新刊紹介:「前衛」5月号

 「前衛」5月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。「興味のある内容」のうち「俺なりになんとか紹介できそうな内容」だけ簡単に触れます。「赤旗記事の紹介」でお茶を濁してる部分が多いです。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
■グラビア「時代を切り開く若もの 沖縄―新基地建設反対の現場に変化」(森住卓*1
■県民の民意をふみにじる安倍内閣を全国の連帯で追いつめる(赤嶺政賢
(内容紹介)
 沖縄県民の反基地の思いを実現するためにまずは「衆院沖縄三区補欠選挙」で勝利しよう。そして「7月の参院選」で沖縄選挙区で勝利するともに安倍政権を参院選で敗北させて退陣に追い込もうという話です。まずは補欠選挙勝利ですね。ひとまず補欠選挙野党共闘候補が擁立できたことは良かった。 


特集「安倍改憲との対決点」
自民党・安倍*2改憲の危険・矛盾・葬り方(永山茂樹)
(内容紹介)
 安倍改憲を葬り去る、最も有効な手法として「誰でも思いつくこと」ではありますが、安倍の退陣が挙げられています。
 「岸*3退陣後の池田*4」「中曽根*5退陣後の竹下*6」「第一次安倍退陣後の福田*7」で改憲ムードが下降したのと同じような話です。
 そこで当然ながら7月の参院選が重要になるわけです。7月の参院選で安倍を退陣させられば御の字です。退陣させられずとも野党議席増、自民議席減なら改憲ムードは下降するでしょう。逆に自民議席増となると、状況がさらに悪化する*8わけです。
 今の自民党は「護憲政党」とはとてもいえないでしょう。石破*9なども改憲派ではあります。当然「安倍が退陣すれば改憲の可能性がゼロになる」とまではいえませんが、とはいえ「安倍ほどの極右改憲派が党内にいないこと」は産経新聞など右翼側も事実上認めてる話です。
 石破も改憲派とはいえ「安倍ほどの反動極右ではない」。


■議院内閣制から診た安倍内閣(石埼学*10
(内容紹介)
 議院内閣制とは「多数議席で選ばれた内閣だから何をやってもかまわない」という安倍自民流の無法(いわゆる「ご飯論法」など)を前提とする物ではなく、「野党の質問に対する与党の真摯な対応」があって初めてまともに機能する物だという当然の指摘がされています。当然ながら、安倍自民のような無法をさせず「議院内閣制」をまともに機能させるためには強力な野党が必要であるわけです。


ベネズエラ問題をどう見るか:党声明「弾圧やめ人権と民主主義の回復を」にてらして(松島良尚)
(内容紹介)
 松島氏曰く、党声明の重要な点は「マドロ政権の反政府派への人権侵害を批判すると共に、対話による平和的解決を求めること」「グアイド支持を表明した米国でアレ、マドロ支持を表明したロシアでアレ、外国勢力の不当な内政介入は支持しないこと」にとどめ、「グアイド暫定大統領の行動の是非」については言及していないこととしています。
 つまり共産党としては「マドロに問題があるとは言え、暫定大統領就任発表はいくら何でもやり過ぎではないか」つう疑念があるわけです。
 なお、ご存じの方も居るでしょうが、チャベス政権時代において共産党は、ベネズエラ政府に対しては「対米自立」「社民政権」と評価し比較的好意的でした。ただし「明らかに経済失政と言わざるを得ない」「初当選はともかく二期目は不正選挙の疑いが指摘されている」現マドロ*11政権については「とても手放しで支持など出来ない」「いつ、なぜベネズエラ政権が変質したかはともかくもはやマドロ政権は独裁政権に変質している」として批判しています。
 なお、「ベネズエラ共産党」と日本共産党は交流があるそうですが、当初はチャベス政権与党だったベネズエラ共産党も現在では政府と袂を分かち、マドロ批判に動いているそうです。

参考
主張/ベネズエラ危機/国民多数の意思による政治を
ベネズエラ情勢で党・「赤旗」を誹謗中傷/文化放送に抗議・要請/党広報部申し入れ
ベネズエラ大使館を訪問/緒方氏 党声明を手渡す
弾圧やめ人権と民主主義の回復を――ベネズエラ危機について│外交│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会
ベネズエラのマドゥロ政権による人権侵害の資料


■亡国の日本型グローバリゼーションと地域経済・中小企業危機打開の基本的観点(吉田敬一)
(内容紹介)
 安倍政権、財界が進める日本型グローバリゼーションを「大企業中心で地域経済、中小企業を軽視している」と批判。地域経済、中小企業に目配りした経済政策を主張している。参考文献としては、例えば枝廣淳子*12『地元経済を創りなおす:分析・診断・対策』(2018年、岩波新書)が紹介されている。


■周回遅れで進む日本の水道民営化:世界の再公営化の流れを見る(内田聖子
(内容紹介)
 水道民営化を推進しようとする安倍政権への批判。水道民営化により「貧乏人が水が使えない」などの弊害が発生したため、パリやベルリンでいったん民営化された水道が再度公営化されたことが指摘される。

参考
改悪水道法が成立/高橋議員反対討論 「安全・安定の後退」/衆院本会議

水道民営化ストップ 浜松 全国のつどいに600人/水は自治の基本 世界の失敗学べ
 内田氏は、「世界的には40年ほど前から水道民営化が進んでいたが、最近の流れは再公営化」だと指摘。「日本は周回遅れで、世界の失敗を何も学ばずに民営化を行おうとしている」と述べました。

浜松水道民営化を延期/市長表明 市民「断念へ運動強化」


■給食の歴史が私たちに教えていること:給食は貧困対策から降りたことはない(藤原辰史*13
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

給食の歴史 書評|藤原 辰史(岩波書店)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
 そもそも日本近代における給食は、いつどこで発祥したのか。一八八九年、山形県の私立忠愛小学校で開始されたという。貧困子弟の教育が念頭に置かれてのことだった。「子どもの貧困」の問題は、それ以後も一貫して給食の背景にありつづける。
 「給食は、一度だって貧しい学童を救う任務から降りたことはない」(一七二頁)。
 戦後の給食に関しては、一般的には、アメリカの影響下にあったことのみが強調されてきた(「アメリカ小麦戦略」一六二頁、等々)。それが一面的な見方でしかないことを、第3章「黒船再来」、第4章「置土産の意味」で検証する。また、給食に関しては、公的な制度で、上からの決定に学校などが従うイメージが強いが、細かく調べていくと、そうではない側面もあったことが明らかにされる。詳細に論じるスペースはないが、子どもたちのために、給食を、少しでも安全でおいしいものにしようと、日々努力を重ね、自らアイデアを出しつづけた現場の人間(教師や主婦、学校栄養職員)がいたのである。彼ら/彼女らの活動は、ほとんど知られていない。ここがひとつの読みどころである。

東京新聞:給食の歴史 藤原辰史(ふじはら・たつし)著:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)
・著者は折に触れて、常に変わることなく、給食の原点であり続けてきた問題があることに注意を促す。それは、貧困家庭の子どもたちの救済である。
 通説では給食は明治中期、山形県の貧困児童を集めた小学校で始まったとされる。これが関東大震災を機に東京で定着し、また東北地方の大凶作を機に、地方へと広まっていく。貧困救済が目的なら、貧困家庭の子どもだけを対象にしてもよさそうだが、そうならなかったのは、そんな子どもたちに屈辱を与えないため、そして教育的な意義が認められたからだという。
・今日の日本で、貧困家庭の子どもの救済が喫緊の課題であることは明らかだ。半面、子どもたちを地域の豊かな食文化の担い手として育てるという、新たな役割も期待される。最後の部分で紹介されるいくつもの先進的なとりくみは、この両者を同時に実現する、今後の給食のあり方を示唆していて心強い。

書評『給食の歴史』藤原辰史著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
・興味深いのは<給食はその誕生からずっと貧困対策であり、防貧対策であった>という事実だろう。それはまた、災害とも深いつながりを持っていた。貧困はもちろん、関東大震災や東北の凶作など、災害のたびに出る「欠食児童」を救うのが、給食のそもそもの目的だったのである。
・子どもの貧困は、今日、喫緊の課題である。<現在でも、学校給食が唯一の良質な食事である家庭は少なくない>という現実。韓国では小学校の95%以上、中学校の80%近くが無償の給食を実現しているという。給食費未納の生徒に給食を提供しないとしたある市の決定も著者は厳しく批判する。給食を見る目が変わる本である。

[書評]『給食の歴史』 - 小林章夫|論座 - 朝日新聞社の言論サイト
・本書は戦前から現在に至るまでの給食の歴史を綴ったものだが、なぜ給食なるものが考え出されたのか、それを世界各国の動きまで視野に入れて紹介する。
・貧しい子供たちを救うための役割、現在ではほとんど死語と化した言葉を使えば、「欠食児童」対策の一面もあったことが語られる。


■シンポジウム「大学の危機をどう打開するか:たたかいから学ぶ 雇止め、軍事研究、ガバナンス問題」(田村智子/佐々木彈*14池内了*15/丹羽徹)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。副題で分かるように「大学非常勤職員の雇い止め問題」「大学の軍事研究問題」「大学のガバナンス問題(大学自治の問題)」が主に論じられています。

【シンポジウムについての記事】
政府「大学構造改革」が研究力奪う/危機打開 運動に学ぶ/大学人と日本共産党がつどい


【シンポジストについての記事】

“軍事研究禁止”発信を/学者の会が大学人シンポ
 池内了・名古屋大名誉教授が大学に研究資金を提供する防衛省の戦略について報告し「軍民両用の技術を活用することで、文科省経産省との『軍産学官連携』をめざしている」と批判しました。

東大雇い止め 撤回は共闘の勝利/東職、全大教が共同会見
 東職の佐々木彈委員長は、東大の内外で連帯・共闘を広げ、世論に訴え、あらゆる差別を許さずたたかった重要性を強調。「東大が脱法のお墨付きを与えてはならないと訴えたが、望ましい方向をメッセージとして発信することができた」と述べました。


天皇代替わりにあたり天皇の戦争責任を考える(山田朗*16
(内容紹介)
 『昭和天皇の戦争指導』(1990年、昭和出版)、『大元帥昭和天皇』(1994年、新日本出版社)、『昭和天皇の軍事思想と戦略』(2002年、校倉書房)、『昭和天皇の戦争:「昭和天皇実録」に残されたこと・消されたこと』(2017年、岩波書店)と「昭和天皇の戦争責任」をライフワークとしてきた山田氏が改めて「昭和天皇の戦争責任」について論じています。
 なお、昭和天皇の戦争責任については山田氏の著書や

井上清*17天皇の戦争責任』(2004年、岩波現代文庫)
・纐纈厚*18『「聖断」虚構と昭和天皇』(2006年、新日本出版社
・東野真『昭和天皇二つの「独白録」』(1998年、NHK出版)
・吉田裕『昭和天皇終戦史』(1992年、岩波新書)

などをお読みになればよいかと思います。簡単に言えば「いわゆる『終戦の聖断説』『昭和天皇・平和主義者説』は日米合作の嘘だ」ということです。
 「天皇制廃止を主張する政治勢力共産党以外に存在しない」「昭和天皇退位論(明仁皇太子の即位と、昭和天皇の弟が摂政につくことに寄る補佐)すら有力でない」という日本の政治状況を見た米国は昭和天皇を処罰もせず退位もさせず「生かして使うこと」を決定します。そのためには『終戦の聖断説』『昭和天皇・平和主義者説』という嘘を流布させる必要があったわけです。しかし実際には昭和天皇は戦争に密接に関与していました。
 例えば何で沖縄戦が起こったのか(天皇の戦争関与の例はもちろん沖縄戦でなくてもいいですが)。その理由の一つは

「何故攻撃に出ぬか…」太平洋戦争下の昭和天皇「お言葉」の数々(辻田 真佐憲) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
 日本軍は結局ガダルカナル島の確保を果たせなかった。そして(ボーガス注:1942年)12月31日、ついに同島からの撤退を決するのやむなきに至った。天皇はこの決定を受けて、「ただガ島攻略を止めただけでは承知し難い。何処かで攻勢に出なければならない」(井本熊男*19『作戦日誌で綴る大東亜戦争』)
とこぼした。
 1943年は、太平洋戦争の攻守が完全に逆転した年だった。
 4月には、山本五十六連合艦隊司令長官が南太平洋で戦死し、5月にはアリューシャン列島のアッツ島守備隊が全滅した。
 天皇は焦燥を隠せず、陸海軍に対して露骨に決戦を要求しはじめた。
・「何んとかして『アメリカ』を叩きつけなければならない」(6月9日、『眞田穰一郎*20少将日記』)
・「何処かでガチッと叩きつける工面は無いのかね」(7月8日、同上)
・「何れの方面も良くない。米をピシャッとやることは出来ぬか?」(8月5日、同上)
 いつ決戦か。いつ叩くのか。いつ攻撃をやるのか。天皇の矢のような催促は延々と続いた。1944年に入っても、「各方面悪い、今度来たら『ガン』と叩き度いものだね」(2月16日、上同)といった有様だった。

ということで天皇が「どこでもいいから米軍に反撃に出ろ。いずれ降伏するにしても、このまま、負けたままでは終われない(米国と交渉する立場が弱くなるから)」と命令したからです。天皇の「決戦要求への対応」として「沖縄決戦」となるわけです。
 あるいは沖縄戦での戦艦大和投入について

「何故攻撃に出ぬか…」太平洋戦争下の昭和天皇「お言葉」の数々(辻田 真佐憲) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
 昭和天皇と特攻といえば、4月からの沖縄戦についても言及しておかなければならない。天皇は海軍の作戦に関して、「航空部隊だけの総攻撃か」(防衛庁防衛研修所戦史室編『戦史叢書 大本営海軍部・連合艦隊(7)』)と述べ、暗に海上部隊の参加を求めたといわれる。そしてこの発言が、戦艦大和海上特攻につながったとの指摘が存在する。

ということで「昭和天皇の命令で戦艦大和を投入した説」が有力です。しかし大和投入は結果的にはいたずらに犠牲を増やしただけでした。
 あるいは特攻についても

「何故攻撃に出ぬか…」太平洋戦争下の昭和天皇「お言葉」の数々(辻田 真佐憲) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
 日本軍の組織的な特攻はこのフィリピン戦で開始された。まず10月26日、及川古志郎*21軍令部総長より、海軍の神風特別攻撃隊敷島隊などの戦果が報告された。天皇は、こう述べてその功績を讃えた。
「そのようにまでせねばならなかったか、しかしよくやった」(読売新聞社編『昭和史の天皇1』)
 つぎに11月13日、梅津美治郎*22参謀総長より陸軍特別攻撃隊万朶隊の戦果が報告された。天皇はこれについても「お言葉」を与えた。
 「体当りき[機]は大変良くやって立派なる戦果を収めた。命を国家に捧げて克くもやって呉れた」(『眞田穰一郎少将日記』)
 こうして日本軍では、特攻が広く行なわれるようになった。

といって「さすがに手放しで賞賛はしない」ものの、結局は褒めてしまい、特攻を助長しています。
 明らかに天皇は戦争指導に影響を与えてる。
 なお話が脱線しますが

「何故攻撃に出ぬか…」太平洋戦争下の昭和天皇「お言葉」の数々(辻田 真佐憲) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
 これのみをもって好戦的だと断ずるのは早計すぎる。昭和天皇の「お言葉」は、平時の平和志向のものも実に多いからだ。
 平和主義者か、軍国主義者か。そんな単純な二者択一から卒業しなければ、その実態に迫ることはできないだろう。

つうのははっきり言って詭弁です。昭和天皇は明らかに軍国主義者です。平和主義者ではない。もちろん「昭和天皇の名誉のために断っておけば」彼は「いつでもどこでも戦争だ」という戦争万能論者ではない。しかし彼は「戦争(日中戦争や太平洋戦争)をすることにメリットがあると思えば戦争する人間」でありそういう人間を「軍国主義者」と呼んでも何ら差し支えないでしょう。
 話を元に戻します。「天皇は戦争責任があるにもかかわらず」しかし、「米国が彼を生かして使うことに決めた」がゆえに、東京裁判では「東条英機*23元首相、板垣征四郎*24陸軍大臣満州事変当時の関東軍高級参謀)、武藤章*25陸軍省軍務局長」といった陸軍関係者ばかりがもっぱら起訴されます*26。「戦争の主役は陸軍で、天皇や海軍などは陸軍に無理矢理従わされただけ」つうシナリオが作られるわけです。
 天皇、皇族はもちろん「アメリカが占領支配に都合がいいと認定した人間」は米内光政海軍大臣(林、第1次近衛、平沼、小磯、鈴木内閣)などその経歴上、戦犯追及されてもおかしくない人間も追及されずに終わります。結局、海軍からは「嶋田繁太郎*27海軍大臣軍令部総長(東条内閣)」「永野修身*28軍令部総長(東条内閣)」など一部の人間しか起訴されません。
 なお、山田氏は現天皇夫婦の「慰霊の旅」を一定程度、評価しながらもそれは結局「慰霊ではあっても謝罪ではなかった」としています。
 侵略戦争の加害責任を曖昧にした「慰霊」でいいのか、「昭和天皇を父に持つ現天皇」に対して「父の戦争犯罪をわびること」を要求することは「人情として酷」だとしても我々が彼の慰霊を手放しで評価していいのか。あのような「加害責任への謝罪」が弱い慰霊を評価する日本人だからこそ「戦争に無反省な安倍を首相にしてしまう」のではないかという山田氏の日本社会批判には全く同感です。


