なぜ横田めぐみさんの遺骨は出てこないのか(副題:昔は日本も土葬が主流だった)

 まあ先日、オヤジと以下のようなたわいもない話をしていたわけです。
 俺「明治になってから火葬が広まったらしいね」
 オヤジ「そりゃ場所によるだろ。俺のオヤジ(つまり、小生の祖父)は土葬だから」
 俺「え、そうなの?。じいさんって俺(1970年代後半生まれの団塊ジュニア)が生まれる数ヶ月前に死んだんじゃなかったっけ?。じゃあ何、この辺て1970年代後半も土葬だったの?」
 オヤジ「アレ、俺土葬だって前に言ったことなかったっけ?。そうだよ、この辺は田舎だから。埼玉の田舎は東京と違うから。もちろん今はこの辺も完全に火葬だけど。土葬は大変なんだよ、火葬になって本当に良かった」
 俺「そうするとじいさんの骨つうのはどうなるの?」
 オヤジ「どうなるのって火葬と違って、たぶん完全に土に帰ってるから。今更、掘り起こして骨の回収なんかできないし、する必要もないだろ。その当時は骨の回収なんて誰も考えてないし」
 で、気づいたんですが、要するに「横田めぐみさんの遺骨」が出てこないのもそういう話(土葬にしたので骨が回収できない)じゃないんですかね?。ググったら中国、北朝鮮では今も「土葬が一般的」なようです(一方、韓国、台湾では日本同様、昔は土葬が多かったが、今は火葬が一般的らしい)。
 まあ、こういうことをいうとほぼ確実に「横田奥さんがマジギレ」でしょうが。

参考

■火葬場(ウィキペディア参照)
 2015年現在、日本の火葬率は99.986%に上るが、60%を超えたのは実は1960年代(池田*1内閣の高度経済成長期)で火葬が広まったのは比較的最近のことである。東北地方では、土葬を尊び、土葬が可能な地域が多い奥会津地方では1990年代後半まで土葬が残っていた。

■土葬(ウィキペディア参照)
アメリ
 アメリカでは宗教的理由により火葬より土葬が好まれる傾向が強い。これはキリスト教の解釈として火葬に否定的な見解があった事が背景にある。しかし、2007年から始まった世界的な不況の影響で費用が掛かる土葬よりも火葬が執り行われることが増えたとされる。全米葬儀ディレクター協会や北アメリカ火葬協会の調べによると、2013年には火葬を選択したアメリカ人の割合が45.3%に達し、1998年に24%だった火葬の割合がその後の20年間で倍近くにまで増えており、急激に火葬の割合が上昇している。なお日本ではキリスト教徒でも火葬されることが一般的である。
イスラム
 イスラム教では火葬は禁忌なので、土葬が行われている。火葬が広がっている中国でも、イスラムウイグル族、カザフ族は、土葬を行っている。

イスラム教徒墓難民 九州土葬用施設なく 偏見や抵抗感…新設に壁|【西日本新聞ニュース】
 九州のイスラム教徒が「死後の行き場がない」と悲鳴を上げている。イスラム教の葬儀は火葬を禁止し、土葬を用いることから墓地開設の理解が得られにくく、九州にはイスラム専用の墓地はゼロ。協力姿勢を示す自治体もあるが、実現のめどは立っていない。イスラム教徒たちは「今後も日本に住む仲間は増えると思う。本当に切実な問題」と訴えている。
(中略)
 九州のある自治体の担当者は「ペット霊園でも反対が起きるのに、なじみのない土葬は相当な反発が予想される」。
 栃木県足利市では8年前、イスラム墓地の建設計画に住民の反対運動が起き、市は許可を出さなかった。土葬への抵抗感や偏見が背景にあったとみられる。

