黒坂真に突っ込む(2019年10月13日分)

■黒坂ツイートにコメント

黒坂真リツイート
・Alfonso Wolfgungs
‏ 遠藤周作*1は汎神論的にキリスト教を分析していたことが、ノーベル文学賞の選考委員の逆鱗に触れたという話を聞いたことがあります。

 まともな根拠を上げるのならともかく「そういう話を聞いたことがある」レベルで選考委員非難とはばかばかしくて話にならないですね。
 そもそもノーベル文学賞が「世界中の作家」を対象にしている以上「受賞する方(川端康成*2大江健三郎*3)が奇跡」なのであり、遠藤周作が受賞しなかったことは何ら不思議でもないでしょうに。
 大体日本人作家のウチ、

【後のスウェーデンアカデミーの発表で候補だったことが判明した人物】
谷崎潤一郎*4西脇順三郎*5三島由紀夫*6
【真偽はともかく有力候補として過去に噂話レベルで名前が挙がった人物】
安部公房*7井上靖*8村上春樹*9

ならともかく遠藤周作なんて失礼ながら有力候補なんですか?
 なお

ノーベル文学賞 “狂騒曲”:川端、大江から村上春樹まで | nippon.com川村湊*10
 三島由紀夫に関しては、後日ドナルド・キーン*11が興味深いエピソードを披露している。東京都知事選を舞台にした『宴のあと』をキーンの英訳で読んでいたデンマーク人の作家が、選考委員会に助言を求められた際、「三島は左翼」だから授賞はふさわしくないと言ったために三島は受賞を逃し、その結果、川端康成が日本人初の受賞者となったというのだ。

てのにはいろいろな意味で「ホンマかいな?」ですね。
1)そんな政治的な理由で受賞させるか決めるのかと言う意味でも
2)三島は左翼じゃねえだろ
と言う意味でも。『宴のあと』は「社会党共産党都知事選擁立候補・有田八郎(第一次近衛、平沼、米内内閣で外相)」をモデルにしているとはいえ、有田に決して好意的ではなく、有田本人からプライバシー侵害で民事提訴されていますし。

黒坂真
‏ 小池晃書記局長。日本共産党スーパー堤防建設に断固反対してきました。この件、今はどうお考えですか。

 台風被害について政権与党ではなく野党、それも最大野党立民ではなく、共産党に言いがかりを付けるのだからいつもながら「反共右翼」「安倍自民信者」黒坂も呆れた男です。
 今回の台風被害が「スーパー堤防があれば防げた」とか「日本共産党スーパー堤防に反対するからスーパー堤防が作れなかった*12」と言うことを証明してからそういうことは言えよ、つう話ですね。なお、スーパー堤防というのは規模が大きいので作るのに金と時間がかかり「そのかかる時間内に起こるかもしれない水害」のことを考えたら「別の水害対策をした方が合理的だ(勿論費用の問題もあります)」というのが共産党を含む反対派の主張であり、「スーパー堤防をつくるべきではない、以上」で話を終わらせているわけではありません。またスーパー堤防については民主党政権事業仕分けで「廃止方針」を打ち出しており、何も共産党だけが否定的だったわけではありません。
 ちなみに産経ですら【主張】台風19号 真の国土強靱化に全力を - 産経ニュースにおいて「スーパー堤防云々」なんてことは書いていません。

参考
百害あって一利なし/スーパー堤防 田村議員が主張
スーパー堤防根拠なし/山添議員 「宅地開発ありきだ」

黒坂真
 私が欧州共産主義、左翼政党と日本左翼の違いとして思いつくのは、憲法九条信仰です。井沢元彦氏によれば武器を持つと戦死者がたたるという怨霊信仰、戦争について語ると戦争が起きるという言霊信仰がこの基礎。

