新刊紹介:「経済」4月号

「経済」4月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。「興味のある内容」のうち「俺なりになんとか紹介できそうな内容」だけ簡単に触れます。「赤旗記事の紹介」でお茶を濁してる部分が多いです。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
■随想「国際女性デーに思う」(伊藤セツ)
 『クラーラ・ツェトキーン*1』(2014年、御茶の水書房)、『山川菊栄*2研究』(2018年、ドメス出版)、『増補版・ 国際女性デーは大河のように』(2019年、御茶の水書房)の著書がある伊藤氏が国際女性デーについて述べている。
 なお、国際女性デーについては今日の中国ニュース(2019年3月1日分) - bogus-simotukareのブログを参照下さい。


世界と日本
■米国ミサイル防衛見直し(藤岡惇*3
(内容紹介)
 米国トランプ政権が核軍拡の方向に動いていることを批判しています。特にこの核軍拡が公然と中露を敵視していることから、「少なくとも形式的には中露との核戦争も起こりかねないこと」に危惧を表明しています。
 「冷戦終了後、トランプ政権以前」は「一応、核軍縮がされ」、かつ少なくとも建前上は、「米国が保有する核兵器」の主要ターゲットは「北朝鮮、イラン、イラク」といった「核保有を計画するならず者国家」であり中露ではありませんでした。

米、核戦力強化へ大転換/新型巡航ミサイルを開発/核兵器廃絶の流れに逆行
主張/米ミサイル防衛/不毛な宇宙軍拡に加担するな


■国際石油市場の構造変化:米国が最大の産油国、中国が最大の輸入国(萩村武)
(内容紹介)
 萩村氏が危惧してること、それは「ただでさえイスラエルびいきの傾向が強いトランプ」が「米国が最大の産油国*4(いわゆるシェールオイル開発による)」となり「中東のアラブ産油国に配慮する必要なんかねえ」とばかりに更にイスラエル傾斜を深めていくことです。
 この点は確かに警戒が必要でしょう。
 アンチロシア*5の常岡は「ロシアの石油輸出が減りそうで良かった」だの「ガソリンが安くなるからいい」だのツイッターで抜かしてましたが話はそんなにバラ色じゃないわけです。


ルノー・日産の経営統合問題(久山昇)
(内容紹介)
 ゴーン逮捕劇は単なる不正追及ではなく、明らかに
1)「日産の経営が改善する一方、ルノーの経営は悪化」「ルノーによる日産支援から日産によるルノー支援」という日産とルノーの力関係の変化
2)にもかかわらず、「日産を完全子会社化しようとするルノーとフランス政府」の意向を受け、2019年以降そうした方向に公然と動いてきたゴーン
に対し、反発した日産側が「経産省自民党の支援」を受けて実行した社内クーデターという面がありました。これはいかに日産側が「単なる不正追及」と強弁しても明白でしょう(もちろんこれはゴーンが無実だという意味ではありません)。
 当然ながら日産側から「経営関係の見直し」が打ち出され、それに対してフランス側との攻防が今始まってるわけです。


特集『大学の危機打開めざして』
■高等教育、科学研究の発展のために(梶田隆章*6
(内容紹介)
 日本の科学予算が少ないことが批判されます。「まず全体の予算を増やすことが大事だ」というわけです。


■「大学改革」をめぐる攻防:中教審答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」の批判的検討(光本滋*7
(内容紹介)
 中教審答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(2018年11月)」について
1)「大学の自治」に対する配慮がなく
2)その結果として、文部科学省による統制が強くなっている
という点で批判している(詳細の説明は無能のため省略します)


■学校教育法改正の「施行通知」と一部私立大学における自治破壊(山賀徹)
 2014年の学校教育法改正およびそれについての文科省通知が「教授会権限の縮小」と「学長、理事長権限の増大」をもたらし、学長、理事長独裁と言うべき事態を助長していることを批判している。その上で
1)学校教育法の再改正
2)施行通知の撤回(施行通知の内容は改正学校教育法から当然に出てくるものではないと主張)
3)学校教育法や施行通知を前提にした上でも、各大学が可能な限りの学内民主化に取り組むことを主張している(詳細の説明は無能のため省略します)

