今日の産経ニュースほか(2019年8月24日分)

ソウル繁華街で日本人女性に暴行 韓国人の男 画像が拡散…警察が事情聴取 - 産経ニュース

 YTNニュースなどによると、男は23日午前5時ごろ、日本人女性観光客6人の一行に日本語で話しかけたが相手にされず、女性らの後を追って性差別的な表現で罵倒したり、1人の髪をつかむなどした。女性らの1人が男の様子を撮影し、ツイッターなどに投稿した。

 つまりは「トラブルが事実だとしても」日韓関係の悪化云々ではなく「ナンパしようとした男が女性たちの冷たい扱いに逆ギレ」または「観光客を呼び込もうとした客引きが相手にされず逆ギレ」と言う話のようですね。一部ウヨは「反日感情で韓国旅行が危ない」とデマ飛ばすかもしれませんが。


【昭和天皇の87年】新聞があおった反英世論 海軍次官は遺書まで書いた - 産経ニュース
 現在、嫌韓国世論をあおってる産経が良くもこんな記事が書けたもんだと心底呆れます。なお、現在も当時もこうした動きは「政府内部の反英国派(戦前は例えば陸軍親ドイツ派)や嫌韓国派(まあ今は安倍政権自体がそうですが)」と呼応した動きであり「マスコミが悪い、政府は悪くない」とはとてもいえません。なお、陸軍親ドイツ派ほど「反英国」ではないとはいえ、昭和天皇など「親英米派(?)」も英国との対立原因である「蒋介石打倒方針」は撤回しないのだから手放しで評価は出来ません。あげく最終的には彼ら親英米派も「渋々であるにせよ」太平洋戦争突入(米国領ハワイや英国領マレーシアへの攻撃)を容認するわけですし。


【昭和天皇の87年】苦悩する保守 極秘の和平提案はアメリカに無視された - 産経ニュース

 先の大戦についても、保守派の責任が大きいかのような論説が散見されるが、むろん正しくない。

 「はあ?」ですね。昭和天皇も官僚も軍部も全て勿論保守派だし、議会の多数派である二大政党(政友会と民政党)も保守派なのに「保守派に戦争責任がない」とでも言う気でしょうか?
 まさか「尾崎秀実ガー」という「ソ連陰謀論」で全てをごまかす気なのか。近衛上奏文のように「陸軍統制派(東条英機*1陸軍大臣武藤章*2陸軍省軍務局長など)は隠れ共産党だ」と言い出す気なのか。
 保守派に「どのような戦争推進責任があるのか」はともかく責任があるのは当たり前でしょうよ。

 ざっくり言ってしまえば、革新は理想主義であり、保守は現実主義である。

 「おいおい」な主張ですね。
 これでは一般に保守とされる「薩摩の大久保*3や西郷*4」が「幕府という現状を打破し、明治新政府という新体制を樹立したこと」から「革新」と言うことになりかねません。
 まさかとは思いますが産経はいわゆる「陸軍革新派(東条英機陸軍大臣武藤章陸軍省軍務局長などの陸軍統制派)」や「外務省革新派(白鳥敏夫元イタリア大使など親ドイツ派)」などは「革新だ、保守じゃない」として「保守に戦争責任はない」と強弁する気なのか*5
 しかしそうなると「そんな東条や武藤(以上、東京裁判で死刑判決)、白鳥(東京裁判中に病死)を英霊として靖国に合祀してるのはどういうことなのか」と言う話になりますが。そして、東条(陸軍大臣や首相など歴任)や武藤(陸軍省軍務局長)、白鳥(イタリア大使)が政府幹部として戦争を推進し、それを昭和天皇も結局は容認したのに「保守に戦争責任はない」などとは笑えない冗談です。

 戦前の革新は、左であればソ連に、右であれば独伊のファシズムにシンパシーを抱いた。統制派が主導権を握った陸軍中央は、その典型といえなくもない。一方の保守は、共産主義にもファシズムにも否定的で、米英と手を結ぼうとした。昭和初期で代表的な保守派といえば、最後の元老、西園寺公望*6だろう。
 昭和14年に首相となった平沼騏一郎はどうか。ファッショに近いと西園寺からは嫌われていたが、(ボーガス注:英米との対立激化を恐れ、日独伊三国軍事同盟に消極的だった平沼は)根は紛れもなく、保守だったようである。

