今日の中国ニュース(2019年4月6日分)(追記あり)

国連、中華台北に訂正 台湾を「中国の省」と表記 | 政治 | 中央社フォーカス台湾

 国連組織「UNウィメン」は、台湾野球界初の女性審判員、劉柏君さんを紹介するツイッターの投稿や公式サイトでその出身地について「台湾、中国の省の1つ」と記した。これに対し、劉さんは4日、フェイスブック上で不満の声を上げた。問題の記述は5日までにチャイニーズタイペイ中華台北)に訂正され、ツイッターの投稿は削除*1された。 劉さんは先月中旬、女性のスポーツにおけるエンパワーメントを促進したとして国際オリンピック委員会IOC)とUNウィメンから「世界女性スポーツ賞」を授与された。同賞の受賞は台湾人として初。UNウィメンの公式サイトには、劉さんが自身の体験をつづった文章が掲載されたが、冒頭の要約には「台湾、中国の省の1つ」出身だと書かれていたという。

 まあ「台湾は中国の省だと強く主張する意図がない*2」からこそすぐ修正になったのでしょうが「国際オリンピック委員会IOC)と国連組織UNウィメン」ですからねえ。国際社会における台湾への認識なんて所詮そんなもんなんでしょう。もちろんIOCや国連が「一つの中国」の立場であることは言うまでもありません。
 ちなみにググったところ、日本では2010年に有森裕子*3がこの賞をもらっています。


中国の情報操作の実態報告 虚偽情報で混乱もたらす(1/2ページ) - 産経ニュース
 タイトルは大げさですが記事本文を読む限り「中身に乏しく」、『国境なき記者団てバカ?』といいたくなる代物です。

 情報操作の実例として、昨年9月の台風21号の影響で、関西国際空港に取り残された台湾人旅行客に対する台湾の出先機関による支援が不十分だったとする情報がインターネット上に流れ、後に虚偽情報だったと分かったことを挙げた。中国当局が台湾に混乱をもたらす目的で意図的に虚偽情報を流す活動だったとの見方を示している。
 当時は、台湾当局に対する批判が噴出。その後、台北駐大阪経済文化弁事処(領事館)の処長だった蘇啓誠(そ・けいせい)氏(61)が自殺した。

 見方を示すのは記者団の勝手ですが根拠があるのか。単に「台湾へのネガキャン情報だから中国が流したのかもー」レベルではまともな主張とは言えません。それこそ「中国誹謗の虚偽情報」になってしまいます。何も中国陰謀論を出さなくても「台湾人旅行客のウチの一部が、対応が不十分だったという反感から台北駐大阪経済文化弁事処(領事館)にあることないこと悪口雑言→ネットでどんどん拡散」で説明がつく話です。
 そのあたり産経記事を読んでもさっぱり分かりませんが。

トロイの木馬政策」と題する章では、中国の英字紙「チャイナ・ウオッチ」について、「(中国紙)チャイナ・デーリーのチームによって執筆され、発行部数は1300万部あるとみられる」と指摘。

 「はあ?」ですね。「中国との関係を隠して中立を装ってる」のならともかくそうでないなら非難されるいわれはないでしょう(「チャイナ・ウオッチ」の記事の内容が正しいかどうかはひとまず置きます)。これまた「中国との関係を隠して中立を装ってる」のかどうか、産経記事を読んでもさっぱり分かりませんが。

 外国人記者に対する扱いについては、昨年7月3日に在スウェーデン中国大使館がスウェーデン紙の男性記者を非難する声明を出した事例を紹介した。
 男性記者は、9年にわたり中国に駐在していたが、16年7月、査証(ビザ)の更新を拒否された。
 産経新聞や米紙ニューヨーク・タイムズなどの記者についても、非常に短い期間のビザが発給されたと指摘した。

 「はあ?」ですね。それは少なくとも「中国による虚偽情報垂れ流し」という話ではありませんが。

 報告書は、中国による虚偽情報を流す活動を見抜く力を養うため、メディアに関する市民教育の重要性を訴えている。

 「はあ?」ですね。何も「虚偽情報を流す」のは中国限定ではありませんし、メディア教育の目的も「虚偽情報を見抜くこと」に限られるわけでもない。かつメディア教育の重要性なんて昔から言われてることです。「記者団ってバカ?」ですね。それとも産経の記事が悪いのか?


