新刊紹介:「経済」9月号

「経済」9月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
■巻頭言「原発安全対策費」
(内容紹介)
 赤旗記事の紹介で代替。

主張/原発のコスト/「安価」の根拠は崩れている
 再稼働させるための既存原発の「安全対策費」は高騰し、18年度に電力11社が出した費用見通しは4兆6000億円にもなります。5年前の見通しと比べて2・5倍です。福島第1原発の事故処理のための費用は、すでに10兆円を超えて、この先さらにふくれ上がることは避けられません。
 また将来必要となる原子力施設の廃止の費用は、事業者の見積もりで、福島第1原発4基の廃炉費用をのぞいても、累計で約6兆7000億円になります。まさに天井知らず、です。コストの面でも重くのしかかる原発と決別することがいよいよ急がれます。


世界と日本
■G20大阪サミット(金子豊弘)
(内容紹介)
 赤旗記事の紹介で代替。

安倍首相 貧困・格差拡大の「自由貿易」固執/G20開幕 「大阪トラック」で合意
 人権や環境よりも多国籍企業の自由と権利を上に置き、貧困、格差、環境破壊を世界に広げている「自由貿易」を一層推進する姿勢を示しました。

G20 総体的に「落第」/市民社会代表 C20が評価発表
 20カ国の市民社会を代表するC20は29日、同日閉会した20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)の評価を発表しました。
 「ジェンダー」や「貿易・投資」など11分野を5段階で評価。「環境・気候・エネルギー」「ジェンダー」「インフラ」「貿易・投資」「デジタル経済」「人権と言論の自由」の6分野を最低の1とし、総体的に「落第」と評価しました。


■韓国・労災死亡事故(洪相鉉)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

最近3週間で50人が労災事故死…「キム・ヨンギュン」は韓国社会の至るところにいる : 政治•社会 : hankyoreh japan
 キム・ヨンギュン氏の悲劇が起きる前に、「キム・ヨンギュンたち」の不幸が社会の関心の外にあったように、働く人々の命を守る産業安全保健法にも無関心だった。政府は先月30日、産業安全保健法の全面改正案を国会に提出した。1981年に制定された産業安全保健法が全面改正されるのは、1990年以来28年ぶりのことだ。「危険の外注化」を防ぐため、元請事業主が安全措置をとるべき場所を「一部の危険な場所」から「事業場全体」に拡大し、「危険機械」を使う場合の安全対策を元請に義務づける内容を盛り込んだが、国会では議論すらされていない。経営界の反対で、事業主に対する下限刑(1年以上)が削除され、危険作業の例外条項も新設されたが、韓国経営者総協会(経総)などの経営界は「依然として処罰が重すぎると共に、自由契約の原則に反する」として、反対している。

【ビジネス解読】韓国の労災死亡率は日本の3倍超だった! “殺人企業”のワーストランキングは財閥系企業が続々と…(1/5ページ) - 産経ニュース
 “最悪の殺人企業”は韓国化学大手ハンファケミカル。
 韓国の大手労組など市民団体が4月、「2016年殺人企業」のランキング10社を発表した。殺人企業という、いささか過激なレッテルはさすが“お国柄”といえるが、労働災害による死亡事故減を目指す、いたってマジメな取り組みだ。


■アフリカ大陸自由貿易圏(佐々木優)
(内容紹介)
 成立したばかりであり、現時点では「成り行きに注目」というところでしょうか。

参考

アフリカ自由貿易圏が発足、ナイジェリアが署名、20年に運用開始へ (写真=ロイター) :日本経済新聞
 アフリカ連合AU)は7日、ニジェールの首都ニアメーで首脳会議を開き、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)が正式に発足したと発表した。参加を見送ってきたアフリカの経済大国のナイジェリアが同日に署名し発足を後押しした。各国は9割の輸出入品について関税や非関税障壁を撤廃し、低迷するアフリカ域内での貿易促進を狙う。
 ナイジェリアとベナンが署名し、AUに加盟する55の国・地域のうちエリトリア以外が自由貿易協定に参加することとなった。2020年7月から運用を開始する予定だ。AU議長国のエジプトのシシ大統領は7日、「世界の目がアフリカに集まっている」と強調した。

