新刊紹介:「前衛」3月号

 「前衛」3月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。「興味のある内容」のうち「俺なりになんとか紹介できそうな内容」だけ簡単に触れます。「赤旗記事の紹介」でお茶を濁してる部分が多いです。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
■安倍政権の「戦争をする国づくり」を許すな:新「防衛大綱」・「中期防」の危険性(山根隆志*1
■安倍大軍拡計画とバイ・アメリカン(竹内真
■新たな「防衛計画の大綱」と九条改憲小沢隆*2
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。詳しくは赤旗記事をお読みになれば良いかと思いますが、こうした安倍軍拡計画については
1)単に憲法九条を擁護するだけでなく、こうした軍拡に歯止めを加えなければ、問題は是正されない反面
2)こうした右翼路線を安倍がとるが故に護憲の重要性が高まってるとも言えるでしょう。
 もちろん軍拡は「平和主義」の観点は無論ですが「財政悪化」「福祉などの切り捨て」という意味でも問題です。こんな軍拡をしながら消費税増税だの福祉切り捨てだの全く容認する気はありません。

赤旗
主張/新たな「防衛大綱」/攻撃型空母の導入許されない
防衛大綱 「空母」明記へ/骨子案提示 F35B運用 事実上の攻撃型
安倍政治 命を削って 軍拡に熱中/中期防 最大の27兆4700億円 後期医療保険料 軽減廃止
違憲の攻撃能力へ27兆円/空母化・F35明記/新「防衛大綱」・中期防 閣議決定
新「防衛大綱」・中期防 閣議決定/危険な計画撤回を/小池書記局長が談話
新「防衛大綱」・中期防 小池書記局長が談話
主張/新防衛大綱・中期防/違憲の攻撃兵器導入許されぬ
主張/19年度軍事予算案/「戦争できる軍隊」の道開くな


■トランプ政権の通商政策は何を意味するのか?:対東アジア政策にみるアメリカ覇権戦略のゆくえ(萩原伸次郎*3
(内容紹介)
 副題「東アジア」で分かる様にもっぱら「中国との貿易紛争」が取り上げられています(今後、交渉予定の日米FTAにも若干ふれられていますが)。中国との全面対立は中国はもちろん「米国にとっても」望ましい物ではなく「1980年代の日米貿易摩擦」同様、何らかの落としどころがあるだろうと筆者は見ています。


■異常気象はなぜ起きるのか?:温暖化による増幅(中村尚*4
(内証紹介)
 昨年の「今年の漢字」が「災」になったように昨年は「異常気象による災害」が多発しました。それについて「温暖化の影響が大きいのではないか」とし「防災対策としても温暖化防止に意義があること」が述べられています。
 もちろん「温暖化だけが異常気象の原因ではないこと」「温暖化防止とは別途様々な防災対策が必要なこと」も当然指摘されています。


■「想定外」の洪水から人命を守ることを最優先にする治水に転換を(宮本博*5
(内容紹介)
 前衛記事紹介の代替として
まともに見ようよ〜川と地域と私たちの生活(宮本氏の過去の講演)
(インタビュー)変わらぬダムに物申す ダム懐疑派になった元長良川河口堰建設所長・宮本博司さん | 水源連
を紹介しておきます。


特集「地方壊しにたちむかう」
■神戸の街が安倍政権の〝地方壊し〟の「実験場」に(味口としゆき*6
■奈良壊し、暮らし破壊の奈良県政を転換させる(山村さちほ*7
■「天神ビッグバン」とウォーターフロント開発で何が起きているか(神谷貴行*8
(内容紹介)
 各地の再開発事業について「税金の浪費」「環境破壊」「行政が主張するほどの収益が上がるか疑問」などの批判がされていますが詳細な紹介は小生が無能なため、省略します。


理研の非正規雇用問題を田村智子参議院議員と語り合う集い:食い止めた大量雇い止め 無期転換めざす(金井保之(理研労組執行委員長)/田村智子(日本共産党参院議員)日暮祥英(理研労組副執行委員長)) 
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
2018 職場のたたかい/理化学研究所 無期転換逃れ 雇い止め撤回させた
非常勤345人守った理研労のたたかい/雇い止めルール全廃へ決意新た


特集「保育・学童保育のいま」
■問われる保育への公的責任の後退と保育の「質」:世界の議論と日本の動向(山野良一*9/二宮千賀子)
■民間保育園の現場から(薄美穂子)
■保育士の処遇の現状をどう変えていくのか:愛知保育労働実態調査を手がかりに(蓑輪明子*10
学童保育の「従うべき基準」をめぐる国の動向(佐藤愛子*11
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
【保育】
足りない保育整備計画/安倍政権が利用を過少試算/女性就業率80%で申込率53%
“給食は対象外”に批判次々/子ども・子育て会議 政府の幼保無償化提案に
保育労働 過酷な現場/参院委で田村智子議員 配置基準見直せ
企業主導型保育所/安倍政権が推進も… 定員の約40%が空き/内閣府調査

学童保育
学童保育 基準廃止狙う/政府が方針 質低下の危険
学童保育 基準緩和やめよ/厚労省に野党が要望書共同提出
主張/学童保育の「基準」/放課後の安心へ責任を果たせ
学童職員1人も可能/閣議決定、保護者ら撤回迫る


■松山文雄『ハンセンエホン 誰のために』の現代的意味(上)(石子順*12
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。なお「絵本」といっても児童文学ではなく「大人向けの政治風刺漫画」のようです。

赤旗『まつやまふみお展、25日まで 党本部で始まる』
 戦前からプロレタリア美術運動家として知られ、戦後は「しんぶん赤旗」で政治漫画を描き続けた松山文雄(1902~82年)の「ハンセンエホン 誰のために」復刻版記念作品展が、14日から日本共産党本部1階サブエントランスで開かれています。25日まで、主催はまつやまふみお研究会。
 本展では、『ハンセンエホン』(1931年刊行、日本プロレタリア美術家同盟出版部編、松山文雄画)の復刻版を拡大した、パネル31点が展示されています。


■論点「カルロス・ゴーンはなにを壊したのか」(湯浅和己)
(内容紹介)
 ゴーンの不正を「事実ならば問題だ」とした上で
1)彼一人が悪いのか、彼の無法を止められなかった日産経営陣に問題はないのか
2)不正がなければゴーンに問題はないのか、下請けや労働者の切り捨てに問題はないのか
としています。
 題名「何を壊したのか」については「不正実行による企業倫理破壊」はもちろんですが、「無茶苦茶なリストラによる雇用破壊」の面にも注目すべきだとしています。