 別に信仰ではないですね。「海外での軍事力行使は適切ではない」と言う評価の元に憲法九条を擁護しているだけですので。
 もちろん「井沢本人ですら信じてないであろう与太」は論外ですね。
 まあ、確かに「海外の軍事力行使に極めて否定的」と言う意味では「それをどう評価するかはともかく*13」戦後の日本は「左派に限らず」欧州とは違うと言えるでしょう。なかなか興味深い話です。スターリン批判以前ですら多くの日本左派の態度は「非武装中立(あるいは非武装は非現実的とする左翼党派(共産党?)は軽武装中立)」でした(なお、俺個人はそうした欧州の「軍事力行使への忌避感が低いこと」は必ずしもいいことだとは思っていません)。
 ただし、それは欧州において「自ら開戦したドイツ、イタリア」はともかく、「ドイツの侵略に立ち向かった英仏」では「軍事力行使は必ずしも悪ではない」「軍事力によってナチの侵略をはね返した」と言う認識が強いからでしょう。
 これは欧州に限ったことではなく「日本の侵略に軍隊で立ち向かった中国」「フランスからの独立を独立戦争で実現したベトナム」なんかも軍事力への評価は好意的でしょう(まあ例はどこの国でもいいですが)。
 日本も「日中戦争、太平洋戦争」で「敗戦し、国家存亡、皇室存亡の危機に直面、当面は米国の支配」「多数の人命が失われる」「植民地(台湾、朝鮮、南樺太など)を全て失う」「後に返還されたが小笠原諸島、沖縄が一時、米国領土になる」「戦後の食糧不足(台湾と朝鮮を失い、これらから優先的に米を輸入する道がたたれたことが大きい)で餓死者続出」という大打撃を受けるまでは「日清戦争では賠償金と台湾が、日露戦争では南樺太満州が、第一次大戦日英同盟を口実にドイツ領パラオなどのドイツ軍と戦争)ではパラオが得られた。戦争は儲かる」ということで好意的評価だったわけです。
 じゃあ「自ら開戦した独伊はどうなのか」というと「社民党ブラントが政権とった」り、「戦後王制を廃止した」りして「戦前とは違うんです!」「戦後は生まれ変わりました」ということで自ら軍隊を持とうとし、それを国民も隣国も認めたという話でしょう。
 日本はこの点、「過去に自ら無謀かつ無法な戦争(日中戦争、太平洋戦争)をやらかした」し、「戦争への反省が全然ダメダメ」なわけです。
 自民党ウヨ議員が公然とつくる会教科書などの「戦前の侵略戦争正当化」に加担し、今やそうしたウヨ議員の典型(安倍晋三)が首相で長期政権です。
 当然ながらそういう状況では国内外において「過去に無謀かつ無法な戦争をやらかしてる上に戦争への反省も足りないような危ない国は軍隊なんか持つべきじゃない」つう話になるでしょう。外国だけでなく、国内だって「戦争が起これば国民は被害を受ける」のだから「あの戦争をまともに反省しない奴らが与党で改憲なんか出来るか。俺や家族の命が危険にさらされるわ」ということになる。
 井沢の与太と違いこの方がよほど説得力があるでしょう。
 つまり、安倍や黒坂、井沢や櫻井よしこなどといったウヨ連中が「改憲したい、護憲派にも納得してほしい」と思うのならそれこそ

・過去に我々が中国や東南アジアを侵略し、現地住民を殺傷したことは重大な過ちでした。もう二度としません
・過去に我々が神風特攻やインパール作戦のような「人権無視」「無謀」「無法」「兵站無視でずさん」などの軍事作戦を兵隊だった国民に強要し多数死なせたことは重大な過ちでした。もう二度としません

つうことをいやというほどアピールしないといけない(戦争への反省をしても改憲すべきでない、と言う意見もあり得るでしょう。また「戦争への反省が必要な本筋はそういう話じゃない、隣国との友好関係構築が本筋ではないのか」つう意見もあるでしょうがそれはひとまず無視します)。
 ドイツはそうしたからこそ、独立回復後、軍隊を保有してもフランスやポーランドと言った隣国から「あんな危険な国に軍隊なんか持たせられるか」とはならなかった。
 もしドイツが日本・自民党並みに「ナチの侵略に無反省」なら今でも軍隊は持てなかったでしょう。一方、日本がそうした点でまともに反省してれば改憲して軍が持てたかもしれない。
 ところが安倍、井沢、黒坂、櫻井よしこらウヨはそうした

「過去に無謀かつ無法な戦争をやらかしてる上に戦争への反省も足りないような危ない国は軍隊なんか持つべきじゃない」

つう話に

「そもそも無謀でも無法でもないから反省の必要がない」

と言い出すから唖然です。そんなことを言えば「お前らに軍隊なんか絶対に持たせられない」「反省の必要がないって事はお前らが軍隊持ったらまた同じことするかもしれないって事か!。特攻作戦すら今後やる予定があるってのかよ?」「日本政府は東京裁判を受け入れて公式に非を認めたんじゃなかったのか?」つう批判的反応しか返ってこない。
 事実に反するデマ「戦前日本の戦争には何の問題もない、日本は悪くない」を放言する無茶苦茶な態度で、「護憲派による改憲派への反発や不信」を高めて、改憲を困難にしたのは黒坂らウヨなのですが、それを認められず「怨霊信仰」「言霊信仰」だの自分でも信じてないデマをほざくから唖然です。勿論そういうデマをほざけばほざくほど「護憲派による改憲派への反発や不信」は高まり、改憲は更に困難になります。

