の安・ソウル大名誉教授インタビューの再掲。
 なお、安氏は文在寅*6のブレーンの一人とされてる人物なので対北朝鮮外交については基本的には太陽政策支持です。
参考
■「韓国の憲法学者 9条・『赤旗』語る 安京煥ソウル大学名誉教授」
https://blogs.yahoo.co.jp/kbdph775/18326310.html


特集「激動する中東世界」
■中東情勢の進化と米トランプ政権(西海敏夫)
エルサレムから中東の激動を見る(尾崎芙紀)
(内容紹介)
 トランプ政権による「エルサレム・首都容認論」が過去のパレスチナイスラエル交渉の経緯を無視し、またパレスチナにとって不当に不利であり、パレスチナ問題の解決に支障を作り出すであろうことが批判的に取り上げられている。
 なお、こうした事態については、例えばシリア問題*7において「アサド支持=イラン、ロシア」、「反アサド=米国、サウジ」のように、アラブ諸国(イラン対サウジなど)において諸問題で対立が生じていることが背景にあるとされる。(シリア問題で)イランとの対抗上、サウジがイスラエルと連携するといったことが行われていることが「パレスチナ問題」において「アラブは一枚岩ではない」としてトランプやイスラエルの暴走を招いているという指摘である。

参考
赤旗
■米トランプ政権はエルサレム首都認定を撤回せよ:日本共産党委員長 志位和夫
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-07/2017120701_02_1.html
■会見で小池氏 エルサレム首都認定撤回要求、国連決議賛成は当然
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-23/2017122302_01_1.html
■米が国連拠出金減、エルサレム決議に報復、際立つ国際協調無視
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-28/2017122807_01_1.html


■卸売市場をめぐる攻防:卸売市場法改定案の狙いと築地市場移転(三国英実*8
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
■卸売市場の現状調査、規制緩和の動きをうけ 党国会議員団、築地へ
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-07-27/2017072704_02_1.html


■「トランプ」の経済学とNAFTA再交渉(中本悟*9
(内容紹介)
 トランプの経済外交を「米国の貿易赤字を減らすためなら何でも許されるとし、WTOルールさえ無視する暴挙」として批判している。


■首都直下・トラフ大地震への対策・体制(平田直*10
(内容紹介)
 首都直下・トラフ大地震への対策・体制について論じられている。

参考
NHK
■第18回  新しい南海トラフ巨大地震の評価と暫定的な対応策 〜前編〜(平田直)
http://www.nhk.or.jp/sonae/column/20171001.html
■第18回  新しい南海トラフ巨大地震の評価と暫定的な対応策 〜後編〜(平田直)
http://www.nhk.or.jp/sonae/column/20171101.html

http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO000307/20180117-OYT1T50088.html
■読売新聞『首都直下地震「火災が多発する恐れ」…平田直氏』
 平田氏は「首都圏には木造住宅が密集する地域があり、強い揺れで住宅が倒れ、火災が多発する恐れがある」と述べ、対策と警戒を促した。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/178923
日刊ゲンダイ『東大地震研究所・平田直氏 「首都直下型の予知は不可能」』【一部省略】
記者
 最も気になることですが、そもそも予知は可能なのでしょうか。
平田氏
 プレートにどういう力が加わっているかある程度予測できて、どういうメカニズムか分かっているものについては、正しくモニターして前兆を察知すれば予知できる可能性はある。ですが、まだ現状では「地震の起きる可能性が高くなった」とは言えても、ぴったり「何日に起きる」と言うことはできません。
記者
 政府の地震調査委員会は今後、M7クラスの首都直下地震が「30年以内に70%」の確率で起きると指摘しています。
平田氏
 これは「統計的な理解」に基づいて発生を確率的に予測しているものです。南関東の広い範囲でM7クラスの地震は、明治から100年の間に5回起きています。過去100年に5回起きたということは、将来の100年でも5回くらい起きる可能性はあるということです。
記者
 東日本大震災後、対策として何か進んだ点はありますか。
平田氏
 東北地方太平洋沖地震は海で起きましたから、海域に観測点を増やしました。日本海溝の海域に海底ケーブルで150カ所の観測点を作っています。
 東日本大震災津波の被害が大きかった。海底ケーブルには津波計がついているので、津波がどういうふうに伝わって、あと何分後にどこに何メートルの津波が来るか、観測することができます。沿岸の人にリアルタイムで伝えることが可能になった。避難行動には役に立つと思います。

*1:著書『「IT革命」を考える』(2001年、新日本新書)など

*2:著書『人間らしく働くルール:ヨーロッパの挑戦』(2001年、学習の友社)、『企業別組合は日本の「トロイの木馬」』(2017年、学習の友社)など

*3:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席。

*4:中国共産主義青年団共青団)中央書記処第一書記、河南省長・党委員会書記、遼寧省党委員会書記、第一副首相などを経て首相(党中央政治局常務委員兼務)

*5:著書『地域切り捨て:生きていけない現実』(編著、2008年、岩波書店)、『復興と日本財政の針路』(2012年、岩波書店

*6:盧武鉉政権大統領秘書室長、「共に民主党」代表を経て大統領

*7:もちろん話はシリア問題に限定されない。

*8:著書『今日の食品流通』(編著、1995年、大月書店)、『アジアの食料・農産物市場と日本』(編著、2000年、大月書店)、『地域づくりと農協改革』(編著、2000年、農文協)、『再編下の食料市場問題』(編著、2000年、筑波書房)など

*9:著書『現代アメリカの通商政策』(1999年、有斐閣)、『現代アメリカ経済』(編著、2005年、日本評論社)、『アメリカン・グローバリズム』(編著、2007年、日本経済評論社)、『現代アメリカ経済分析』(編著、2013年、日本評論社)など

*10:著書『巨大地震・巨大津波東日本大震災の検証』(共著、2011年、朝倉書店)、『首都直下地震』(2016年、岩波新書