日本のムスリム墓地不足顕在化 土葬や異文化への不安視も(1/2ページ) - 産経ニュース
 足利市ムスリムの墓地を建設する計画が動いたのは平成20~22年。日本イスラーム文化センター(東京都豊島区)が、同市板倉町の山中に土地を確保し、約500体を土葬できる墓地を造ろうとした。
 日本に土葬を禁じる法律はなく、埋葬の仕方は自治体の判断。足利市には土葬を禁じる条例はなく、墓地開発は可能だった。
 センターは市や住民らに説明を繰り返したものの、住民は大反発。計663人分の反対署名を集め市へ提出するなどし、市は「建設は住民の理解を得てから」とセンターに通達。計画は頓挫した。
 市は「板倉町中山間地域で、昔から住み続けている人が多い場所。そんな土地で、なじみがない土葬に対して不安だという声が多かったのもうなずける」と話す。
 かつては日本も土葬が一般的だったが、今は状況が一変。厚生労働省の平成29年度の統計では、約99・97%が火葬となっており、住民が土葬を問題視したことに理解はできる。

イスラム教徒の墓地問題▼人権TODAY(8月26日放送分)
 毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で8時15分頃から放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。
 今回のテーマは…2017年8月26日放送「イスラム教徒の墓地問題」です。
 日本に在留する外国人の数は年々増えていますが、その中にはイスラム教徒が10万人いると言われています。文化や生活習慣の異なる国で暮らしていくことは大変ですが、一番大変なのが実は「亡くなった後」なんです。現在、日本では一般的ではない「土葬」が、彼らにとって宗教上のルールだからです。
 土葬は法律で禁止されてはいませんが、衛生上の問題や用地確保の難しさ、美観などを理由に、火葬した遺骨しか埋葬できないタイプの霊園がほとんどです。日本に定住しているイスラム教徒は土葬ができる墓地を探さなければなりません。そんな中、土葬のための区画を整備している霊園も日本各地に点在しています。取材した、茨城県内のとある霊園ではもともと、仏教のお寺の境内にあるごく普通の霊園でしたが、一部を土葬専用の区画として整備しました。近くで墓石施工会社を経営する寺島隆次郎(てらじま・たかじろう)さんは、この区画を管理し、土葬を希望する人たちのコーディネートをしているということでお話を伺いました。
(後略)


 「なじみのない土葬」「土葬への抵抗感」つうのが「何だかなあ」ですね。ぐぐれば分かりますが戦前は「土葬>火葬(数の多さ)」ですから。ウィキペディア「火葬場」にも書いてありますが「高度経済成長期に土葬から火葬へと葬儀方法が大きく変わった」つうのが通説のようです。
 そして昭和天皇までは「天皇は土葬」ですから(今の上皇からは火葬の予定)。そして古墳(世界遺産になった大山古墳など)つうのは要するに土葬ですし。
 「いいじゃん、土葬で。『鳥の餌にする』チベットの鳥葬(さすがに今は廃れたようですが)よりマシだろ」と思いますね。
 まあ、それはともかく伝統なんてこんなもんです。不便な伝統は消えていく。「土葬」と言う伝統はほとんど消えて「日本の伝統(?)=火葬」になったわけです。産経の阿比留や櫻井よしこらウヨ連中だって今時、親族を土葬にはしないでしょう。そういう意味では伝統を口実にしたウヨの「夫婦別姓反対」「女帝反対」なんて実にくだらない。
 そういえば本多勝一氏が「半分以上冗談でしょうが」『土葬の方が遺体が肥料になるから環境に優しい気がする』『イスラムの建前は土葬だし、俺が死んだら土葬にしてもいいかと思う(確か「取材の方便*2」的要素が大きいと思いますが、本多氏はイスラムに入信してたかと思います)』と確か、コラムに書いていたことを思い出しました。