トルコ大統領の怒りの裏にある、知られざるトルコとNZの歴史問題 | 楊海英 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

・3月15日、ニュージーランドクライストチャーチでオーストラリア人ブレントン・タラントによる銃乱射事件が発生した。死亡した50人のほとんどがモスク(イスラム礼拝所)にいたムスリムだったため、イスラム世界のリーダーを自任するトルコのエルドアン*4大統領は18日、ニュージーランドとオーストラリアを激しく非難。両国が反発する事態となっている。
「チャナッカレの戦いで、あなたたちの祖父は歩いて、あるいは棺桶で帰国した。また同じことをすれば、あなたたちの祖父のように棺桶で帰すことになるだろう」
 エルドアンが言及した「チャナッカレの戦い」は、第一次大戦の連合国側では「ガリポリの戦い」と呼ばれる。トルコ北西部チャナッカレはダーダネルス海峡に面し、エーゲ海からマルマラ海へ通ずる要衝だ。1915年4月25日、イギリスの作戦下、連合国軍が敵国オスマン帝国の要塞を占領しようと進軍し、オスマン軍の犠牲は死傷者約16万人に上った。
 だがムスタファ・ケマル*5大佐の果敢な抵抗に遭い、作戦は失敗に終わった。オーストラリア・ニュージーランド軍団(アンザック)も3万5000人以上の死傷者を出し、多くの兵士が棺桶で帰国の途に就いた。
エルドアンやトルコにとって、ニュージーランドの銃乱射テロは「チャナッカレの戦い」から変わらない、西洋からイスラム世界に対する理不尽な暴力と映ったようだ。

 ニュージーランドが反発するのは当然でしょう。「チャナッカレの戦い」は「ニュージーランド軍の軍事力行使」ですが、今回のテロは「ニュージーランド警察は事前に摘発できなかったのか、警察の捜査に落ち度はなかったか」という問題はあれども、ニュージーランド政府の行為ではないからです。
 テロ攻撃はイスラム差別による犯行で、ターゲットも「イスラム教徒」であってトルコ人限定ではない。一方チャナッカレの戦いは「イスラム差別」が目的ではなくターゲットもトルコ人限定です。チャナッカレの戦いと今回のテロは全然性格が違う。
 まるでテロ行為がニュージーランド政府職員の公務であるかのような物言い、あるいは「チャナッカレの戦いの再現」であるかのような物言いをしたあげく「チャナッカレの戦いを改めて、ニュージーランド人に思い出させてやってもいい(要約)」などと言われれば「エルドアンは気でも狂ったのか」という反発が出て当然です。
 たとえばそんなことはなかったわけですが、「1964年のライシャワー大使襲撃事件(政治的犯行ではなく精神病者の病気による行為ですが)」の時に当時のジョンソン*6大統領が「日本人にパールハーバーのことを思い出させてやりたい」といったら当時の日本人から反発が出たでしょうし、正気も疑われるでしょう。
 仮に「ニュージーランドにおけるチャナッカレの戦い」の評価、扱いがエルドアンにとって納得いかない物であっても、テロとこじつけるなど言いがかりでしかありません。
 あるいはテロ犯罪者が「俺の犯行はチャナッカレの戦いの報復だ」といったのだとしても*7、このエルドアンの物言いはどう見ても「そうしたテロ犯罪者への批判」とは読めません。
 そうした明確なエルドアン批判が楊*8の文章に何一つ出てこないことには唖然とします。
 なお、事件当時はちょうどトルコ地方選だった上にエルドアンの発言があまりにも非常識なため「与党の劣勢を変えるため、愛国心をかき立てようと、テロを選挙戦に悪用したのではないか」という批判が出ています。

 今の国際社会では戦勝国としての連合国史観が主流のためだろうか。両国では毎年4月25日は「アンザック・デー*9」として、大々的な祝日となっている。
 ニュージーランドのテロ事件は私たちに2つのメッセージを示唆している。第1に、イスラム世界に対する差別と偏見の根は深いことだ。それはともすれば、西洋諸国を「正義」と見なす連合国的な歴史観とも連動している。

