昨日の報道特集がマジでショックだった(「松本清張シリーズ・虚飾の花園」のネタばらしがあります)

https://www.tbs.co.jp/tv/20190518_1B4F.html
【死刑を免れた男たち〜仮釈放後の生活】
 全国で1800人いる無期懲役囚。刑法改正で仮釈放がほとんどなくなり、高齢化が進む。仮釈放で社会に出た無期懲役囚を取材、「死刑を免れた男たち」の素顔に迫る。

無期懲役囚 獄死への不安 | 報道特集 : TBSテレビ
 刑事事件の厳罰化が進み無期懲役囚の仮釈放が極端に少なくなっている。この結果、受刑者の高齢化も進み、塀の中で死亡する、いわゆる「獄死」のケースが増えている。死刑を免れた無期懲役囚が、仮釈放のない「終身刑化」しているとの指摘もある。報道特集のカメラが迫った無期懲役囚の現実を伝える。

報道の魂
 無期懲役囚でも、早ければ12~3年で仮釈放が認められ、出所していた時代があった。しかし、被害者の遺族への配慮などから、平成16年に刑法が改正され、有期刑の最高が20年から30年に引き上げられた。そして、無期懲役囚が30年の有期刑の受刑者より先に仮釈放されることは困難になった。
 岡山刑務所に収容されている660人のうち、260人が無期懲役囚だ。中には90歳の高齢者もいる。

 昨日のは千葉刑務所*1でしたが、過去には岡山刑務所とかやってるみたいですね。まあ、刑務所内で亡くなる人間も中にはいるわけです。50代で無期刑判決が出れば「有期懲役刑の上限が30年→当然無期だと30年上限を無視してそう簡単に仮出所なんかさせない」つうことで80代にならないとまず出れませんから。
 つうか昨日の報道特集では「70代で複数殺人→無期刑で結局90代で獄死」つうすさまじい強者が出てましたけど。
 話が脱線します(後で戻します)けど

松本清張の「虚飾の花園」 - 邦画ブラボー
 往年の大女優岡田嘉子が事件の鍵を握る上品な老女に扮している。
 落ちぶれたモデルの女(重山規子)と洋裁学校の教師(奈良岡朋子)は、一人の中年男をめぐって取った、取られた、貢いだ、貢がれたと激しく争っている。
 どんなイイ男かと思ったら、なんとそれが松本清張だったのには大爆笑!!*2
 それまでが大真面目な芝居だったので一気にチカラが抜けたものだが、物語はそこからずんずんと佳境に入っていった。
 二人の女優のバトルも十分迫力があったがやはり岡田嘉子がひとり舞台を勤める終盤が圧巻だった!!
 この方の人生こそドラマより奇なりだ。
 そんな波乱に満ちた過去と役柄がオーバーラップしてなんともいえない存在感を示しています。

て清張作品がありますですね。
 で小生、ドラマは見てないですけど、原作は「斜め読みしたこと」はあります。
 以下「トリックとか抜きであらすじ(うろ覚え)」です。
1)清張に金を貢ぐことで歓心を得ようとする奈良岡朋子と重山規子
2)岡田嘉子*3が大金を持ってるらしい事を知った奈良岡が「いい儲け話がある」云々と言葉巧みに彼女をだまし、金を巻き上げた上、全額、清張に貢ぐ。
3)後にだまされたことに気づいた岡田は「金を返せ」というがのらりくらりでごまかす奈良岡についに大激怒。奈良岡だけでなく重山や清張*4にも恨みを抱き全員殺害(ただし奈良岡殺しは重山が共犯)
て「無理と違うのか、1902年生まれやからドラマ放送時点で76歳ヤン(原作の設定も大体同じくらいの年齢)。共犯がいようと、相手が油断してるところを襲いかかろうと3人も殺せるわけないやろ」ですが。まあそれはさておき。このドラマの岡田嘉子なんかは、ほぼ確実にショバにでれませんね。まあ三人も殺したら「金をだまし取った奈良岡が悪い」とはいえ、死刑判決が出る可能性も高いですが無期刑でも仮出所はまず無理でしょう(特にこのドラマの時代、1978年は平均寿命が今よりもっと低いですし)。
 で話を元に戻しますが。あるいは高齢者の無期刑だと認知症や寝たきりになっちゃう人間も出てくる。報道特集の取材「どんな刑を受けたのか」に「無期刑だ」ということは言えても「何をやったのか」については「殺人」としかいえない。まともな記憶力や表現力が失われてるわけです。
 刑務官3人がかりで、そういう囚人が風呂やトイレの世話をされる姿*5報道特集で見ていると「こういう人を刑務所にいれてて何か意味があるのかなあ*6」感が激しくするわけです(被害者遺族はまた気持ちが別かもしれませんが)。刑務所と言うより老人ホーム(老人介護施設)にしか見えない。もうそういう囚人なんかは風呂に入ってる姿がガリガリに痩せててあばらなんか見えちゃったりするわけです。
 なお、無期刑だとさすがに全員「顔にぼかし」ですね(「全身にぼかし」ではない)。声は必ずしも変声ではないです。
 前半がそういう刑務所内の無期囚で、後半が仮出所した無期囚です。数は非常に少ないとは言え仮出所する無期囚もいます。
 「無期刑の仮出所者だけが対象ではない」ですが、更生保護法人備作恵済会古松園 ホームページという施設の活動が紹介されてました。