カトリック国でも火葬が急増、フランスの法令では「骨つぼは暖炉の上へ」 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
 人口約6000万人のフランスでの、年間死亡者数は約50万人。この多くは、棺に入れられ土葬される。しかし、「生活条件調査研究センター(CREDOC)」によると、1975年にはわずか1%だった火葬は、年々増加の兆しを見せており、1998年には15%、現在は26%と約4分の1を占めるようになった。2030年には、約半数の50%が火葬になると見込んでいる。
 欧州の各カトリック国の火葬率は、フランスの25%に対し、スペインが12%、イタリアが6%、ポルトガルが2%で、フランスは欧州南部のカトリック国の中で最も火葬率の高い国となった。
 長年禁止されてきた火葬だが、「復活」や「魂の不滅」などのカトリックの教義に火葬は違反しないと判断した、1963年の第2バチカン公会議(Second Ecumenical Council、Vatican II)により許可された。その際、火葬の前に葬儀のミサを行うことが定められた。一方、遺灰については死者に敬意を払うため、遺体同様に埋葬すべきだとされ、遺灰の散布は認めていない。
 しかし、近年、火葬が増えた原因は、法王庁による解禁よりは、むしろ社会的・経済的な理由によるものと考えられる。
 納棺して土葬にするよりも火葬は経済的なことから、フランスでも不況期には火葬が大流行し、各地の火葬施設数が間に合わない状態になることもあったという。
 一方、最近の調査によれば、カトリック教を宗旨とする人口は1990年以前の80%から51%にまで激減。教会に通う信者も10%にまで低下しており、宗教離れ自体が進んでいる。
 世界で最も火葬率の高い国は日本で、火葬率は99.7%。国内には1665か所の火葬施設がある。フランスはこれに遠く及ばないが、30年前にはわずか7か所だった火葬施設が、現在は120か所にまで増加している。

土葬撲滅へ「棺おけ」押収、木材横流しも… 中国江西省で当局への批判相次ぐ(1/2ページ) - 産経ニュース
 中国当局は埋葬用地の節約や葬儀の簡素化などを目的に、伝統的な土葬から火葬への転換を進めている。中国紙・新京報などによると江西省では6月、省内全域が「火葬エリア」に指定され、遺体が原則火葬されることになった。
 ただ高齢者の間では土葬の希望が根強く、生前から棺おけを購入することも慣習となっている。このため一部の市当局が各家庭にある棺おけの没収を開始。人口約50万人の吉水県では7月下旬までに約2万5千個を押収した。空き地に無造作に積み上げられ、破壊される様子を映した画像がインターネット上で拡散している。土中の棺おけを掘り起こし、遺体を火葬したケースまであったことも暴露された。
 中国最高人民検察院最高検)の機関紙、検察日報は「(地元)政府による強制措置は法的根拠を欠く」と棺おけの没収を非難。人民日報(海外版)のサイトも「政策執行者は人心に関する統治思想を欠いている」と切り捨てた。

台湾の火葬率過去最高の96.3%=内政部 墓参りの日間近 (2019年3月31日) - エキサイトニュース
 先祖のお墓参りをする4月5日の清明節を前に内政部(内務省)は29日、台湾での火葬率は2017年の時点でこれまでの最高となる96.32%に達したと発表した。
 かつて土葬が主流だった台湾。面積の割に人口が多いため、政府は2001年から火葬率の向上に取り組んできた。そのかいあって火葬率は1993年の45.71%から2017年にはその2倍強ほどの水準にまで上昇した。

土葬より火葬…韓国人10人に8人は火葬する : 政治•社会 : hankyoreh japan
 故人の遺体を土葬ではなく火葬する比率が毎年増えて、昨年は死亡者10人につき8人に達したことが分かった。これは火葬が1994年以後20年間で約4倍に増えた結果だ。
 保健福祉部は27日、2015年度火葬率現況を発表し「昨年、全国の火葬率が80.8%と最終集計された」と明らかにした。1994年に20.5%に留まっていた火葬率が20余年間で約4倍に増加した数値だ。火葬率が土葬率を上回ったのは2005年(52.6%)だった。その後、火葬率は年平均3%ずつ増えて、昨年初めてついに先進国水準の80%を超えた。

*1:大蔵次官から政界入り。吉田内閣蔵相、通産相、石橋内閣蔵相、岸内閣蔵相、通産相などを経て首相

*2:本多氏にはイスラムを取材した『アラビア遊牧民』(朝日文庫)と言う著書があります。