*1:1923~1996年。1955年に発表した小説「白い人」が芥川賞を受賞。著書『万華鏡』(朝日文芸文庫)、『ぐうたら生活入門』、『宿敵(上)(下)』、『闇のよぶ声』(角川文庫)、『ウスバかげろう日記:狐狸庵ぶらぶら節』、『狐狸庵交遊録』、『狐狸庵食道楽』、『狐狸庵人生論』、『狐狸庵動物記』、『狐狸庵読書術』(河出文庫)、『青い小さな葡萄』、『堀辰雄覚書・サド伝』(講談社文芸文庫)、『白い人・黄色い人』(講談社文芸文庫新潮文庫)、『悪霊の午後(上)(下)』、『海と毒薬』、『ぐうたら人間学 狐狸庵閑話』、『最後の殉教者』、『さらば、夏の光よ』、『スキャンダル』、『聖書のなかの女性たち』、『反逆(上)(下)』、『深い河』、『妖女のごとく』、『わたしが棄てた女』(講談社文庫)、『死について考える』、『私にとって神とは』(光文社文庫)、『ぐうたら社会学』(集英社文庫)、『切支丹時代:殉教と棄教の歴史』(小学館ライブラリー)、『イエスの生涯』、『王国への道:山田長政』、『王の挽歌(上)(下)』、『影法師』、『悲しみの歌』、『彼の生きかた』、『口笛をふく時』、『死海のほとり』、『十一の色硝子』、『人生の踏絵』、『沈黙』、『母なるもの』、『ピエロの歌』、『夫婦の一日』、『冬の優しさ』、『ボクは好奇心のかたまり』、『真昼の悪魔』、『満潮の時刻』(新潮文庫)、『切支丹の里』、『鉄の首枷:小西行長伝』(中公文庫)、『落第坊主の履歴書』(日経文芸文庫)、『足のむくまま気のむくまま:狐狸庵風来帖』、『イエス巡礼』、『心の夜想曲(ノクターン)』、『最後の花時計』、『たかが信長 されど信長』、『春は馬車に乗って』、『ピアノ協奏曲二十一番』(文春文庫)など

*2:1899~1972年。1968年、ノーベル文学賞受賞。『美しい日本の私』(講談社現代新書)、『たんぽぽ』(講談社文芸文庫)、『愛する人達』、『伊豆の踊子』、『古都』、『千羽鶴』、『虹いくたび』、『花のワルツ』、『眠れる美女』、『舞姫』、『みずうみ』、『山の音』、『雪国』(新潮文庫)、『伊豆の旅』、『美しさと哀しみと』(中公文庫)など

*3:1935年生まれ。1958年、短編小説「飼育」により当時最年少の23歳で芥川賞を受賞。1994年ノーベル文学賞受賞。著書『新年の挨拶』(岩波現代文庫) 、『あいまいな日本の私』、『新しい文学のために』、『沖縄ノート』、『日本の「私」からの手紙』、『ヒロシマ・ノート』(岩波新書)、『新しい人よ眼ざめよ』、『壊れものとしての人間』、『鯨の死滅する日』、『叫び声』、『静かな生活』、『持続する志』、『懐かしい年への手紙』、『僕が本当に若かった頃』、『万延元年のフットボール』、『みずから我が涙をぬぐいたまう日』(講談社文芸文庫)、『言い難き嘆きもて』、『憂い顔の童子』、『M/Tと森のフシギの物語』、『河馬に噛まれる』、『キルプの軍団』、『鎖国してはならない』、『さようなら、私の本よ!』、『水死』、『治療塔惑星』、『取り替え子』、『晩年様式集』(講談社文庫)、『「話して考える」と「書いて考える」』(集英社文庫)、『核時代の想像力』(新潮選書)、『「雨の木」を聴く女たち』、『美しいアナベル・リイ』、『遅れてきた青年』、『個人的な体験』、『死者の奢り・飼育』、『小説のたくらみ、知の楽しみ』、『人生の親戚』、『空の怪物アグイー』、『同時代ゲーム』、『日常生活の冒険』、『ピンチランナー調書』、『見るまえに跳べ』、『芽むしり仔撃ち』、『私という小説家の作り方』、『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』、『われらの時代』(新潮文庫)など

*4:1865~1965年。著書『幼少時代』、『吉野葛蘆刈』(岩波文庫)、『陰翳礼讃』(角川ソフィア文庫)、『鍵・瘋癲老人日記』、『細雪(上)(中)(下)』、『刺青・秘密』、『少将滋幹の母』、『春琴抄』、『蓼喰う虫』、『猫と庄造と二人のおんな』(新潮文庫)、『人魚の嘆き・魔術師』、『武州公秘話』、『夢の浮橋』(中公文庫)など

