今日の中国ニュース(2019年7月17日分)

台湾一の富豪、「庶民」に敗北 総統予備選、親中あだ:朝日新聞デジタル
 産経だけでなく、朝日新聞までも「理屈に合わない反中国」なのかと思うとげんなりしますね。

 党本部前に集まった支持者が訴えたのは、中国との関係を安定させて景気回復を図るという韓氏の主張の一つだ。

ということでわかるように郭台銘氏に勝利した韓国瑜氏が反中国だなどという事実はないのですから

 (ボーガス注:郭氏の)敗因の一つは、中国との関係の緊密さだ。

なんてことはあるわけもないでしょう。
 大体

・ざっくばらんな語り口で国民党の刷新を求める人々の支持を得て
・「庶民総統」のキャッチフレーズ
・旧来の国民党幹部らが「密室」で郭氏を担ぎ出したとの見方もあり、政治エリートに反発する支持層から敬遠

と「庶民イメージの韓氏が、金持ちイメージの郭氏に勝利した」と書きながら何で突然

敗因の一つは、中国との関係の緊密さだ。

なんて話が出てくるのか。


台湾・総統選、中国との距離感が争点 蔡氏VS親中候補(1/2ページ) - 産経ニュース

「皆さんに今の香港を見てほしい。2020年の総統選は、台湾の民主的な生活方式を守る戦いになる」
 蔡氏は15日、外遊先のカリブ海の島国、セントクリストファー・ネビスで記者団にこう述べた。

 「そういうナショナリズムの扇動しかお前はやることがないのか」「総統としての実績を訴えないのか」「しかも国内ならまだしも海外でそんなことをやるか」ですね。国民党が仮に勝利しようと、4年間の間に中台統一が現実の物となることはまず考えられません。国民党支持者ですらそんな早期統一は希望してないし、国民党もそんな方針ではない。
 国民党は「中台が対等な立場で」かつ「台湾住民多数の支持を得て」統一という方針です。実際、馬政権で「中台の経済交流」などは進んでも統一なんて方向には全く動いてない(中国が「将来の統一」云々と言い、それを馬政権が目くじら立てずに容認したとしても、もちろん経済交流それ自体は統一に直結するもんではありません)。
 安倍よりは有能であり、また「脱原発」「同性愛容認」というある種のリベラル性を持つとは言え、中国問題に限れば「台湾の安倍晋三」といっていいんじゃないか。いや安倍は「対韓国」はともかく「対中国」では事情はともかく「矛を収めつつ」ありますが。

 蔡政権は今年に入り、安全保障関連の法律5本を改正。中国で政治活動に参加した退役将官の年金の支給停止を可能にするなど、中国の統一工作に対抗策を講じている。

 おいおいですね。「中国で政治活動に参加した退役将官の年金の支給停止を可能にする(実際に停止するかどうかはともかく)」なんてことはおよそまともな行為ではないでしょう。年金は「老人への生活保障」であって「国が与えるご褒美」ではない。
 政治活動といったところで「福田元首相の訪中」のような、「中台で仲良くやっていきましょう」程度の話でしかないでしょうし。「安倍の韓国への嫌がらせ」といい勝負ではないのか。

 韓氏は今年3月に中国広東省などを訪問し、国務院(政府)台湾事務弁公室の劉結一主任と会談。中国寄りの「中国時報」系メディアは韓氏の動向を連日、手厚く報道している。ただ、韓氏は香港のデモで「よく知らない」と失言して批判され、最近は防戦を迫られる対中関係ではなく内政課題で政権を批判。15日の会見でも「3年余の蔡政権下で、全ての台湾人が苦しい生活を過ごしている」と語る一方、対中政策の質問は「時期が来たら話す」と回答を避けた。

 韓氏としては「景気問題など内政失政」で蔡を攻撃するのがよいという認識なのでしょう。一方、彼も「香港デモ」で「中国支持」でもないでしょうが、「蔡のせいで悪化する中台関係」を考えればあまり中国批判したくないという所なのでしょう。
 一方、蔡は蔡で「総統としての成果がろくにないこと(例:同性愛容認は悪いことではないですが景気回復ほど世間の関心は高くない)」で「反中国で乗り切ろう」と馬鹿なことを考えてるのでしょう。蔡はおよそまともな政治家ではない。
 