参考
主張/学校教育法改悪/大学の自治守る共同をさらに

大学自治侵害許さぬ/改定法案 私大教連と共産党懇談
日本共産党の畑野君枝衆院議員と吉良よし子参院議員は29日、日本私立大学教職員組合連合(丹羽徹委員長)と東京地区私立大学教職員組合連合(野中郁江*8委員長)の役員らと国会内で懇談しました。
・私大教連はまた、2014年に学校教育法が教授会の権限を縮小するなどの改定が行われた際に文科省が出した「施行通知」が、同法の内容を超えて学長選挙の廃止などを求めていることを批判。「施行通知」の撤回を政府に求めてほしいと要請しました。


岐阜大学における学部廃止問題(岐阜大学地域科学部の未来を考える会)
(内容紹介)
 岐阜大において地域科学部の廃止が執行部によるトップダウン的に実行されようとしている点が批判されている。

参考

岐阜大、地域科学部廃止案が浮上 職員組合は反発 - 毎日新聞
 岐阜大(岐阜市柳戸、森脇久隆学長)で、地域科学部を廃止して経営学部を新設する案が浮上している。職員組合地域科学部支部は「国立大で組織改編が進められつつあるが、既存の学部を丸ごと潰して新学部を作るというのは前代未聞の暴挙だ」と反発し、存続を求め署名活動を始めた。

岐阜大地域科学部、再編白紙 名大との統合専念 | 岐阜新聞Web
 岐阜大(岐阜市柳戸)の地域科学部を2021年4月までに経営学部(仮称)に改組する学部再編を巡り、大学側が計画を白紙に戻したことが8日、分かった。名古屋大との運営法人の統合協議*9に専念する必要が出てきたほか、文部科学省が計画に難色を示していることから、方針を転換した。
学部再編案は、地域科学部の学生募集を21年3月に停止し、同4月の入学者から経営学部が受け入れていく計画。地元経済界からの要請などを受け、17年から検討してきた。
 一方、文科省は、経営学部のカリキュラムの構想が地域科学部と重複していることなどを懸念。さらに、地域科学部の教授会や学生有志の団体などが反発し、学部の存続を求める署名活動などを展開するなど、計画は停滞していた。
 岐阜大は、18年4月から名古屋大と運営法人を統合する協議を進め、同12月に基本合意書を締結。「細目の協議に膨大な労力が必要」(執行部)で、反対を押し切って学部再編を進められる状況にないと判断した。
 今後、文科省と協議しながら、経営学位を取得できる新たな学位プログラムの創設などを検討する。地域科学部の教授会は、経営学系の教員の補充や、既存の履修コースに経営学の要素を盛り込むなどの対案を示している。
 森脇久隆学長は取材に「文系の受験生の県外流出を防ぎ、経営感覚のある人材を地域に輩出するためにも、(学部再編は白紙に戻すが)制度の再調整を進めていく」と話した。

岐阜大の学部再編、「白紙説」も飛び交う迷走 | 学校・受験 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
名古屋大学との経営統合を進める岐阜大学が、「地域科学部」の廃止を見据えた学部再編の構想をめぐって迷走している。
 いったんは再編を公言したものの、学内外からの反発を押し切るよりも、昨年末に基本合意までこぎ着けた名大との統合協議に専念すべきだとの判断に傾いたようだ。
 地元紙の岐阜新聞は9日、「再編白紙」と報じたが、大学広報は「『白紙』にはなっていない。当面は名大との法人統合協議に専念するという方針を学長が示したが、再編自体は今後も検討を続ける」とコメントした。
 地域科学部の富樫幸一*10学部長も「学内での会議を経た正式な決定ではない。学長や理事が場当たり的な発言をしているため、情報が混乱している」としたうえで、「学部としても先を考え、教員人事や講座体制などの見直しを始めようとしている。今回の署名運動を通して地域科学部のこれまでの取り組みを評価する声も寄せられ、励みになっている」などと話した。
 法人統合については、昨年12月25日に基本合意書を締結。新たな国立大学法人「東海国立大学機構」の下で2つの大学が運営され、早ければ2020年度から新入生を迎え入れる方針を確認した。
 基本合意書では、新法人として事務管理や企画部門を集約して効率化、経営協議会も一本化する一方で教育研究評議会は大学ごとに置き、「教育研究活動の独自性を維持する」と強調している。また、教職員の雇用については、法人設立時に両大学の教職員であれば原則、「新法人の教職員となるものとする」と明記された。
 記者会見で、地域科学部の問題と法人統合との関係を問われた森脇久隆学長は「直接の関係はない。これは岐阜大内部の教育的取り組みの問題だ」と主張。名大の松尾清一総長も「基本的に岐阜大学の中で合意形成をしながら進めてもらいたい」と突き放した。
 「東海国立大学機構」には現時点で他に参加大学はないという。名大の松尾総長は「まず両大学で成功例を示し、他に加わりたいという大学があれば、まったく拒まない」と強調した。
 ただし、「これが失敗すれば、後に続くところはないだろう」とも。こうした危機感とスピード感を意識するあまり、トップダウンでものごとが進みすぎているきらいもある。「無関係」とは言えない学部再編などの議論に、もっと学生や地域を呼び込んでいいのではないだろうか。