赤旗
日産ゴーン会長逮捕/巨額報酬 過少記載疑い/人員4万人削減の“張本人”/東京地検
ゴーン流で不正数々 日産/燃費・排ガス、性能データ改ざん/経費削減で安全軽視
日産ゴーン会長 巨額不正/犠牲にされた労働者/「50億円あれば派遣切り必要ないのでは」/関係者 怒りの声
ゴーン容疑者に力集中/日産社長 経営責任 言及無し
主張/日産会長の逮捕/労働者・国民を欺いた責任重大
ゴーン容疑者 巨額報酬/問われる責任 西川社長も協議に参加


■暮らしの焦点「大きな役割はたす無料低額診療」(山本淑子*13
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替(やや古い記事です)。

赤旗
無料低額診療事業/「届け出あれば受理」/小池議員に政府答弁書
お金の心配なく受診/増える無料低額診療/扉開いた小池質問主意書
列島だより/貧困や無保険で患者になれない病人の受診を保障する/無料・低額診療知ってますか
院外調剤も対象に/田村議員 無料低額診療で要求


メディア時評
■新聞:フェイクを乗り越える(安倍洋)
(内容紹介)
 琉球新報ファクトチェック取材班の連載「沖縄フェイクを追う」が紹介されている。なお、id:noharra連載「沖縄フェイクを追う」 ファクトチェック取材班座談会 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュースにツイートしていて苦笑。「沖縄フェイクの実行者・三浦小太郎」が幹部を務める「守る会」のメンバーがよくもそんなツイートが出来るもんです。

沖縄知事選への私的な反省 | 三浦小太郎BLOG Blue Moon
沖縄知事選、西村幸祐氏のアイデアで、八重山日報に意見広告を出させていただきました。

と三浦が言う八重山日報の広告が「デニー陣営から出てきた沖縄経済特区論」を「一国二制度は中国の危険な罠」呼ばわりする明らかな沖縄フェイク、デニー誹謗であることくらいはあなたにも理解できますよね?
 琉球新報に共感するつうならまずは「沖縄フェイクの実行者」三浦小太郎を批判し、奴が幹部を務める守る会を退会したら如何ですかね?。あなた

普通・無知であること - noharra’s diary
id:bogus-simotukareさんについては、書き込み禁止にしています。
彼との対話を継続する回路については、別途検討中。

とか抜かしてましたけど、結局こうした俺からの問いかけに対して「応答する気はない」わけですよね。全く対話する気がないなら最初からそう言って下さいね。「検討中」とか、虚言吐いてかっこつけないで(苦笑)。ぶっちゃけid:noharraさんの生き様自体が「フェイク(嘘だらけ)」ですよね。

参考

連載「沖縄フェイクを追う」 ファクトチェック取材班座談会 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
 琉球新報ファクトチェック取材班は今年1月1日から同21日まで、「沖縄フェイクを追う~ネットに潜む闇」を連載した。昨年11月に取材班を結成してからインターネット上でまん延している沖縄に関するフェイク(偽)情報やヘイト(憎悪)表現の発信者を追った。取材を通して感じたことを取材班が話し合った。
【記者座談会参加者】社会部・池田哲平、中部報道部・安富智希、東京報道部・滝本匠、デジタル編集担当・宮城久緒
■司会
 沖縄フェイクを追った感想は。
■滝本
 ファクトチェックは調査報道だとの認識を強くした。取材手法自体は新しいものではない。裏付けとなる事実を追求し言説を検証する。自分たちで事実を調べて自分たちの責任で事実を記事にしていく。まさに記者活動の醍醐味(だいごみ)と言える作業だった。 
■司会
 中傷や攻撃的な言説に触れどう感じたか。
■宮城
 沖縄県知事選挙期間中、知事選に関しツイッターで発信された投稿を分析した。悪口ばかりで気がめいったが、読み終えた時に傾向をつかむことができるのではないかと眠気を我慢して読み通した。ほぼ玉城デニー氏への中傷だったことにがくぜんとした。
■安富
 事件事故の被害者をあざ笑う醜悪な投稿を多く読んだ。心が汚れるのを感じた。

 ゲスウヨのゲスツイートを読むとか使命感がないと出来ませんよねえ。お疲れ様でしたと労をねぎらいたい。

■司会
 フェイクやヘイトの発信者を追った。
■池田
 ブログ「余命三年時事日記」を読み(ボーガス注:朝鮮学校無償化除外国賠訴訟に関わる)弁護士に懲戒請求*14を出した複数人を尋ね、東京近隣を歩いた。不在者には手紙をポストに投函(とうかん)したところ、メールが送られてきた。「非常に気分を害している」「お答えする義務はない」などとして取材には応じてもらえなかった。
 千葉県内の懲戒請求者の家を訪ねた時、部屋の中から人の声がした。呼び鈴を鳴らすと音が聞こえなくなり、応答もしてもらえなかった。他の請求者にも取材の趣旨などを書いた手紙を送ったが返信はなかった。取材を受けてくれた人は1人だけ。しかも玄関先で短時間だけだった。
■滝本
 フェイクをつくるサイトの制作者を追うために都内の登録住所をたどった。目的の集合住宅の入り口には居住者の名簿が張り出されていた。部屋は400近くあり、記載されていた名前とサイトに登録された名前を照合した。だが登録された名前はなかった。
■司会
 フェイクやヘイトの発信者はどう映ったか。
■池田
 攻撃的な表現を含んだ記事を発信したサイト「ネットギーク」の運営者の携帯電話に何度かかけたが応答はなかった。当初は呼び出し音が鳴ったが12月中旬以降、「お出になりません」とのメッセージが流れるだけになった。着信拒否などで意図的に避けたのかもしれない。
 運営者は表に出ることを徹底的に避けていた。
■安富
 ヘイトやフェイクを流す人は匿名が多い。匿名はネットの特徴なので一概に悪いと思わない*15が、言いっ放しで理解しようとしないことに問題点がある。そこにコミュニケーションは生まれず、被害者の傷がえぐられるだけだ。