[FT]アフリカFTA発効、期待と残る構造課題 (写真=ロイター) :日本経済新聞

 協定の実施には大きな障害が残る。とりわけ、重要な詳細項目が定まるまでは、協定は基本枠組みにとどまり、実際の力はない。協定の立役者である国連アフリカ経済委員会(ECA)の前委員長カルロス・ロペス氏は、最終合意実施までに少なくともあと3年はかかると話す。加盟国は目下、原産地規則や知的財産、紛争解決メカニズムの詳細をめぐる交渉に着手したところだ。
 協定が対処しようとする主要課題には以下のような点がある。
(1)ほとんどの貿易圏に比べ域内貿易規模が小さい
 輸送距離の長さ、貧弱な道路・鉄道網、煩雑な通関手続きが原因となり、アフリカ各国間の貿易は他地域の大半に比べ遅れている。域内貿易額は21世紀入りする前後の時期以降、増加傾向をたどってきたが、それでも南米南部共同市場(メルコスル)以外に規模で勝てる貿易圏はない。
(2)各国とも大陸外との結び付きの方が強い
 アフリカ大陸のインフラは植民地時代の宗主国への原材料輸送専用につくられた。1950年代以降、アフリカ各国が独立していったあとも、その基本構造はほとんど変わっていない。
 例えば、ナイジェリアにとっては隣国のベナンと取引するより、米国との貿易の方が簡単だ。
 AfCFTAの発効で最大の障壁の一つである関税が撤廃されれば、アフリカ域内の貿易のハードルがいくらか下がると期待される。だが大半の国が域内よりも域外の貿易相手に目を向ける原因となっている、インフラ不足という問題は解決されない。
(3)輸出品の付加価値が小さい
 アフリカ大陸は、自国産業に用いる原材料を求める欧米諸国や中国、ロシアによって原材料を搾り取られ続けている。
(4)対内直接投資は世界一少ない
 アフリカへの直接投資額は、アジア向けの10分の1以下だ。AfCFTAの計画立案者は、アフリカでは人口が若くて増加ペースが速く、中間層が膨らんでいることと併せて、統一市場が生まれることで、投資先としての魅力が増すと期待する。


■レポート「平和で民主的な社会のために 学者の会がアピールを発表」
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
民主的社会へ いま行動を/学者の会など参院選アピール


特集『米国vs中国 経済摩擦の波紋』
■米中相互依存(チャイメリカ)経済から「新冷戦」化へ(上)(山脇友宏)
(内容紹介)
 オバマ政権の「米中相互依存(チャイメリカ)経済」からトランプにより『米中「新冷戦」化』というのが大まかな内容です。
 もちろん山脇氏はそうした米中冷戦を「米国の無法」として批判していますが、そもそも「現在のトランプ政権による米中対立は、1980年代の日米貿易摩擦と違う、米ソ冷戦的な物なのか」自体に議論が分かれるとは思います。


■どうなる中国経済:米中貿易紛争と中国の対応(井手啓二*1
(内容紹介)
 トランプの無法な経済報復は中国経済にダメージを与えざるを得ないが
1)トランプの経済報復には国際的批判も強い
2)中国で製品を製造する、あるいは中国を市場とする米国メーカーへのダメージも大きい
3)中国も米国以外への輸出である程度対抗できる
ことから、いずれは米中も「和解せざるをえない」と見ています。


■米中の経済摩擦と韓国経済(佐野孝治)
(内容紹介)
 米中の経済摩擦が韓国経済にも悪影響を与えていることを指摘。経済摩擦の早期解消を求めています。
 なお、筆者は「原稿締め切り直前に情報が入ってきた」安倍の対韓国経済報復については「別途、詳細に論じたい」としていますが、「韓国経済に悪影響を与えるだけでなく、日本の国際的評価も破壊する(WTO違反の疑い濃厚な上に、明らかに『経済問題ではなく歴史問題での安倍の極右的逆ギレ』を理由としているので、戦前に無反省な国・日本というマイナスイメージが流布される)」として早期の撤回を主張しています。