■「平成流」天皇制とは何だったのか:象徴天皇制のゆくえ(吉田裕*29
(内容紹介)
 「昭和天皇型・右翼的天皇制(例:沖縄メッセージ問題、増原防衛庁長官内奏問題)」ではないものの、果たして手放しで評価できるのか、というのが吉田氏の「平成流天皇制」理解です。
 平成流天皇制は政治と関係がなかったのか。そんなことはとても言えないわけです。
 平成流天皇制と政治の関わりはいくらでも例があるでしょうがわかりやすい例ではたとえば「1992年の天皇訪中」が挙げられるでしょう。
 あの訪中を
1)「天皇の政治利用、天皇外交はよくない」と言う意味で否定的に評価*30するか(なお、吉田氏の立場はそうです)、
2)「欧米が天安門事件を理由に制裁している中、日本が制裁緩和をアピールするような態度は良くない(天皇訪中でなく首相訪中でも良くない)」という意味で否定的に評価するか
3)反共主義、台湾ロビーの立場(産経新聞自民党反中国派など)から否定的に評価するか
4)「日中友好のために大変いいことだ」と好意的に評価するか
はともかくあの訪中に「政治性がない」と思う人は誰も居ないでしょう。
 吉田氏も「天皇の政治利用」に否定的な立場から「ああした行動は望ましい物ではない」としています。
 あるいは共産党が批判する「政治色の強い政府イベント(例:主権回復の日記念式典)への天皇の参加」という問題を挙げてもいいでしょう(もちろん吉田氏の立場も共産党同様、こうしたイベントへの天皇参加に批判的です)。
 なお、吉田氏はこの文章において「天皇外交を過大評価するのは適切でない」としています。たとえば天皇が今訪韓すれば全てが解決するのか。そうはいかないでしょう(そもそもリスキーすぎて訪韓しないでしょうが)。そもそも天皇が訪中しても、「安倍の靖国参拝」などがあれば中国は反発するわけです。天皇訪中にしても「日本国内の反発」はもとより「中国国内の反発にも配慮し事前に入念な打ち合わせをしていたであろうこと」は明白です。「天皇が外国訪問すればそれだけでなんとかなる」つう話ではない。
 たとえば昭和天皇がオランダ訪問したときなんかは、天皇訪問に反発するオランダ国民によって魔法瓶が投げ込まれてるわけです(【昭和天皇実録を読む】国際親善 投げつけられた魔法瓶 昭和46年オランダ・ハーグ(1/2ページ) - 産経ニュース天皇陛下オランダ訪問実現の裏側 歴代大使の「対話」とは? (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)参照)。
 あるいは「天皇がフィリピンやベトナムを訪問する」のと「中国がAIIBや一帯一路でフィリピンやベトナムに接近する」のとどちらが外交的に大きいか。言うまでもないでしょう。カネの力の方が大きいわけです。

参考
【『天皇の政治利用』への赤旗の批判ほか】

憲法に反する天皇の政治利用をやめよ│・・│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会
 安倍政権が、「主権回復の日」式典に、天皇の出席を求める方針を決めていることは、日本国憲法にかかわるきわめて重大な問題である。
 日本国憲法第4条では、天皇は、「憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有さない」とされている。
 この条文にてらして、サンフランシスコ平和条約が発効した日、沖縄・奄美・小笠原が米国の施政権に置かれ、千島列島を放棄した日、そして日米安保条約が発効した日を、肯定的に記念する式典に、天皇の出席を求めることは、憲法の規定に反する天皇の政治的利用といわなければならない。

全文表示 | 志位和夫氏インタビュー 日本共産党トップが「政権交代」のビジョン語った : J-CASTニュースから天皇制関係箇所のみ引用
■インタビュアー
 天皇制についてはいかがですか。
■志位
 私たちは現行憲法の全条項をしっかり守るという立場で、天皇制についてもそうです。天皇の制度にかかわる憲法の規定で一番大事なのは、第4条の「国政に関する権能を有しない」という規定です。私たちは、天皇の制度とはかなり長期にわたって共存していく、そのさい憲法のこの規定が一番大事なところだと考えています。
 先々の問題として、私たちは天皇の制度を人間の平等や民主主義といった観点からすれば問題のある制度だと考えていますし、民主共和制を実現すべきだという立場を取っています。ただ、天皇の制度は憲法上の制度ですから、この存廃は、国民の総意をもって決めるべきものであって、国民が判断していく問題だということも明確にしています。いずれにせよ、私たちが当面めざしている野党連合政権では、天皇の制度の問題は、憲法の規定を厳格に守るということにつきます。
 今の問題として重大なのは、安倍政権が天皇の不当な政治利用をずいぶんやっていることです。この間の問題でとくに許せないのは、4月28日を「主権回復の日」と称して式典を行ったことです。この日は沖縄を切り離し、日本は安保条約を結んで米国の従属下に置かれた日です。これを主権回復の日だと言って天皇を呼んで、「天皇陛下万歳」とやる。最悪の政治利用です。こういうことを止めさせる、ということはきちんとしなければなりません。

平成の天皇と皇后「主権回復」と「屈辱」の日 :日本経済新聞編集委員 井上亮*31
 「私らは民のうちに入ってなかったんだ」
 NHK大河ドラマ西郷どん」。亡き薩摩藩主(ボーガス注:島津斉彬)がいかに民のことを大切に思っていたか力説する西郷隆盛*32に対し、藩命で潜伏していた奄美大島で妻となる愛加那が返した悲しい言葉だ。大島の人々は薩摩藩による過酷な砂糖の収奪「黒糖地獄」に苦しめられていた。
 1952年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効、日本は米軍の占領から独立した。2013(平成25)年3月、政府は「主権回復の日」として同年のこの日、政府主催の式典開催を閣議で決定した。式典には天皇、皇后両陛下が出席することになった。
 沖縄の人々は激しく反発した。同条約では奄美群島小笠原諸島、沖縄は依然米軍の施政下に残されたままだった。沖縄ではこの日は本土から切り離された「屈辱の日」として語り継がれてきた。
 「これを主権回復の日とするなら、沖縄は日本ではないということか」との声が上がった。安倍晋三首相が式典開催を表明した当初、沖縄について何も言及しなかったことも、沖縄県民の感情を悪化させた。式典当日、沖縄では抗議のため市民団体による「4.28『屈辱の日』沖縄大会」が開かれることになった。
 戦争、そして戦後の本土との分断により沖縄が被ってきた苦難への天皇陛下の深い思いは誰もが知るところだ。その沖縄で「再び切り捨てるのか」と批判されている式典への出席。陛下はどう受けとめたのか。
 当時、その心が表に出ることはなかったが、宮内庁関係者によると、陛下は出席に強く難色を示されていたという。
講和条約が発効したとき、沖縄は独立していなかった。沖縄の実情を考慮しないと、本当の意味での独立とはいえない、というのが天皇陛下のお考えだった」と、この関係者は言う。そして、陛下は出席するのであれば、沖縄への思いを込めた「お言葉」を述べることを希望されたという。
 しかし、天皇が沖縄に言及すれば、式典への批判と受け取られる可能性がある。天皇と内閣が対立している印象を与え、政治的に大問題になるとして、周囲が説得。お言葉なしの出席で納得してもらった。
 ある元宮内庁幹部は「天皇の意に沿わないことを要請しない、(ボーガス注:内閣の要請を天皇が)断ることが政治的な行為になってしまう状況に置かないという配慮があるべきだった。従来の政権にはそういう自制があった」と批判する。
 東京・永田町の憲政記念館での式典に翁長沖縄県知事は出席しなかった。首相は式辞で、この日は奄美、小笠原、沖縄が日本から切り離された日でもあることに触れ、「沖縄が経てきた辛苦に深く思いを寄せる努力をなすべきだ」と述べた。沖縄の感情を考え、祝賀ムードは抑え気味だった。
 しかし、式典が終了し、両陛下が退席するとき、会場内から「天皇陛下バンザーイ」の声が上がった。つられる形で壇上の首相、衆院議長を含む出席者の多くがバンザイを三唱した。
 両陛下は無表情でその声を聞いていた。この日を「屈辱」とする沖縄の人々も、天皇が寄り添ってきた「国民」であることに思い至る人は少なかった。

 実際の天皇が、その式典についてどういう考えか、我々には分かりません。
 ただし
1)日経編集委員の井上記者のような「天皇崇拝者」「保守派」の中にすら「主権回復の日式典はおかしい。翁長知事などが反対してるのに、安倍首相は沖縄を馬鹿にしてる」と考えると共に
2)「天皇皇后陛下は立場上参加したが、あんな式典には本心では参加したくなかったのだ(かわいそうに)」「だから天皇陛下バンザーイの声に喜ぶどころか無表情だったのだ」と理解していることはなかなか興味深いかと思います。
 今や「天皇支持者のかなりの部分」は「井上氏的価値観」であり、それは「保守的な価値観」ではあっても、産経的、安倍的な右翼価値観とはかなりかけ離れています。
 もちろん吉田裕氏は「天皇・皇后の主観がどうであれ、あの式典に出席してしまった以上、そんな言い訳は通用しない」「結局、天皇一家は(政府と全面対立など立場的に出来ないので)政府の政治的道具にならざるを得ない存在なのだ」という認識であり、俺も同感ですが。

守った沖縄の誇りと矜持 命削り翁長雄志さんが伝えたこと【金平茂紀の新・ワジワジー通信(37)】 | タイムス×クロス 金平茂紀の新・ワジワジー通信 | 沖縄タイムス+プラス
 翁長さんは元々、(ボーガス注:自民党の)保守政治家だった。それが政府に抗(あらが)うようになったきっかけは何だったのか。ここでは三つのことを記しておく。一つは2007年の教科書検定の際に、沖縄戦のさなか日本軍から強制された住民の「集団自決(強制集団死)」の記述が削除されたことへの強い怒りがあった。これはご本人が語っていたことだ。「日本政府はこういうことまでやるのか」と。さらに、2013年4月28日、政府が鳴り物入りで開催した「主権回復の日」の祝賀式典。沖縄にとってはこの日はサンフランシスコ講和条約締結によって日本から切り離されアメリカ軍政下に入った「屈辱の日」である。それを単純にことほぐ本土政府の浅薄さと非情さ。そして同じ年にオスプレイ配備反対、普天間基地県内移設反対の「建白書」を携えて上京しデモ行進をした際に、銀座で遭遇したヘイトの言葉。「売国奴」「日本から出ていけ」「中国のスパイ」などという暴言を翁長さんは直接浴びせられた。そうした動きと並行して、辺野古新基地工事の強硬な進め方に、翁長さんは沖縄に対する本土政府およびそれを支持する本土国民の、沖縄に対する無関心、本能的な蔑(さげす)み、いじめのような差別意識を体感したのではないか。沖縄人としての健全な郷土愛=沖縄ナショナリズムが強靱(きょうじん)なものとなったのだろう。それが「イデオロギーよりアイデンティティー」という言葉に結実した。

共産、在位30年式典を欠席 天皇の政治的利用を懸念 - 産経ニュース
 共産党穀田恵二国対委員長は20日の記者会見で、24日に開く政府主催の天皇陛下在位30年記念式典に党として出席しないことを明らかにした。理由について安倍晋三首相が施政方針演説で明治天皇の短歌を引用したことに触れ「今の政府には、天皇の政治的利用の動きがあると感じざるを得ない」と語った。
 穀田氏によると、政府から出席の打診があったが、事前に断ったため招待状は来ていないという。共産党は在位10年、20年式典にも出席していない。

(再掲載)天皇の「代替わり」にともなう儀式に関する申し入れ│天皇制│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会
・新たな天皇の即位にあたって、政府は1989年から90年にかけて行われた「平成の代替わり」の儀式を踏襲するとしています。ここには日本国憲法にてらして重大な問題があります。
・前回の「代替わり」で行われた以下の国事行為や儀式は、明らかに日本国憲法の原則――国民主権政教分離の原則に反するものであり、根本的な見直しが必要だと考えます。
 「剣璽等承継の儀」(国事行為として行われた)は、登極令にあった「剣璽渡御(とぎょ)の儀」を、ほぼそのまま再現し、皇位のあかしとされる「三種の神器」を構成する剣・璽(勾玉)と、「国璽」・「御璽」を、新しい天皇に引き継ぐ儀式として行われました。「三種の神器」は、『古事記』や『日本書記』にのべられた神話で、天照大神が孫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に、地上を統治せよと命じて高天原から下ろしたさいに授けたとされるものです。
 現行憲法は、天皇の地位について、「主権の存する国民の総意に基づく」としています。天皇の地位は、主権者国民の総意にもとづくものであり、「三種の神器」の「承継」をもって天皇の「代替わり」のあかしとする儀式を国事行為として行うことは、憲法国民主権の原則と両立しません。また、きわめて宗教色の濃いこうした儀式を国事行為として行うことは、憲法政教分離の原則とも相いれません。
 「即位の礼」の一連の儀式のなかでも、とくに「即位礼正殿の儀」は、大きな問題があります。
 前回の「即位礼正殿の儀」は、即位を公に宣明するとともに内外の代表が即位を祝う儀式として行われました。「神話」にもとづいてつくられた、神によって天皇の地位が与えられたことを示す「高御座」(たかみくら)と呼ばれる玉座から天皇が言葉をのべ、その下から内閣総理大臣が祝いの言葉をのべて万歳三唱が行われました。
 こうした儀式は、憲法国民主権政教分離の原則とは両立せず、国事行為にふさわしくありません。

秋篠宮さま、大嘗祭支出に疑義「宮内庁、聞く耳持たず」:朝日新聞デジタル
秋篠宮さまが30日の53歳の誕生日を前に紀子さまと記者会見し、天皇の代替わりに伴う皇室行事「大嘗祭(だいじょうさい)」について、「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当かどうか」と述べ、政府は公費を支出するべきではないとの考えを示した。この考えを宮内庁長官らに伝えたが「聞く耳を持たなかった」といい、「非常に残念なことだった」と述べた。
・政府が決定した方針に、皇族が公の場で疑義を呈することは異例。
・1990(平成2)年に行われた前回の大嘗祭では、国から皇室の公的活動に支出される公費「宮廷費」約22億5千万円が使われ、「政教分離に反する」という批判は当時から根強くあった。政府は今回も、儀式に宗教的性格があると認めつつ、「極めて重要な伝統的皇位継承儀式で公的性格がある」として宮廷費を支出する方針を決めた。前回を踏襲して同規模の儀式を想定しているが、人件費や資材の高騰で費用が増す可能性もある。
 これに対し、秋篠宮さまは天皇家の「私費」にあたる「内廷会計」で賄うべきだと述べた。遺産や国から支出されている内廷費などだが、使途は天皇家の裁量で、通常の宮中祭祀(さいし)にも使われている。
 秋篠宮さまは「身の丈にあった儀式」にすることが本来の姿、とも述べた。前回の代替わりでも同様の意見を述べていたといい、今回も宮内庁の山本信一郎*33長官らに「かなり言った」というが、考えてもらえなかったという。

 まあ秋篠宮もこうした方針が山本長官の一存のわけがなく「安倍の意思」であり自分の発言が「事実上の安倍批判になること」は理解しているでしょう。彼の立場を考えれば随分と思い切った発言をしたもんです。

私費で賄う大嘗祭、秋篠宮さま自ら提案 既存の神殿活用:朝日新聞デジタル
 天皇の代替わりに伴う皇室行事「大嘗祭(だいじょうさい)」への公費支出について、秋篠宮さまが宗教色が強いとして宮内庁に疑義を呈した際、代替案として、宮中の「神嘉殿(しんかでん)」を活用して費用を抑え、それを天皇家の私費で賄うという具体案を示していたことがわかった。
 使用後に解体・撤去される「大嘗宮(だいじょうきゅう)」を新設しない分、大幅に費用を抑えられる。

東京新聞:<代替わり考 皇位継承のかたち>(4) 大嘗祭に国費 違憲可能性:社会(TOKYO Web)
天皇家の内部から、こういう発言が出てくるとは感慨深い」。
 元裁判官の井戸謙一弁護士(64)は、大嘗祭(だいじょうさい)をめぐる秋篠宮さまの発言に時代の変化を感じている。
 大阪高裁判決から二十四年を経て、政府は新天皇大嘗祭を再び国費で行う。一部の有識者から内々に意見聴取しただけで、国民的な議論はなく、前例をほぼ踏襲した。関係経費は二十七億円を超え、前回より五億円近く膨らむ。
 「宗教色が強いものを国費で賄うことは適当かどうか」。
 秋篠宮さまは昨年十一月、五十三歳の誕生日会見で政府方針に疑問を示した。天皇家の私的費用の範囲内で「身の丈に合った儀式」とするのが、本来の姿であるとの持論を語った。
 天皇憲法に定める象徴の地位を安定的に維持するには、国民の理解と支持が不可欠だ。井戸は「皇室行事に国費を使うのは理屈上、筋が通らない。(ボーガス注:安倍政権のような極右路線はかえって)皇室への国民の理解や支持を失わせ、自分たちの地位や立場を危うくするという危機感が発言の背景にあるのではないか」と推し量る。
 昨年十二月、国費支出に反対する宗教者と市民約二百四十人が東京地裁に提訴した。原告には大阪訴訟の経験者もおり、最高裁まで争うことも視野に入れる。