 この座談会で名前が出てくる「余命三年(実は嘘で今もピンピンしている)」「ネットギーク」「保守速報」はネトウヨデマサイト(沖縄以外も誹謗)としては有名(?)なところですがこうして連中が社会の批判をあびるのはまさに自業自得ですね。しかし、まあ卑怯者の集まりですね。さんざん悪口雑言しながら、琉球新報取材班が来ると逃げるわけですから(ネトウヨがこの種の卑怯者の集まりだろうというのは予想の範囲内ですが)。
 なお、ネットギークについては小生の記事を多々紹介頂いているid:Bill_McCrearyさんが
netgeekへの鉄槌は振り下ろされるのか - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
というネットギーク批判記事を書いてるので紹介しておきます。
 最後に連載記事をいくつか紹介しておきます。

報道機関に「怪情報」 5日後にはブログ掲載 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈2〉~覆面の発信者㊦ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
 一通の転送メールが本紙記者の元に届いた。沖縄県知事選挙が告示される6日前の2018年9月7日だった。メールの内容は県知事選への立候補を予定していた玉城デニー氏(現沖縄県知事)が過去にある反社会的行動に関わったという内容のものだった。情報の出どころは一切書かれていない。だが、メールには何人もの固有名詞が書かれていた。詳細な記述もあり、事情をよく知っているかのような文面だった。
 ある反社会的行動とは「大麻吸引」だ。
 情報を基に琉球新報の知事選取材班は、玉城氏の行為を把握していたとされる「当時の親会社代表」や「当時の社長」として名前が挙げられた2人の人物に取材した。2人とも完全否定し「全部うそだ」「勝手に名前を使われた」と困惑気味に話した。
 玉城氏本人にも取材した。大麻吸引の有無とこの会社の勤務経験があるかを問うと「大麻を吸引したこともないし、この会社で勤務した事実もない」と明確に否定した。
 玉城氏側は9日、犯罪に関与したかのような書き込みについて被疑者不詳のまま、那覇署に名誉毀損(めいよきそん)の疑いで告訴状を提出した。
 告訴の後も「大麻吸引」に関する言説の流布は途絶えることはなかった。それどころか、多くのサイトやブログに疑惑として取り上げられ、さらにツイッター(短文投稿サイト)でも数多く発信され、大規模に拡散された。玉城氏は9月24日に、ツイッターで「大麻→事実無根」と発信した。選挙期間中だっただけに、たとえ、フェイク(偽)であったとしても影響を無視できなかったようだ。

記事拡散 膨らむ利益 報酬は能力で階級分け 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈4〉~収益目的で攻撃❷ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
 「SEALDs」の学生を「オウム真理教予備軍」とするのは明らかな虚偽だ。基地建設の抗議行動に対する偏見をあおり、個人情報をネットにさらしている。
 その一方で「編集ルール」の末尾には、執筆者に向けて「運営者にかかわる情報は一切漏らさないこと」と記している。収益のために他者を攻撃しつつ、自らの正体を必死で隠そうとするネットギークの実態が浮かび上がる。

姿現さぬサイト運営者 中傷記事、自ら多数執筆か 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈5〉~収益目的で攻撃❸ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
 ネットギーク沖縄県で新たな基地建設に反対する人々や抗議行動などを揶揄(やゆ)したり、中傷したりする記事の掲載を繰り返しているサイトだ。
 サイト上では運営者の情報について「netgeek編集部」とだけ記載し、所在地や運営責任者名などは明かしていない。
 サイト運営者が、関係者向けに出した資料「netgeek編集ルール」でも「運営者にかかわる情報は一切漏らさないこと」という約束事項が示されており、拠点の所在地を含め、運営者の情報は徹底的に隠している。
 琉球新報ファクトチェック取材班は複数の関係者からの情報を基に、運営者の氏名、携帯電話番号、メールアドレス、拠点の住所を把握した。運営者に直接会って発信の意図などを取材するためだ。
 拠点を訪ねたが、運営者は不在だったため、運営者のメールアドレスに氏名と連絡先を記し、メールを送信した。しかし、現時点で返信はない。
 運営者の携帯にも何度か電話を掛けた。しかし、一度も相手が電話に出ることはなかった。当初は呼び出し音が鳴っていたが、昨年の12月中旬以降は「お掛けになった番号をお呼びしましたが、お出になりません」というメッセージに変わっていた。
 関係者の話を総合すると運営者は30代男性とみられる。そして、本人も「腹BLACK」という署名で多くの記事を書いている。
沖縄県で新基地建設に反対する人々を中傷する記事などを拡散している「netgeek(ネットギーク)」は、運営者の情報について徹底した秘密主義を貫いている。
 ネットメディア「バズフィード・ジャパン」はネットギークの運営情報に迫る取材を重ね、いくつもの記事を掲載している。取材に対し、ネットギーク側は運営者情報を明かさない理由について「何かやましいことがあるからというわけではなく、スタッフの身の安全を守るため」と説明している。
 しかし「スタッフの身の安全を守る」としながら、ネットギークはこれまでSNS(会員制交流サイト)などで「標的」を見つけると、個人攻撃を続けてきた。その個人攻撃を含んだ記事を拡散させ、収益を増やすために利用してきた側面がある。
 さらに著作権も侵害している。ネットギークで記事にされ、ネット上で中傷を受けた被害者の一人は、取材に対して「突然、無断で自分がツイッター(短文投稿サイト)で発信した画像を使われた。何の連絡も受けていないし、抗議しようにも、どこに連絡していいのかも分からなかった」と語った。
 2018年11月以降、ネットギークに対して集団訴訟を提起する動きも起きている。
 自らの安全を守るために顔を隠しつつ、通告なしに個人の権利を侵害する。そして、権利侵害や個人攻撃を含んだ記事によって収益を得てきた。「メディア」という看板とは遠く離れた場所にネットギークは存在していた。

元執筆者、報復恐れ 「運営者情報ばらすな」 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈6〉~収益目的で攻撃❹ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
・男性は数年前、業務委託契約のライターとしてネットギークで記事を書いていた。
・男性は「時間をかけて記事を書いてもほとんど稼げなかった。別で働いた方がいいと思った」と振り返る。男性が短期間で退職を申し出ると、すぐに男性の元へ1通のメールが届いた。差出人はネットギークの運営会社だった。
 「契約上の職務を全うせず一方的に契約破棄した件について、損害賠償の支払いを請求します」
 メールは男性が「一方的に契約破棄した」として、5万円の損害賠償を求める内容だった。メールには支払期日と、口座番号などが記され、振り込みがない場合「訴訟を起こします」としている。
 男性は求めに応じず、金銭を支払っていない。その後、連絡はないという。男性は「ネットギークのやり方を見ていると、徹底的に仕返しをしようとしてくる。今でも危害を加えられるのではないかと怖い」と語った。

