「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2019年5/26分:高世仁の巻)

フリーランスの金と自由 - 高世仁の「諸悪莫作」日記

・印象に残ったのは、司会の野中章弘さん*1早大教授)が「フリーランスとしてプレッシャーに感じることは?」との質問。安田さん*2がすぐに「それはお金ですね」と答え、隣の桜木武史さん*3(第3回受賞者)に「そうだよね」と同意を求めると、桜木さんも笑ってうなづいた。
・シンポジウムが終わって桜木さんと話していたら、明日も4時起きなので早く帰らなくては、という。彼は毎日トラックの運転手をして暮らしを立てているのだ。
・彼らの意気軒昂な発言には敬意を表しつつ、この現状で日本のジャーナリズムは大丈夫なのかと心配になった。
 「食べられるジャーナリズム」をめざして会社を立ち上げたものの、なかなかお金が稼げない上に、仕事でジャーナリズムを実践できているか疑問になっているわが身をも振り返って、いろいろ考えさせられた夜だった。

 吹き出しました。「仕事でジャーナリズムを実践できているか疑問になっているわが身」て特定失踪者なんてデマに加担する男が良くもいったもんです。
 「安心しろよ、お前はジャーナリズムなんか実践できてないから。つうか、お前、昔(例:日本電波ニュース社報道部長)はともかく今はそんなこと何一つやる気ねえだろ。金を稼ぐことしか考えてないだろ。虚言吐いてかっこつけるなよ」ですね。
 まあ、やはり「独立するとカネに転ぶ、転んだのが高世だ」つうことなんでしょう(福島香織なんかもそうでしょう)。生活が安定しているサラリーマン記者ならまともな報道が出来るつうもんでもないですけどね(例:産経の阿比留)。
 以前も拙記事で書いたことですが「朝日を代表するスター記者の一人だった、あの本多勝一*4ですらそう思ってるのか」と感じて記憶に残ってる「本多氏の文章」があります。
 本多氏の元へ読者から「何で本多氏は、元朝日の筑紫哲也(1989年退社、TBS「ニュース23」キャスターに就任し、2008年に死去するまで務めた)、元読売の本田靖春*5(1971年退社)、黒田清(1987年退社)、元毎日の鳥越俊太郎(1989年退社、テレ朝「ザ・スクープ」(1989~2002年)キャスターに就任。「ザ・スクープ」終了後もテレビコメンテーターなどとして活動)各氏のように新聞社をやめてフリーにならないのか」という手紙があったそうです(まあ他にも「新聞記者からのフリー」はいますが)。
 まあ、筑紫、鳥越の名前が出てますので、早くとも1989年執筆の記事ですね(ただしこの本多論文では「メールマガジン」など「ネットによる情報発信」については触れられてないのでそういった可能性が出る前の話です)。
 で本多氏は文章の中で以下のように答えています。
 「私が朝日をやめればすぐに発表の場が一つ減る。収入もゼロになる。そしてその減った分だけの「発表の場」「収入」がフリーになって簡単に得られると思うほど自分は自信家じゃない。筑紫氏らがフリーで成功したから本多も成功できると思うのは甘すぎる。彼らと本多は違う。サラリーマン記者なら極端な話、いい記事さえ書けばいい。しかしフリーは営業能力が必要だし、自分にそうした営業能力があるといえる自信はない。筑紫氏らにはそうした営業能力があったのだろう」
「今のところ、筑紫氏ら、あなたが名前を挙げた方々は私と意見の違いはあれども、『カネのためにデマ記事を書くようなこと*6』はしてないと思う。しかし今後絶対にしないとは言い切れないと思う。例えば、スポンサーや政府の圧力に屈したTBSから『今のままの報道を続けるなら、ニュース23キャスターをやめろ*7』といわれても筑紫氏は果たしてTBSに『私は何も悪いことをしていない。あなた方がどうしてもやめろというなら抗議意思の表明としてやめます』とはたしていえるのか。彼らが死ぬまで「カネのために転ぶこと*8」をしなくても、金銭面で安定がないフリーにはその危険性は死ぬまでつきまとう」
「私が読売退社前の黒田氏*9のように、朝日から発表の場を失ったら、朝日をやめるかもしれない。しかし今のところ、『自分の書きたい記事が全て書けてる』わけじゃないが、ある程度はかけてる。定年になる前に自分からやめる理由がない」
「フリーになったら自由にものがかけるかといったらそんなことはない。発表の場は新聞、雑誌(週刊や月刊)、テレビ、ラジオになるだろうが、自前でそういったことはそう簡単にできるもんではない*10。したがって既存のメディアに持ち込まざるを得ないが、そうしたメディアが朝日より私に好意的な保証はない。ましてや朝日より部数などで影響力が大きい保証もない」と。
 まあ、「本多氏も意外と冷静だな」と感じたのを覚えています。

*1:アジアプレス・インターナショナル代表

*2:著書『ルポ 戦場出稼ぎ労働者』(2011年、集英社新書)、『シリア拘束 安田純平の40か月』(2018年、扶桑社)など

*3:著書『増補版・シリア 戦場からの声』(2016年、アルファベータブックス)

*4:著書『中学生からの作文技術』(朝日選書)、『新・アメリカ合州国』(朝日文芸文庫)、『アイヌ民族』、『アメリカ合州国』、『アラビア遊牧民』、『植村直己の冒険』、『NHK受信料拒否の論理』、『カナダ=エスキモー』、『きたぐにの動物たち』、『釧路湿原:日本環境の現在』、『検証・カンボジア大虐殺』、『50歳から再開した山歩き』、『子供たちの復讐』、『殺される側の論理』、『殺す側の論理』、『事実とは何か』、『実戦・日本語の作文技術』、『しゃがむ姿勢はカッコ悪いか?』、『憧憬のヒマラヤ』、『職業としてのジャーナリスト』、『先住民族アイヌの現在』、『戦場の村』、『そして我が祖国・日本』、『中国の旅』、『天皇の軍隊』、『南京への道』、『日本環境報告』、『新版・日本語の作文技術』、『ニューギニア高地人』、『冒険と日本人』、『北海道探検記』、『滅びゆくジャーナリズム』、『マスコミかジャーナリズムか』、『マゼランが来た』、『新版 山を考える』、『リーダーは何をしていたか』、『ルポルタージュの方法』(以上、朝日文庫)、『本多勝一戦争論』、『本多勝一の日本論:ロシア、アメリカとの関係を問う』(以上、新日本出版社)など

*5:著書『評伝 今西錦司』(岩波現代文庫)、『私戦』(河出文庫)、『不当逮捕』、『村が消えた:むつ小川原 農民と国家』、『我、拗ね者として生涯を閉ず』(以上、講談社文庫)、『疵:花形敬とその時代』、『警察(サツ)回り』、『誘拐』(ちくま文庫)、『私のなかの朝鮮人』(文春文庫)など

*6:例えば、産経を退社した福島香織が現在やってること(例:一帯一路は失敗続きだ、など)です。

*7:NHKクローズアップ現代の国谷氏やテレ朝・報道ステーションの古館氏に対してテレビ局がやったことはそういうことでしょう。

*8:「繰り返しますが」例えば、産経を退社した福島香織が現在やってること(例:一帯一路は失敗続きだ、など)です。

*9:ナベツネに敵視され干されていたと言われます。

*10:とはいえその後、本多氏が筑紫氏ら同志とともに1993年に「自前の雑誌」として週刊金曜日を立ち上げたのはご存じの通りです。したがってこの文章は「1989年の筑紫、鳥越退社以降、1993年の週刊金曜日立ち上げまで」に書かれたかと思います。