 やれやれですね(呆)。産経が詭弁で「保守は悪くない」「悪いのは革新だ」と強弁してるだけです。大体既に俺も指摘していますが、それならば、産経の言う「右の革新」である「陸軍の東条や武藤」「外務省の白鳥」が靖国に合祀されてることは産経的にどう評価されるのか。
 大体「日独伊三国軍事同盟」は、「保守とか革新とか言うご大層な話」ではなく単に「どこと手をつないだら国益になるか」つう判断の違いでしかない。
 そもそも英米との対立を避けるというのは伝統でも何でもない。
 そして産経の言う「西園寺など親英米保守」とて「英米との最大の対立原因」である「蒋介石打倒方針」を撤回できなかったのだからそんなに過大評価できる話ではない。
 また、日独伊三国軍事同盟が締結されたのは第二次近衛内閣ですが、この時、平沼は「第二次近衛内閣内務相」であり結局彼は「渋々でアレ」、日独伊三国軍事同盟を認めたわけです。また第二次近衛内閣では日米関係を悪化させることになる仏印進駐が実施されましたが勿論これも「渋々でアレ」、第二次近衛内閣内務相として平沼は容認したわけです。その意味では「対米関係悪化」には「第二次近衛内閣内務相」としての平沼にも一定の責任はあります。
 まあそもそも平沼の英米への態度は「安倍の一帯一路参加表明」みたいなもんで安倍の本質が「反中国」であるのと同様、平沼の本質も「反英米」であり、安倍同様「渋々妥協してるだけ」でしょう。

 アメリカが下した判断は、平沼に「何ら特別な回答を行わない」というものだった。

 この問題についての研究書*7でも読まないと評価は難しいですがおそらく米国は平沼を信用してなかったのでしょう。
 産経ですら

 平沼*8は、この提案を外相以外には話さず、ほぼ独断で行った。事前に漏れれば、日独伊三国同盟に執心する陸軍から横やりが入るのは必至だからだ。

と書くような代物を米国が「平沼を信用して大丈夫なのか?」と怪しく思うのはむしろ当然でしょう。おそらく平沼の「米国への申し入れ」も極めて抽象的で無内容な代物だったのでしょう。


韓国観光客歓迎事業 道に批判|NHK 北海道のニュース

 日韓関係の悪化を受けて観光客減少に歯止めをかけようと道が行った韓国人観光客の歓迎イベントについて、鈴木知事は、批判する内容の電話やメールが340件余り寄せられていることを明らかにしました。そのうえで、韓国との交流は引き続き重視し冷静に対応する考えを示しました。
 日韓関係の悪化を受けて観光客減少に歯止めをかけようと道は今月19日、新千歳空港旭川空港で韓国人観光客を歓迎するイベントを行いました。
 このイベントについて鈴木知事は記者会見で、21日までに批判的な内容の電話やメールが道に340件余り寄せられていることを明らかにしました。
 これについて鈴木知事は、「こうした状況では人と人、地域レベルでの交流が必要で、今後、どういった取り組みが出来るのか考えることが建設的だ。意見はしっかりと受け止めながらも、感情的にならずに冷静に必要なことをこれからもやっていきたい」と述べ、韓国との交流は引き続き重視し冷静に対応する考えを示しました。

 鈴木氏は自民系ですがそれだって観光客の利益を考えれば当然こうなるわけです。抗議する嫌韓極右の方がおかしい。


【産経抄】8月24日 - 産経ニュース

 13世紀、ドイツ北部・ハーメルンに現れた男は、笛を吹き鳴らして集まった子供たち130人をどこかに連れ去り、二度と戻らなかった。グリム童話にも登場するハーメルンの笛吹き男の伝承である。21世紀の現在、韓国民5000万人が、西側自由主義圏から連れて行かれようとしている。
 このままでは、米軍の在外駐留経費負担を嫌うトランプ米大統領が、在韓米軍撤退を決める日も近そうである。

 「韓国政府のジーソミア延長停止」への産経の言いがかりです。呆れて二の句が継げませんね。なんでそういう話になるのか。いつトランプが「在韓米軍撤退」など明言したのか。
 いつ文在寅大統領が「在韓米軍撤退希望」を表明したのか(俺個人は撤退しても何ら問題ない、むしろ緊張緩和のために撤退すべきだとは思いますが)。
 何で延長停止が「西側自由主義圏からの離脱」になるのか。以前書いたことの繰り返しになりますが、そもそも「フッ化水素水輸出規制やホワイト国除外」が「安保上韓国に問題があるから」というなら「そんなリスキーな国と軍事情報の相互提供条約を結びたがる」というのは意味不明です。「日本が韓国に提供した軍事情報が漏洩する恐れがある」「ジーソミアは今のままでは運用できない」となぜ産経は思わないのか。
 つまりは「やはり徴用工判決への報復」であり、それを暴くための韓国の「延長停止だ」ということです。まさに産経や安倍は「語るに落ちています」。


【主張】高校願書の性別 互いに敬う心こそ育もう - 産経ニュース

 高校の入学願書の性別欄をなくす動きが出ている。心と体の性が一致しないトランスジェンダーなどの生徒に配慮したものだ。
 少数者への差別や偏見をなくすのは当然としても、行き過ぎたジェンダーフリー(性差否定)教育につなげないよう慎重に行ってもらいたい。

