今日のロシアニュース(2019年4月26日分)(追記あり)

【追記】
そんな過去があったのなら、ますます北方領土なんか返還される見込みがない - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)でこの拙記事がご紹介頂きました。いつもありがとうございます。
 さて

そんな過去があったのなら、ますます北方領土なんか返還される見込みがない - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
 北方領土問題の大きな責任が、そもそものソ連の占領からして米国に大きな責任があるというのは、「不都合な真実」「国民には知られたくないこと」であって、それは外務省をはじめとする役所や政治家、さらにはマスコミにいたるまで「なかったこと」にしたい政治の闇というものだったのでしょう。これは、安倍が首相になるずっと以前からそうだったことです。

というのはid:Bill_McCrearyさんの想像の通りでしょうが「なかったことにしたい」という態度にはは怒りを覚えますね。
 まず第一に「真実を国民が知らずして問題が解決する」のか。国民に「米国が当初から加担してたから帰ってくる可能性はない」というにせよ「米国が加担していたことは許せない、島の返還のために米国にもロシアに働きかけるよう強く要請する」というにせよ「この問題を隠蔽した上での問題解決」というのはないでしょう。
 第二に政治家や外務省が無視するのはまだ分からないでもない。しかし中央マスコミまでもがなぜ無視するのか。北海道新聞が報じたことなんて失礼ながら「大タブー」というわけでもないでしょう。しかもこの北海道新聞記事は「北海道庁根室振興局アメリカとロシアの専門家による研究結果などにより明らかになったと発表」というのだから元ネタは道新ではなく北海道庁です。しかも当時の北海道知事は自民系です。
 「それでも中央マスコミは報じないのか」と思うと絶句しますね。
【追記終わり】

ソ連の北方領土占領。アメリカが協力し援助していた
北方領土「日本人が知らない」真実、占領の黒幕・返還交渉の矛盾… | ニュース3面鏡 | ダイヤモンド・オンライン
実はアメリカが軍事支援したソ連の北方4島占領 - 高橋 浩祐|論座 - 朝日新聞社の言論サイト

ソ連の北方領土占領。アメリカが協力し援助していた
 この年末年始に北方領土についてのスクープがありました。
終戦直前から直後にかけてソ連軍により占領された北方四島、この作戦にアメリカが協力し援助していたことがわかりました。
▼これは北海道庁根室振興局アメリカとロシアの専門家による研究結果などにより明らかになったと北海道新聞が報じました。
▼協力は対日参戦が決まった1945年2月のヤルタ会談で決定。直後にアメリカとソ連は「プロジェクト・フラ」と呼ばれる極秘作戦をスタートさせるなどアメリカが大規模に北方領土占領についてソ連に協力したという仰天の記事。
▼ミヤダイ*1センセイはどう読んだのか?。詳しくは「TBSラジオクラウド」でお聴き頂けます。