 楊には「はあ?」ですね。多分、楊は「戦勝国としての連合国*10史観」を敵視する日本ウヨに媚びてるんでしょうが「今の国際社会では戦勝国としての連合国史観が主流」とはどういう意味なのか。
 第二次大戦についていえば「是非はともかく*11」確かにその通りでしょう。「ナチドイツ、ファシズムイタリアと戦前日本」という枢軸国が批判され、それに対抗した連合国(米英仏ソ連*12(ロシア)中国)が評価されている。
 しかし4/25に行われたチャナッカレの戦いは「第一次大戦」の出来事です。第一次大戦において「連合国(米英仏露イタリア、日本*13など)」を是として連合国と戦った「同盟国(ドイツ帝国オーストリア・ハンガリー帝国オスマン・トルコ帝国)」を非とする世界観が主流なんて事実はないでしょう。
 そして、トルコは第一次大戦では「連合国と戦った同盟国」ですが、第二次大戦では「長い間中立を保ち」、枢軸国の敗北がほぼ確実となった1945年に「戦後のトルコの地位向上を目指して」枢軸国に宣戦布告した連合国です(ただし実際には戦闘がされることはなかった)。
 いずれにせよ今回のテロと『西洋諸国を「正義」と見なす連合国的な歴史観(楊)』と何の関係があるのか。むしろ今回のテロのような人種差別、民族差別と親和的なのは「ユダヤ人差別国家」ナチドイツをメンバーに含む「第二次大戦の反連合国(枢軸国)」でしょう。どこに今回のテロを正当化してる西欧国家があるのか。
 『西洋諸国を「正義」と見なす連合国的な歴史観(楊)』という楊の物言いも実に奇妙です。第一次大戦の連合国には「アジアの国日本(日英同盟を理由に参戦)」が含まれ、一方、同盟国(反連合国)には「西洋国家ドイツ」が含まれる。
 第二次大戦の連合国には「アジアの国中華民国」が含まれ、一方、枢軸国(反連合国)には「西洋国家ドイツ、イタリア」が含まれる。
 第一次大戦においても第二次大戦においても「連合国=西洋」「反連合国=非西洋」なんて構図は存在しません。
 どう見ても楊は「連合国」という言葉を『西洋諸国を「正義」と見なす連合国的な歴史観(楊)』というときには「第二次大戦での話をしている(そして「大東亜戦争はアジア解放の戦いだ」として戦前日本を美化する日本ウヨに媚びてる)」としか思えませんが、何度も言うようにチャナッカレの戦いは「第一次大戦」の出来事です。そして、トルコは第一次大戦では「連合国と戦った同盟国」ですが、第二次大戦では「長い間中立を保ち」、枢軸国の敗北がほぼ確実となった1945年に「戦後のトルコの地位向上を目指して」枢軸国に宣戦布告した連合国です。楊の話の展開がめちゃくちゃでデタラメなことこの上ない。

ニュージーランドのテロ事件は私たちに2つのメッセージを示唆している。
・第2に、暴力に正当性が与えられている背景には、中国の存在が無視できないという点だ。中国の少数民族弾圧という暴力は国内にとどまらない。今回タラントが声明で称賛したように、中国の手法は各国の独裁者たちに加え、確実に個々のテロリストにも「輸入」されるようになってきたのだ。
・テロ犯タラントが73ページにも及ぶ声明文の中で、中国の全体主義思想を称賛していたことは注目に値する。エルドアンは2月に、「ウイグル人弾圧は人類の恥」と中国によるイスラム敵視政策に注意を促したばかり。事実、タラントは中国共産党政権によるウイグル人弾圧の報道を知り、「多様性なき国家」中国に共鳴するに至ったと指摘されている。

 ばかばかしい。だったら、77人を殺害したノルウェーのテロ犯罪者ブレイビクが「日本の移民制度をノルウェーも見習うべきだ」といい、会ってみたい人間として「麻生太郎*14(犯行当時、首相)の名前」を挙げた*15ら、あの犯行は日本のせいなのか(もちろんあの種のテロリストに褒められるというのは仮に「酷い誤解」だとしても「日本の不徳のいたすところ」ではあるでしょうが。)。
 いくら中国嫌いだからって、楊は中国への無茶苦茶な言いがかりも大概にしろという話です。まあ、あの種のテロリストに褒められるというのは仮に「酷い誤解」だとしても「中国の不徳のいたすところ」ではあるでしょうが。
 しかし別にテロリストは「中国云々」で犯行に及んだわけではもちろんない。中国の統治をどう評価するにせよ、「独裁的、人権侵害的統治」は何も中国の専売特許でもないわけです。そもそもエルドアン自身がそうした「少数民族クルド」の差別者で独裁的だという批判があることを楊はどう考えているのか。

