今日の韓国・北朝鮮ニュース(2019年3/11分)

金正男氏殺害 マレーシア検察、ベトナム人被告の起訴取り下げ要求を却下 - 産経ニュース

・弁護側は、同様の起訴内容ながらフオン被告の起訴が取り下げられなかったことに、「差別的だ」と法廷内で反発。だが、裁判長は公判の継続を決めた。出廷したフオン被告は、「気分が良くない。何が起きているかわからない。最近は寝れていない」と訴えた。
・フオン被告の扱いをめぐっては、ベトナムのロン法相が12日、マレーシアの司法長官に書簡で、起訴取り下げを要求するなど、マレーシアとベトナム外交問題にも発展している。
 フオン被告は閉廷後、涙を流しながら、傍聴した在マレーシアのベトナム大使に「家族に祈ってくれるように伝えてください」と話した。

 インドネシア人被告(不起訴、釈放済み)とベトナム人被告(未だ釈放せず)の扱いの違いは何だろうと不思議に思います。


【主張】金正男氏暗殺裁判 独裁者の犯罪に向き合え - 産経ニュース

北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏の暗殺事件で、殺人罪に問われた女2人のうち、インドネシア人の被告が釈放された。残る「実行役」の被告はベトナム人1人となった。
・事件の真相が何一つ解明されないまま、幕引きに向かうことを強く憂慮する。「いたずら動画」の撮影かと思ったという2人の審理から全体像に迫ることが困難とは当初から予想できたが、それで済ませていいわけはない。

 そんなことをいったところでどうしようもないでしょう。マレーシア検察の判断について我々に出来ることは何もないでしょうよ。
 なお産経が恐れてるのは「ベトナム人女性も近々不起訴で釈放」「そこまで行かなくても無罪判決」でしょうね。
 実際、「その可能性がある」という報道が

金正男氏殺害事件、釈放のインドネシア人が帰国 ベトナム人被告も近く判断か - 毎日新聞
 一方、(ボーガス注:不起訴になっていないベトナム人女性)フオン被告の父、ドアン・バン・タインさん(65)は毎日新聞の電話取材に「インドネシア人の女性(被告)が釈放されたと聞き、とてもうれしい。娘も同じような決定が出ると期待している」と話した。

などのように、すでにメディアに出ています。インドネシア人被告とベトナム人被告の扱いを変える正当な理由があるか疑問ですので、その可能性は確かにあるでしょう。
 

 正恩氏が指示した「国家テロ」という視点から、改めて関係国、関係機関を挙げて真相解明に取り組むべきだ。

 マレーシア検察の活動とは別途「何かしろ」つうことでしょうか。で産経は具体的に何が出来ると思ってるのか。俺は何も出来ないと思いますが。
 大体、何を根拠に「金正恩が指示した」というのか。そんな決定的証拠は何もないでしょうよ。まあ、「崔順実ゲートの朴クネ(すでに有罪判決)」「ロシアゲートのトランプ」「モリカケの安倍」並に北朝鮮が怪しいのは事実ですが。
 まあ、「アンチ北朝鮮」産経としては事件がうやむやになる恐れがあるのは我慢がならないのでしょうが。

米国と北朝鮮による先の首脳会談が物別れになったとはいえ、非核化交渉は途上にある。だが、国家テロや人権侵害を見て見ぬふりしていいことにはならない。

 いやー国益(この場合、非核化)のために「あえて見て見ぬ振りすること」もあっていいと俺は思いますけどね(積極的にそうすることが善だとまでは言わないが。まあ必要悪って話です)。
 つうかサウジの記者殺害事件なんか明らかに欧米は見て見ぬ振りして、疑惑の張本人「ムハンマド皇太子」に何の罰も求めないわけですし。
 北朝鮮だけ「疑惑追及」を声高に叫ぶのもおかしな話です。
 まあ産経の場合、単に「北朝鮮が非核化しようと、拉致被害者を全員帰国させようと、人権面で問題があるなら国交正常化や制裁解除などすべきではない」とアンチ北朝鮮として主張したいだけの話なんですが。