 「行き過ぎたジェンダーフリー(性差否定)教育」などというものは「産経らウヨの脳内にしかない妄想」であり改めて呆れます。

 過去に学校の名簿で男女別をなくした「男女混合名簿」が一部で流行したことがある。しかし、教育関係者によると、健康管理などを含め、男女の違いに配慮した教育に支障が出て、別に男女別の名簿をつくる必要があるなど弊害が出たこともある。

 これについていえば「必要があれば男女別名簿にし、必要がなければ『男が女より上』という差別的価値観を助長するのを避けるため男女一緒の名簿にする」、それで終わる話です。いつも同じ一つの名簿を使う必要もない。
 そもそも産経が言うような「何が何でも混合名簿」「いつでもどこでも混合名簿」なんて人間はどこにもいない。なぜか男女別名簿に固執する産経らウヨが言いがかりを付けてるだけです。

 公私立校で男女別学があるが、それが男女共同参画社会に逆行するものでもなかろう。

 俺個人は逆行すると思いますよ。共学校が望ましいと思いますが、保護者や生徒など関係者の意思を無視するわけにも行かない。ちなみに小生の住む埼玉では公立も私立も別学校が多いかと思います。小生も男子高校卒です。


今日の香港、明日の台湾、明後日の沖縄 太田文雄(元防衛庁情報本部長) « 国基研ろんだん 国基研ろんだん « 公益財団法人 国家基本問題研究所
 もちろん「中国が実効支配している香港」と「そうでない台湾、沖縄」とは全然違います。
 そもそも中国政府は「例の改正法案を撤回した」わけで、強硬路線一本槍というわけでもない。実効支配している香港ですらそれです。台湾や沖縄相手に軍事侵攻なんか出来るわけがない。


香港で第2の六四天安門事件は起こるか(下) 平野聡(東京大学教授) « 国基研ろんだん 国基研ろんだん « 公益財団法人 国家基本問題研究所
 「第二の天安門事件」が何を意味するかによりますね。
 これが「軍隊の投入による文字通りの天安門事件の再現」と言う意味なら、その可能性はほとんどありません。香港デモが政府襲撃などの暴徒化しない限り、中国政府も欧米の批判(場合によっては経済制裁)が確実なのに、とてもそんなことはできないでしょう。そんなことをするくらいならとっくの昔にやってるし、法案の撤回もしない。
 そして天安門事件当時は今と違い、中国の経済力も弱く、また「ソ連東欧の共産体制崩壊」で中国政府指導部が神経をとがらせていたことを無視してはいけません。
 一方で単に「機動隊によるデモ弾圧」レベルなら十分あり得るでしょう。そもそもそのレベルなら中国以外でも珍しくない。
 残念ながらこの御仁、国基研に寄稿するようなウヨなので「文字通りの第二の天安門事件もあり得る」とあほなことを言うわけですが。

*1:関東憲兵隊司令官、関東軍参謀長、陸軍次官、第二次、第三次近衛内閣陸軍大臣、首相など歴任。戦後、死刑判決。後に靖国に合祀

*2:参謀本部作戦課長、中支那方面軍参謀副長、北支那方面軍参謀副長、陸軍省軍務局長兼調査部長、近衛師団長、第14方面軍(フィリピン)参謀長など歴任。戦後、死刑判決。後に靖国に合祀

*3:参議、大蔵卿、内務卿を歴任

*4:参議、陸軍大将、近衛都督を歴任

*5:以前も書きましたが昭和初期において「革新」とは「陸軍革新派(東条や武藤)」「外務省革新派(白鳥)」「商工省革新派(岸信介元商工次官(戦後、首相))」のような「右翼急進主義(多くの場合親ドイツ)」を意味しましたが戦後、社会党共産党のような左派が革新と呼ばれることになります(なお、いわゆる新左翼はあまり革新とは呼ばない気がします)。

*6:第二次伊藤、第二次松方内閣外相(文相兼務)、第三次伊藤内閣文相、首相など歴任

*7:産経は加藤陽子著「昭和一四年の対米工作と平沼騏一郎」(東京大学文学部史学会「史学雑誌」94編11号収録)を参考文献としてあげていますが、こんなもん入手が困難ですからね。何かいい本でもあればいいですが。なお、ググったところ、萩原淳平沼騏一郎と近代日本』(2016年、京都大学学術出版会)がヒットしました。

*8:検事総長大審院長、第二次山本内閣司法大臣、枢密院議長、首相、第二次近衛内閣内務相など歴任。戦後、終身刑判決で服役中病死。後に靖国に合祀