特集『大規模化する自然災害:防災の国づくり』
■対談「日本の防災体制、復興庁廃止後の課題」(津久井*11、鈴木浩)
(内容紹介)

東日本大震災福島原発事故 きょう7年/復興期間延長 求める声/福島13自治体 本紙調査
政府は復興期間を発災から10年として「復興・創生期間」を2020年末で終了し、復興庁も廃止する方針です。

という状況下において「復興庁の存続」を主張する一方で「復興庁廃止が現実化した場合」の対応策も考えていく必要があるだろうとしています(詳細の説明は無能のため省略します)。

参考

社説|復興庁廃止まで2年/後継組織の多様な検討必要 | 河北新報オンラインニュース
 東日本大震災からの復興政策を統括する復興庁の廃止が約2年後に迫った。
 設置期間は震災発生から10年の節目となる2021年3月まで。同じ時期に国の復興・創生期間も終了する。
 渡辺博道復興相は復興庁の後継組織について、東京電力福島第1原発事故の影響が大きい福島県を挙げ「中長期的な課題があり、当然何らかの組織は必要と考える」との認識を示している。本年度内にも創生期間後の復興政策の在り方とともに「ポスト復興庁」の輪郭を示す方針だ。
 同庁は復興政策の司令塔であることはもちろん、震災の教訓を受け継ぐ役割も担う。組織の存続が不可欠であることは論をまたない。今年、政府に問われ始めるのは22年度以降の復興ビジョンだ。
(中略)
 国の災害対応を巡っては、防災・減災社会づくりから復興までを一貫して担う組織の必要性が指摘されている。全国知事会が昨年7月、創設を求めた「防災省」構想だ。背景には、西日本豪雨など大規模災害の頻発や予想される巨大地震などを見据えた防災体制への危機感がある。
 昨年の自民党総裁選で石破茂*12元幹事長が「災害が起きてどうするかでなく、起きたらどうするかを考える専任の大臣や職員が必要」と提唱。安倍晋三*13首相は「防災省を置いても自衛隊を動かすのは首相。要は中身の問題だ」と消極姿勢を崩さなかった。
 代わりに「強靱(きょうじん)なふるさとづくり」を打ち出し、19年度政府予算案では交通基盤の強化や河川改修といったインフラ整備に手厚く配分した。防災省を巡る議論は進んでおらず、国民的な関心は高まっていないのが実情だ。
 ポスト復興庁の検討に当たっては、政府の危機管理の在り方を含めた議論が欠かせない。その過程で改めて「防災省」構想を検討の対象とする選択肢はあるのではないか。
 後継組織のトップについて内堀雅雄*14福島県知事は、引き続き閣僚が就くのが望ましいとの認識を示す。復興を深化させる重大性に鑑みれば、閣僚が束ねるのは当然だ。
 省庁体制の変容によって、被災者の復興が滞ることがあってはならない。後継組織への円滑な移行を見据えながら、被災地のニーズを的確に捉える政策立案を求めたい。


■深刻化する土砂災害の対策をどうするか:「土砂災害防止法」の問題点(中村八郎*15
(内容紹介)
 土砂災害防止法の問題点について指摘がされています(詳細の説明は無能のため省略します)。