 井戸氏が言うように、単純な「政教分離原則主張」や「コストカット主張」ではなく、おそらくは「皇室を安泰にするためにはむしろ安倍のような極右から距離を置いた方がいい、政教分離原則無視だの多額の税金浪費などかえって反発を買い皇室を危うくする」という性格を持つ秋篠宮発言を過大評価すべきではありません。そもそも「内廷費だって税金じゃないか」「公的性格を持つ天皇が宗教行事をすること自体が問題。大嘗祭はそもそもすべきでない」つう理解もあり得るわけです。
 一方で彼や「彼の兄(皇太子、5月から天皇)」「彼の父(天皇、5月から前・天皇)」が安倍ほどのウヨでないことも確かでしょう。米長に対する天皇の対応などそのいい例です。もちろん産経などウヨがこうした天皇秋篠宮に対し内心では「なぜ天皇は米長を冷たくスルーした!」「なぜ天皇は即位後一度も靖国に来ない!(もちろんA級戦犯なんか合祀するから参拝しないのだし、富田メモで分かるように昭和天皇ですら戦犯合祀以降は参拝していませんが)」「なぜ秋篠宮大嘗祭への宮廷費支出に反対する!。共産党と同意見とはどういうことだ!。(紀元節復活に批判的だった)三笠宮のまねか!」などと怒りを覚えながらもそれが「皇室愛好家という建前上言えない」ことは言うまでもありません。
 ウヨ連中が内心では現皇室に憤りを持ってるであろう事は以下の「小堀宮司辞任騒動」記事でも明白でしょう。とはいえ「ウヨ連中と距離を置くからこそ」、「ウヨ以外が現皇室に好意的」という皮肉な面が明らかにありますが。

「陛下は靖国を潰そうとしてる」靖国神社トップが「皇室批判」|NEWSポストセブン
 靖国神社のトップである小堀宮司から、驚くべき発言が飛び出した。
「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国神社は遠ざかっていくんだよ。そう思わん?。どこを慰霊の旅で訪れようが、そこには御霊はないだろう?。遺骨はあっても。違う?。そういうことを真剣に議論し、結論をもち、発表をすることが重要やと言ってるの。はっきり言えば、今上陛下は靖国神社を潰そうとしてるんだよ。わかるか?」
 さらに発言は、代替わりで次の天皇となる皇太子夫妻にも向けられた。
「あと半年すればわかるよ。もし、御在位中に一度も親拝(天皇が参拝すること)なさらなかったら、今の皇太子さんが新帝に就かれて参拝されるか?。新しく皇后になる彼女は神社神道大嫌いだよ。来るか?」
 小堀宮司が語気を強めたのは、今上天皇が即位以来、一度も靖国を参拝したことがない一方、かつての戦地を訪れ、戦没者の霊を慰める旅を続けてきたことを指しているとみられる。
 その慰霊の旅が、小堀宮司の目には靖国神社を否定する行為に映っていると、靖国神社関係者が言う。
 「小堀宮司からすれば、英霊の御霊は靖国にこそあり、戦地にはない。にもかかわらず、今上天皇靖国よりも慰霊の旅を選んでいるとなると、靖国の存在意義を否定することになってしまうという思いがあったのではないか」
 しかし、この発言は靖国神社内でも問題視された。
 靖国神社は来年までに天皇の参拝を実現させようとしていた。靖国神社職員はこう語る。
「平成の御代のうちに天皇陛下にご参拝をいただくことは、私たち靖国神社からすると悲願なのです。小堀宮司は、“平成の御代に一度も御親拝がなかったらこの神社はどうするんだ”と口にしていました。そうして宮内庁に対し、宮司自らが伺って御親拝の御請願を行なうための交渉を内々にしているのですが、まだ実現の目処は立っていない」
 天皇の参拝を求める焦りが発言の背景にあったのだろうか。問題発言に至るやり取りを見ると、小堀宮司の真意が分かる。
 この日の会議は、靖国の創立百五十年史略年表の作成・出版などについて話した後に「戦犯に対する誤解や東京裁判の不当さについて調査考証する」という議題に入った。そこで出席者の職員が「富田メモ」について言及したことが、小堀発言に繋がった。
 富田メモとは、富田朝彦*34宮内庁長官(在任は1978~1988年)が昭和天皇の非公開発言を記したメモで、靖国A級戦犯が合祀されたことに関し、「だから、私はあれ以来参拝していない。それが私の心だ」との記述があった。2006年に日経新聞がメモの存在をスクープすると、「昭和天皇の真意が分かる超一級史料」と評価される一方、「陛下の真意とは限らない」と否定的意見も上がり、真贋をめぐる大論争となった。それに伴い、A級戦犯靖国神社への合祀の是非や、小泉純一郎首相(当時)の靖国参拝議論も過熱した。
 靖国神社はこの富田メモについて、現在に至るまで一切コメントしていない。だが、実際は“深い棘”として刺さっていたようだ。
 この富田メモについて、職員が、「もしそれが本当の昭和天皇の発言だったらどうするんだ、ということで私は真剣に考えましてですね」と言い出し、合祀の経緯を振り返った上で、こう熱弁を振るった。
「このまま時代を50年、100年経過していったときにどういうふうな説明をして、国民が理解していけるのか、というところの先読みしたような考え方を持っていく必要があるんじゃないか」
 ところがこの職員の発言を、小堀宮司は(ボーガス注:富田メモのことなど考える必要はないと)いきなり遮り、切って捨てた。
 そうして、冒頭の発言が飛び出した。つまり、小堀発言は富田メモから連なる、天皇靖国の“複雑な関係”が伏線にあったのだ。
富田メモについては靖国神社の中でも“タブー扱い”されてきた。昭和天皇今上天皇の御親拝が途絶えている真意についても触れないできたわけです。(ボーガス注:小堀宮司には)どんな事情が背景にあるにせよ、とにかく天皇の御親拝を実現させたいという強い意思を感じます。しかし、それが実現しないことの不満となれば、天皇陛下への批判となってしまう。(ボーガス注:立場上、天皇批判できないが、靖国参拝しない天皇に対し不満がたまっているという)靖国神社が抱えるジレンマが、ついに噴出してしまったということでしょう」(前出・靖国神社関係者)
 発言の主である小堀宮司とは、どんな人物なのか。
 小堀宮司は、3つの大学、大学院を出たあと伊勢神宮に奉職。以来、伊勢神宮一筋で、宮司を補佐する禰宜(ねぎ)という要職に登り詰めた。
 靖国の前宮司・徳川康久氏が、戊辰戦争の“賊軍”である幕府軍会津軍の戦死者も合祀に前向きな姿勢を示したことなどが問題視され、「一身上の都合」で辞任したのを受けて、靖国宮司に就任した。
 伊勢神宮時代には、メディアにも何度か登場している。2016年に天皇生前退位の「お気持ち」を表明された際には、中日新聞(2016年8月9日付)の取材に、〈苦心されてお言葉を選ばれたのだろう。天皇陛下が『伝統の継承者』であり続けるため、現行制度の問題を問い掛けているのでは〉と賛同する姿勢で答えていた。
 ところが、教学研究委員会では、まったく別の意見を述べている。
「あのビデオメッセージで譲位を決めたとき、反対する人おったよね。正論なんよ。だけど正論を潰せるだけの準備を陛下はずっとなさってる。それに誰も気がつかなかった。公務というのはそれなんです。実績を陛下は積み上げた。誰も文句を言えない。そしてこの次は、皇太子さまはそれに輪をかけてきますよ。どういうふうになるのか僕も予測できない。少なくとも温かくなることはない。靖国さんに対して」
 生前退位に反対だったという本音をにじませ、皇太子に代替わりしても靖国との距離は広がるばかりだと危惧しているように聞こえる。

靖国神社宮司の小堀邦夫氏が退任の意向 会議で「不穏当」発言 - 産経ニュース
 靖国神社は10日、小堀邦夫宮司(68)が宮内庁を訪れ、宮司を退任する意向を伝えたと発表した。靖国神社は「小堀宮司による会議での極めて不穏当な言葉遣いの録音内容が漏洩(ろうえい)した」としている。
 今月発売の週刊ポストが、6月に靖国神社で開かれた会議で小堀氏が「(天皇)陛下は靖国神社を潰そうとしている」と発言し、録音を入手したと報じていた。
 靖国神社によると、小堀氏が宮内庁を訪れて謝罪し、退任の意向を伝えたという。後任の宮司は今月26日の総代会で正式決定する見込み。

 
大嘗祭違憲訴訟で請求却下 国費支出差し止め、東京地裁 | 共同通信
 「権力の飼い犬」に転落した日本の裁判所は怒りを禁じ得ません。


天皇訪中】

【地球コラム】2度目の「天皇訪中」はあるのか~中国の対日接近戦略を探る~:時事ドットコム
 中国共産党・政府が初めて、昭和天皇に直接訪中を要請したのは1979年4月である。故周恩来*35夫人のトウ穎超*36全国人民代表大会常務副委員長が来日し、昭和天皇と会見した際だ。
 「陛下のご都合の良い時期に中国を訪れ、ご覧になることを希望します」。
 トウがこう言及すると、天皇は「もし機会があれば、うれしく思います*37。これは日本政府が決めなければならないことです」と応じたが、突然の天皇訪中要請に日本政府は衝撃を受けた。
 このやり取りを収めている楊振亜元駐日大使の回顧録は、会見後に日本政府当局者が中国代表団に「訪中要請に関して発表しないでほしい」と伝達したと記述している。日本側は、中国指導者の昭和天皇訪中要請が公になれば、右翼の反発など日本国内で起こる「反応」に神経を尖らせたのだ。
 中国共産党天皇訪中にこだわり続けた理由について、戦後長く対日関係に携わった元中国外務省幹部は「天皇訪中の実現は反中勢力が中日友好に反対する根拠を失うことになる」と解説した。中国政府は、日本において首相にはない「天皇陛下の重み」を熟知しており、陛下*38の訪中で日中友好の雰囲気が日本国民に広がると期待した。
 さらに李鵬*39来日直後の89年6月、中国民主化運動が人民解放軍に弾圧された天安門事件が発生し、西側諸国の対中制裁が強化された。すると中国政府は、天皇訪中を「突破口」に国際的孤立から脱却しようと考えた。長く中国外交を統括した銭其シン*40元副首相は、2003年に発行した回顧録『外交十記』の中で、天皇陛下訪中が「西側の対中制裁を打破する上で積極的な役割を発揮し、その意義は両国関係の範囲を超えたものだった」と回想した。
 天皇陛下訪中に向けた外交交渉が続けられている最中、実質的な交渉責任者だった当時の橋本恕(ひろし)駐中国大使は中国指導者に「どうして陛下訪中にこだわるのか」と尋ねたことがあった。こう答えが返ってきた。
 「中国の国家主席や党総書記はいつでも日本に行ける。日本から天皇が中国に来られることが難しいのは分かるが、日本の元首*41においでいただかないと、こちらもトップを訪日させることは困難になる」。

 まあ中国側も「戦争犯罪人昭和天皇」にいろいろ思うところはあるでしょうが「高度な政治的判断」つう奴でしょう。「是非*42はともかく」そのあたり中国政府は非常に現実的かと思います。言うまでもないですが例のペマ・ギャルポの「中国の目的は天皇の処刑」なんつうのは完全にデマの訳です。まあペマ本人ですら「天皇の処刑」なんて中国叩きのために振り回してるだけで、本心ではデマだと思っているでしょうが。「話が脱線しますが」、ペマみたいなクズを良く例の「Mさん(自称ダライ支持者。現在、長期お休み中)」も擁護できるもんです。
 ダライ一味への身びいきがあまりにも酷すぎる。俺はペマみたいなクズが居る限りダライラマ集団なんか支持する気には全くなりませんね。まあ「公平のために書いておけば」ダライラマ集団が「清廉潔白、非の打ち所がない存在」でも俺は「日中友好は大事だ」という評価により、ダライなど支持しません(ただしその場合は「ダライ集団は清廉潔白ないい人たちなのに見殺しにしている(情けない)」という心の痛みは感じるでしょう)。しかし「清廉潔白どころか日本ウヨと野合するクズ」なんだから、ダライ一味に対し、ためらいなく「誰が手前らなんか支持するか。おととい来やがれ、この腐れチベット」といえます。

保守派の反対論、官邸が説得 天皇訪中(平成4年) :日本経済新聞
・「人々の温かい歓迎を懐かしく思い出します」。
 天皇陛下は今年5月、来日した李克強*43(リー・クォーチャン)首相との懇談でご自身の92年の訪中に触れられた。李氏も「日中関係において極めて重要な出来事で、中国人民は今でもよく覚えています」と応じた。
・1989年6月4日に天安門事件が起きた。中国共産党が学生デモを武力で鎮圧して多数の死傷者を出した。西側諸国は一斉に反発して制裁を発動。中国は孤立した。包囲網を破る糸口として目を向けたのが日本だ。外相だった銭其シン氏は回顧録で「西側の対中制裁を破る最良の突破口が日本だった」と明かした。天皇訪中は切り札の一つだった。
 もともと中国側は天皇訪中の実現に熱心だった。78年に来日した当時のトウ小平*44副首相は戦後初めて中国指導者として昭和天皇と会見した。その後、日本側に重ねて天皇訪中を招請していた。
 (ボーガス注:日中戦争の当事者である)昭和天皇の時代は難しかったが、89年の代替わりが好機となった。92年1月の北京での日中外相会談では天皇訪中を促す銭外相に、宮沢喜一*45内閣の外相だった渡辺美智雄*46が「政府内部で真剣に検討する」と踏み込んで応じた。
 当時の宮沢首相や加藤紘一*47官房長官は決定にこぎつけるまでの半年間、党内保守派の反対論にさらされた。中国から何らかの謝罪を求められるのではないかといった懸念が根強かったからだ。
 自民党総務会でも「天皇陛下が政治利用されかねない」などの批判が噴出。自民党最高顧問懇談会でも首相経験者の中曽根康弘氏が最後まで慎重論を崩さず、宮沢氏のほか駐中国大使だった橋本恕氏が頻繁に帰国して党内の説得に奔走した。
 92年10月23日、北京市内の人民大会堂で開かれた楊尚昆*48国家主席主催の晩さん会。天皇陛下が「わが国が中国国民に対し多大の苦難を与えた不幸な一時期がありました。これは私の深く悲しみとするところであります」とあいさつされると、会場からは万雷の拍手が湧いた。6日間で北京、西安、上海の3都市を回り、中国国営メディアもこぞって好意的に報じた。
 8年後、オランダを訪問した天皇陛下は当時駐オランダ大使だった池田氏*49に「(92年の)中国訪問は良かったと思いますか」とお尋ねになられたという。後年も気に懸けられていたようだ。

元外交官が明かす天皇陛下海外訪問の意味——池田維・霞山会理事長に聞く | nippon.com
■池田
 実は、2000年のオランダ訪問最終日の朝、天皇陛下が私に対して「池田さんは、中国訪問の時はいろいろ働いてくれましたね。(私の)中国訪問は、良かったと思いますか*50」と尋ねられました。天皇陛下から、そのような質問があることは大変珍しいことです。
 私は「行っていただいたことは良かったと思います。」とお答えしました。
■野嶋
 1992年当時、中国の外相だった銭其シン氏が著書の中で、天安門事件後の対中制裁の包囲網を打破するために、天皇陛下の訪中を利用したと受け取れるような記述を、自身の回顧録(2003年出版)の中で書いていますね。
■池田
 しかし、当時は欧米諸国に天皇訪中が良くないという意見はなく、当時の日本の雰囲気でも、(ボーガス注:反日デモなど)治安への不安を議論はしても、訪問の意義自体を否定する意見はなかったように思います。もともと天皇陛下の訪中は、(ボーガス注:天安門事件発生前から)中国政府からの長年の要請があって実現したものです。

 少なくとも現天皇が「産経的な反中国でないこと」だけは明白でしょう。

「なぜ官僚の私が…」天皇訪中、大使は保守派を説得した:朝日新聞デジタル
 天皇の中国訪問は、先代からの宿題だった。
 昭和天皇は訪米を控えた1975年9月26日、米タイム誌のインタビューで「もし日中平和友好条約が締結され、中国を訪問する機会が訪れれば非常にうれしい*51」と答えている。
 侍従長を長く務めた入江相政氏の日記には、昭和天皇が84年4月20日に「中国へはもし行けたら」と思いを述べた、と記されている。これに対し、当時の中曽根康弘首相は「沖縄がまだの時、中国へおいでになるのもどうか。全(斗煥・韓国)大統領へのご答礼の関係もあるし*52」と慎重だったという。
 こうして中国訪問は、昭和天皇が亡くなる直前まで切望しながら果たせなかった沖縄訪問とともに、次の代に持ち越された。
 いまの天皇陛下は皇后さまとともに、即位後最初の外国訪問として91年、タイ、マレーシア、インドネシアの東南アジア3カ国を訪問した。それに続いて92年、2回目の外国訪問として中国を訪れることになる。
 「両陛下の訪中は、橋本恕(ひろし)*53大使が命をかけて実現させた」と、当時駐中国公使だった槙田(まきた)邦彦さん(74)は振り返る。
 当時、天皇訪中には、自民党内の保守派を中心に「天皇の政治利用だ」「謝罪外交ではないか」などとして、強い反対の声があった。
 衆院議員だった石原慎太郎*54は「文芸春秋」92年10月号に「多くの国民の不安」の題で寄稿し、「憲法違反の恐れ」に言及している。
「この御訪中の目的が、日本としての最強の切り札を使って従来の日中関係に片をつけ、時代を区分するためというなら、それは明らかに外交の案件であって、『政治』以外のなにものでもなく、憲法に決められている『象徴』としての天皇の規範を逸脱するものであって、天皇をして、陛下が日頃遵守(じゅんしゅ)するといわれている現行憲法に違反する行為をとらしめる恐れがある」