知らぬ人から「死ね」 記事にされ標的、提訴へ 「沖縄フェイクを追う ネットに潜む影」〈7〉~収益目的で攻撃❺ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
 ネットギークに対し、名誉毀損(きそん)で訴訟を提起する動きが出ている。原告らは2月にも記者会見を開いた上で、このサイトを訴える予定だ。
 訴訟の中心となっている男性は、取材に対して「ツイッターで『獲物』を見つけると、その人の過去の投稿やフェイスブックをあさる。そして、その中のいくつかをつないで、意図的に『非常識な人』『左翼活動家』という具合にでっち上げる。実際には活動家でもなんでもなく、(ネットギークの記事は)悪意に満ちたデマだ」と指摘する。
 姿を隠して攻撃的な記事を発信し、収益を得てきたサイト「ネットギーク」の運営者。その姿勢は法廷で問われることになる。

責任問われる差別記事 裁かれた「保守速報」 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈10〉~まとめサイト❸ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
 インターネット上の匿名掲示板に投稿される複数の短文を運営者が恣意(しい)的に集めて、記事をつくる「まとめサイト」と裁判で争ったのは、フリーライター在日朝鮮人女性の李信恵(りしね)さん(47)だ。李さんは差別や名誉を毀損(きそん)する記事で精神的苦痛を受けたとして、まとめサイト「保守速報」の運営者を大阪地裁に訴えた。
 保守速報は記事で李さんを「気違い女」「バカ左翼朝鮮人」「ゴキブリ朝鮮人」「日本から出て行け」など読むに堪えない言葉で攻撃していた。

転載でも法的責任 差別認定 賠償命じる 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈11〉~まとめサイト❹ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
在日朝鮮人女性でフリーライターの李信恵*16(りしね)さん(47)が、まとめサイト「保守速報」に中傷を繰り返され、精神的な苦痛を被ったとして訴えた裁判で、保守速報の運営者本人は法廷に一度も姿を見せることはなかった。保守速報側は代理人の弁護士が出廷した。
・大阪地裁、大阪高裁はまとめサイトの法的責任を認め、記事の内容も女性差別と人種差別の複合差別だったと認定した。そして保守速報側に損害賠償として200万円の支払いを命じた。最高裁も昨年12月11日付で高裁判決を支持し、李さんの勝訴が確定した。
 保守速報の運営者は敗訴確定後、サイト上で「保守速報は続けていきます」などと短い記事を掲載した。李さんは「勝てて良かった。判例がデマやヘイト(憎悪)の抑止力になってほしい」とさらなる法的整備などを求めた。
 今回の判決が沖縄へのヘイトの抑止力になるだろうか。ファクトチェック取材班に対し、李さんの代理人弁護士は「名誉毀損(きそん)は個人を守るためにあり、集団への名誉を守るためにはない」と否定的な見解を示した。
 ただ、今回の裁判の判決以降、保守速報などまとめサイトは大きく変化することになる。

差別サイト 広告消失 企業の取り下げ広がる 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈12〉~まとめサイト❺ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
 インターネット上の匿名掲示板などから投稿を集め、差別をあおる記事をネット上で拡散していたまとめサイト「保守速報」から企業のホームページなどに誘導する有料広告(バナー広告)が次々と消えた。2018年6月ごろからで、保守速報から攻撃を受けていた李信恵(りしね)さん(47)が訴えた裁判の大阪高裁判決を目前に控えていた。
 まとめサイトなどで収入を得ている運営者は、サイトの閲覧数などに応じて広告収入が入る仕組みを導入している。読者の関心が高い記事を投稿し、閲覧数が増加すれば収入も増える。
 昨年春までは多くの企業広告が掲載されていた保守速報には現在、有料広告がほとんど見当たらない。次々と広告企業が撤退したためだ。きっかけは一つのメール発信だった。保守速報の記事内容に疑問を感じた人が昨年6月、広告主の企業に「差別をあおるサイトに広告を載せていいのか」との趣旨のメールを送ったのだ。送り先は大企業だった。
ネット広告の掲載までには広告主と掲載サイトの間に複数の企業が関わり、広告主が広告の掲載先を把握できていないことがある。メールを受けた企業はすぐに広告を取り下げた。この件がネットで広まると、同様な通報を広告主の企業などに行う動きが広がった。
 差別をあおるサイトへの広告業界の対応も始まっている。取材班はネット広告に関わる企業271社が加盟する日本インタラクティブ広告協会(JIAA)に対し、差別をあおるサイトへの広告掲載への見解を尋ねた。JIAAは「個別の見解を申し上げることは難しい」とした上で、「ヘイトスピーチなどの差別や人権侵害をしているサイト等は広告掲載先として不適切」との見解を示した。JIAAは加盟社にこうしたサイトに広告を掲載しないよう努めるべきだとする声明を17年12月に出している。声明に準じた指針を今春までに策定・公表する考えだ。
 有料広告が消え収入源を失った保守速報は18年7月、サイトに「広告がない状態で運営しております。このままだと存続が危うい状態です」とした記事を掲載した。その後、保守速報を支援する動きを受け、同年9月からサイト上でしおりを販売し、その収益でサイトの運営を続けている。
 李さんが保守速報を訴えた裁判は最高裁まで争われた。裁判所はネット上の匿名掲示板から攻撃する短文を抜き出し記事をつくった保守速報の法的責任を認め、損害賠償200万円の支払いを命じた。李さんの勝訴が確定した。
 ジャーナリストの津田大介さん*17は判決を「大きな節目になる」と評価し、「この判例を利用して、悪質なサイトに対して被害を受けている側が訴訟を起こす。悪質なサイトに掲載された広告主に問い合わせる。この2点を地道にやることが重要だ」と指摘した。