*1:確かツイッターって後で訂正できないんですよね。

*2:とはいえ「一つの中国」の立場なら「台湾省」でも何らおかしくないのですが、「中国の意向(台湾は国ではない)も無視できない一方で」台湾の意向を完全無視して、「台湾省表記」してトラブるのもまずいということでしょう。で「チャイニーズタイペイ中華台北)」のわけです。

*3:女子マラソンバルセロナ五輪銀メダル、アトランタ五輪銅メダル。現在は日本陸上競技連盟理事、「スペシャルオリンピックス日本」理事長、日本体育大学客員教授

*4:イスタンブル市長、トルコ首相を経て大統領

*5:後にトルコ初代大統領

*6:ケネディ政権副大統領を経て大統領

*7:ただし、俺の知る限りそういう事実はありませんが。俺の知る限り、いきなりエルドアンがチャナッカレ云々と言い出しニュージーランド側が訳が分からず「唖然とした」という話かと思います。

*8:著書『草原と馬とモンゴル人』(2001年、NHKブックス)、『モンゴル草原の文人たち:手写本が語る民族誌』(2005年、平凡社)、『ユーラシア草原からのメッセージ:遊牧研究の最前線』(共著、2005年、平凡社)、『チンギス・ハーン祭祀』(2005年、風響社)『墓標なき草原(上)(下):内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』(2009年、岩波書店→後に2018年、岩波現代文庫)、『続・墓標なき草原:内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』(2011年、岩波書店)、『中国とモンゴルのはざまで:ウラーンフーの実らなかった民族自決の夢』(2013年、岩波現代全書)、『植民地としてのモンゴル:中国の官制ナショナリズムと革命思想』(2013年、勉誠出版)、『ジェノサイドと文化大革命内モンゴルの民族問題』(2014年、勉誠出版)、『モンゴルとイスラーム的中国』(2014年、文春学藝ライブラリー)、『チベットに舞う日本刀:モンゴル騎兵の現代史』(2014年、文藝春秋)、『狂暴国家中国の正体』(2014年、扶桑社新書)、『日本陸軍とモンゴル:興安軍官学校の知られざる戦い』(2015年、中公新書)、『モンゴル人の民族自決と「対日協力」:いまなお続く中国文化大革命』(2016年、集広舎)、『フロンティアと国際社会の中国文化大革命: いまなお中国と世界を呪縛する50年前の歴史』(共著、2016年、集広舎)、『「中国」という神話:習近平「偉大なる中華民族」のウソ』(2018年、文春新書)、『「知識青年」の1968年:中国の辺境と文化大革命』(2018年、岩波書店)、『最後の馬賊:「帝国」の将軍・李守信』(2018年、講談社)、『モンゴル人の中国革命』(2018年、ちくま新書)、『独裁の中国現代史:毛沢東から習近平まで』(2019年、文春新書)、『逆転の大中国史』(2019年、文春文庫) 、『中国が世界を動かした「1968」』(共著、2019年4月刊行予定、藤原書店)など

*9:ウィキペディア「アンザックデー」によれば「アンザックデーの4/25はチャナッカレの戦いの日」であるにもかかわらず現在では「ニュージーランドの戦死した軍人全てを追悼する日」となり、チャナッカレの戦い以外の「第二次大戦」「朝鮮戦争ベトナム戦争(米国の同盟国として参戦)」などの戦死者も追悼するという「訳の分からない日」になっているようです。それぞれの戦争の性格は大分違うんですけどね。

*10:ただしここで言う俺が言う「連合国」とは第二次大戦の連合国です。

*11:俺個人は是としますが。

*12:スターリン粛清もあってソ連の評価は微妙な気もしますが。

*13:日英同盟を理由に参戦。パラオ山東半島のドイツ軍を攻撃し、日本の支配下に収めた(そしてパラオは戦争終了後も委任統治領として日本の事実上の植民地になりました)。

*14:橋本内閣経済企画庁長官、森内閣経済財政担当相、小泉内閣総務相、第一次安倍内閣外相、自民党幹事長(福田総裁時代)を経て首相。現在、第二~四次安倍内閣副総理・財務相

*15:ウィキペディア「アンネシュ・ベーリング・ブレイビク」参照