■中国の「一帯一路」と債務問題(山田俊英)
(内容紹介)
 アメリカの一帯一路への「債務問題」を理由とした非難について、「判断する材料が乏しいため評価できない」とした上で、米中双方に議論するに足る債務問題の情報公開を求めています。
 その上で一般論として「過大な債務を生まない支援が必要」とはしていますが、一帯一路それ自体を否定するのは現実的ではないだろうとしています。
 また、債務問題は何も一帯一路に限ったことではなく欧米の支援においても発生してきたことが指摘されています。


■経営者高額報酬問題と企業の株主資本主義化(上)(丸山恵也*2
(内容紹介)
 経営者報酬の高額化が「従業員賃金の低額化」とセットである事実が否定的に指摘されています。そうした事態を「どう改善するか」は次号以降の(下)でされるのでしょう。


■企業の社会的責任を考える:CSR*3、ESG*4SDGs*5(柚木澄)
(内容紹介)
 近年、CSRなど企業の社会的責任について国連の提唱などもあり、日本企業が一定の取り組みをはじめたことを一応は評価しながらも、そうした取り組みがどこまで信用できる物となるかは、労組、市民運動など社会の監視が必要としている。


■「生産性の低迷」とは何を意味するのか:日本資本主義の長期停滞(佐藤拓也
(内容紹介)
 最近刊行された、宮川努『生産性とは何か』(2018年、ちくま新書)などをもとに「日本での生産性低迷」について筆者の意見を述べているが、小生の無能のため、今ひとつ論旨が分からなかった。なお、筆者は宮川本における「日本での生産性低下の原因」「生産性低下の克服論」には必ずしも同意しないと断っているが、読みやすい新書として、「生産性の議論」についてある程度の知識が得られる好著として一定の評価はしている。


■データで見る日本経済33「ジェンダー平等の課題」
(内容紹介)
 「経済」誌なのでジェンダーギャップ指数などを元に「男女間賃金格差」「女性の就業率の低さ(出産、育児を機に退職する女性の多さ。いわゆるM字カーブの存在)」「企業の女性管理職の少なさ」といった経済分野のジェンダー不平等が指摘されている(もちろん経済分野以外でも「議員など女性政治家の数の少なさ(政治分野)」「男女間での大学進学率の格差(未だに女性の4年制大学進学率は男性より低い)(教育分野)」といったジェンダー不平等は存在する)。

参考

■M字カーブ(ウィキペディア参照)
 女性の年齢階級別の労働力率(15歳以上の人口に占める働く人の割合)をグラフで表すと、学校卒業後20歳代でピークに達し、その後、30歳代の出産・育児期に落ち込み、子育てが一段落した40歳代で再上昇する。これを折れ線グラフに表すと、アルファベットの「M」に似た曲線を描く傾向が見られる。「M字カーブ」とはこのグラフの形態を指し、女性の就業状況の特徴を表している。
 M字カーブと呼ばれる現象は、日本のほか、韓国においても見られるが、現在の欧米諸国では見られない。
■日本における状況
 2015年(平成27年)の女性の労働力率を年齢階級別にみると、「25~29歳」(80.3%)と「45~49歳」(77.5%)を左右のピークとし、「30~34歳」(71.2%)を底とするM字型カーブを描いている。1976年(昭和51年)からの変化を見ると、現在も「M字カーブ」を描いているものの、そのカーブの底は以前に比べて浅くなっている。浅くなった理由として、有配偶者の労働力率が上昇してきたことがあげられる。
 M字の底となる年齢階級も上昇している。昭和51年は「25~29歳」(44.3%)がM字の底となっていたが、25~29歳の労働力率は次第に上がり、平成28年では81.7%と、年齢階級別で最も高くなっている。M字の底は昭和54年に「25~29歳」から「30~34歳」に移動し、平成20年には「35~39歳」へと移動した。

個人の尊厳とジェンダー平等のために/差別や分断をなくし、誰もが自分らしく生きられる社会へ/2019年6月5日 日本共産党

*1:著書『中国社会主義と経済改革』(1988年、法律文化社

*2:著書『日本的生産システムとフレキシビリティ』(1995年、日本評論社)、『東アジア経済圏と日本企業』(1997年、新日本出版社

*3:「企業の社会的責任」の略語

*4:「環境、社会、企業統治」の略語

*5:「持続可能な開発目標」の略語