参考

新潟・加茂市長「納得できぬ」土砂災害警戒区域指定で県に対し徹底抗戦 - 毎日新聞
 新潟県による土砂災害警戒区域の指定に反発している加茂市小池清*16市長は26日、市役所で記者会見し、来月上旬までに反対意見の提出を求める県に対し「(市内の指定候補区域のうち)納得しがたい141カ所についてはこれから1カ所ずつ意見をまとめるため、出水期の6、7月までには提出する」とする返答を25日付で県に提出したと発表した。「市民の利益と幸福のためには他に取るべき方法はない」とも述べ、県に対し徹底抗戦する構えを見せた。
 土砂災害警戒区域は、土砂災害防止法に基づき都道府県知事が崖崩れや土石流などの恐れがある地域を指定するもの。指定区域では建て替えなどの際に通常より厳しい建築基準が課せられる。県は加茂市と、該当箇所のない聖籠町を除く県内28市町村で地元市町村の同意を取り付け、1万3804カ所を指定済み。残るは加茂市内の306カ所のみとなっている。
 小池市長は警戒区域に指定されると地価が下がり、歴史的な街並みを保護していくのも難しくなると懸念しており、寺や料亭のある区域や、市が土石流や地滑りが起こりづらいと考えている場所については指定しないよう求めている。
 小池市長はこの日の会見でも「市民が『本当に土砂がこんなところまで流れてくるのか』と疑問を持ちながら生活するのは奇妙な話だ」と話した。
 県砂防課の担当者は「指定すべきでない科学的な根拠が示されない限り一括で指定する方針は変わらない」としながらも「指定後は市にハザードマップを作ってもらう必要がある。市が同意してくれるという担保がないと指定しづらい」と苦悩の表情を見せた。

県:土砂災害警戒「全区域を指定」 6月までに 加茂市反対でも /新潟 - 毎日新聞
 加茂市が県による土砂災害警戒区域の指定に反発し、同市内での指定作業が滞っている問題で、県砂防課は1日、市の賛同を得られなくても6月までに指定を終える方針を表明した。
 三木公一課長が同日記者会見し、「いつどこで激甚災害が起こるか分からない。避難体制整備は何をおいても早くしなければいけない」と主張。

 中村論文における問題点の指摘は「土砂災害をいかに防止するか」という点の指摘であり、加茂市長のような問題意識はない*17のですが、確かに「警戒区域指定で開発に制限がかかる→地価が下がる→土地所有者の不利益」「警戒区域指定で開発に制限がかかる→自治体(今回の場合、加茂市)の都市再開発に支障がでる」という問題も一つの問題ではあるでしょう。
 もちろんその場合「警戒区域指定が適切か」つう話であって「開発最優先」つう話ではあり得ませんが。「本音はともかく」さすがに加茂市長も建前においては「警戒区域指定が適切か」とは言っていても「開発最優先」とはいわないわけです。


東日本大震災被災自治体の復興財政(井上博
(内容紹介)
 被災自治体の復興予算の多くが「建物再建」と除染であることを指摘。すでに被災から8年が経過している現在、「生活再建」などソフト面への財政支出の重要性を訴えている。


■広島・府中町から豪雨災害・防災リポート(二見伸吾*18
(内容紹介)
 府中町での豪雨災害後の防災、復旧についての報告(詳細の説明は無能のため省略します)。


■イギリス「資本論」紀行:チェタム図書館の「マルクスの机」(友寄英隆*19
(内容紹介)
 マルクスがいわゆる「マンチェスター・ノート」作成において利用したとされるマンチェスターのチェタム図書館訪問記。

参考

マンチェスターに行ってきた:シェフィールド便り:So-netブログ
・忘れてはならないのが、マンチェスターがイギリス産業革命発祥の地であるということだ。
産業革命の先駆であるのと同時に、マンチェスターは社会問題の先駆でもあった。労働者たちは劣悪な環境の下、なんら社会的権利を主張する力も与えられずただただ働かされていた。例えば、4歳にも満たない子供が炭鉱の狭い坑道に押し込まれ労働していたという。カール・マルクスの盟友であるエンゲルスがここマンチェスターにおいて、世界最高水準の国の労働者達がいかに厳しい経済状況、そして政治的に無力であったかを目の当たりにしたことで、(ボーガス注:著書「イギリスにおける労働者階級の状態」を執筆し)自身の社会主義者としての自己を確立していったことは有名である。実際、マルクスエンゲルスマンチェスターの事例を彼らの理論を構築する上でのたたき台にしている。
・しきりにマルクスエンゲルスマンチェスターの関係について聞く私に、ガイドのおばさんはそんなに興味があるのならここへ行きなさいと地図を渡して、指差してくれた。そこはChetham's School of Music。何でも学校の敷地内にある図書館がマルクスエンゲルスと関係があるそうだ。
・図書館の館長さんらしき人にマルクスエンゲルスとこの図書館の関連性についてたずねてみた。すると、マルクスエンゲルス資本論に取り掛かっている間にこの図書館の一角を利用していたのだという。
・帰りのバスの中で図書館でもらったパンフレットを読んでいてわかったのだが、私の今日訪れた図書館は1653年に設立されたイギリスで現存する最も古い図書館なのだそうだ。