 日本人拉致被害者の全員解放の要求は当然である。

 この「全員」には特定失踪者なんてデマ、与太が入ってるんだから話になりません。なお、「死亡した拉致被害者がおそらくいる」ので全員解放など無理でしょう。横田めぐみさんなど「彼女を隠して娘の存在だけ明かす」なんて理由があるとも思えませんのでほぼ確実に死亡しているでしょう。

 正恩氏は非核化の意思を繰り返し口にするだけで、実行に移していない。

 そもそも金正恩は「無条件で非核化する」などとは最初から一言も言っていません。「米国の体制保障とバーターで非核化」といってるのだから「米国が国交正常化や終戦協定どころか、終戦宣言すらしない現状」で非核化しないことを「言行不一致」として非難されるいわれはどこにもありません。

 気がかりなのは、昨年6月の米朝首脳の初会談以降、経済制裁や軍事圧力の緩みが散見されることである。正男氏暗殺事件で冷却化した北朝鮮と東南アジア諸国との関係が改善基調にあるのも、無関係ではないだろう。

 アンチ北朝鮮の産経にとっては不愉快で仕方がないのでしょうが、どうしようもない話です。仮に「そうした事態を日本の国益上、望ましくないと考えるにしても*1」日本に何か出来るわけではないでしょう。
 まあ、産経的にはマレーシア検察の「インドネシア人釈放(不起訴処分)→そのままインドネシア帰国」も「北朝鮮への忖度カー(怒)」「それともインドネシアへの忖度カー(怒)」「そのうちベトナム人女性も釈放して、ベトナムにも同じ忖度をするのかー(怒)」なんでしょうね。実際どうか知りませんが、「大阪地検特捜部が森友問題で政治家どころか財務官僚すら起訴しなかったこと」と同レベルの政治的忖度をマレーシア検察が「マハティール首相の要請で実行した」とでも思ってるんでしょうね。
 つまりは産経の過去の主張「マハティールは親日」つうのは心にもない嘘だったわけです。こういうのは「問うに落ちず、語るに落ちる」というべきでしょうか。
 ちなみにこの件についてマハティールは以下のように主張しています。

マレーシア首相「法の支配」強調=金正男氏事件の被告釈放で:時事ドットコム
 北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏殺害事件で、実行犯とされたインドネシア人女性シティ・アイシャさん(27)への起訴が取り下げられたことについて、マレーシアのマハティー*2首相は12日の記者会見で、「(ボーガス注:有罪立証が困難なら起訴できないという)法の支配の原則に従ったものだ」と強調した。ただ、「(取り下げ理由は)詳しく知らない」と述べ、詳しい説明を拒んだ。
 アイシャさんの起訴取り下げをめぐっては、インドネシア政府が水面下でマレーシア側と交渉を重ねていた事実を暴露。マハティール首相は、起訴取り下げが政治判断ではなく、あくまで法的な手続きに沿った決定だと強弁した格好だ。

 しかし

・あくまで法的な手続きに沿った決定だと強弁した格好

とは時事通信記事も酷いですね。「強調」「熱弁」とかならともかく、「強弁」て。マハティールが政治的圧力を加え釈放させた(にもかかわらず正当化している)とでも理解しなければ使わない言葉でしょうがそんな証拠がどこにあるのか。森友の不起訴でも「大阪地検特捜部が不起訴理由は正当と強弁」とは書いてなかったと思いますが、「安倍自民や財務省大阪地検は怖いから何も言えないけど北朝鮮やマレーシアは怖くないから悪口する」つうふざけた態度が時事通信なのか。大体「客観的事実と価値判断はなるべく分ける」のがあるべき新聞記事でしょうに。「強弁」は現時点では「事実だ」といえる話ではない。
 ちなみにインドネシア政府の反応は以下の通り。

金正男氏殺害事件、釈放のインドネシア人が帰国 ベトナム人被告も近く判断か - 毎日新聞
 インドネシア大使館は、インドネシアの法務・人権相がマレーシアの司法長官にアイシャ氏の釈放を要望していたと明らかにした。釈放要望の理由としてインドネシア政府は、アイシャ氏が「いたずら番組」の撮影だと信じており、金正男氏を殺害する意図はなかった▽北朝鮮に利用されていたことに気付いていなかった▽行為によって何ら利益を受けていない――の3点を挙げた。