【主張】米国の武器売却 台湾存立に当然の措置だ - 産経ニュース
 「反中国」産経的にはそうなるのでしょうが全然当然ではないですね(なお武器購入それ自体は金額などはともかく馬政権など過去の政権もやっていたことではあります)。
 なぜなら
1)過去の武器購入が中国に配慮し「金額を抑えたり」「最新鋭武器ではなく、やや型落ちの武器*1」などにしてきたのに、今回そうした配慮があまり見られない
2)蔡英文が馬前政権に比べてやたら反中国で、「中国が抗議しても」突っぱねてる
からです。
 中国も正直「台湾政府は米国製武器を全く買うな」とは思ってないでしょう。ある程度は「大目に見る用意」はある。
 ただし「独立を計画し、中国との対立をエスカレートさせるのではないか」と疑わしい行動を蔡に公然ととられてはメンツの上で「強硬な抗議」を表明せざるを得なくなるわけです。
 正直、蔡は「反中国支持層への受け狙い」でこうしたことをやってるのではないかと疑いたくなります。

 台湾海峡の安定と地域の安全を脅かしてきたのは中国の方ではないか。

 おいおいですね。馬政権時代にはこんな対立はありませんでした。先に挑発行動をとり緊張を高めたのはむしろ蔡の方です。

 魏鳳和中国国防相は6月2日、アジア安全保障会議で「誰かが台湾分裂を図るなら、犠牲を惜しまず戦い抜く」と述べた。

 蔡が「米国からの武器購入金額を増大させる」など、「中国からの独立宣言」を画策しているのではないか、と中国に疑われる行動をとるからこその牽制に過ぎません。
 そもそも中国は「誰かが台湾分裂を図るなら=蔡が台湾独立を宣言するなら(そしてそれを欧米や日本がもし支持するなら)」戦争も辞さないと言ってるのであり「蔡が挑発的態度を控えれば済む」話です。
 なお「誰かが」と言う表現に注目したいと思います。これは「蔡に代わって別の人間が次の総統になろうが」と言う意味もあるでしょうが、それプラス「蔡を名指しで非難すること」は避けたという面もあるのではないか。

蔡英文総統は、中国の強硬姿勢への反発を追い風にむしろ支持を広げている。

 だとしたら台湾住民は愚かとしか言い様がありませんね(まあ最終的には国民党候補当選という「正しい選択」を選ぶのではないかと「願望込みながら」思いますが)。
 あえて俺は「国民党候補当選」が「正しい選択」だと言いきります。
 もちろん「台湾は中国に媚びまくれ」とはいわない。しかし現実問題として「大国中国」相手に今のような敵対的関係であることは望ましいことではないでしょう。
 蔡が国民党とは違い、「将来の中台統一」に反対するにしても、安全保障や経済などを考えれば「ある程度の中台友好関係構築」は目指して当然です。実際、蔡が「反中国路線」を改めれば、安倍が反中国路線を一応封印したが故に「G20で習主席が来日」した程度の「融和的対応」を中国もするでしょう。
 ところが非常識な反中国路線を蔡が改めないというのであれば、蔡を総統から下ろすほかないでしょう。

 「一国二制度」の結果が香港の現状である限り、台湾がこれを受け入れることはあるまい。

 やれやれですね。問題は「蔡の非常識な反中国」を容認するかどうかであって「中台統一を支持するかどうか」ではない。
 また香港について言えば「デモ隊の成果」とはいえ、一応香港当局は条例案を撤回しました。そして行政長官が「当面、出す気はない」と事実上の廃案宣言をした(メンツもあって現時点では「廃案」「撤回」を明言してはいませんが)。
 「何が何でも条例案を通す」が出来なかった中国側がもっとハードルが高い「台湾侵攻」なんか「蔡が独立宣言しない限り」到底出来るもんではありません。

*1:勿論全くのロートルでは使えませんので、そのあたり「中国の反発を買わないが、それなりに使える武器」としてある種のバランスをとるわけですが