北方領土「日本人が知らない」真実、占領の黒幕・返還交渉の矛盾… | ニュース3面鏡 | ダイヤモンド・オンライン
 2017年12月30日の北海道新聞に「歴史の常識を覆す」報道があった。タイトルは「ソ連北方四島占領、米が援助、極秘に艦船貸与、訓練も」というものだ。
 概要は、1945年8、9月に行われた旧ソ連軍の北方4島占領作戦に、米国が艦船10隻を貸与していたというものだ。大量の艦船の提供だけではなく、ソ連兵の訓練も行ったといい、4島占領の背景に米国の強力な軍事援助があったことを示唆する内容だった。
 ヤルタ会談の直後、連合国だった米ソは「プロジェクト・フラ*2」という極秘作戦を実施した。米国は45年5月から掃海艇55隻、上陸用舟艇30隻、護衛艦28隻など計145隻の艦船をソ連に無償貸与。ソ連兵1万2000人を米アラスカ州の基地に集め、1500人の米軍人が艦船やレーダーの習熟訓練を行った。
 8月28日からソ連兵が攻め込んだ択捉、国後、色丹、歯舞の占領作戦には、米国に借りた艦船10隻を含む17隻が参加。ソ連軍は各島で日本兵武装解除を行い、4島の占領は9月5日までに完了した。
 記事には、(ボーガス注:ソ連、ロシア研究者である)和田春樹*3東京大学名誉教授が次のような談話を寄せている。
「北方4島を含むソ連の対日作戦を米国が軍事援助していたことは、日本ではほとんど知られておらず、発見と言える。ソ連が勝手に行ったのではなく、米国をリーダーとする連合国の作戦だったことを示す」
 日本がポツダム宣言を受諾して降伏した後に、ソ連は日ソ中立条約を破棄して千島列島を南下、樺太からのソ連軍は米軍がいないことを確認して、択捉、国後島歯舞群島色丹島に侵攻したという「常識」を覆す話だ。記事を見た千島歯舞諸島居住者連盟の宮谷内亮一・根室支部長は、「驚いた。ソ連の占領に関わっていたのなら領土問題はアメリカにも責任がある」と話す。旧島民も初耳の人は多い。一方、連盟の脇紀美夫理事長(元羅臼町長)は、「日本が降伏しているのに攻めて占領したソ連に対して、当時、アメリカが強く非難したということは聞かないから、米国のソ連軍支援は十分考えられる」と話す。
 日本政府が「米軍の援助」を知らなかったはずはないが、冷戦下、米国とともに反ソ感情を煽るためにも都合の悪い事実だった。納沙布岬にある北方館の小田嶋英男館長も「ソ連は当時、連合国の一員なのでおかしくはない。引き揚げてきた人は国籍不明の船を見たとか、ロシアの船ではないと話していた。でも、ソ連軍の4島の占領にアメリカが関わった歴史を出さない方がいい、ということだったのでしょう」と推測する。
 事実は北海道新聞の報道後、釧路新聞根室新聞が報じたが、全国紙は無視した。中央メディアも外務省などに問い合わせはしたはずだ。米国に追従する安倍政権に「忖度」したのなら、情けない話だ。現代史の中で語られる出来事は、今の政治に直結しているケースが多いため、こうしたことは多い。日露首脳会談のときだけ賑やかになる北方領土問題も、その実、4島をめぐる現代史の根本事実すら国民には知らされていない。 

実はアメリカが軍事支援したソ連の北方4島占領 - 高橋 浩祐|論座 - 朝日新聞社の言論サイト
 スターリンは1943年10月のモスクワで開かれた米英ソ3国外相会談の晩餐会の席で初めて、ドイツに勝利したのちの対日参戦する意思を表明する。そして、ヤルタ会談で対日参戦の条件として千島列島と南樺太の領有権や満州での権益が認められると、ドイツの降伏から2、3カ月後に、連合国にくみして対日参戦することで合意した。
 北方領土交渉において、ソ連の継承国家であるロシアは、このヤルタ協定を引き合いに出し、国後、択捉、歯舞、色丹の北方4島の領有が「国際法で確認されている」と主張している。これに対し、日本は、「ヤルタ協定は密約であって法的根拠はない」と反論。4島は日本固有の領土であり、日ソ中立条約を一方的に破棄したソ連によって「不法占拠」されたとの立場を取ってきた。
 さて、ここまでは本稿の前置きである。実はこのヤルタ会談では、他にも重要な密約があった。アメリカはソ連の対日参戦を決意させるために、ソ連に特別の軍事支援をすることも約束し、実行に移していたのだ。
 具体的には、1945年8月14日に日本が連合国のポツダム宣言を受諾した後、ソ連軍は8月28日から9月5日にわたって北方4島を軍事占領したが、そのソ連の上陸占領作戦に、アメリカからの貸与艦船11隻が投入され、ソ連を軍事支援していた。「プロジェクト・フラ」と呼ばれる米ソの極秘作戦である。
 筆者は2018年10月10、11両日、北方領土問題の取材で、北海道根室市羅臼町に行き、根室市長や羅臼町長、北方4島の元島民らの方々の話を伺った。その際、納沙布岬にある北方館の小田嶋英男館長から、この「プロジェクト・フラ」という米ソ極秘作戦の史実を初めて知った。
 日本では、戦後70年となった2015年度から「北方領土遺産発掘・継承事業」に取り組んできた根室振興局北方領土対策課の手によって、プロジェクト・フラの具体的な史実が判明した。
 北海道新聞が同課の調査結果をもとに、2017年12月30日付の朝刊1面のトップ記事で大きく報じた。筆者も2018年11月2日のTOKYO MXテレビ「モーニングCROSS」で紹介したところ、ネットで大きな反響があった。
 北方館の小田嶋館長は取材に対し、「これは多くの方が大変なショックを受けた。今まではソ連の一方的な侵攻によって4島が占領されたと思われていた。しかし、いろいろな昔の話の中では、国籍不明の船がどうもいたというような見方をしていた人がいた。どうもソ連の船じゃないようだと」と述べた。
 作家の半藤一利*4も筆者の取材に対し、「プロジェクト・フラの話は初めて聞いた。確かに当時、ソ連には上陸用舟艇がなく、日本陸軍ソ連の北海道への上陸を心配していなかった。私も(ソ連の北方4島上陸作戦については)おかしいなとは思っていた。ソ連時代は、こうした昭和史の資料がなかなか出てこなかった。ロシアになり、民主化されてから徐々に出るようになってきた。このため、私もソ連時代はなかなか資料を入手できなかった」と述べた。
 この史実を知った時に、筆者も大変驚いた。なぜなら、1956年8月に日本の重光葵*5外相がロンドンでアメリカのダレス*6国務長官と会談した際、ダレス国務長官は「日本が歯舞、色丹の2島返還のみでソ連と平和条約を結べば、沖縄をアメリカ領にする」と恫喝(どうかつ)していた経緯があるからだ。
 アメリカは戦中はソ連の北方4島占領を軍事支援していたのに、戦後は「2島返還でソ連と手を打つな。4島返還を目指せ」と日本を脅していたわけだ。見事なまでの二枚舌外交である。つまり、北方領土問題は、その時々に合わせて自国の利益を追求したアメリカの動向が大きく影響したのである。
 ヤルタ密約では、ソ連の対日参戦の見返りに千島列島の領有を認める立場。そして、冷戦の最中は、アメリカは日本に「4島返還」を主張させる方が日ソ間を分断できると考えていた。北方領土問題を日ソ間のくさびとして残した方がアメリカの国益になるとの考えがあった。

