今日の産経ニュース(8/17分)(追記・修正あり)

■「民族共生象徴空間」知っているのは4.6%、89.6%は知らず 政府「アイヌ政策に関する世論調査
https://www.sankei.com/politics/news/180817/plt1808170014-n1.html
 そりゃ「当事者のアイヌでも、非当事者の人権活動家やジャーナリスト、研究者、行政官などでもない」日本人の大半はアイヌ問題に興味ないし、マスコミもろくに報道しないし、政府も広報する気があるのか非常に疑問つう状況だからそうなるでしょう、つう話です。
 アイヌ関係者には恐縮ですが、俺だってこんなん知りません。
 まあ、こんな常態で「チベット問題ガー」とか一部日本人(主として反中国ウヨ)がいうのは「自国の少数民族アイヌに対してろくに興味関心もない日本人が中国の少数民族政策(例:チベット)を批評するなど、おこがましいとは思わんかね(ブラックジャックの本間丈太郎風に)」と思うのでこの状況をなんとか変えたいもんです。


■【産経抄】8月17日
https://www.sankei.com/column/news/180817/clm1808170003-n1.html

 医療コンサルタント会社元役員の谷口浩司被告(47)は、野党参院議員*1の「政策顧問」の肩書を利用して、霞が関や永田町で人脈を広げてきた。
 茶坊主と呼ばれるのにふさわしいのはむしろ、谷口被告から銀座の高級クラブで接待漬けになっていた政治家や官僚たちである。

 自民党応援団の産経がここまででかい口をたたくと言うことは今回の疑惑で自民党政治家の名前が挙がることはない、政治家としては羽田元国交相の名前しか出ないという確信でもあるんでしょうか?。
 まあ確かに谷口被告は、マスコミ報道(産経に限らない)によれば「羽田元国交相(野田内閣)の元私設秘書」だったようですが、まあ、これが自民党幹部議員の名前でも出てくれば掌返しで「たいした問題じゃない」「谷口の言うことなど信用できない」とでも言い出すのでしょうね。


■【阿比留瑠比の極言御免】歴史の見方にももっと多様性を
https://www.sankei.com/premium/news/180817/prm1808170009-n1.html
 一般論で言えばその通りです。しかし阿比留がやりたいことは「太平洋戦争をアジア解放の聖戦と認めろ」なんて与太だから話になりません。
 そして一方であの戦争を批判する人間を反日、自虐と言って罵倒する。どこが「歴史の多様性」なのか。
 大体、そういう阿比留は例えば「ホロコースト否定論」「朝鮮戦争・韓国開戦論」を認めるのか?
 韓国政府の「竹島は古来より我が国の領土」という見解を支持するのか?
 中国政府の「天安門事件は反政府暴動であり鎮圧もやむを得なかった」という見解を支持するのか?
(今時そんな人はいないでしょうが)「文化大革命にはそれなりの意義があった」という見解を支持するのか?。まあ聞くだけ野暮です。
 「戦前日本の犯罪的行為」のみに阿比留は「戦前日本の言い分も聞け。それが歴史の多様性だ」と居直ってるだけです。

「日本の歴史や国際法の研究を進め、多数派の意見だからといって(ボーガス注:広田弘毅に)*2絞首刑を宣告すべきではないという考えに至った」

 阿比留が紹介するレーリンクの発言ですが、とはいえレーリンクは「日本が無罪」「広田が無罪」と言ってるわけでは全くありません。「阿比留が紹介する産経の記事」やウィキペディア「レーリンク」によれば「広田弘毅*3の死刑に反対した(広田を懲役刑などで処罰することそれ自体には賛成)」にすぎません。
 それどころか、ウィキペディア「レーリンク」によれば

(ボーガス注:死刑判決が出ず終身刑となったが)嶋田繁太郎*4岡敬純*5佐藤賢了*6も死刑が相当である

と判断したというのだから、「全員無罪」という産経の立場とは大分違います。
 なお、終身刑*7となった嶋田については判事11人中5人が死刑支持(もちろんその1人がレーリンク)であり、きわどい判決でした。
 このあたりが、「日本全面無罪」を主張したパルとの違いであり、レーリンクが従来パルに比べウヨによって宣伝されてこなかった理由です。
 こうしたことを無視し「レーリンクは広田を死刑にすべきでないといった!」「レーリンクは俺たちの仲間だ!」とのみ騒ぎ立てる阿比留の態度はまさに詐欺的です。
 全員無罪論のパルはともかくレーリンクは明らかに産経の仲間などではない。
 なお産経のように「広田の死刑に反対」レーリンクや「全員無罪」パルばかりを取り上げること自体が問題です。他の判事も取り上げた上で東京裁判について議論することこそが阿比留の言う「歴史の多様性」でしょう。
 それにしてもレーリンクやパルの存在を取り立てれば取り立てるほど「産経がいうほど東京裁判は結論ありきと違うヤン。結論ありきやったら、集団的自衛権合憲派で政府審議会委員固めた安倍みたいに判事全員、極刑派で固めてパルやレーリンクみたいなんは判事になれんやろ」つう話なのですがそういう認識は産経にはないようです。

「連合国側には共産主義の脅威ということは念頭になかった。」

 「はあ?」ですね。阿比留によれば、東京裁判の後にレーリンクがこう語ったそうですが、別に日本は「共産主義の脅威」を理由に中国侵略や対米戦争を始めたわけではありません。これが「阿比留のデマではなく事実」ならレーリンクの歴史認識のゆがみ、誤りを証明するものでしかありません。

*1:現在、国民民主党所属の羽田元国交相のこと

*2:広田弘毅と書かず「東条英機元首相、武藤章陸軍省軍務局長など全死刑囚について死刑に反対であった」と誤読させる気満々の阿比留の文章には全く反吐が出ます。

*3:斎藤、岡田、第1次近衛内閣外相、首相を歴任

*4:東条内閣海軍大臣軍令部総長を歴任(ウィキペディア嶋田繁太郎」参照)

*5:海軍省軍務局長、海軍次官を歴任。戦後、東京裁判終身刑判決を受けるが後に仮釈放(ウィキペディア岡敬純」参照)

*6:いわゆる「黙れ」事件で悪名高い人物。南支那方面軍参謀副長、陸軍省軍務局長、支那派遣軍総参謀副長など歴任。戦後、東京裁判終身刑判決を受けるが後に仮釈放。その後は東急管財(現・東急ファシリティサービス)社長を務めた。また、自身の反米主義からベトナム戦争反対運動に参加して話題になり、「共産党は無理だが、社会党公聴会に呼んでくれないものか」と語った事もあるという。開戦時の陸軍中枢においてアジアの植民地解放論に最も熱心であり、死の直前まで面談者には大東亜戦争(太平洋戦争)は聖戦だったと主張していたという(ウィキペディア佐藤賢了」参照)

*7:ただし後に仮釈放