 確かに天皇訪中は「天皇の政治利用」ではあるんですが、それは何も「訪中に限らず」、天皇の外国訪問は全てそうです。そして米長発言で分かるようにウヨ連中は「自分に都合のいい形なら」政治利用ウエルカムのわけです。石原発言も本心は「反共右翼としてのアンチ中国でしかないこと」は言うまでもありません。


【雅子妃の病状と「公務」】
 吉田論文も指摘していますが「良かれ悪しかれ」雅子氏の病気によって「公務のありよう(なお吉田氏は国事行為以外の「公務」、特に「いわゆる皇室外交」のような政治性の強い物については批判的、否定的です)」も変化していくでしょう。
 精神的負担の少ない国内はともかく、負担の大きい海外、つまり皇室外交については「皇族の皇室外交」はともかく「天皇、皇后の皇室外交」は「病気が治癒したとは思われない当面は」数が減っていく(あるいは日程のスリム化)かもしれません。
 それについての記事もいくつか紹介しておきます。

東京新聞:<象徴天皇と平成>(3) 心の病 共に向き合う:社会(TOKYO Web)
 平成最後の園遊会が昨年十一月九日、東京・赤坂御苑で開かれていた。時折雨脚が強くなる中、ひときわ注目を集めたのは、皇太子妃雅子さまの姿だった。
 適応障害と診断され、二〇〇三年十二月から療養を続けられる雅子さま園遊会には一五年秋に復帰したが、負担を考慮し、いつも冒頭の数分間で退出していた。昨秋は予定された約四百メートルをすべて歩き、招待客とにこやかに会話する姿が体調の良さを印象づけた。
 宮内庁は、雅子さまの公務の出席予定に「当日のご体調に支障がなければ」と留保条件を付けることが多い。体調に波があり、直前まで可否の判断が難しいという理由からだ。
 代替わり後について、宮内庁幹部は「今の皇后さまと同じような公務は難しいだろう」とみる。

皇太子の仏訪問に同行しない雅子妃に「新皇后の覚悟」|NEWSポストセブン
 9月7日から15日まで、日仏友好160周年に合わせてフランスを公式訪問する皇太子に、雅子妃は同行しない。
 「フランス側からは、夫妻揃っての“招待”だったそうです。当然、同行されるとみられていたのですが、宮内庁は8月に入ってから見送ることを発表しました」(皇室記者)
 それだけに、「1週間にも及ぶ海外訪問や長距離移動には、まだ耐えられないのだろうか」(別の皇室記者)と心配の声も囁かれた。

雅子妃の体調への気遣い、6月植樹祭の日程を短縮する案も|NEWSポストセブン
 注目されるのが地方公務の際の日程だ。
 雅子妃にとって、新皇后としての最初の地方での公務は6月2日に愛知県で行なわれる全国植樹祭になる。国民体育大会、全国豊かな海づくり大会と並んで天皇、皇后が毎年出席する「三大行幸啓」の一つだ。
 今上天皇美智子皇后は例年、三大行幸啓には複数泊の日程を組み、開催県の福祉施設などを回って慰問や交流を続けてきた。
 新天皇と雅子新皇后の国民への“お披露目”となる愛知の植樹祭には約1万人が招待されており、即位を祝う人々の大歓迎を受けることが予想される。
「ただ、植樹祭の行幸啓日程を6月1日から1泊2日にする案も検討されているという。従来より訪問先は減ることになるが、雅子妃が療養しながらの公務になることを考えれば、あり得る配慮でしょう」(同前)


■日本の官民は石炭火力発電所の輸出を継続できるか:日本のインフラ輸出戦略に対して高まる国際社会からの批判(波多江秀枝)
(内容紹介)
 題名で分かるように「火力発電所」の「輸出」が題材であり、国内での火力発電所建設も重要な問題ですが、今回は論じられていません。
 赤旗の記事紹介などで代替します。

海外石炭火発支援やめよ/岩渕議員 住民の生業壊す/参院委
 岩渕氏は、インドネシア・チレボンの発電事業拡張計画、ベトナム・ギソンの建設計画に反対運動を起こした地域住民や弁護士から繰り返し建設中止の要請を受けた事実を突きつけ、「環境への重大な影響に加え、住民の生業(なりわい)を壊し、人権侵害も発生している」と告発しました。
 ベトナムでの計画への丸紅の出資に対する保証を検討している日本貿易保険(政府全額出資)の板東一彦社長は「現地視察も含めて必要があれば行いたい」と述べ、実態把握の必要性は認めました。
 岩渕氏は、政府のインフラシステム輸出戦略(18年改訂)で海外の石炭火力発電所への「公的金融による支援を強化」するとしていることをあげ、「世界の流れに逆行する公的支援は中止すべき」だと主張しました。

日本関与の「石炭火力発電」に反対運動が激化 | 資源・エネルギー | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準岡田広行*55
 日本の政府系機関や企業が関与してインドネシアで進められている石炭火力発電所建設計画が、環境や生活の破壊を招くとの理由から、地元住民の強い反対に直面している。
 反対住民らは、計画実施の前提条件となっている地元行政機関による環境許認可の取り消しを求める訴訟を提起。行政裁判所が、プロジェクトの環境許認可を無効とする判決を相次いで出した。
 地元住民による反対運動に遭遇しているのは、インドネシア西ジャワ州チレボン県およびインドラマユ県での石炭火力発電所拡張計画だ。
 チレボン拡張事業は、丸紅などの出資によって建てられた既存の石炭火力発電所(66万キロワット)の隣接地に出力100万キロワットの大型石炭火力発電所を新たに建設しようというもので、事業主体の発電企業CEPR社には、丸紅や、東京電力グループおよび中部電力が設立したJERAがインドネシアの大手企業などとともに資本参加している。また、協調融資する金融機関として、日本の国際協力銀行JBIC)のほか、三菱東京UFJ銀行みずほ銀行三井住友銀行の3メガ銀行および韓国輸出入銀行、蘭*56ING銀行が名前を連ねている(仏クレディ・アグリコルは撤退)。
 一方、インドラマユ拡張計画の主体はインドネシア国有電力会社(PLN)。中国の融資で建設された既存の石炭火力発電所(33万キロワットの発電設備3基)の東隣に、100万キロワットの大型石炭火力発電設備2基を建設しようとするもの。そのうち1基の建設費について、日本の国際協力機構(JICA)が円借款を検討している。
 両プロジェクトはいずれも現在、法的な問題に直面している。チレボン拡張事業をめぐっては、地元の西ジャワ州が出した環境許認可が、その前提となる「空間計画」(土地利用計画)に含まれていない地域を建設予定地にしていたことを理由に、地元のバンドン行政裁判所で許認可取り消しの判決が出された。
 そうしたさなかの12月5日、チレボン石炭火力をめぐる訴訟にかかわっている弁護士や地元住民らが来日し、記者会見をした。その1人である地元住民で現地NGOメンバーのリキ・ソニア氏は「1号機が5年前に稼働して以降、魚が取れなくなり、発電所周辺での塩作りでも降下煤塵(ばいじん)による被害が深刻になっている。ぜんそくなどの健康被害、売春や犯罪の増加など社会問題も起きている」と発言。「今後、2号機が建設された場合、影響はさらに深刻になる」と、建設の中止を訴えた。
 時をほぼ同じくして12月6日、インドラマユ拡張計画についても、同じくバンドン行政裁判所が、事業の前提となっている環境許認可を取り消す判決を下した。こちらについては、「本来、西ジャワ州政府によるべきところを、権限のないインドラマユ県知事が出した」ことや、「影響について原告や住民への公表や告知がなかった」ことなどを理由に許認可を無効とした。インドラマユ県や事業主体のPLNは判決を不服だとして控訴した。
 「インドラマユでの反対運動には激しい弾圧が加えられている」と支援者の1人で国際環境NGOのFoEJapanに所属する波多江秀江氏*57は指摘する。2017年12月17日の深夜1時ごろ、インドネシア国旗を上下逆さに掲げたことが「国旗侮辱罪」に相当するなどとして、反対派の農民3人が地元の警察に逮捕された(当日23時に保釈)。
 こうした経緯について波多江氏は「国旗侮辱罪は言いがかりにすぎない。公権力による強硬な行為は、住民に恐怖感を残し、反対運動への参加を躊躇させることにつながりうる。人権擁護の観点からも憂慮すべきことだ」と指摘している。
 チレボン拡張計画を巡っても、反対派住民の自宅に「プレマン」(ちんぴら)と称される不逞のやからが押しかけ、反対運動をやめるように圧力をかけているという。
 インドネシアでは、石炭火力発電所のみならず、最重要な国家プロジェクトである高速鉄道建設計画でも、立ち退きを強いられている住民による反対運動に見舞われている。
 インドネシア政府はこうした動きに危機感を強めるとともに、昨年4月12日、開発を一気に推し進めることを目的として「2017年政令第13号」を制定した。チレボン拡張計画に関する行政訴訟で違法判決が出されるわずか5日前のことだ。
 同政令は「国家戦略上、価値のある活動は、既存の空間計画に規定されていない場合であっても推進可」とするものだ。これを踏まえて、チレボン拡張事業を担うCEPRは新たに環境許認可を取得する一方で、JBICなどは同許可が新政令と整合的であると見なして融資に踏み切った。
 とはいえ、住民から12月に起こされた行政訴訟で環境許認可が再び取り消された場合、チレボンの拡張計画は暗礁に乗り上げる可能性がある。そうなった場合の影響について、JBICは「仮定の質問には答えられない」とする一方で、前出の波多江氏は「インドネシア国民にツケが回されかねない」と指摘する。
 住民側が新たな訴訟を提起したことについて、チレボン拡張計画を担う発電事業会社に出資する丸紅およびJERAは「行政訴訟の状況を注視していく」と答えている。そのうえで両社とも、「引き続き発電事業会社では、現地住民との対話を重ねながら、奨学金の支給、離乳食の提供、小口融資、職業訓練およびマングローブでの植林など、さまざまなCSRプログラム(生計回復プログラム)を実施していく」などと説明している。
 一方、協調融資で名を連ねるみずほ銀行など3メガ銀行は、「個別案件については回答を差し控える」としている。
 既存のチレボン石炭火力発電所をめぐっては、これまでにも周辺海域での漁獲量の減少や、降下煤塵による塩田への影響などさまざまな被害が周辺住民から指摘されていた。
 これに対して、発電会社に出資する丸紅は、「事業主体の現地企業から委託され、インドネシア・ガジャマダ大学が実施した調査では、いずれも発電所に起因するものではないと報告されている」と反論。また、不逞のやからによる圧力について、丸紅は「そのような事実は把握していない」としている。
 インドラマユ拡張事業について、JICAは基本設計、入札補助、施工監理などを対象としたエンジニアリングサービス借款貸付契約をすでに締結しており、これに基づいて融資を実施している。その一方で、建設事業本体への融資については「現時点でインドネシア側から円借款の正式要請は受けていない」としたうえで、「判決内容をきちんと確認していく」としている。JICAでは正式な要請があった場合、「環境社会配慮ガイドラインに適合するかどうかをチェックしていく」(壽樂正浩・東南アジア第1課主任調査役)。
 しかし、反対住民側はすでにエンジニアリングサービス業務にJICAが融資をしていることについても問題視しており、今年1月10日にFoE JAPANなどが河野太郎外相およびJICAの北岡伸一理事長宛てに、公的支援停止を求める要請書を送っている。
 インドネシアでは、セメント工場建設に関する環境許認可が2016年10月に最高裁判所によって無効とされるなど、大型の開発プロジェクトが頓挫する例も出ている。
 環境や人権状況、石炭火力発電所の事業性に関する詳細な検証が必要になっている。

 まあ、共産党東洋経済などの批判を信じるならば日本のODAだって環境や現地住民の声に全然配慮してないわけです。「中国の一帯一路とは日本は違うんです。現地住民の声や環境に(以下略)」なんて偉そうなことは全く言えません。そしてまあ、例の一般社団法人 アジア自由民主連帯協議会も「中国ガー」ばかりでこういうことには全く無関心なわけです。
 しかしこうなると「カンボジアはフンセン独裁」「タイとミャンマーは軍政」「ベトナムラオス共産党一党独裁」で「一応民主国家のインドネシアがこれ」ですから東南アジアってのは今更ながらですが「民主化が遅れてる」わけです。

東北電力、ギソン2石炭火力発電事業へ出資 - NNA ASIA・ベトナム・電力・ガス・水道
 東北電力は22日、ベトナム北中部タインホア省のギソン第2石炭火力発電所(ギソン2)事業に10%出資参画すると発表した。収益力の強化を図る。
 東北電力は同日、ギソン2の事業主体「ギソン2パワー・リミテッド・ライアビリティー・カンパニー(NS2PC)」の株式10%分を、同社に出資する丸紅から取得する持ち分譲渡契約を締結した。取得額は明らかにしていない。NS2PCの出資比率は今後、東北電力10%、丸紅40%、韓国電力公社50%となる。ギソン2の運転開始は2021~22年の予定。

 話が脱線しますが「韓国電力公社50%」つうのが興味深い。今や「日本企業と韓国企業のビジネス」は全く珍しくない。こういう状況で「韓国と国交断絶だの制裁だの」産経らウヨが言うような馬鹿なことが出来るかどうかは、言うまでもないでしょう。


シリーズ「メディアと民主主義を問う」
■弱者の声をていねいにすくうメディアに:「客観・中立」をこえて、マスメディアに求められること(林香里*58
(内容紹介)
 ネット上の「林氏の著書『メディア不信』書評」や「林氏に関する記事」「林氏個人が書いた記事」などの紹介で代替。

「不信」よりも「無関心」:問われる日本のメディアの在り方 | nippon.com
・日本の新聞やテレビは、部数を減らさないように、視聴率を落とさないように、静かについてくる従順なメディア利用者を対象とした紙面づくり、番組づくりを心掛けてきた。発表される政府や企業の「公式情報」は無難にカバーする。解説は、お茶の間的な「親しみ」をアピールし、「中学生でも分かるような」記事や番組を心掛ける。従って、例えばニューヨーク・タイムズ紙に見られるような、論争を挑む識者たちの多事争論の「op-ed」寄稿や、欧州の高級紙に見られるあたかも研究論文のような長くて難しい分析記事はほとんどない。
・さらにテレビでは、放送法第4条で「政治的に公平であること」が規定されている。2016年2月には、当時の総務大臣高市早苗*59が、放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返せば、停波を命じる可能性があると示唆する発言をして波紋を呼んだ。近年、テレビの報道番組では、特徴のある看板人気キャスターや解説者*60が消えて、アナウンサーが無難に進行を務める例が目立っているといわれるように、日本の放送業界では「偏向」はもっとも忌避されるべき状態だと考えられている。
・ロイター・ジャーナリズム研究所の世界比較調査を見ると、日本人のメディアに対する信頼はそれほど厚くないことが分かる。同調査が36カ国を対象に「ニュースのほとんどをほぼ信頼するか」と尋ねた項目があるが、日本では、43%が「信頼する」と答えた。この数字は、36カ国中17位で、英国と同順位である。ちなみにドイツは50%で7位、米国は38%で28位だった。
 しかし、日本におけるメディアへの信頼に関連してさらに興味深いのは、次の点である。つまり「あなたは、自分が利用しているニュースのほとんどをほぼ信頼するか」と尋ねたところ、日本は「信頼する」が44%で、36カ国中28位と大きく順位を下げる。これに対して、英国は51%で19位、ドイツは58%で6位、米国は53%で13位に上昇する。日本の場合、メディア一般と、自分が利用するメディアとの差がほとんどないのは、(ボーガス注:産経新聞のような極右メディアを除けば)どのメディアだろうがほとんど差がないと認識しているからだと推測できる。つまり、市民の側は自分たちに合うメディアを能動的に選択していない。だからこそ、メディアの動向にもあまり関心がない。
 こうしたデータを見ると、日本社会で最も心配すべきは、「メディア不信」ではなく「メディアへの無関心」、ひいては「社会への無関心」の方であると思わざるを得ない。
 昨年から広がった女性たちの「#Me too」ムーブメントも、ソーシャルメディア上での盛り上がりに比べてマスメディアの動きは鈍い。グローバルに大きな論争になっている課題も、日本のメディアは歯切れが悪い。セクシュアル・ハラスメントという問題を、新たな社会問題として議論することに躊躇(ちゅうちょ)しているように見える。いずれにしても、日本では、(ボーガス注:欧米のような)あからさまな「メディア不信」や社会の分極化がない代わりに、民主主義社会の行方に関わる重大かつ深刻なテーマを自ら見いだし、市民たちとともに自分たちの問題として捉える姿勢が弱い。
・日本における「ニュースの世界と社会との間の距離」を裏付けるデータがある。ロイター・ジャーナリズム研究所の調査で、前週にニュースについて同僚や友人と会話をしたかと聞いたところ、日本で「はい」と答えた人は19%にとどまった。これは、米国の40%、英国の37%に比べて圧倒的に低い。
・このほか、同研究所の2016年報告書で、「政治・経済関連ニュース(ハードニュース)と娯楽ニュース(ソフトニュース)とではどちらに関心があるか」という質問に、「政治・経済関連ニュース」と答えた日本人は49%で、同年の調査対象国26カ国中最下位。もちろん、「政治・経済関連のニュースに関心があるべきだ」という規範が強い社会では、実態に関わらず、「政治・経済関連のニュース」と答える割合が高くなるだろう。日本社会では、そうしたニュースを知ることを市民としての義務と感じる規範精神が弱く、実態でも関心が高くない。
・ただし、近年、論争とは距離を置き、両論併記をしながら慎重に自らの立ち位置を守る「お澄まし」メディアを横目に、異なる戦略を取るメディアもあることを指摘しておきたい。特に、一部の新聞で、政府や政党の利害、読者のパーソナルな感情に訴える党派性を明確に打ち出す傾向が強くなっている。代表的なのは、産経新聞の保守化・右傾化*61歴史修正主義、安倍政権擁護)と東京新聞左傾化原発反対、安倍政権批判)であろう。
 中でも産経新聞の言論が右傾化しており、排外主義的な言論が目に付く。同社は、この傾向を新聞のブランディングに使っているようにも見受けられ、特に太平洋戦争中の「慰安婦」を巡る報道に代表されるような「歴史認識問題」がその中核的位置付けにある。産経新聞によると、「朝日新聞が世界にまいた『慰安婦』のうそを討つ」(注:同様のタイトルで一連の朝日批判報道をまとめた単行本を刊行)として、とりわけ朝日新聞の「偏向報道」に批判の矛先を向けている。
 また、安部政権に抵抗する勢力にも批判の矢を放つ。最近の事件では、米軍海兵隊員を巡る誤った事故報道とともに、同隊員の「美談」を報じない沖縄のローカル二紙(琉球新報沖縄タイムス)を「報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥」だとして強く非難した。後日、産経の誤報が発覚。取材の不十分さを認めて記事を削除し、謝罪した(2018年2月8日付)。
 産経新聞は日本の全国紙5紙*62の中では販売部数がもっとも低く、(ボーガス注:フジテレビから支援を受けたり、社員の早期退職*63を募ったり)経済的に苦境にあると聞く。そうした状況の中、この30年ほど、現状のままでは立ち行かないという危機感を持ち、(ボーガス注:右翼団体の組織購入を狙うという)他の新聞とは異なった編集戦略で読者との関係を模索してきた様子がうかがえる。すなわち、現在の産経新聞のターゲットは、「無関心」で静かについてくる消費者ではない。同紙は、読者へ自らの立場を積極的にアピールし、それと引き換えに(ボーガス注:朝日新聞東京新聞岩波書店など)敵対するリベラル媒体への「不信」を要求している。日本のメディア状況も、こうした方向にシフトするかは予断を許さない状況だが、変化が訪れていることは間違いない。
 いずれにしても、新聞社の意見傾向の変遷については、今後、指標などを作った上で精査が必要だろう。