「国策」が生む差別 問題とどう向き合うか 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈17〉~ヘイトの増幅❺ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
・「会員弁護士のバックグラウンドだけで懲戒を請求した。個人への攻撃だ。強く非難しなければならない」
 2018年7月25日、記者会見を開いた沖縄弁護士会の天方徹会長は、沖縄弁護士会に大量の懲戒請求書が送られてきたことを明らかにした。そして懲戒請求をした人々に対して「ヘイトスピーチと同種の行為だ」と強く非難した。
 17年11月と12月、沖縄弁護士会に送られた懲戒請求書は961件に上った。いずれもブログ「余命三年時事日記」を見た読者から送られたものだ。懲戒対象は当時の弁護士会会長と、同会に所属し、朝鮮にルーツがある在日コリアンの白充(ペクチュン)弁護士だった。
 (ボーガス注:朝鮮学校無償化除外国賠訴訟に関わる弁護士に対する右翼からの)大量の懲戒請求は全国各地の弁護士会にも送付されている。中でも、沖縄弁護士会在日コリアンの白氏らが対象になっている点などを挙げ、声明で「差別的言論」だとしている。全国の弁護士会が出した声明よりも踏み込み、請求者らに抗議した。大量の懲戒請求が沖縄弁護士会に届いて1年経た昨年12月初旬、天方氏が取材に応えた。
 「自己満足のおかげで傷ついた人がいるという結果は重大だ。懲戒請求制度を不当に利用することは弁護士自治すら危うくする」
 天方氏は懲戒請求制度を利用して、特定の弁護士を攻撃した請求者の行動は日本の弁護士自治への重大な挑戦だとの認識だ。
・この原稿を書いていた20日、新たな情報が飛び込んだ。ブログ「余命三年時事日記」がこの日の午前中から見ることができなくなっている。「表示できませんでした」というメッセージだけが画面に表示されている。12年ごろに開設されたとみられるこのブログは、公開停止もしくは閉鎖されたようだ。


■テレビ:ローカル放送は滅びない(沢木啓三)
(内容紹介)
 富山のローカル放送・チューリップテレビの「富山市議会政務活動費不正使用疑惑追及報道」を紹介。そうした調査報道こそが「ローカル放送」が生き残るためにもすべきことではないかとしている。なお、この不正問題、つい最近、「富山市議会議長が警察に詐欺で送検されており」未だに終わっていません。

参考

富山市議会政務活動費の「闇」 - 服部寿人 チューリップテレビ取締役報道制作局長 砂沢智史 チューリップテレビ報道制作局記者|WEBRONZA - 朝日新聞社の言論サイト
 私たちがその事件を最初に報道したのは、昨年*188月19日だった。
 富山市議会自民党の会長を務め、〝市議会のドン〟と呼ばれた中川勇市議(同年8月30日議員辞職)が、実際には開いていなかった市政報告会の経費を繰り返し請求し、不正に政務活動費(政活費)を受け取っていたというものだ。その後、政活費の水増し請求や印刷代などの架空請求が次々に明らかになり、富山市議14人の「辞職ドミノ」になる。同様の問題は全国の議会に波及した。有力な武器になったのは情報公開制度だ。大量の資料と格闘し、粘り強い取材で「闇」を暴いた記者たち。半年以上に及んだ、政活費報道を報告する。

政務活動費不正、元富山県議に有罪判決 「信頼損ねた」:朝日新聞デジタル
 2016~17年に富山県内で政務活動費の不正が相次いで発覚し、辞職した地方議員18人のうちの1人で、詐欺罪に問われた元県議の矢後肇被告(58)=同県高岡市=の判決が24日、富山地裁であった。大村泰平裁判官は「県政に対する信頼を大きく損ねたが、県議を辞職して社会的制裁も受けている」と述べ、懲役1年6カ月執行猶予4年(求刑懲役1年6カ月)を言い渡した。

「富山市議長 議員辞職を」 政活費不正 市民団体が抗議:富山:中日新聞(CHUNICHI Web)
 富山市議会の現職議長や元市議ら八人が政務活動費をだまし取ったとして詐欺などの疑いで書類送検されたことを受けて、告発した市民団体が四日、市役所前で全容解明を求める抗議活動をした。
 現職で書類送検され、容疑を否認している村上和久議長(57)に対しては「口では何とでも言える」と批判。潔白の根拠を示していないことに、「証拠を示すことができないなら、議員辞職にも値する」と語気を強めた。

政活費不正 富山市議長「返還せぬ」と方針転換、議員辞職も否定 - 毎日新聞
 富山市議会の政務活動費不正受給問題で、議長の辞表を提出している村上和久議員は、返還するとしていた政活費の一部について5日、「容疑を認めたと誤解されるため」と述べ、一転して返還しない意向を明らかにした。議員辞職しない考えも改めて示した。
 村上氏は詐欺容疑などで書類送検されたのを受け、該当する政活費の返還を示唆していた。しかし、同日、不正の疑いを認めて辞職した元議員らが返還したことを挙げて「返すことは(容疑を)認めたと受け取られるのでは、と支援者からの声があった」と説明した。


文化の話題
■美術「日本とアジアをつなぐ木版画運動」(武居利史)
(内容紹介)
 美術展『闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s-2010s』の紹介。

参考
闇に刻む光 アジアの木版画運動1930s-2010s
闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s-2010s|展覧会|アーツ前橋

 後で紹介する新聞記事ではもっぱら「日中戦争での抗日運動」「戦後日本でのサークル文化運動*19としての版画」「1980年代の韓国民主化運動」にスポットが当たっていますが、公式サイトによれば

闇に刻む光 アジアの木版画運動1930s-2010s
・1970s-80s フィリピン:独裁政権との闘い
 1970年代末から結成された〈カイサハン(連帯)〉などの美術家グループが、マルコス大統領の独裁政権に抵抗する労働者や農民の闘争を支援していく。
・2000s-インドネシアとマレーシア:自由を求めるDIY精神
 1998年のスハルト政権崩壊の前後、音楽家、美術家、学生、政治活動家らが結成した集団(コレクティヴ)が、政治の腐敗や環境破壊を告発、農村・漁村の民衆を支援する。

ということで他にも「フィリピンでのマルコス独裁批判」「インドネシアでのスハルト独裁批判」などもあるようです。
 なお、
闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s-2010s|展覧会|アーツ前橋によれば産経新聞前橋支局が後援つうのが興味深い。文化担当記者は政治部とはまた違うのでしょうがこの美術展は、かなり左派テイストのようですけどねえ。
 まあ、こういう美術展をマスコミが後援するのは一般的には珍しくありませんし主要マスコミ(朝日、毎日、共同通信時事通信NHKなど)の前橋支局が軒並み後援していますが「産経前橋支局の後援」は意外ではあります。