インドネシア大統領、「釈放」の成果アピール アイシャ元被告が面会(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
 北朝鮮金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キムジョンナム)氏が2017年2月にクアラルンプールで暗殺された事件で、殺人罪での起訴を取り下げられたインドネシア人のシティ・アイシャ元被告(27)が12日、ジャカルタ*3の大統領官邸でジョコ*4大統領と面会した。面会後の記者会見には、ルトノ外相やラオリ法務・人権相も同席し、釈放がジョコ政権の成果であることをアピールした。
 突然の釈放、帰国から一夜明け、アイシャ氏は警察官に警護されながら両親と大統領官邸に入った。3人はジョコ氏の両手を握って支援に感謝したが、面会後は記者団の質問に一切答えないまま車に乗り込んだ。一方、ジョコ氏は「政府が国民を守るというのはこういうことだ」と話した。
 大統領選を来月に控えるジョコ氏にとって、国内で同情的に見られているアイシャ氏の帰国は追い風になるとみられる。政府は釈放直後、ジョコ氏が昨年6月のマハティール・マレーシア首相との首脳会談で釈放を要請していたことを明らかにし、司法判断の背景に政権の後押しがあったことを強調した。

 事情が違うので単純比較できないとはいえ「拉致被害者を取り戻せない安倍」「中国政府に伊藤忠社員を身柄拘束されても何も出来ない安倍」との違いに「日本の首相がジョコ大統領だったら良かった」と思わずには居られません。
 そして「選挙目当て」という面があるそうですが「大統領選を前にきっちりと結果を出したジョコ氏」「参院選に政治利用しようとして、ロシアに言いようにあしらわれてる安倍」の違いにはため息が出ます。
 さて産経記事に話を戻します。

 2度目の米朝会談は、自国民が実行犯として拘束されたままのベトナムで行われた。その際、同国首脳が正恩氏を歓待し、友好を確認した*5のに違和感を覚える。北朝鮮が懸念に応えない限り(ボーガス注:米国は?)圧力を緩めない。友好国に求められるのは率直にこう告げることである。

 馬鹿馬鹿しい。なんで友好国のベトナムがそんなことをすると思うのか。


インドネシア人女性の起訴取り下げ、ベトナム人被告の供述行われず 金正男氏殺害事件 - 産経ニュース

・検察は、2被告のうち、インドネシア国籍のシティ・アイシャ被告(27)の起訴を取り下げた。
・アイシャ被告は、法廷を後にする際、報道陣から声をかけられ、笑顔で手を振り車に乗り込んだ。弁護士によると、クアラルンプール*6インドネシア大使館に向かい、早ければ11日中にもインドネシアに帰国するという。この日は、インドネシア大使も法廷に訪れており、検察側の判断に「うれしい」と述べた。

 起訴取り下げは素直に考えれば有罪立証が出来ないと言うことでしょう。もちろん政治的犯罪なので「北朝鮮ないしインドネシアへの政治的忖度」という可能性もゼロではないですが。
 いずれにせよ
1)有罪立証が出来ない場合
→巣くう会のようなウヨ連中が言うほど「北朝鮮犯行説」は「少なくとも刑事責任追及が出来るほど証拠十分ではない」
2)北朝鮮ないしインドネシアへの政治的忖度の場合
北朝鮮ないしインドネシアとの関係を悪くしてまで、マレーシアもこの件を追求する気がない 
といえるでしょう。
 なお、1)なら話は別ですが、2)なら「ベトナム人だけ死刑」となれば「インドネシアとの違いはなんや!。ワシら、ベトナムをバカにしとるんか!」つうベトナムの反発が予想されますので「2)なら」

・犯行はあったが、被告の主張するように何者かにだまされていたのであり、殺人の意思はなかった
・しかしだまされていたことに過失があった、過失致死が成立する

としてベトナム人女性を過失致死で軽く済ませる、あるいは「過失もなく無罪」なんて可能性もあるでしょうね。まあ、それはこれからわかることですが。

*1:俺個人は必ずしもそうは思いませんが。

*2:教育相、副首相などを経て首相

*3:インドネシアの首都

*4:スラカルタ市長、ジャカルタ特別州知事を経て大統領

*5:まあ「北朝鮮の犯行」と前提した上での話ですが、裏では「北朝鮮がわびを入れてる」つう事ももちろん考えられます。

*6:マレーシアの首都