メディア不信 何が問われているのか 書評|林 香里(岩波書店)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
 著者はこういった状況認識のもと、主に以下の四つの重要性を指摘する。
 その第一は、日本の「メディア不信→メディア無関心」から、商業主義や排外主義に対抗する議論の活性剤となっている欧米型「メディア不信」への転換。第二は、ニュース・メディアによる、単なるファクトチェックにとどまらない内部改革の必要性。第三は、社会の共通基盤としての「公共性」を再興する制度設計の検討。第四は、これらのために、業界でも政府でもない、第三の軸となる独立した研究と教育の蓄積、である。

テレ朝社長、会話の録音は「公益目的」 セクハラ問題:朝日新聞デジタル
・林香里・東大院教授(ジャーナリズム研究)の話
 「2人で会ったのが悪い」「記者を男に代えればいい」などの声が上がり、セクハラが別の問題にすり替えられている。男性の取材相手に避けられるなどして、女性記者が働きにくくなることを危惧している。メディアは萎縮せず、報道の現場におけるセクハラについて一致団結して議論を深めるべきだ。

現場のセクハラなくそう/報道関係者がフォーラム
 東京大学大学院情報学環の林香里教授は、管理職の女性比率が少ない新聞社の現状をあげ、「メディアの職場の過酷な労働環境のため家庭で子育てや介護の役割を担う女性が排除され、ニュースの価値判断が男性中心の画一的なものになっている」と告発しました。


■論点「地方自治体の自衛隊への個人情報提供の法的諸問題」(福山和人)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

自衛隊への若者宛名シール提供やめて/京都市の募集協力 個人情報保護侵す/憲法共同センター
自衛官募集 自治体に“圧力” 自民が指示/本紙が文書入手
自民党の自衛官募集“圧力”/地方議会抑え込み狙う/安倍発言を後押し
首相「自衛官募集」発言 日本会議仕込み/ファッショ政権に審判を 志位氏/市町村への防衛相文書 町内会にまで「協力依頼」
主張/「自衛官募集」発言/若者の強制動員の企て許すな
自衛隊へ宛名シール 京都市方針/中止求め電子署名/3500人分を提出
自衛隊員の募集/自治体へ協力強要許さない/自治労連が談話発表
自衛官募集に町内会動員/埼玉6地域以上に「回覧」
自衛隊へ宛名シール/個人情報提供やめよ/京都市議会 井坂市議がただす
自衛隊に情報提供しないで/京都市に青年が請求
“高齢化”する自衛隊/「自治体非協力」発言の背景


■暮らしの焦点「障害者の就労支援事業所六割で減収 基本報酬引き上げこそ」(上岡正)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

障害者の就労支援/事業所6割が減収/きょうされん調査 基本報酬引き上げを


メディア時評
■テレビ「問われる薬物報道のあり方」(沢木啓三)
(内容紹介)
 沢木氏が「TBSラジオ・セッション22(荻上チキ氏が司会)」や「TBSテレビ・サンデーモーニング荻上チキ氏がコメンテーター)」の報道を題材にあるべき薬物報道(もちろんピエール瀧関連)について論じています。沢木氏は「セッション22」「サンデーモーニング」のような問題意識を持った薬物報道が少なく興味本位としか思えない薬物報道が横行していることを嘆いています。小生も同感です。
 しかし沢木氏が取り上げた番組がどちらも「TBS」「荻上チキ」という共通点があることがなんともかんとも(他の局とコメンテーターはどうなってるんだ?)。
 そして「ならばTBSのワイドショーの薬物報道がまともか」といったらそうではない点もなんともかんとも。

【参考:かなり長い引用になりますが、ご容赦下さい。】

ピエール瀧「韓国紙幣でコカイン吸引」報道は捜査当局とマスコミの差別扇動だ! 案の定、ネットは韓国ヘイトの洪水に|LITERA/リテラ
 メディアには猛省を求めたいが、しかし、この「韓国紙幣」報道にはもっと大きな問題がある。それは、この情報がピエール瀧を逮捕した捜査当局、関東甲信越厚生局麻取部から出ていることだ。
「多くのメディアが「韓国紙幣」と報じることを考えると、これは麻取が情報を出したとみて間違いないでしょう。麻取の捜査は見せしめ的要素が強いため、とにかく事件を大きく報道させたがる。芸能人などを狙い撃ちするのもそのためだし、逮捕後も話題にさせようといろんな情報をリークするんです。今回は、いま、日本を覆ってる“嫌韓感情”を利用して、話題を煽ろうとしたんでしょう」(全国紙社会部記者)
 ようするに、捜査当局が確信犯的に差別感情の扇動を狙っていのだ。安倍一強支配下で、官僚までがネトウヨ化して差別加担にためらいがなくなっているというのはよく聞く話だが、ここまで露骨になっているとは……。

ピエール瀧逮捕報道で炎上した深澤真紀は間違ってない! 違法薬物問題に「厳罰より治療を」は世界の潮流だ|LITERA/リテラ
 2017年に、荻上チキ氏*64(評論家)、松本俊彦氏(国立精神・神経医療研究センター)、上岡陽江氏(ダルク女性ハウス代表)、田中紀子氏(ギャンブル依存症問題を考える会代表)といった専門家によって、「薬物報道ガイドライン」というものが発表されている。
 このガイドラインでは、薬物に関する報道を行ううえでメディアが「避けるべきこと」と「望ましいこと」が具体的に言及されている。
 そこでは、「避けるべきこと」のなかに〈「人間やめますか」のように、依存症患者の人格を否定するような表現は用いないこと〉〈薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと〉〈「がっかりした」「反省してほしい」といった街録・関係者談話などを使わないこと〉といったものがあり、逆に、「望ましいこと」のなかに〈依存症については、逮捕される犯罪という印象だけでなく、医療機関や相談機関を利用することで回復可能な病気であるという事実を伝えること〉〈「犯罪からの更生」という文脈だけでなく、「病気からの回復」という文脈で取り扱うこと〉〈依存症の背景には、貧困や虐待など、社会的な問題が根深く関わっていることを伝えること〉といった指摘がある。
 伊藤アナやネットユーザーが強化した「ルールを破った者は永遠に村八分」は「避けるべきこと」であり、深澤氏*65の意見の切り口は「望ましいこと」であった。
 欧米諸国において違法薬物の問題が「厳罰主義から治療へ」といった方向に変わっているのは、医療の進歩や様々なデータの研究の結果、厳罰主義が薬物事犯の抑制に効果がないということが明らかになったからだ。