東京新聞:木版画で見るアジア民主化 来月24日までアーツ前橋で企画展:群馬(TOKYO Web)
 木版画は特殊な素材や道具を必要とせず、安価に複数の作品を印刷できることから、近現代のアジアでは美術の世界を超え、社会運動と結びつきアジアの近代化に重要な役割を果たした。一九三〇年代には中国の文学者魯迅(ろじん)(一八八一~一九三六年)が木版画を推進し、日本では戦後の民主化運動の中で木版画が盛んに制作されるようになった。
 栃木県出身の版画家小口一郎(一九一四~一九七九年)が足尾銅山鉱害事件を題材に制作した「野に叫ぶ人々」は、公害に苦しむ農民が政府に抗議しようと立ち上がる様子を力強く表現した。
 韓国の民主化運動に影響を与えたとされる版画家洪成潭(ホンソンダム)の作品も見どころだ。
 八〇年五月、韓国・光州市で軍の武力攻撃により多くの市民や学生が犠牲になった「光州事件」を題材にした「五月-25 大同世-1」は、武器を手に蜂起した市民を描く。同作品を含め、当時の軍事独裁政権下では報道されなかった事件の実像を伝える五十点を展示している。
 同館の住友文彦館長は「木版画は、誰もが情報を発信できる現代の会員制交流サイト(SNS)の先駆け的存在。作品を通して周辺諸国の文化や歴史の背景を知ってもらうきっかけになれば」と話している。

 「SNSの先駆け」「民主化運動」つうと木版画よりもむしろ「ガリ版謄写版)文化」を連想しますね。さすがに俺にはガリ版体験はなく、本での知識ですが。まあ、ガリ版も版画の一種ですけど。昔はガリ版に似たシステムの「プリントゴッコ(正月の年賀状で使う)」つうのがあったんですけど、カラープリンターが安くなったこと*20(これがもちろん一番大きい*21)、Eメール年賀状が普及したことで2008年に本体の販売が、2012年にインクの販売が中止されています。

謄写版について:参考】

謄写版ウィキペディア参照)
・謄写器は非常に簡易な印刷装置で、小型のものは手で持ち運ぶこともでき、プリンターと違い、原紙とインクさえあれば電気がなくても印刷可能なのが特徴である。このため、日本では小学校や中学校で副教材や問題用紙の印刷などに多く使われ、戦地でも活用された。また、労働運動や学生運動のビラなどを作成するためにも多く使われた。もちろん官公庁や企業などでも普通に使われていた。
 1960年代の高校の文化系クラブなどでも、備品として一台ぐらいあるのは珍しくはなかった。その手軽さから小部数の出版にも多く活用され、1950~1980年代には演劇や映画・テレビ番組の台本、楽譜、文芸同人誌など「ガリ版文化」と呼ぶべき一時代が築かれた。
 特に日本や中国で多く使われた理由は、これらの国では漢字の数が数千から数万種類あり、活版印刷が欧文より大掛かりな態勢と費用を必要としたからであろうと言われている。1985年ごろを境に、リソグラフ等の簡易印刷機の出現や電子複写機のコストの低下により、日本ではほとんど使われなくなった。現在では、電気などがない地域のアフリカやアジアの小学校などで多く使われている。

謄写版について:参考、終わり】

近現代アジア木版画400点 アーツ前橋で企画展 : 地域 : 読売新聞オンライン
・近現代アジアにおける木版画は文学者・魯迅(1881~1936年)が推進した。特殊な道具を必要とせず、安価で大量の複製を作れる特性から、反戦や反権力を訴える“メディア”として利用されてきた。企画展では、この木版画が果たしてきた役割に光を当てた。
・目玉作品は韓国人画家のホン・ソンダムの「五月―25 大同世―1」(1984年)。当時韓国では全斗煥大統領が軍事独裁政権を敷き、政権に対抗する民主化運動が起きていた。武器を手にとって蜂起する民衆を力強い彫りで描き、報道規制で伝えられなかった実情を木版画で表現した。
・また、足尾銅山鉱毒事件を題材にした栃木県出身の版画家・小口一郎の「野に叫ぶ人々」シリーズは、公害に苦しむ農民が警察官に抗議する姿を描き、民衆の怒りを独特のタッチで伝えている。

 小口については

寄贈:「直訴」佐野市に 小口一郎作、正造描いた木版画 /栃木 - 毎日新聞
 足尾鉱毒事件を題材にした作品で知られる小山市出身の版画家、小口一郎(1914~79年)による、田中正造明治天皇に事件解決を訴える直訴状を渡そうとした場面を描いた木版画「直訴」が、佐野市に寄贈された。

