黒坂真に突っ込む(2019年8月11日分)

■黒坂ツイートにコメント

黒坂真
 日本共産党本部の皆さん。皆さんは日清・日露戦争も日本の侵略戦争だ、という見解ですね。皆さんは日本国家が滅亡すべきだったという立場でしょう。

 日本共産党員に限らずまともな人間の認識は「日清・日露戦争は日本の侵略戦争」でしょう。まさか「清朝やロシアによる日本侵略」に対する「防衛戦争」のわけもない。
 「韓国をめぐる争い」であり「自国の国益に反する」日本の韓国植民地化を阻止しようとする清朝、ロシアに勝利することによって日本は韓国植民地化に本格的に乗り出したわけです。
 日清戦争では「賠償金と台湾割譲」、日露戦争では「南樺太(南サハリン)割譲」がありますが戦争の最大の目的は「韓国植民地化」だったわけです。
 もちろん「日清・日露戦争侵略戦争」という認識は「だから戦争すべきでなかった」という認識ではあっても「清朝やロシアに負けて大日本帝国が滅亡すれば良かった」なんて話ではない。
 そもそも黒坂は日本が「侵略戦争をしたこと」を認めないのかという話です。黒坂は「日本の戦争は、全て侵略に該当しない戦争であった」と強弁する気なのか。

黒坂真
‏ 福山和人さん。原爆投下や空襲、沖縄での住民殺害*1を日本人*2の責任*3にするのは、米国の戦争犯罪免罪論そのものです。

 やれやれですね。
 福山氏は

・ウヨの言う『国民の事を思って』の昭和天皇の『終戦の聖断』など嘘っぱちだ。原爆投下とソ連軍参戦で降伏以外に手がなくなったから降伏しただけだ。
・本当に『国民の事を思って』いるなら「1945年8月」よりももっと早く日本は降伏すべきだった。いわゆる近衛上奏文も「天皇制護持が目的」だが「早期の降伏」を「1945年2月」時点で主張していた。近衛上奏文の時点(1945年2月)でもはや日本の敗北が不可避であることは明白だった。しかし国体(天皇制)護持を重視する昭和天皇はこの時点では降伏しなかった。
・近衛上奏文(1945年2月)時点で日本が降伏していれば「1945年3月10日の東京大空襲」「1945年4月の米軍上陸以降の沖縄戦」「1845年8月の原爆投下」はなかった。早期に降伏しなかったことが被害を拡大したのであり、むしろ『遅すぎた聖断』(1988年に琉球放送が制作したテレビ番組の題名であり纐纈厚氏、山田朗氏共著(1991年)の著書名でもある)だった

と主張しているに過ぎません。これは米軍免罪でもなんでもありません。
 いわゆる「聖断神話」への批判に過ぎません。歴史学会の通説でもある。
 これについては例えば、井上清*4天皇の戦争責任』(2004年、岩波現代文庫)、纐纈厚*5『「聖断」虚構と昭和天皇』(2006年、新日本出版社)、山田朗*6昭和天皇の軍事思想と戦略』(2002年、校倉書房)を紹介しておきます。
 しかし日本人はもっと歴史を学ぶべきですね。「近衛上奏文って何?」「そもそも近衛文麿って誰?」つう日本人も多いのだろうとは思います。

*1:さすがにここでの「沖縄での住民殺害」とは「米軍による殺害」でしょうが、それは一方では黒坂が卑劣にも「日本軍による住民への自決強要について無視してる(もしかして産経のような否定論?)」事を示しています。

*2:正確には当時の日本政府首脳部

*3:もちろん「沖縄での住民殺害」が「日本軍による自決強要」を意味するならそれは「日本人の責任」以外の何物でもありません。

*4:京都大学名誉教授。著書『日本帝国主義の形成』(2001年、岩波モダンクラシックス)、『明治維新』、『自由民権』(以上、2003年、岩波現代文庫)、『日本の軍国主義』(2004年、岩波現代文庫)など

*5:山口大学名誉教授。著書『日本海軍の終戦工作』(1996年、中公新書)、『検証・新ガイドライン安保体制』(1997年、インパクト出版会)、『侵略戦争』(1999年、ちくま新書)、『有事法制とは何か』(2002年、インパクト出版会)、『近代日本政軍関係の研究』、『文民統制自衛隊はどこへ行くのか』(以上、2005年、岩波書店)、『監視社会の未来:共謀罪・国民保護法と戦時動員体制』(2007年、小学館)、『憲兵政治:監視と恫喝の時代』(2008年、新日本出版社)、『私たちの戦争責任』(2009年、凱風社)、『田中義一』(2009年、芙蓉書房出版)、『「日本は支那をみくびりたり」:日中戦争とは何だったのか』(2009年、同時代社)、『侵略戦争と総力戦』(2011年、社会評論社)、『領土問題と歴史認識:なぜ、日中韓は手をつなげないのか』(2012年、スペース伽耶)、『日本降伏:迷走する戦争指導の果てに』、『日本はなぜ戦争をやめられなかったのか』(以上、2013年、社会評論社)、『集団的自衛権容認の深層:平和憲法をなきものにする狙いは何か』(2014年、日本評論社)、『暴走する自衛隊』(2016年、ちくま新書)、『逆走する安倍政治』(2016年、日本評論社)、『権力者たちの罠:共謀罪自衛隊・安倍政権』(2017年、社会評論社)、『[増補版]総力戦体制研究:日本陸軍国家総動員構想』(2018年、社会評論社)、『日本政治史研究の諸相:総力戦・植民地・政軍関係』(2019年、明治大学出版会)、『自衛隊加憲論とは何か』(2019年、日本機関紙出版センター)、『戦争と敗北:昭和軍拡史の真相』(2019年、新日本出版社)など

*6:明治大学教授。著書『昭和天皇の戦争指導』(1990年、昭和出版)、『大元帥昭和天皇』(1994年、新日本出版社)、『軍備拡張の近代史:日本軍の膨張と崩壊』(1997年、吉川弘文館)、『歴史修正主義の克服』(2001年、高文研)、『護憲派のための軍事入門』(2005年、花伝社)、『世界史の中の日露戦争』(2009年、吉川弘文館)、『これだけは知っておきたい日露戦争の真実:日本陸海軍の〈成功〉と〈失敗〉』(2010年、高文研)、『日本は過去とどう向き合ってきたか』(2013年、高文研)、『近代日本軍事力の研究』(2015年、校倉書房)、『兵士たちの戦場』(2015年、岩波書店)、『昭和天皇の戦争:「昭和天皇実録」に残されたこと・消されたこと』(2017年、岩波書店)、『日本の戦争:歴史認識と戦争責任』(2017年、新日本出版社)、『日本の戦争Ⅱ:暴走の本質』(2018年、新日本出版社)、『日本の戦争III:天皇と戦争責任』(2019年、新日本出版社)など