【音声配信・書き起こし】「薬物報道ガイドラインを作ろう!」荻上チキ×松本俊彦×上岡陽江×田中紀子▼2017年1月17日(火)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」平日22時~)
 昨年、芸能人やスポーツ選手などの薬物問題についての報道が相次ぎました。しかし、なかには依存症へ偏見や誤解を助長したり、違法薬物への興味を煽ってしまったりと、薬物問題の改善とは逆ベクトルになってしまっているものも少なくありません。しかし、薬物報道に関しては現在、WHOの「自殺報道ガイドライン」のようなものがありません。そこで今回「Session-22」では、パーソナリティ・荻上チキの案を叩き台に、薬物や依存症問題の専門家、当事者、そしてリスナーの皆さんと一緒に「薬物報道ガイドライン」の案を作ってみることにしました。このガイドライン案が、今後の薬物報道のあり方を考えるきっかけになることを期待したいと思います。
(中略)
荻上
 ここからはメインセッション。今夜のテーマはこちらです。
■南部:
 薬物問題の改善のために。「みんなで作ろう、薬物報道ガイドライン
荻上
 昨年は、芸能人やスポーツ選手などの薬物問題についての報道が相次ぎました。しかし、メディアによる一連の薬物報道の中には、依存症への差別や誤解を助長したり、中にはむしろ薬物そのものへの興味を煽ってしまったりする結果になったりと、薬物問題の解決とは違う方向に行っているような報道というのも少なからずあるわけです。
 「Session-22」ではこれまでもたびたび薬物問題を取り上げてきましたし、薬物以外にも様々な依存症問題も取り上げてきました。また、そのたびに薬物報道の問題、依存症報道の問題ということで、メディアの課題については常々検討してきました。
 薬物報道に関しては、各局共に、自殺報道であるとか、あるいは実名にするか、匿名にするかであるとか、そうした様々な他のテーマのガイドラインほどはしっかりとまだまだ議論が進んでないような印象を持っています。
そうした状況の中で、今夜の番組では、まず私が叩き台をつくりまして、その叩き台をベースにして専門家の方、当事者の方、そしてリスナーのみなさんと一緒に、薬物報道のガイドラインはどのようなものがあったらいいのか、ということを議論していきたいと思います。
 そして、単にガイドラインを作るだけではなくて、ガイドラインに埋め込んだ理念。それをしっかりと社会に浸透させていくためには、どんな議論をこれから進めていくべきなのか、話し合っていければと思います。
■南部:
 では、今夜のゲストをご紹介します。まず、国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦さんです。続いて、ダルク女性ハウス代表の上岡陽江さんです。そして、ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんです。よろしくお願いします。
荻上
 薬物依存症に関する報道についてはどのようにお感じになっていますか?
■松本:
 どうしても、糾弾する、あるいは晒し者にする、というイメージが非常に強い気がします。薬物依存症というのはれっきとした精神疾患というか、医学的な疾患なんですが、報道のたびに白い粉とか注射器とかのイメージ映像が出る。実は依存症の人はそれを目にすると、すごく欲求を思い出してしまうんですね。だから、著名人が逮捕されてそのような報道が激化するたびに、自分が見ている患者さんたちが、再び薬物を使用してしまうなんてことが続発していて。回復しようと思って頑張っている人の足を、報道が引っ張ってるんじゃないか?。そんな印象をずっと持っています。
 薬物に関心を持つ子たち、早くから手を出す子たちは、かなり小さいときから「消えたい」「いなくなりたい」「死にたい」と思ってるんですよ。だから危険だっていうふうにいわれると、かえって「あ、これで死ねるんだ」っていうふうに関心を持ってしまう。逆効果があるんだっていうことも知ってほしいと思います。
■上岡:
 そうなんですよね。危険ドラッグっていうと、普通の方は危ないなと思うかもしれないんですけれども、子供*66の頃に危機的な状況に置かれていた子が、「危険であるものを使ったら早く死ねるんじゃないか」と思ったという話は、私の知っている女性のメンバーたちもよく話しています。
荻上
 加えて依存症の当事者が逮捕されていく様だとか、釈放された様が繰り返し報じられて、それに対してコメンテーターがワイワイ言ったりフラッシュがパシャパシャたかれているその姿。これを見ることでもやっぱり依存症当事者たちが、「自分は社会的に本当に忌み嫌われているんだ」というふうに思ってしまうということもありますよね。
■松本:
 そうですね。本当に頑張って、本当によく頑張ってる方たちが罪悪感をそのたびに抱き、自分を責め、ますます社会参加に消極的になっていく姿を本当に私も心療内科で目の当たりにしています。
■田中:
 私はやっぱり、様々な報道に煽られることで、依存症患者がやり直す機会を失ってしまうことは、社会の大きな損失じゃないかな、と思っています。
荻上
 だからそれこそ「ダメ、ゼッタイ」っていうあのフレーズに関しても、先日この番組で田代まさしさんも指摘しましたが、よりダメを押されているというか。だから治療とか、他の人に相談しようとか、より言いづらくなっていると、そうした指摘はされていましたよね。
■上岡:
 他の国よりも、治療に繋がるのは9年ぐらい遅いという事実は、どこらへんを変えたらいいんだろうかっていうのを、みなさんにお聞きしたいです。
荻上
 9年遅れているというのは、依存症当事者になってから、治療に繋がるまでの平均年数が他の国よりも時間がかかる?
■上岡:
 9年ぐらいかかるんです。
荻上
 それだけオープンにしにくい社会を作っているというわけですね。
■上岡:
 そうです。
■松本:
 病院に来る人たちもそうですね。もう、使い始めてから10数年経ってから来ますもんね。途中で行こうと思っても怖くて行けない。
■上岡:
 他の国はもっと早く治療に来ていますね。
荻上
 犯罪という側面ばかりがクローズアップされる一方で、治療・回復・病気といった観点からの取り上げがあまりに少ない。
■松本:
 少ないですね。
荻上
 また、「ダメ。ゼッタイ。」などの啓発モノが、事前に予防しようということで強烈なメッセージを出していると思うんですが、それが(ボーガス注:薬物依存症患者には「自分はダメな人間なんだ」という諦めを生んで治療意欲を阻害して)逆効果だったり、窓口につなげる役割を果たしていない、ということがあるわけですね。
■松本:
 そうですね。
荻上
 そうした中で、田中さんは「依存症報道について考えるネットワーク」というものでも活動されていて、数多くの薬物報道を見てこられたと思うんですが、この番組では具体的な事例を出していただいても大丈夫ですので、ぜひ気になった事例などありましたら教えていただけますか。
■田中:
 まず、日本テレビの人気のある午後のワイドショーで、本人の承諾なくテレビで生電話の会話を公開したり、著作物を本人の許可なく放送してしまったというのが挙げられると思います。
 そのほかにも、プロ野球の元選手*67が逮捕されたときには、TBSの情報バラエティ*68で「日本はすごく薬物依存に甘い」とか、「更生のことを今すぐ語るのはおかしい」とか、「野球界から追放するべき」だとか、そのようなコメントがタレントさんから出たりですね。あと、フジテレビの情報バラエティでは有名な大物タレントさんが、元選手が他の番組で「自分はやっていない」「薬は使用してない」と言ったと。依存症者がそういう嘘をつくというのは症状の一つであるんですけれども、それに対して「覚せい剤をやったことよりも、こうやって騙したことが大きな罪だ」というような発言があったり。
 また、テレビ朝日の朝のワイドショーでは、元野球選手の売人を知る人物にインタビューということで、「どのくらいの量を買っていた?」という質問に対して、「値段にして50万円ぐらいで、見返りに車をあげたりしていた」とか、まことしやかに。「金に糸目をつけずに買っていた」とか、「まさにそれは依存症だ」みたいなコメントがされていて、確認も取れない話を流すっていうのはどういうことかな、と思っておりました。
荻上
 昨年の目立った事例をあげるだけでも、このような報道が繰り返されているということになるわけですよね。上岡さん、このようなケースについてはどうお感じになりますか?
■上岡:
 私たちは施設をやっているので、そういった大きな事件があると、必ず各報道機関から連絡があります。突然「インタビューさせてくれ」とかですね。私たちはきちんと、行政からお金をもらって運営している施設なので、私たちの施設の中に誰がいるか、誰が相談したかとか、基本的にそれは答えられないんですよ、守秘義務があるので。でも、まったく残念ながらすべての報道機関が一斉に電話してきます。そして「インタビューさせてくれ」っていうことを言います。それは断ると、全国にある私たちの施設のすべて、津々浦々に電話していって、つかまるところで騙すような形で入ってきて、最終的にその方がいたかどうか、ということだけを流されたこともあります。昨年は本当に酷かったです。要するに、去年話題になっていた方と似たような問題を取材したいということで入ってきました。
荻上
 「依存症問題を取り上げたいんだ」という形でアプローチしてきたんですね?
■上岡:
 はい、そういう形でアプローチしてきて、取材はされたんですけど、その取材は放送されず、その方がいたかどうかについてスタッフが発言したところだけが放送されたんです。私たちは施設なんで、そういうことが起きると利用者を守れないし、利用者の家族を守れないし。回復の支援が一番大切なわけだし。そこが全部壊されちゃう、っていう感じになるんですね。去年東京のダルクでは、その話をみんなでしました、ずいぶん。取材に対してどう対応すべきなのか、どうしたら守れるのかっていうことを。去年は本当に悩まされました。
荻上
 騙して取材して使ったというケースは複数ですか?
■上岡:
 それは1つでした。
荻上
 ただ、協力したけれども意に沿わないというところは他にもあるという感じですね?
■上岡:
 やっぱり、薬物依存症の方たちは、私は特に女性の施設をやっていて、自殺率が高い人たちなわけですよね。松本先生もその専門家でいらっしゃるけれども。それで、そういうギリギリの方たちが、薬物を使うことで生き延びていることもあるので、それを止めるための施設は静かに。その方たちがそこで安心してプログラム受けられるよう保証したいというふうに思っているんですが。今回はすべてのメディアがそうだったので、私たちは本当にがっかりしています。
荻上
 先ほど、田中さんにいくつか番組の実例を挙げていただいたんですが、僕もいくつか気になる事例を挙げさせていただくと。1つは、歌手の方*69が昨年、もう釈放されたにも関わらず「釈放されていまはどこに?」みたいなことを延々とワイドショーが取り上げていたんですね。僕がたまたま見たのはフジテレビの番組でしたけれども、しかし他の局も釈放されたシーンと、その後の動きを取り上げていたように記憶しています。それから、だいぶ前に同じく歌手の方が逮捕された際には、放送局が「その歌手の楽曲を流さないようにしよう」ということにしたりだとか。
■松本:
 そうですね。
荻上
 あるいは昨年は俳優の方*70が、スクープという形で取り上げられて、芸能界を去る形になった際に、やっぱりたとえば「出演している番組が放送できない」であるとか。あるいは疑惑の段階でスクープをして追い込むことが、どこまでの正当性を持つのかと。まだ犯罪として立件されていないのに、「立件までカウントダウン」みたいな報道をするところもあって。ますますみんなで「追い込め!」ということが助長される一方で、回復への道を社会で共有していくことからは遠ざかっていきますよね。
■松本:
 遠ざかっていきますね。本当にますます回復が難しくなるし、治療を受けることもままならないような状態。さらに治療を受けている多くの人が、自分たちはこんなにも社会から嫌がられていると痛感し、治療を頑張る気力さえも削がれてしまうっていうのはありますね。
荻上
 実はこの問題について調べていくと、BPO放送倫理・番組向上機構が、2009年の段階で各局に対してある要望書を送っているんです。「青少年の影響を考慮した薬物問題報道についての要望」というペーパーがありまして。
 2009年といえば、ある女優で歌手の方が、薬物問題で非常に大きくクローズアップされたりしたんですね。そうした状況の中で、やっぱり薬物報道が過激化していく。それに対してBPOが各局に申し入れをしているんです。 
「実際の報道が青少年に薬物への興味を惹起させるような表現がないよう、慎重な配慮を要望する」であるとか。それから、「薬物使用者の社会復帰への支援が必要なことなど、様々な社会問題を総合的に解決しないかぎり、薬物の根絶という課題は解決することはできません。だから、各放送局は犯罪を犯した個人に焦点をあてるだけでなく、その背景や影響を含めて多角的に報道してほしい」というふうに言ってるわけですよ。このBPOのメッセージ、これ自体は非常に真っ当なことを言っているような。
■松本:
 そうですね。僕らも賛同できるようなことが非常に的確に書かれていると思います。
荻上
 しかし、8年前に出されたにも関わらず、まだ各局の報道というものが、あまり変わっていないどころか・・・
■松本:
 エスカレートしている感じはありますね。
荻上
 やっぱり数字になる、金になる、あるいは反応がいい、ネタになる。何かそうしたところが多いのでしょうかね。
■松本:
 そうですね。
■上岡:
 私は26年間施設をやっていて、初期の頃に取材が来て、「どこで薬を買ってるの?」と言って、取材の人が入所者を薬屋さんに連れて行って、それで、その入所者が薬物を使ってしまったということがあって。それでダルクとしては取材を受けなかった時代もあります。でも、私たちとしては、依存者は人間で、薬物依存は回復するものなので、それを知っていただきたいということで、きちんとした取材をしてくださる方たち*71とは長いお付き合いをして、伝えていくというようなことを今までも丁寧にしてきたんですけども、この数年、本当にめちゃくちゃになってきたっていう感じがしていて、このままだと本当に、私たち、お母さんたちがうちのメンバーに沢山いるので、子供たちがその番組を見るわけですね。そうすると「薬物依存ってこんなに怖いの?」とか、「お母さん薬物依存だったよね?」っていうような会話がされたりとかですね。それから、アメリカなどでは、家族にアルコール依存や薬物依存などの人がいるときに、子供がそういう報道を見てスティグマ(烙印)を負うようなことが起きて、ヘタをすると思春期の子供だと家庭内暴力などを助長するので、依存症を教えるときにスティグマをいかに付けずに教えるかというようなことが、高校教師とかですね、きちんとされるように変わってきているんですけども。
荻上
 レッテル貼りをしないようにということですね。
■上岡:
 そうです、レッテル貼りをしないように。家族の中で依存症に対しての差別が起きて、その中で暴力が起きないようにという配慮と、子供が報道によって学校などで孤立しないようにということと、中には薬物を使わないと生きられないような子供もいるので、その子たちが治療に繋がりづらかったりとか、先生もおっしゃっていましたけれども、そのことで「自分はもうダメなんだ」という風に早い時期で思わないで、ということに非常に配慮している国もあります。一方で日本は、「ダメ。ゼッタイ。」というのは、とても良い一次予防だと思いますが、これだけでは駄目で、もうどうにもならない子供たちがいるので、その子供たちのためのものと二段構えにならないと、現実には依存症は減らないわけですよね。
荻上
 そうした中で、やっぱりメディアの役割というのは大きい。そのメディアの報道のあり方も含めてしっかりと議論をしていく場所を作りたいということで、今回のガイドラインを作るという今夜の放送を1つのきっかけとして、広げていきたいと思いますね。
■上岡:
 そうなんですよ。私たちも協力していただけたら本当にありがたいと心の底から思っています。
荻上
 というわけで、こうした現状を踏まえて、WHOの「自殺報道ガイドライン」なども参考にしながら、薬物報道についてはどうしたらいいだろうということで、まず私、荻上がチキがたたき台の案を作りましたので、まずはその案をご紹介します。
(中略)
 1つだけ説明が必要かなと思うのは、「がっかりした」「反省してほしい」といった街録などを使わないで欲しい部分について、リスナーの方からも「この一文はどうしてあるんですか?」という質問が来ていたんですが、ここまでの話でも分かるように、薬物依存症の当事者はもうすでにとても自罰的な状況に置かれていて、医療機関から遠ざかりやすいような状況になっているわけですね。そうした中で、具体的、象徴的なタレントさんや有名人の方が「がっかりした」「裏切られた」といったネガティブな言葉をかけられてるシーンを見ると、そのことがそのままその当事者たちにも自分に向けられていると思ってしまう。それで、回復を妨げてしまったり、家族との関係性を悪化させたり、そして治療と繋がることから遠ざかってしまうということがあるので、このような関係者談話で追い込むことが、依存症患者全体に影響を与えているんだ、家族にも影響を与えるんだ、ということで控えた方がいい、という提案をさせていただきました。
(中略)
 で、ここで当事者の意見ということで、先日、田代まさしさんが上岡さんと一緒ににこの番組にご出演した際、薬物報道についてどう思うかを伺いましたので、その提案をあらためて聞きたいと思います。
===【田代まさしさんのコメント】(2016年12月13日の放送より)===
荻上
 薬物依存症について無理解な報道も多かったと思うんですが、田代さんはいかがですか?
■田代:
 ちょっと前に、有名な野球選手が騒動になったときに、僕に今までテレビに出ちゃダメって言っていたのが、テレビ出てくださいってなって。コメントくださいってなって。
 「NHKニュース7」が一番最初だったんですけど。僕たちは薬物依存が病気だから、回復、リハビリって言葉を使っているんですけど、どうしても報道の皆さんは更生って言葉を使いたがる。更生って、人のために更生しなさいってイメージが俺にはあって。「お願いします、回復って使ってください」っていっても、「世間的には更生なんですよ」って言われちゃうので。
■上岡:
 新聞報道でもおそらく更生って書かれていると思うんですけど、薬物依存症は病気なので、私たちは回復って言葉を使っています。
■田代:
 ダルクが出て「治療を早くした方がいいですよ」って言っているのに、司会者がまとめるときには「家族やファンの方たちのために一日も早い更生をお願いしたいと思います」ってまとめるじゃないですか。いやいや、今まで治療って言ってたのに、って。
===【田代まさしさんのコメント】(2016年12月13日の放送より)===
荻上
 というわけで、田代さんの話のなかでも「更生」ということだけではなく、「回復」という言葉を使って欲しいという話がありましたね。さて、このガイドライン案について田中さんはいかがですか?
■田中:
 「家族の支えで回復する」というような美談に仕立てないでいただきたいというのはすごく感じています。とにかく日本人は浪花節が好きで、家族はその呪縛に縛られているんですね。で依存症者と家族が一緒にいることが必ずしも良いわけではないんで、家族の愛によって回復する、みたいな誤解は解きたい。
荻上
 場合によっては、家族と離れたほうが双方にとって良い場合もある。家族が理由で依存になっている場合だってあるわけですし。
■上岡:
 「人間やめますか?」という言葉がキャンペーンで使われていましたが、うちのメンバーには小さい頃に激しい虐待を受けていた人がいて、その言葉を聞いて逆に、「(ボーガス注:薬をやれば)人間やめれるんだ」ってそういう風に思ったんですね。「薬を使ったら私人間やめられるんだ。お父さんの虐待から逃げられるんだ」って。「薬で死ねるってのがわかったから、あのキャンペーンは良いキャンペーンだよ」って言ってて、衝撃を受けました。
荻上
 リスナーからこんなメールも来ています。
■南部:
 大島さんという方からです。
「刑務所で覚せい剤の再犯防止教育に携わっております。きょうのグループで、欲求の引き金について話し合っていた際、話をしてもらったところ、テレビで白い粉、注射器が映るたびに欲求が入る話にうなずく人が多かった。そして芸能人の逮捕の報道にも気持ちがブレる、とも。本人の意識や責任で済ませずに彼女たちが社会の中でやめ続けていけるために最低限周囲がやってはいけないことをちゃんと守って欲しい。まずは何がまずいのかを知ってほしいです。きょうの放送でこのことが議論されるのは本当に貴重だと思っております。きょうのグループワークの最後に、彼女たちに私も声を上げるからね、と約束したから投稿します」
■田中:
 もともと活動のきっかけとなったのは、ある俳優さんが逮捕された際の報道内容について、TBSに抗議文を送ったんですね。その番組の内容が薬物依存症の治療やサポートではなく、本当に個人攻撃。それも憶測に基づくような。こんなことでこんなことを言ったに違いない、みたいな人格攻撃だったので、ひどいんじゃないかということでここにいる皆さんの協力を得て、抗議文を送りました。
 TBS全体では同じようなことは繰り返されているのかなとは思っています。
荻上
 メディアへのアプローチについては後で議論したいと思いますが、同じ局の中でも、(ボーガス注:セッション22はこういう良心的な番組なのにTBSのワイドショーは酷いなど)けっこう縦割り横割りが激しくて、番組ごとに、あるいは部局ごとに考え方が違うので、しっかりと番組プロデューサーや現場に伝えていくためには、各番組ごとにしっかり送っていくとか、あるいは報道なのか情報番組*72なのかで意識も変わってくると思いますし、そのあたりもあきらめずに続けていくという事が必要になってきますよね。 特に問題になったのはコメンテーターのコメントという事ですか。
■田中:
 そうですね。
荻上
 そうしたことをきっかけに、依存問題の報道について考えてほしいということで、声を上げるために田中さんがネットワークを作られて、そうした中で「NPO全国薬物依存症者家族連絡会連合会」=通称「薬家連」の皆様からご提案をいただいているんですが、薬家連とはどういうグループなんでしょうか?
■田中:
 薬物依存症者を抱えるご家族や家族会の支援をされている団体で、薬物依存症者の回復や社会復帰の支援をしている団体です。
荻上
 家族や支援者のつながりになっているわけですね。そうした薬家連の皆さんからも今回のたたき台についてご意見をいただいたということで、田中さん、ご紹介をお願いします。
■田中:
 いただいたご意見ですが、「▼依存症を病気として伝えてほしい。▼依存症になるに至った原因にイジメや貧困 本人の生きづらさという社会問題からの歪みや元からの精神疾患があることを掘り下げてほしい。▼自宅に取材陣が押しかけて家族が通常の生活ができない。▼広く世間に公表して精神的にも追いつめるなどの二次的被害がでないようにすること。▼特に再逮捕(再発)の場合も、家族への非難(監督、愛情不足等)をしないこと。▼本人の回復だけでなく、家族やサポートする周囲の人が孤立しないで、生活を立て直すように相談できる社会資源を紹介すること」とあります。
荻上
 先日、田代まさしさんがお越しになった際にも、「ずっと撮られていたので、妹が洗濯物を干せない」という話をされていました。
 つまり、「家族などを孤立させない」、「家族などに押し掛けない」、そして、「家族の支えを美談にしない」という家族機能についての見直しということになるわけですね。それから依存症の背景としてのいじめや貧困、生きづらさといった問題、こうした問題をより取り上げてほしいということですけども、回復とは別の背景も丁寧に論じてほしいということなるわけですかね?
■上岡:
 私、薬物依存症専門のPSW(=精神保健福祉士:Psychiatric Social Worker)であると同時に、虐待専門のPSWでもあるんです。「ダルク女性ハウス」で26年間やっているんですけども、その中で一番多い相談は、性虐待の相談なんです。
 性虐待を受けている女性はたくさんいて、性暴力を受けている人たちもいる。そういう人たちが薬物を使って思春期を生き延びる。死なないために、薬物を使って生き延びるということをします。女性の依存症の85%が虐待のサバイバーなんですよね。
(中略)
 うちのメンバーが、あまりにも酷い報道ばかり見てきたので、ダルクが酷いところだっていう風に思っていたので、来たらびっくりしたと。全然違うところだったと。ちゃんと報道してくれたらもっと早くつながったのにと。
■南部:
 誤解がメディアによって生じているということ?
■上岡:
 はい。だから来づらい。だから、そういう風になっていたことに対して、私、すごく申し訳ないと思っているんですよ、当事者に。もっと早くすればよかったんだけど、ガイドライン作りとかね。
荻上
 ほかの専門家の方、3人にもご意見をいただいていますので、紹介していきたいと思います。
■南部:
 まずは、筑波大学の教授で精神科医斎藤環さん*73のご意見です。
「▼依存症の危険性を伝えるために、回復した当事者の発言を紹介する。▼依存症の恐怖を伝えるために「容貌の変化」などを強調しすぎない。」
 続いて、筑波大学准教授で精神医学がご専門の森田展彰さんのご意見です。
「▼ギャンブルについても薬物とほぼ同様な指摘をガイドラインに盛り込んでもらうほうがいいと思います。▼依存症者のいる家庭に育っているこども達にも報道が影響をあたえることを意識して、もし親が依存症をもっていても、回復可能な病気であり、人格を否定するなどの間違ったメッセージを送らず、早期に発見や治療・相談をすることが大事。」
 最後は、原宿カウンセリングセンター所長で、臨床心理士信田さよ子さん*74のご意見です。信田さんは、チキさんのたたき台を引用して、ここをこう変えた方がいいというご指摘をいただいています。
(後略)
荻上
 具体的な意見をいただいておりますが、まず斎藤さんと信田さんが指摘していることで重要な点は、すでに回復をした人たちの姿というものをしっかりとロールモデルとして出そうと。松本さん、これはすごく大事なことなのでは?
■松本:
 とても大事だと思いますね。悩んでいる方たちにとっても希望になると思いますし、ご家族にとっても希望になると思います。
荻上
 信田さんは、医療機関だけを強調するのではなく、医療機関以外にも相談機関があるんだということも強調してほしいということでしたよね。
■松本:
 回復のルートは複数ありますので、はい。
(中略)
荻上
 田代まさしさんも報道のメディアスクラムによって、ヒッチコックの『鳥』のように車が傷だらけになったって言っていましたからね。やはりあれは「画」というものを作りたい、「画」を撮りたいっていうのが前提にあって、それは「画」のインパクトで人々の関心を引きつけたいというのがあると。報道の「画の論理」と、薬物報道の「あってほしい論理」というのは真正面からぶつかるところですよね。
 そういったところにはより注意を促していければな、と思いますよね。「薬物使用が必然であったかのように」ではなくて、「転落や堕落の結果、薬物使用をしたという取り上げ方をしないこと」と信田さんが繰り返していますけど、こういった文脈での取り上げ方、田中さん、実際多いですよね。
荻上
 ほかにもリスナーの方からこんな提案をいただいています。
■南部:
 ラジオネーム「コル」さんです。
「昨年の報道では、電話やブログなどに、妄想のようなことがあることをもって、薬物に違いないというような報道が気になりました。そこで、下記のような項目の追加希望です。これは、精神疾患で苦しむ皆さんのためでもあると思います。【追記文案】起訴前の段階では、妄想・幻覚は薬物のみでなく精神疾患においても起こること、その精神疾患は、誰もがなる可能性がある事実を適切に報道すること。」
荻上
 これからどうやって広げていけばいいのか、僕からいくつかの案を出していきたいと思います。まず、このガイドラインを作れば、それで広がるというわけでは当然ないので、まずは記者会見を開かなければいけないですよね。田中さんはこれまで記者会見を開いたことはありますか?
■田中:
 あります。カジノの法案が通った時に。
荻上
 どこで会見を開きました?
■田中:
 厚生労働省です。
荻上
 今回も薬物依存症ということで厚労省が管轄ということになりそうですよね。だから場所としては厚労省記者クラブで行いつつ、ウェブメディアなどにも来てもらって記事にしてもらったり、テレビなどで取り上げてもらうということが必要かなという感じがしますけど。まずは、そういった記者会見をするということが必要でしょうね。松本さん、こういったガイドラインについての考え方、例えば医療関係者とか学会とかの機運を高めるという点ではどうでしょうか?
■松本:
 学会の要望としてメディアに発信すると迫力が出るというか、ステータスが付くのかなと思ったりもします。
荻上
 以前、池田小事件というのがあった時に、措置入院の状態にあった容疑者が犯行に関わったという経緯が報じられたことによって、精神疾患精神障害がある方々に対する偏見が報道によってすごく煽られたんですよね。そうした時に、精神障害の方々をサポートする団体や当事者団体が、報道が当事者にどういった影響を与えてしまったのかアンケートを取って公表をしたという経緯がありました。具体的根拠となるような点もあったりして、ここは上岡さん、当事者と一緒にそうした会見を作っていくというのが重要となりそうですよね。
 加えて、一方的に会見をして、メディアに変われと言った時に、メディア当事者からすると上から目線で一方的に言われているという印象を持たれてしまう。きょうも局の名前と事例は挙げましたけど、避けたわけではないですが、攻撃することが目的ではないので、どの番組の誰がという形では言っていません。田中さんもおっしゃってはいませんでしたよね。番組が変わっていくことが目的なので、番組関係者を巻き込んでいく必要があるんですよね。民放を含め放送関係者が年に何回か集まって、シンポジウムをするような機会があって、「今年はいじめ報道が盛り上がったからいじめにについて考えるセクションを設けましょう」とか、そうしたことをやっていたりするので、そういう仕方で薬物問題もやってほしいなと。
 僕も「ストップいじめ!ナビ」というNPOを作っていて、「いじめ報道ガイドライン」というのを作ったんですね。その時に、単にガイドラインを作るだけではなくて、知り合いのテレビや新聞の記者、みんなに集まってもらって、勉強会を繰り返して、(中略)いじめの実態を単に伝えるだけじゃなくて解決策を伝えてくださいとか、訴えていく。継続的に記者の方を巻き込んだ勉強会をすることで、ガイドラインを叩き台に各局で作り直していくと思うんですよ。そうしたものをどんどんやっていきたいですよね、田中さん?
■田中:
 そうですよね。それと、いま思いついたんですけども、逆にこういった叩く報道があった中でも、これは良いことだと思うのであえて名前を挙げますけど、ビートたけしさんや爆笑問題の太田さんなどが「まず回復を考えることなんだ」というような発信をしてくださった、そういうメッセージなんかも載せられればいいかなと、協力してくださる方はいないかなと思いました。
荻上
 ポジティブなコメントでサポートすると。番組の流れを変えるようなコメンテーターっていたりしますもんね。そういった方には、良い報道ということで、むしろポジティブな事例として感謝を伝えるというのがいいと思いますよね。メディアって叩かれ慣れているというか、叩かれすぎているので、ほめられ弱いんですよね。だから、「ありがとう」とか、「助かりました」という意見があったりすると、「じゃあ、またやろうか」みたいなところがメディアにもあったりするので、そういうポジティブなリストを作って公表してみるというのもいいかもしれません。
 松本さん、どういった点を特に国は訴えてほしいか、リスナーの方はメディアチェックの際に注意して欲しいか、いかがでしょうか。
■松本:
 国にお願いしたいのは、もちろん我々のこういった活動を後押ししていただきたいんですけれども。相談窓口を同時に提示して、報道のたびに提示するときに、その相談機関とか支援機関がきちんと機能しているということも大事なので。そこの支援体制を現実的にもっともっと充実させる必要があるだろうというふうに思います。
荻上
 まだ支援体制として非常に弱い。
■松本:
 弱いですね。
荻上
 国会を動かしていくということも必要になってくる。そしてリスナーな方々には、問題のある薬物報道があったときには、「こんなガイドラインがあるみたいですよー」みたいな形でぜひ(ボーガス注:テレビ局などに)伝えていただきたいなと。
 今年も、様々な依存症報道がさらに続いていくと思うんですが、例えば田代まさしさんが出て、しっかりコメントが取り上げられたりすると、やっぱり報道もちょっとずつ変わろうとしている面もいろいろあるなと。より変わるとしたら、田中さんはどういった方向に期待したいと思いますか?
■田中:
 やっぱり回復した人たちが、再チャンス、日の当たるところで、田代さんもそうですけれども、清原さんとか、そういった方たちがまた輝いて活躍できる場を与えていただいけることじゃないかなあと思っています。
荻上
 リスナーの方から、同じような意見、何件かいただきましたが、テレビや新聞などが薬物依存症の問題を報じるときにはテロップの片隅にでもいいので「依存症の問題について相談したい方はこちら」というような案内をしてほしいと。これ、自殺報道ガイドラインでも同じですよね。
 メディアというのはイメージの仕事なので、むしろそのタレントを使わない、俳優を使わないみたいな「干す」という形で、仕事を奪う傾向になってしまいますよね。でもそうした薬物依存症の方の回復っていうのがなければ、たとえば『アイアンマン』とか『アベンジャーズ』っていうのはなかったわけですよ。
 (ボーガス注:薬物依存から立ち直った『アイアンマン』『アベンジャーズ』の主演の)俳優のロバート・ダウニー・Jr.さんの活躍とかもなかったわけですよ、といった仕方で、いろんなその姿っていうのをしっかりと見せていく。そうしたことでより理解を促していくっていう好循環を生んでいきたいですよね。
 折りに触れて、この番組で今後の経緯などを報告していきたいと思いますし。また、依存症問題についても幅広く取り上げていきます。なんといっても今年は法案が具体的にできるかどうかというのが一つのカギになる。そこには期待したいところもありますので、そうした問題も取り上げていきたいと思いますので、また皆さんゲストとして番組にぜひともお越しください。