を紹介しておきます。

■読売【きよみのつぶやき】第8回 素朴にして鮮烈、木版画のエネルギー(「闇に刻む光 アジアの木版画運動1930s-2010s」展) – 美術展ナビ|アート・エキシビション・ジャパン読売新聞東京本社事業局専門委員 高野清見
木版画は、手ごろな大きさの板と彫刻刀さえあれば誰でも彫ることができる。インクと紙、バレンで手軽に刷れるし、ビラやポスターを大量生産しても費用は知れたもの。どこへ持ち運ぶにも手間がかからない。その特性から、木版画は近現代のアジア諸国において労働運動や民主化闘争と結びつき、民衆に政治的メッセージを伝える有力なツールになったという。
・展覧会場に入ると、中国近代版画の先導役として作家・魯迅(1881~1936年)がまず紹介されている。自分は版画家ではないが、美術愛好家だった魯迅は1931年8月、上海で美術学生などを集めて「木刻講習会」を開いた。
魯迅は若手版画家を支援し、出版や展覧会によって同時代のドイツ、ソ連などの版画を紹介することにも力を入れたという。
 魯迅の講習会で作られた素朴な作品は現在、神奈川県立近代美術館に収蔵されている。それらをはじめとする木版画と、中国で発行された新聞・雑誌などの展示によって、急速に木版画が広まり、抗日戦争や共産党プロパガンダに利用されていったことがうかがえる。当時、中国の民衆の多くは文字が読めず、絵だけでメッセージを届けられる木版画はうってつけの情宣(情報宣伝)ツールとなった。
・韓国の民主化運動で催涙弾の直撃に倒れた学生を悼む「ハニョルをよみがえらせろ!」(1987年)という版画は、美術家のチェ・ビョンスが新聞に載った写真を見てすぐさま木版に彫り、それが紙や布に大量に刷られて民主化運動のシンボルになったという。写真をコピーするのではなく、木版に怒りとともに刻んだイメージに置き換えることで、大きな共感を呼び起こしたのだろう。
■戦後日本の木版画ブーム
 中国で木版画が広まった1930年代、日本では浮世絵などの木版画製作で行われていた分業制に対し、明治時代後半から始まった作者が一貫して製作する「自画・自刻・自擦」の創作版画が一つのピークを迎えた。平塚運一*22恩地孝四郎*23谷中安規*24、藤牧義夫*25などが多くの名作を生み出したが、本展は労働・政治運動などと関係が深い作品に焦点を当てているため、昭和初期のモダン風景や幻想的な世界を描いたそれらの作品は登場しない。創作版画の主要作者で取り上げられているのは、「プロレタリア大美術展」に出品した小野忠重*26くらいだ。
 また、展示の中で特に手厚く紹介しているのが、敗戦後に各地の職場・地域単位で生まれたサークル活動を主体とする木版画運動。日本では 1947年、上海で魯迅が開いた講習会で作られた作品を核とする木版画展が神戸、東京の百貨店で開かれたのをきっかけに中国版画ブームが起きたという。刺激を受けた一部の芸術家たちが北関東で「木刻運動」を始め、翌48年には「日本版画運動協会」の結成に発展。版画サークルが各地に生まれ、学校でも版画教室が開かれた。私たちが小学校で受けた版画*27教育も、遡ればこのあたりに(ボーガス注:一つの)起源*28があるのだろう。当時の版画ブームは、戦後民主主義の高まりとともに「誰もが芸術家になれる」という希望が背景にあった。会場内のモニターでは1947年に茨城県大子町で開かれた「木刻まつり」を取材したニュース映画が流されているが、参加した主婦や子供の作品を紹介し、「民衆芸術運動を起こす」という主催者の意気込みを伝えている。
■今日も続く木版画運動
 映像メディアがあふれ、インターネットが発達した今日から見れば、木版画はいかにも古く、スローな伝達手段のように映る。
しかし実際には、立場の弱い民衆が権力や抑圧に対抗する有力なツールであり続けてきた。展覧会場では1960~70年代のベトナム戦争中、中国版画の影響を受けた木版画が作られていたことや、韓国で1980年に起きた光州事件をきっかけとする「民衆芸術運動」など、アジアの国々で起きた動きを取り上げている。
 最近でも2014年春、台湾の学生たちが対中政策に反対して立法院を占拠した事件(ひまわり運動)で、ひまわりに「非暴力」の文字を添えるなどした木版画が路上で掲げられた。2016~17年に韓国の朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾を求めて起きたデモでも、版画を配って連帯を呼びかける行動が見られたという。

 「脚注に書いた」藤巻義夫の謎の失踪については

「君は隅田川に消えたのか~藤牧義夫と版画の虚実」駒村吉重著を読む - 東京 DOWNTOWN STREET 1980's2012-03-10
(前略)
 彼が何故姿を消して、どうなったのか、その答はここには出てこない。確かに、昭和10年の行方不明事件の真相が今日に解き明かされることなど、有り得ないに近い。読み終えて、受け止めた側が心の中に思う事はある。だが、それを推理ゲームにしてみたところで今更虚しいことだろう。
 それよりは、鎌倉へ行って、「生誕百年 藤牧義夫展」を見てくる方が遥かに素晴らしいことのように思える。(ボーガス注:2012年)3月25日までやっているので、私は近日中に行ってこようと思っている。今回の回顧展は、(ボーガス注:贋作が多いとされる)藤牧作品の中でも真作と認められるものだけで構成されているという。

を紹介しておきます。彼が「自殺したのか」「何者かに殺害されたのか」「単に失踪し、版画界から足を洗っただけで第二の人生を歩んだのか」は今となっては分からないでしょう。残念ながら「理由が分からない謎の失踪」なんて世の中に山ほどある。「話が脱線しますが」そうした謎の失踪*29を「特定失踪者」と名付けて「北朝鮮拉致だ」とデマ飛ばす救う会一味には改めて怒りを覚えます。


■写真「古屋行男のこだわりの写真集「雲南」」(関次男)
(内容紹介)

古屋行男写真展 「中国雲南」 | 写真展・ フジフイルム スクエア(FUJIFILM SQUARE)
 中華人民共和国、南西部に位置する雲南省へ行くきっかけは、稲作文化の発祥地であることに興味を持ったからでした。訪れた各行政市の大通りには、経済発展により近代的な高層ビルが建てられていますが、一歩内側に入ると昔ながらのたたずまいを感じさせる生活が残っています。一方、市外の村ではどことなく日本人に似た顔立ちの人々が暮らしていて、懐かしい日本の古里にもどったような日常があり、出会いに感動しながら、撮らせていただきました。

古屋行男写真集 雲南 | 現代写真研究所 写真集一覧
 ここ雲南で、長い戦乱の歴史のなかで多くの民族がともに暮らすには、それぞれの独特の意識や暮らし方、原初的なものを認めあうということが、深く、かつ当たり前の風土として作られてきたのではないか。道で猫とネズミと遊ぶ子供、鳥を眺めて過ごす人、自分の髪を売る人、路上で豚の解体ショー、お茶を道において話し込む人。なんでもある。それは「乱れ」や「遅れ」ではなくて、いまここを大切にする生活の美学、共存の教えがあるのだろう。歴史書はいつも勝者の書だが、書かれない歴史としてこの写真のなかに美しい風土と暮らしは厳存する。古屋さんは歴史書ではなく写真でそれを現したのだ。

だそうです。


■映画「「この道」:北原白秋山田耕筰の友情と葛藤」(伴毅)
(内容紹介)
 童話・童謡雑誌『赤い鳥』創刊から2019年で100年となることを記念して作成された映画『この道』の紹介(北原白秋は童謡「この道」の作詞者、山田耕作は作曲者)。
参考:映画『この道』公式サイト 2019年1月11日(金)新春全国公開


■スポーツ最前線「プロボクサーの再起」(小林秀一)
(内容紹介)
 近年はプロボクサーの寿命が延び、いったん引退表明などしても復帰する人間が少なくない。でそう言う人間に頑張ってほしいという話です。

参考

村田諒太、ボクシング人生の新章へ「プロとしてもっと稼ぎたい」 : スポーツ : 読売新聞オンライン

 世界ボクシング協会WBA)ミドル級前チャンピオンで、2012年ロンドンオリンピック金メダリストの村田諒太(33、帝拳ジム)が、読売新聞社のインタビューに応じた。世界王座を失ってから約3か月、現役続行と引退のはざまに揺れた末の再起表明から約1か月半。「ボクシング人生の新章は、まだ始まってさえいない。長く現役を続けて、夢に描いてきた稼げる王者になりたい」。ボクサーとしてのさらなる高みを目指し、意欲をみなぎらせている。