*5:1894~1982年。著書『あざみの衣』、『Ambarvalia/旅人かへらず』、『野原をゆく』、『ボードレールと私』(講談社文芸文庫) など

*6:1925~1970年。著書『純白の夜』、『夏子の冒険』、『複雑な彼』(角川文庫)、『英霊の聲』、『サド侯爵夫人/ 朱雀家の滅亡』(河出文庫)、『愛の渇き』、『青の時代』、『アポロの杯』、『宴のあと』、『美しい星』、『鍵のかかる部屋』、『絹と明察』、『鏡子の家』、『金閣寺』、『禁色』、『獣の戯れ』、『午後の曳航』、『沈める滝』、『殉教』、『小説家の休暇』、『永すぎた春』、『熱帯樹』、『花ざかりの森・憂国』、『美徳のよろめき』、『真夏の死』、『岬にての物語』、『女神』、『ラディゲの死』(新潮文庫)、『命売ります』、『恋の都』、『新恋愛講座』、『肉体の学校』、『反貞女大学』、『文化防衛論』、『レター教室』(ちくま文庫)、『荒野より』、『古典文学読本』、『小説読本』(中公文庫)、『行動学入門』(文春文庫)など

*7:1924~1993年。1951年に『壁:S・カルマ氏の犯罪』で芥川賞受賞。著書『砂漠の思想』(講談社文芸文庫)、『カーブの向う・ユープケッチャ』、『飢餓同盟』、『死に急ぐ鯨たち』、『水中都市・デンドロカカリヤ』、『砂の女』、『第四間氷期』、『友達・棒になった男』、『箱男』、『緑色のストッキング・未必の故意』、『無関係な死・時の崖』、『笑う月』(新潮文庫) など

*8:1907~1991年。1950年、『闘牛』で芥川賞を受賞。著書『戦国無頼』、『淀どの日記』(角川文庫)、『歴史小説の周囲』、『わが母の記』(講談社文庫)、『本覚坊遺文』(講談社文芸文庫)、『蒼き狼』、『あすなろ物語』、『孔子』、『後白河院』、『しろばんば』、『天平の甍』、『敦煌』、『額田女王』、『氷壁』、『猟銃・闘牛』、『楼蘭』(新潮文庫)、『おろしや国酔夢譚』(文春文庫) など

*9:1949年生まれ。1979年、『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞。著書『アフターダーク』、『アンダーグラウンド』、『回転木馬のデッド・ヒート』、『風の歌を聴け』、『カンガルー日和』、『国境の南、太陽の西』、『スプートニクの恋人』、『1973年のピンボール』、『遠い太鼓』、『ノルウェイの森』、『やがて哀しき外国語』(講談社文庫)、『意味がなければスイングはない』、『女のいない男たち』、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』、『パン屋再襲撃』、『レキシントンの幽霊』、『若い読者のための短編小説案内』(文春文庫) など

*10:著書『異郷の昭和文学:「満州」と近代日本』(1990年、岩波新書)、『戦後文学を問う:その体験と理念』(1995年、岩波新書)、『「大東亜民俗学」の虚実』(1996年、講談社選書メチエ)、『文学から見る「満洲」:「五族協和」の夢と現実』(1998年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『生まれたらそこがふるさと:在日朝鮮人文学論』(1999年、平凡社選書)、『ソウル都市物語』(2000年、平凡社新書)、『日本の異端文学』(2001年、集英社新書)、『満洲鉄道まぼろし旅行』(2002年、文春文庫)、『温泉文学論』(2007年、新潮新書)、『原発と原爆:「核」の戦後精神史』(2011年、河出ブックス)、『村上春樹ノーベル賞をとれるのか?』(2016年、光文社新書) など

*11:著書『二つの母国に生きて』(朝日文庫)、『能・文楽・歌舞伎』、『果てしなく美しい日本』、『百代の過客 日記にみる日本人』(講談社学術文庫)、『明治天皇を語る』(新潮新書)、『ドナルド・キーン自伝(増補新版)』、『足利義政銀閣寺』、『日本人の美意識』(中公文庫)など

*12:実際には後述するようにやたら金と時間がかかるのですぐには完成しないのがスーパー堤防です。つまり共産党の反対があろうとなかろうとスーパー堤防はすぐには完成しません。今回の台風被害で黒坂のような非難をすることは明らかに言いがかりです。

*13:ハト派の俺個人はむしろそれを好意的に評価していますが。