 今のマスコミ界において、荻上TBSラジオ・セッション22司会)はかなり「まともな良心的存在」といっていいかと思います(彼を使うTBSラジオもそれなりに評価したいと思います)。一方で「今のマスコミ界を代表する典型的なゴミカス」が「坂上忍とフジテレビ『バイキング』」ですね。
 しかしラジオだとテレビに比べて影響力が弱い点が残念です(前衛コラムのタイトルも「テレビ」ですしね*75)。もちろん「ラジオだからこそ、こうした番組が出来る」という皮肉な面も一方ではあるわけですが。
 なお、荻上が名前を出した「ロバート・ダウニー・Jr」についてはウィキペディアの記述を紹介しておきます。小生「洋画はほとんど見ないし外人俳優にも興味がない」ので今回の荻上発言で初めて彼を知りましたが。

ロバート・ダウニー・Jr(1965年~:ウィキペディア参照)
 父親は映画監督ロバート・ダウニー・Sr.、母親は女優エルシー・フォード。5歳から父親の作品『Pound』(1970年)に子役として出演。『ベイビー・イッツ・ユー』(1983年)で本格的に映画デビュー。初主演映画となった『ピックアップ・アーティスト』(1987年)、ドラッグ中毒の若者役を演じた『レス・ザン・ゼロ』(1987年)などで注目を集めるようになる。
 1992年公開の『チャーリー』で喜劇王チャーリー・チャップリンを演じ、英国アカデミー賞主演男優賞を受賞。またアカデミー主演男優賞の候補となった。2000年にテレビシリーズ『アリー my Love』(第4シーズン)でゴールデングローブ賞助演男優賞(ミニシリーズ/テレビ映画部門)を受賞。2009年公開の『シャーロック・ホームズ』のシャーロック・ホームズ役で、ゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞した。
 2008年に米『タイム』誌の「世界で最も影響力のある100人」に、『エンターテイメント・ウィークリー』誌のエンターテイナー・オブ・ザ・イヤーに選出される。
 2012年に『フォーブス』誌が発表した「主演作興行成績による俳優ランキング」において第1位に輝いた。フォーブスは世界興行収入15億ドル(約1265億円)を記録した『アベンジャーズ*76』を、「ロバートの魅力とユーモアが映画を成功へと導いた」と評している。なお『アベンジャーズ』のギャラは5000万ドル(約50億円)である。
 2013年に『Vulture』誌が発表した「最も価値ある映画スター」ランキングで第1位に選出され、V2を達成した。同誌はダウニーを「The King(帝王)」と称えている。
 2015年には、『フォーブス』誌が発表した前述のランキングにおいてまたも第1位に輝き、2013年度版から3年連続で首位を獲得。ちなみに2014年の推定収入は7500万ドル(約76億円)、2015年は8000万ドル(約99億円)とのことである。
 現在、ハリウッドで最も高額なギャラを獲得する俳優となっている。
■薬物問題 
 父親に与えられたマリファナを8歳当時で既に常用していたなど、子供の頃からドラッグの問題を抱えていた。薬物問題で6回逮捕されており、拘置所から撮影所に通ったなどの逸話を持つ。
 仮出所後にゲスト出演した『アリー my Love』第4シーズン(2000年 - 2001年)のラリー役では、ゴールデングローブ賞を受賞、またエミー賞にノミネートされるなど高い評価を得たものの、番組全米放送中の2001年4月にコカイン所持で再逮捕された。この件により3年間の保護観察処分となる。同時に1年間のリハビリ施設収容を命じられ、番組を途中降板した。再逮捕のニュースに、アリー役のキャリスタ・フロックハートはショックを受け倒れたという。なおダウニー本人は後年、『アリー my Love』出演当時の自分は最低な状況にあったと述懐し、賞賛は過大評価であるとしている。1996年から2001年にかけ薬物依存の克服に苦しんだが、2002年にクリーンと認められ保護観察処分を終えた。それでも完全に薬物を断つことはできずにいたが、2003年に「きっぱりと止める時がきた」と直感。所持していた麻薬を全て海に投げ捨て、それ以後ドラッグには手を出していないとのことである。同年、旧友メル・ギブソン*77の助力を得てスクリーンに復帰する。
・2008年公開の『アイアンマン*78』で、「彼の波瀾万丈のキャリアがキャラクターに深みを与える」として、ジョン・ファヴロー監督から主人公のトニー・スターク役に抜擢される。制作スタジオ側は当初、薬物問題から「どんなことがあっても、彼を雇うことはない」としていたが、オーディションで他の役者たちを圧倒、トニー役を手に入れた。その見事な役作りは、薬物問題からキャスティングに懐疑的だった原作ファンや批評家からも絶賛をもって迎えられることとなる。同作は米興収3億ドルを叩き出す大ヒットとなり、キャリアを代表する当たり役となった。
・2008年に『アイアンマン』のプロモーションで15年ぶりに来日した際、薬物使用の前歴から、入国管理局により6時間の足止めを食っている。
・自らの逮捕歴や、過去の薬物問題を頻繁にジョークのネタにしており、『シャーロック・ホームズ』のインタビューでは、「7%の溶解液(原作でホームズが常用しているコカイン)は僕に言わせると薄すぎる」と語っている。また次男エクストンの子育てについて「意識が朦朧としながらのおむつ替えは難しいからマリファナはやってない」と語っている。
・薬物依存のリハビリ・プログラムの一環として始めた詠春拳やヨーガなどのレッスンを、克服した現在も続けている。

ピエール瀧報道で『バイキング』坂上忍「ドミューン知らない」だけが問題じゃない! 自分を棚に上げ逸脱を許さない道徳ファシズム|LITERA/リテラ
 ピエール瀧の逮捕以降、本サイトは一貫して、メディア(特に地上波テレビ)報道の問題点を指摘し続けてきた。被害者もいないただの薬物事件をまるで重大犯罪のように騒ぎ立て、ピエール瀧の人格や過去の仕事まで否定し、「一緒にグループを組んでいる」という理由だけで石野卓球への謝罪を要求する……。
 なかでも悪質なのが『バイキング』(フジテレビ)だ。
 だいたい、坂上は偉そうにピエール瀧石野卓球を責める資格があるのか。坂上自体、彼が説教しているようなルール違反や、まわりの信頼を裏切るような無責任な行動をさんざん繰り返してきた人間ではなかったか。
 たとえば、有名なのが、1995年に飲酒当て逃げ事件で逮捕された一件だ。坂上はこのとき、友人の俳優宅でのパーティで酔っ払っていたにもかかわらず、当時、噂になっていた女優の山本未来と車で帰宅。途中で道路脇の電柱に激突し、電柱を根元から折ってしまうという交通事故を起こした。
 しかも、坂上は大破した車に再び乗り込んで逃走を図り、パトカーと20分間にわたってカーチェイスを繰り広げ、酒気帯び運転で警視庁北沢警察署に現行犯逮捕されたのだ。
 ちなみに、29日の『バイキング』では、前日夜死去が報じられたショーケンこと萩原健一についての特集が、ほかのワイドショーより圧倒的に小さかった。
 マリファナの不法所持を含む4度の逮捕歴があり、著書でも薬物経験を披露しているショーケンのことも、坂上は今となっては「もう大人なのに無責任」などと思っているのか。あるいは、ピエール瀧報道での自身の論調との矛盾にバツが悪かったのか。いずれにしても、坂上が自らの変節とオヤジ化により、自縄自縛になっているのは間違いないだろう。
 この自縄自縛は坂上だけに限った問題ではない。
 多くのワイドショーが、「ピエール瀧を糾弾しながらショーケンは持ち上げるのか」とそのダブルスタンダードを批判されている。恐ろしいのは、現在の道徳ファシズム社会・日本では、そうした批判によって「ピエール瀧を糾弾するのは間違っていた」と省みるのでなく、逆に「ショーケンを評価してはいけない」というほうに流れてしまいかねないところだ。

 「無謀ヨットの辛坊治郎並みのクズ=元犯罪者の坂上」つう話です。しかしピエール瀧なんぞより「モリカケ安倍」など権力犯罪を批判したらどうなのか。あるいは「吉本所属・島田紳助パワハラ事件や暴力団との交際疑惑(島田は引退に追い込まれましたが)」など大物芸能人の不祥事なら事務所を恐れてろくに批判もしないくせに「弱者・ピエール瀧なら袋だたき」とはふざけるなという話です。

薬物問題 回復への道 高知東生氏 | NEXT MEDIA "Japan In-depth"[ジャパン・インデプス]
 3月12日、俳優のピエール瀧さんが麻薬取締法違反で逮捕され、連日メディアで取り上げられている。そんな中、3月20日放送のJapan In-depthチャンネルのテーマは「薬物問題を考える」。
 「ギャンブル依存症問題を考える会」田中紀子*79代表理事精神科医で国立精神・神経医療センター・精神保健研究所・薬物依存研究部部長の松本俊彦氏*80、俳優でタレントの高知東生*81の3人をゲストに迎え、薬物への理解、薬物報道について話し合った。
 高知氏は2016年に覚せい剤取締法違反などの罪で逮捕、現在は執行猶予中の身として、松本氏らの支援を受けながら回復を続けている。
 田中氏、松本氏の両氏は、「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」の発起人でもある。このネットワークは、薬物やギャンブル、アルコールといった依存症の市民団体、当事者団体、家族、治療者、研究者らによって構成されており、テレビ、新聞、雑誌などのマスメディアで見過せない「問題報道」がなされたときに「協議し、改善を求めていくこと」を主な活動としている。ネットワークが2017年に提案した「薬物報道ガイドライン」(※1)について、詳しく両氏に聞いた。
(中略)
■「白い粉」や「注射器」といったイメージカットを用いないこと。
 松本氏によると、薬物依存症の人たちは「粉」や「注射器」等のイメージショットがテレビの画面などに出るたびにまたやりたい、という欲求が起き、実際に再び使ってしまう人もいるそうだ。また同時に、薬物乱用のリスクが高い若い人たちの興味をひく危険もはらんでいるという。「回復をしている人たちの足を引っ張」り、リスクの高い人の「背中を押す」、こういった報道は「社会に危険を振りまいているような報道」だと述べた。今回ピエール瀧さんの件で、またこういった報道が増えているという。
■薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと。
 テレビのワイドショー等に出演する「コメンテーター」は、薬物依存という健康問題の回復支援の専門家ではないため、彼らの発言の多くは事実と乖離している、とした上で田中氏は、「何の権利があって言っているのか。」と批判した。安倍編集長も、「これはメディアリンチと言ってもいいのではないか。」と述べ、(中略)懸念を示した。
 高知氏は、「『再犯』という言葉は勘弁してほしい。」とふり絞るように語った。一度薬物に手を染めた人間、特に50歳以上の人の再犯率は高い、などという言説がメディア上に流れたため、折角サポートをしようとしてくれた人たちが離れて行ってしまったという辛い経験をしたという。それを聞いた安倍編集長は、「(メディアが)立ち直ろうとしている人たちを追い詰めることはすべきではない。これから治療をし、回復して社会人としてまっとうに生きて行こうと思っている人の道を閉ざす権利は誰にもない。」とメディアの影響力を指摘した。田中氏も、「社会復帰して働いてもらって社会貢献した方が、私たちのためにもなる。なぜ受け入れられないのか。」と、疑問を呈した。
(本記事は、2019年3月20日放送のJapan In-depthチャンネルの放送内容を要約したものです。)