*1:著書『イラク戦争の出撃拠点:在日米軍と「思いやり予算」の検証』(共著、2003年、新日本出版社

*2:東京慈恵会医科大学教授(憲法学者)。著書『予算議決権の研究:フランス第三共和制における議会と財政』(1995年、弘文堂)、『ほんとうに憲法「改正」していいのか?』(2002年、学習の友社)、『憲法を学び、活かし、守る』(2013年、学習の友社)など

*3:横浜国立大学名誉教授(経済学)。著書『アメリカ経済政策史:戦後「ケインズ連合」の興亡』(1996年、有斐閣)、『世界経済と企業行動:現代アメリカ経済分析序説』(2005年、大月書店)、『米国はいかにして世界経済を支配したか』(2008年、青灯社)、『オバマの経済政策とアベノミクス』(2015年、学習の友社)、『新自由主義と金融覇権:現代アメリカ経済政策史』(2016年、大月書店)、『トランプ政権とアメリカ経済:危機に瀕する「中間層重視の経済政策」』(2017年、学習の友社)、『世界経済危機と「資本論」』(2018年、新日本出版社)など

*4:著書『「日本の四季」がなくなる日』(2015年、小学館新書)

*5:国交省近畿地方整備局淀川河川事務所長、国交省近畿地方整備局河川部長、国交省河川局防災課長など歴任。

*6:神戸市議(日本共産党

*7:奈良県議(日本共産党

*8:日本共産党福岡市議団事務局長。2018年福岡市長選候補。個人ブログ(https://kamiyakenkyujo.hatenablog.com)。紙屋高雪ペンネームで、著書『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(2007年、築地書館)、『“町内会”は義務ですか?:コミュニティーと自由の実践』(2014年、小学館新書)、『どこまでやるか、町内会』(2017年、ポプラ新書)、『マンガの「超」リアリズム』(2018年、花伝社)

*9:沖縄大学教授。著書『子どもの最貧国・日本』(2008年、光文社新書)、『子どもに貧困を押しつける国・日本』(2014年、光文社新書

*10:名城大学准教授

*11:国学童保育連絡協議会事務局次長

*12:映画評論家、マンガ評論家。著書『カリカチュアの近代:7人のヨーロッパ風刺画家』(1993年、柏書房)、『ドーミエの風刺世界:現代漫画の源流』(1994年、新日本出版社)、『日本の侵略 中国の抵抗:漫画に見る日中戦争時代』(1995年、大月書店)、『中国映画の明星:朱旭姜文・張藝謀・張國榮』、『中国映画の明星 女優篇:于藍、劉暁慶、鞏俐、張曼玉』(以上、2003年、平凡社)、『平和の探求・手塚治虫の原点』(2007年、新日本出版社)、『漫画は戦争を忘れない』(2016年、新日本出版社)など

*13:全日本民主医療機関連合会事務局次長

*14:「余命三年」のような無法行為に「私は朝鮮学校無償化除外には賛成だがこんな無法は許されない」といわないこと自体がid:noharraや三浦小太郎のデマカセぶりを証明していると言っていいかと思います。まあ「自分の敵(無償化除外国賠訴訟に携わる弁護士)はどんな酷い目に遭ってもかまわない」つうゲスなんでしょうね、彼ら。そんな連中が人権とか騙るな、騙り屋、言論詐欺師は黙ってろて話です。

*15:まあ、それはご指摘の通りですね。これについてはこのようなことをプロのジャーナリストが発言するのはさすがに驚かされる - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)を紹介しておきます。問題は「匿名であること」ではなく「ネットギークの様に匿名でデマ中傷などの問題行為をすること」です。

*16:著書『#鶴橋安寧:アンチ・ヘイト・クロニクル』(2015年、影書房)、『#黙らない女たち』(共著、2018年、かもがわ出版

*17:著書『仕事が速くなるフリーソフト活用術』、『仕事で差がつくすごいグーグル術』(以上、2006年、青春新書インテリジェンス)、『Twitter社会論』(2009年、洋泉社新書y)、『30分で達人になるツイッター』(2010年、青春文庫)、『ウェブで政治を動かす!』(2012年、朝日新書)、『動員の革命:ソーシャルメディアは何を変えたのか』(2012年、中公新書ラクレ) 、『ゴミ情報の海から宝石を見つけ出す これからのソーシャルメディア航海術』(2014年、PHPビジネス新書) など

*18:2016年のこと

*19:うたごえ運動(うたごえ喫茶)、石母田正らが関わった国民的歴史学運動などもそうしたサークル文化運動の一種です。

*20:昔はプリントゴッコに比べてかなり高かったんですね。

*21:ガリ版が廃れたのももちろんプリンターが安くなったからです。まあ、自分で文字を刻むガリ版だと「悪筆の人間だと問題がある」「人力なので印刷原紙を早く大量に作成することにどうしても限界がある」つう問題もありますが。

*22:1895~1997年。島根県八束郡津田村(現松江市)生まれ。1977年(昭和52年)には勲三等瑞宝章を受け、1989年(平成元年)には松江市名誉市民に推挙された。長野県内の版画普及に携わった功績を称えられ、1991年には須坂市に須坂版画美術館・平塚運一版画美術館が開館した。

*23:1891~1955年。抽象絵画創始者であるワシリー・カンディンスキーらの影響を受け、日本における最初期の抽象版画作品を制作している。また収入を得る手段として装幀家としても活動。竹久夢二北原白秋に評価されて、大正末期から昭和初期にかけて地位を確立した。

*24:1897~1946年。昭和前期の日本の版画家、挿絵画家

*25:1911年生まれ。24歳のときに東京で謎の失踪をし、没年は不明。墓は群馬県館林市法輪寺にある。

*26:1909~1990年。古地図、浮世絵の研究者としても知られる。

*27:正確には「木版画」ですが。小生(1970年代後半生まれ)も小学生の頃に木版画を確かやった記憶があります。

*28:もちろんあくまでも「一つの起源」ですね。学校での木版画教育は直接の根拠は多分「学習指導要領」でしょう(もちろん政権与党・自民党や文部省(現・文部科学省)が左派的な文化運動に好意的なわけがありません)。また、木版画は何もそうした「左派的な運動」に限定されるもんでもありません(例:一時期ある種のブームとなった棟方志功)。しかし最近の子どもってのは学校で木版画をやるんでしょうか?

*29:一部の特定失踪者については「生存者が国内で発見」され「自発的失踪」であったことがわかっていますが。