 最近「安倍の対ロシア外交」が騒がれるようになったので、「北方領土」でググって記事を探すことをしていますが、小生も無知なので今回の記事には「へえ?、知らなかったわ?」ですね。まあ、とはいえ「侵攻それ自体はいわゆるヤルタ密約で米国が認めていた」以上、「予想の範囲内」ではありますが。
 なるほど、であるのならば「島はロシアのものだ」とロシアが強気なのも分かる気がします。「日本はぐちゃぐちゃ言ってるけど、事情はともかく対日参戦のご褒美として北方領土をもらうことについては、手前のご主人様、宗主国様である米国様(当時はトルーマン大統領)の同意も得てるんだ!、文句あるのか!」つうことでしょう。
 当然ながら返す気なんかまずないでしょうし「返すにしても、返還後に米軍基地を置かないことの事前確約とそれなりのロシアへの経済支援は譲れない!。誰がただで島を渡すか」となるでしょう。

*1:首都大学東京教授の宮台真司のこと

*2:ウィキペディアにも「この記事が紹介する北海道新聞の報道内容とほとんど同じ」ですが「プロジェクト・フラ」という項目が作られています。

*3:ソ連・ロシア関係の著書に『ペレストロイカ』(1990年、岩波新書)、『北方領土問題』(1999年、朝日選書)、『テロルと改革:アレクサンドル二世暗殺前後』(2005年、山川出版社)、『日露戦争 起源と開戦 上・下』(2009年、2010年、岩波書店)、『スターリン批判 1953~56年:一人の独裁者の死が、いかに20世紀世界を揺り動かしたか』(2016年、作品社)、『レーニン』(2017年、山川出版社世界史リブレット人)、『ロシア革命ペトログラード 1917年2月』(2018年、作品社)など

*4:ソ連・ロシア関係の著書に『ノモンハンの夏』(2001年、文春文庫)、『ソ連満洲に侵攻した夏』(2002年、文春文庫)、『日露戦争史1~3』(2016年、平凡社ライブラリー

*5:戦前、東条、小磯内閣外相。戦後、戦犯として禁錮7年。公職追放されるが後に解除。改進党総裁、日本民主党副総裁、鳩山内閣外相を歴任。

*6:アイゼンハワー政権で国務長官