文化の話題
■演劇「劇団青年座『SWEAT』」(水村武)
(内容紹介)
 劇団青年座『SWEAT』の紹介。

参考

Topics:劇団青年座「SWEAT」上演 分断呼ぶ荒廃の姿 - 毎日新聞
 劇団青年座は、経済のグローバル化と移民政策に戸惑う米国のラストベルト(さび付いた工業地帯)の労働者たちを描いた「SWEAT」(リン・ノッテージ作、小田島恒志*82、小田島則子訳、伊藤大演出)を東京・下北沢の駅前劇場で上演している。
 上演のきっかけについて、伊藤はトランプ政権の誕生を挙げる。
 「トランプが支持された理由を知ろうと、ラストベルトへ行ったら、日本で報じられている以上の荒廃が広がっていた。この問題を活写した作品がないかと、小田島両先生に相談して、紹介していただいた」と語る。


■映画「今井正監督の「キクとイサム」」(児玉由紀恵)
(内容紹介)
 「キクとイサム」をネタにした過去記事新刊紹介:「歴史評論」3月号(その2:今井正『キクとイサム』、森村誠一『人間の証明』について、ほか:ネタバレあり) - bogus-simotukareのブログで代替。
【追記】
 児玉コラムに因れば、今年の5/20に「キクとイサム」公開60年記念コンサート(キク役を演じ今は歌手の高橋エミ氏が歌う)が東京都北区の北とぴあ | 北とぴあであるそうです。残念ながらコラムには詳細が書いてないし、ググってもヒットしませんが。そのうち、どっかで情報が得られれば幸いですが。

*1:著書『沖縄戦「集団自決」を生きる』(2009年、高文研)、『沖縄戦・最後の証言:おじい・おばあが米軍基地建設に抵抗する理由』(2016年、新日本出版社)など

*2:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官を経て首相

*3:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相

*4:吉田内閣通産相、蔵相、石橋内閣蔵相、岸内閣蔵相、通産相などを経て首相

*5:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官を経て首相

*6:佐藤、田中内閣官房長官、三木内閣建設相、大平、中曽根内閣蔵相、自民党幹事長(中曽根総裁時代)を経て首相

*7:小泉、森内閣官房長官を経て首相

*8:とはいえ「俺のような護憲派にとって不幸なことに」仮にそうなったとしても「改憲が一路進む」ほど話は単純でもないでしょうが。

*9:小泉内閣防衛庁長官福田内閣防衛相、麻生内閣農水相自民党政調会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)、第三次安倍内閣地方創生担当相など歴任

*10:著書『憲法状況の現在を観る』(2005年、社会批評社)、『人権の変遷』(2007年、日本評論社

*11:国会議長、チャベス政権外相、副大統領を経て大統領

*12:著書『アニマルウェルフェアとは何か:倫理的消費と食の安全』(2018年、岩波ブックレット)など

*13:著書『稲の大東亜共栄圏:帝国日本の「緑の革命」』(2012年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『トラクターの世界史』(2017年、中公新書)、『給食の歴史』(2018年、岩波新書)など

*14:著書『統計は暴走する』(2017年、中公新書ラクレ

*15:世界平和アピール七人委員会委員、「九条科学者の会」呼びかけ人。著書『宇宙のかたちをさぐる』(1988年、岩波ジュニア新書)、『科学の考え方・学び方』(1996年、岩波ジュニア新書)、『天文学者の虫眼鏡』(1999年、文春新書)、『私のエネルギー論』(2000年、文春新書)、『物理学と神』(2002年、集英社新書→2019年、講談社学術文庫)、『科学を読む愉しみ』(2003年、洋泉社新書y)、『疑似科学入門』(2008年、岩波新書)、『科学の限界』(2012年、ちくま新書)、『科学は、どこまで進化しているか』(2015年、祥伝社新書)、『科学者と戦争』(2016年、岩波新書)、『科学者と軍事研究』(2018年、岩波新書)など(ウィキペディア池内了』参照)

*16:著書『昭和天皇の戦争指導』(1990年、昭和出版)、『大元帥昭和天皇』(1994年、新日本出版社)、『軍備拡張の近代史:日本軍の膨張と崩壊』(1997年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『歴史修正主義の克服』(2001年、高文研)、『昭和天皇の軍事思想と戦略』(2002年、校倉書房)、『護憲派のための軍事入門』(2005年、花伝社)、『世界史の中の日露戦争』(2009年、吉川弘文館)、『これだけは知っておきたい日露戦争の真実:日本陸海軍の「成功」と「失敗」』(2010年、高文研)、『日本は過去とどう向き合ってきたか』(2013年、高文研)、『近代日本軍事力の研究』(2015年、校倉書房)、『兵士たちの戦場』(2015年、岩波書店)、『昭和天皇の戦争:「昭和天皇実録」に残されたこと・消されたこと』(2017年、岩波書店)、『日本の戦争:歴史認識と戦争責任』(2017年、新日本出版社)、『日本の戦争Ⅱ:暴走の本質』(2018年、新日本出版社)など

*17:著書『日本帝国主義の形成』(2001年、岩波モダンクラシックス)、『明治維新』、『自由民権』(以上、2003年、岩波現代文庫)、『日本の軍国主義』(2004年、岩波現代文庫)など

*18:山口大学名誉教授。著書『日本海軍の終戦工作』(1996年、中公新書)、『検証・新ガイドライン安保体制』(1997年、インパクト出版会)、『侵略戦争』(1999年、ちくま新書)、『有事法制とは何か』(2002年、インパクト出版会)、『近代日本政軍関係の研究』、『文民統制自衛隊はどこへ行くのか』(以上、2005年、岩波書店)、『監視社会の未来:共謀罪・国民保護法と戦時動員体制』(2007年、小学館)、『憲兵政治:監視と恫喝の時代』(2008年、新日本出版社)、『私たちの戦争責任』(2009年、凱風社)、『田中義一』(2009年、芙蓉書房出版)、『「日本は支那をみくびりたり」:日中戦争とは何だったのか』(2009年、同時代社)、『侵略戦争と総力戦』(2011年、社会評論社)、『領土問題と歴史認識:なぜ、日中韓は手をつなげないのか』(2012年、スペース伽耶)、『日本降伏:迷走する戦争指導の果てに』、『日本はなぜ戦争をやめられなかったのか』(以上、2013年、社会評論社)、『集団的自衛権容認の深層:平和憲法をなきものにする狙いは何か』(2014年、日本評論社)、『暴走する自衛隊』(2016年、ちくま新書)、『逆走する安倍政治』(2016年、日本評論社)、『権力者たちの罠:共謀罪自衛隊・安倍政権』(2017年、社会評論社)、『[増補版]総力戦体制研究:日本陸軍国家総動員構想』(2018年、社会評論社)、『日本政治史研究の諸相:総力戦・植民地・政軍関係』(2019年、明治大学出版会)、『自衛隊加憲論とは何か』(2019年、日本機関紙出版センター)など

*19:戦前、支那派遣軍参謀、第2総軍参謀など歴任。戦後も統合幕僚会議事務局長、陸上自衛隊幹部学校校長など歴任。

*20:参謀本部第一部長、陸軍省軍務局長など歴任

*21:第2次、第3次近衛内閣海軍大臣軍令部総長など歴任

*22:支那駐屯軍司令官、陸軍次官、関東軍司令官、参謀総長など歴任。戦後、終身刑判決を受け服役中に病死。後に昭和殉難者として靖国に合祀

*23:関東憲兵隊司令官、関東軍参謀長、陸軍次官、第2次、第3次近衛内閣陸軍大臣、首相など歴任。戦後、死刑判決。後に昭和殉難者として靖国に合祀

*24:関東軍高級参謀、関東軍参謀長、第1次近衛、平沼内閣陸軍大臣朝鮮軍司令官、第7方面軍(シンガポール)司令官など歴任。戦後、死刑判決。後に昭和殉難者として靖国に合祀

*25:支那方面軍参謀副長。北支那方面軍参謀副長、陸軍省軍務局長、近衛師団長、第14方面軍(フィリピン)参謀長など歴任。戦後、死刑判決。後に昭和殉難者として靖国に合祀

*26:たとえば死刑になった戦犯7人のウチ、外交官の広田弘毅(斎藤、岡田、第1次近衛内閣外相)を除く6人(板垣征四郎陸軍大臣(第1次近衛、平沼内閣)、木村兵太郎元陸軍次官(東条内閣時代)、土肥原賢二奉天特務機関長、東条英機陸軍大臣(第2次近衛、第3次近衛内閣)、松井石根元中支那方面軍司令官(南京攻略戦の現地司令官)、武藤章陸軍省軍務局長(東条内閣時代))は全員陸軍軍人です。

*27:戦後、戦犯として終身刑判決を受けるが後に仮釈放。

*28:広田内閣海軍大臣連合艦隊司令長官軍令部総長など歴任。戦後、戦犯として起訴され裁判中に病死。後に昭和殉難者として靖国に合祀

*29:著書『昭和天皇終戦史』(1992年、岩波新書)、『日本人の戦争観:戦後史のなかの変容』(1995年、岩波現代文庫)、『日本の軍隊:兵士たちの近代史』(2002年、岩波新書)、『兵士たちの戦後史』(2011年、岩波書店)、『日本軍兵士:アジア・太平洋戦争の現実』(2017年、中公新書)など

*30:もちろんこの立場の論者は、2)、3)と違い「首相訪中ならOK」の可能性があります。

*31:1961年生まれ。いわゆる「富田メモ」報道で2006年度新聞協会賞を受賞。宮内庁取材を長く担当し、『天皇と葬儀:日本人の死生観』(2013年、新潮選書)、『昭和天皇は何と戦っていたのか:『実録』で読む87年の生涯』(2016年、小学館)、『天皇の戦争宝庫:知られざる皇居の靖国「御府」』(2017年、ちくま新書)、『象徴天皇の旅:平成に築かれた国民との絆』(2018年、平凡社新書)など皇室に関する著書多数。

*32:明治新政府で参議、陸軍大将、近衛都督。西南戦争で戦死。

*33:内閣府事務次官宮内庁次長を経て宮内庁長官

*34:警察庁警備局長、警視副総監、宮内庁次長などを経て宮内庁長官

*35:中国首相

*36:全国人民代表大会常務委員会副委員長、全国政治協商会議主席など歴任

*37:天皇ならともかく昭和天皇に本気で行く気があったとはとても思えませんが。

*38:「発言の引用」ならともかくこういう文で「地の文」で「陛下」と書くのはまずいでしょう。「僕は天皇愛好家です」と筆者が自白してるようなもんだし、そういう人間が書く文章では天皇を持ち上げるために「中国が天皇訪中を熱望していたこと」を必要以上に誇張している疑いもあり、今ひとつ信用性に欠けます(さすがに全く要望してなかったと言うことはないでしょうが)。

*39:電力工業大臣、国家教育委員会主任、首相(党中央政治局常務委員兼務)、全人代委員長など歴任

*40:著書『銭其シン回顧録:中国外交20年の証言』(2006年、東洋書院)

*41:なお、憲法学界の通説では政治権限を保有しない天皇は元首ではありません。

*42:もちろん「天皇の政治利用は良くない」「昭和天皇なんて戦犯に中国政府が媚びていいのか、戦争被害を受けた中国民族への裏切りではないのか」とかそういう話です。

*43:共青団中央書記処第一書記、河南省長・党委員会書記、遼寧省党委員会書記、第一副首相などを経て首相(党中央政治局常務委員兼務)

*44:党副主席、副首相、人民解放軍総参謀長などを経て党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*45:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相。首相退任後も小渕、森内閣で蔵相

*46:福田内閣厚生相、大平内閣農水相、鈴木内閣蔵相、中曽根内閣通産相、宮沢内閣副総理・外相など歴任

*47:中曽根内閣防衛庁長官、宮沢内閣官房長官自民党政調会長(河野総裁時代)、幹事長(橋本総裁時代)など歴任

*48:党中央軍事委員会第一副主席、国家中央軍事委員会第一副主席、国家主席など歴任

*49:駐オランダ大使、駐ブラジル大使、交流協会台北事務所代表(駐台湾大使に相当)などを歴任

*50:当たり前ですがここでの「良かったか」とはもちろん「日中友好的な意味で」です。天皇だって自らの訪中の政治的意味ぐらいは当然分かっています。まあ、ここで池田氏も「イヤー、今思えば行かない方が良かったですね」とはいえるわけもないんですが。

*51:本心とはとても思えませんが。

*52:中曽根がウヨであることを考えれば本心はただの反中国に過ぎないかもしれません。

*53:シンガポール大使、駐エジプト大使、駐中国大使など歴任

*54:福田内閣環境庁長官、竹下内閣運輸相、都知事、維新の会共同代表、次世代の党最高顧問など歴任

*55:著書『被災弱者』(2015年、岩波新書

*56:オランダのこと

*57:もちろん前衛記事の執筆者の波多江氏です。

*58:著書『「冬ソナ」にハマった私たち:純愛、涙、マスコミ…そして韓国』(2005年、文春新書)、『メディア不信:何が問われているのか』(2017年、岩波新書

*59:第一次安倍内閣沖縄・北方等担当相、自民党政調会長(第二次安倍総裁時代)、第三次安倍内閣総務相を歴任

*60:報道ステーションの古館氏やクローズアップ現代の国谷氏のことか?

*61:まあ東京はともかく産経は昔から極右で「最近更に酷くなっただけ」ですが。

*62:産経の他は朝日、読売、毎日、日経

*63:それに応じた一人が福島香織です。

*64:TBSラジオ荻上チキ・Session-22』パーソナリティー、評論家。著書『ウェブ炎上:ネット群集の暴走と可能性』(2007年、ちくま新書)、『ネットいじめ』(2008年、PHP新書)、『セックスメディア30年史』(2011年、ちくま新書)、『検証・東日本大震災の流言・デマ』(2011年、光文社新書)、『災害支援手帖』(2016年、木楽舎)、『彼女たちの売春(ワリキリ)』(2017年、新潮文庫)、『すべての新聞は「偏って」いる:ホンネと数字のメディア論』(2017年、扶桑社)、『いじめを生む教室:子どもを守るために知っておきたいデータと知識』(2018年、PHP新書)など

*65:著書『思わず使ってしまうおバカな日本語』(2007年、祥伝社新書)、『草食男子世代:平成男子図鑑』(2009年、光文社知恵の森文庫)、『仕事の9割は「依頼術」で決まる』(2010年、双葉新書)、『働くオンナの処世術』(2011年、日経WOMAN選書)など

*66:荻上の番組が「子供」表記なのは少し意外です(もちろんだからといって彼は下村が文科相時代に強権的にやった「子供表記」に賛同はしないでしょうが)。

*67:おそらく元西武、巨人の清原のこと

*68:TBSラジオなので、TBSテレビには忖度するかと思いきや、ばっさり切ったのは評価したいですね。しかし田中発言を見ると「名前が出てないキー局」は「ワイドショーがないNHKとテレ東だけ」という惨状です(予想の範囲内ですが)。

*69:セカンドレイプを恐れて名前を出さないのでしょうが、俺はワイドショーや芸能界に無知なので「うん?(誰だろう?)」ですね。

*70:ウィキペディア成宮寛貴」いわく「2016年12月、写真週刊誌『FRIDAY』で違法薬物を使用した疑惑が報じられた。所属事務所は成宮への聞き取りや薬物鑑定をした結果、「本人の薬物使用を裏付ける客観的事実は確認できなかった」として否定し、成宮本人も疑惑を否定した。しかし、12月9日、「これ以上自分のプライバシーが人の悪意により世間に暴露され続けると思うと自分にはもう耐えられそうにありません」「関係者や身内にこれ以上の迷惑を掛ける訳にはいかない」「今すぐこの芸能界から消えてなくなりたい」などと書かれた自筆コメントを発表し、所属事務所を通じ芸能界からの引退を発表した。現在は海外に移住し、インスタグラムを本名で開設している。」という成宮寛貴(俳優)のことか?

*71:たとえば今回の「TBSラジオ・セッション22の荻上」がそれにあたるわけです。

*72:「情報番組=ワイドショーの自称」にすぎないと思いますね(ワイドショーという言葉のイメージが最悪になったので)。

*73:著書『「社会的うつ病」の治し方』(2011年、新潮選書)、『ひきこもりはなぜ「治る」のか?:精神分析的アプローチ』(2012年、ちくま文庫)、『ひきこもりのライフプラン:「親亡き後」をどうするか』(共著、2012年、岩波ブックレット)、『「ひきこもり」救出マニュアル〈実践編〉』(2014年、ちくま文庫)など

*74:著書『依存症』(2000年、文春新書)、『共依存:苦しいけれど、離れられない』(2012年、朝日文庫)、『加害者は変われるか?:DVと虐待をみつめながら』(2015年、ちくま文庫)など

*75:ただし前衛コラムにおいてテレビだけが取り上げられているわけではなくラジオが取り上げられることもあります。

*76:「マーベル・コミック」のアメリカンコミック『アベンジャーズ』の実写映画化

*77:俳優、映画監督。1995年の『ブレイブハート』でアカデミー監督賞を受賞

*78:「マーベル・コミック」のアメリカンコミック『アイアンマン』の実写映画化

*79:著書『ギャンブル依存症』(2015年、角川新書)

*80:著書『薬物依存症』(2018年、ちくま新書

*81:薬物問題で摘発され、マスコミに袋だたきにされるという今回のピエール瀧と全く同じ経験をしている。

*82:シェイクスピア研究で知られる小田島雄志・東大名誉教授の次男。早稲田大学教授(英文学)