https://www.expedia.co.jp/Chethams-Library-Manchester-City-Centre.d6079145.Place-To-Visit
■チェサムズ*20図書館
 カール・マルクスとフリードリッヒ・エンゲルスが『共産党宣言』の構想を練り、執筆した小部屋で席に座ることができます。

ボビーズ サマーキャンプだより: マンチェスター名所案内(2) チェサムズ図書館 〜 英国最古の公共図書館
・イギリス最古の公共図書館です。
・本題に入る前に表記について。人名 Chethamにつく所有格の ’s の訳し方によって「チェサム “の" 図書館」あるいは「チェサムズ・ライブラリー」と表記するところもありますが、ここでは多数派の「チェサムズ図書館」表記に従います。
・この図書館の設立は1653年。日本の江戸時代初期にあたります。
・しかし「図書館としては」という但し書きがつきます。というのは建物自体はもっと古く1421年に建てられたものだからです。修道士の養成所として使われていたそうです。
 ちょうどその時代は、英仏間の百年戦争まっ只中。日本で言うと室町時代、大人になった一休さんとほぼ同時代です。
 ここを図書館としたのは、当時の豪商・地主である、ハンフリー・チェサム(Humphrey Chetham / 1580-1653)で、名称も彼に由来します。
 篤志家だった彼は、病院や音楽学校なども作っています。音楽学校は世界的に有名な「チェサムズ音楽学校」として現存しています。
 蔵書は10万冊以上ありますが、その半数以上が1851年(日本の幕末期。ジョン万次郎が琉球に上陸した年)以前に出版されたものだそうです。
 そのうち、日本人に馴染みのありそうな例をあげると、アイザック・ニュートンの「数学原理(プリンキピア・マテマティカ / "Principia Mathematica")」の初版が有名です。
 歴史的には、カール・マルクスとフリードリッヒ・エンゲルスがここで「共産党宣言」の構想を練り、執筆したことでも知られています。今でも彼らが使った小部屋が残っており、実際に席に座ることもできます。
 先にも触れたとおり、マンチェスター大聖堂、ナショナル・フットボールミュージアム*21、アーンデール・ショッピングセンターが徒歩圏内にまとまってありますので、観光プランは立てやすいと思います。
 最後に留意点を。
 ここは非常に貴重な歴史遺産であるだけでなく、「現役の」図書館でもあります。
 (ボーガス注:観光目的ではなく)研究目的で訪れる人もいますので、訪問時は極力予約してから行ってください。
 また、入場無料ではありますが、寄付金をご用意しておかれるとよいでしょう。

音楽と文化の街イギリス・マンチェスターの魅力的観光地15選に迫る! – skyticket 観光ガイド
 1653年設立の、イギリス最古の図書館チェサムズライブラリー。建物自体は1400年代に建てられたとても古いものであり、10万を越える書籍が収蔵されています。館内は中世の雰囲気たっぷりで、まるで時間が戻ったかのような錯覚に陥りそう。ヴィンテージの書籍が所狭しと並びぶ書棚は、日本の図書館とは全く違った雰囲気を醸し出しています。
 実はこの図書館、カール・マルクスフリードリヒ・エンゲルスもこの図書館を利用していたと言われているんです!また彼らが構想を練り、執筆した部屋にも座ることができます。チェサムズ図書館の有名な蔵書としてヘンリー8世*22による書写と、ニュートン卿の『プリンキプア・マテマティカ』もありますよ。訪問の際は予約が必要なのでお忘れなく!