参考

死刑執行 「無期と雲泥の差があるとは思わない」 大学教授が証言 - 産経WEST
 堺市で平成23年、主婦と象印マホービン元副社長を相次いで殺害したなどとして、強盗殺人罪などに問われた無職、西口宗宏被告(52)の裁判員裁判の公判は、大阪地裁堺支部(森浩史裁判長)で24日午後も続き、受刑者の更生を支援している立命館大産業社会学部の岡本茂樹教授(55)=犯罪心理学=が証人尋問で「無期懲役は先の見えない恐怖があり、魂を殺す刑だ」と証言した。
 弁護側の質問に岡本教授は、無期懲役囚の処遇について「仮釈放をもらうために懲罰を避けたいと考え、刑務官らに言われたことに従うだけ。自分の感情を抑制したロボットのような生活を送る」と表現。「死刑と無期で雲泥の差があるとは思わない」と述べた。
 また、無期囚と長年交流した経験を踏まえ、「無期囚は当初、先の見えない恐怖で『死にたい』と考えるが、そのうちに被害者の苦しみも理解する」と指摘。昨秋から被告と手紙のやり取りや面会を続けていると明かし、「(被告には)被害者の痛みを分かってもらい、人の役に立つことをしてほしい」と述べた。

■岡本茂樹(1958年~2015年:ウィキペディア参照)
 兵庫県生まれ。1982年、神戸市外国語大学英米学科卒。1984年、関西学院大学大学院文学研究科修士課程修了。1985年、尽誠学園高等学校英語科教諭。1986年、甲南女子中学・高等学校英語科教諭。2000年、兵庫県立教育研修所・心の教育総合センター非常勤心理士。2001年、武庫川女子大学大学院臨床教育学研究科博士課程を修了、「ロールレタリングに関する臨床教育学的研究」で臨床教育学博士。2001年-2002年、大阪府池田市教育研究所非常勤心理士。2004年10月、九州ルーテル学院大学人文学部心理学科助教授、2006年10月、教授。その後、立命館大学産業社会学部教授。不登校、非行や神経症などの臨床経験ののち、犯罪者の更生について研究した。日本ロールレタリング学会理事長。
■著書
『ロールレタリングに関する臨床教育学的研究』(2003年、風間書房)
『ロールレタリング:手紙を書く心理療法の理論と実践』(2012年、金子書房)
『反省させると犯罪者になります』(2013年、新潮新書)
無期懲役囚の更生は可能か:本当に人は変わることはないのだろうか』(2013年、晃洋書房)
『凶悪犯罪者こそ更生します』(2014年、新潮新書
『いい子に育てると犯罪者になります』(2016年、新潮新書)

■岡本茂樹『反省させると犯罪者になります』(2013年、新潮新書)
■アマゾンの内容紹介
 犯罪者に反省させるな。「そんなバカな」と思うだろう。しかし、犯罪者に即時に「反省」を求めると、彼らは「世間向けの偽善」ばかりを身に付けてしまう。犯罪者を本当に反省に導くのならば、まずは「被害者の心情を考えさせない」「反省は求めない」「加害者の視点で考えさせる」方が、実はずっと効果的なのである。「厳罰主義」の視点では欠落している「不都合な真実」を、更生の現場の豊富な実例とともに語る。

 まあ早急に反省を求めるより「なぜ自分はああしたことをしてしまったのか」「なぜそうするしかないと思ったのか(つまり加害者としての真情の吐露)」をさせよう、つう事のようですね。

■岡本茂樹『いい子に育てると犯罪者になります』(2016年、新潮新書)
■アマゾンの内容紹介
 意外なことに、刑務所への出入りを繰り返す累犯受刑者には「いい子」だった者が多い。自分の感情を素直に出さず、幼少期から無理を重ね、親の期待する役割を演じることに耐えられなくなった時、積もり積もった否定的感情が「犯罪」という形で爆発するのだ。健全な子育ては、「いい子」を強いるのではなく「ありのままの姿」を認めることから始まる。

*1:レンガ造りで重要文化財らしいです。

*2:これが石坂浩二当たりだったら説得力もあるんでしょうけどね。まあ「奈良岡朋子に貢がれる清張」てのも見ていて面白そうです。

*3:松本清張の「虚飾の花園」 - 邦画ブラボーも指摘していますが、戦前ソ連(現ロシア)に恋人と亡命したら、不当にも恋人がスターリンに粛清(銃殺)され、自分も投獄されたあげく、1972年になるまで日本に帰ってこれなかった「戦前のスター女優だった」あの岡田さんですね。帰国後の出演です。

*4:ということでこのドラマでの清張の役どころは結構重要です。

*5:厳罰論者、死刑愛好家だと「死刑にすればいい(無期にするから悪い)」で終了かもしれませんがそういう話ではないでしょう。

*6:とはいえ引き受ける人が居なければ、そんな人間を出獄させるわけにもいきませんが。