英国チェサムズ図書館に「マルクスの机」を訪ねる_新華網日本語
 イギリスのマンチェスターにあるチェサムズ図書館は1653年設立、「英語圏最古の公共図書館」と称されている。マルクスエンゲルスが当時使用していた長方形のオーク材の机が、今も完全な形で保存され閲覧室に置かれている。マルクスエンゲルスはこの木の机を囲み、大量の資料を調べながら構想を練り「共産党宣言」を含むマルクス主義の代表作を多数生み出した。

■ハンフリー・チェサム(1580~1653年、ウィキペディア参照)
 チェサムズ病院、チェサムズ音楽学校、チェサムズ図書館の創設者。

*1:国際女性デーの提唱者として知られる女性活動家

*2:山川均の妻。片山内閣のもとで労働省の初代婦人少年局長に就任。著書『武家の女性』、『覚書 幕末の水戸藩』(以上、岩波書店)など

*3:著書『グローバリゼーションと戦争』(2004年、大月書店)

*4:ちなみに第二大戦後、中東で石油開発が本格化するまでは米国が最大の産油国であり、だからこそ、米国の「戦前日本への石油禁輸」は「陸軍を中心とした石油じり貧論(兵器を動かす石油がなくなる前に米国相手に戦争しよう)」という形で対米戦争を助長することになります。もちろん米国は戦前日本がそう言う馬鹿な方向に突撃するとは夢にも思っていませんが。

*5:常岡の場合、アンチロシアは「ジャーナリズム」ではなく、単に「アンチロシア言説を好む連中相手の商売」、つまり「福島香織のアンチ中国」などと同レベルの代物でしかありませんが。

*6:2015年ノーベル物理学賞受賞者。東京大宇宙線研究所長。著書『ニュートリノで探る宇宙と素粒子』(2015年、平凡社

*7:著書『危機に立つ国立大学』(2015年、クロスカルチャー出版)

*8:明治大学教授。著書『現代会計制度の構図』(2005年、大月書店)、『国有林会計論』(2006年、筑波書房)など

*9:なお、従来、「県を超えた国立大学統合」はなく名古屋大との統合が実現すれば初の事例になります。

*10:著書『人口減少時代の地方都市再生:岐阜市にみるサステナブルなまちづくり』(共著、2007年、古今書院

*11:著書『大災害と法』(2012年、岩波新書

*12:小泉内閣防衛庁長官福田内閣防衛相、麻生内閣農水相自民党政調会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)、第三次安倍内閣地方創生担当相を歴任

*13:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官を経て首相

*14:元総務官僚。福島県企画調整部長、副知事を経て知事

*15:著書『これからの自治体防災計画』(2005年、自治体研究社)

*16:元防衛官僚(防衛研究所長、防衛庁教育訓練局長など歴任)。2003年に勃発したイラク戦争に関しては、元防衛官僚ながら小泉純一郎首相によるイラクへの自衛隊派遣に反対する要望書を政府に提出した。

*17:正確には「警戒区域指定が適切か」という指摘自体は中村論文にはあるのですが、中村氏の場合、問題にしているのは「開発をしたい箇所に、誤った評価で警戒区域指定がされて開発に支障が出ては困る」という加茂市長の話とは逆の「開発優先のために、警戒区域指定すべき箇所が指定から漏れてあとで重大事故につながる」という問題です。

*18:日本共産党府中町

*19:著書『「新自由主義」とは何か』(2006年、新日本出版社)、『「国際競争力」とは何か』(2011年、かもがわ出版)、『大震災後の日本経済、何をなすべきか』(2011年、学習の友社)、『「アベノミクス」の陥穽』(2013年、かもがわ出版)、『アベノミクスと日本資本主義』(2014年、新日本出版社)、『「一億総活躍社会」とはなにか』(2016年、かもがわ出版)、『「人口減少社会」とは何か:人口問題を考える12章』(2017年、学習の友社)など

*20:友寄論文は「チェタム」ですがここでは「チェサムズ」となっています(つうかググった限りではほとんどヒットするのは「チェサムズ」です。そのほかにも「チェタムズ」「チェサム」「チータム」「チータムズ」がヒットします)。まあ「外国語翻訳」では良くある話です。なお原文は「Chetham's Library」です。

*21:一般に「英国国立サッカー博物館」と訳される。

*22:6度の結婚に加えて、ローマ・カトリック教会からのイングランド国教会の分離によって知られる。