今日の中国ニュース(2019年12月4日分)

中国の新しい教育のチャレンジ〜上海がPISA断トツ1位になった理由は?〜 | JEEF 公益社団法人日本環境教育フォーラム諏訪哲郎*1学習院大学文学部教育学科教授)
 以前から、OECD調査では「上海は上位だった」ようで、これは2014年の記事です。

 2009年、2012年の調査では、中国の上海がすべての領域で2位に大きく水をあける断トツの1位であった。
 例えば、2012年の数学的リテラシーの調査では、上海が613点で、2位のシンガポールを40点、7位に浮上した日本を77点も上回る高得点であった。この上海の好成績の要因として、実態調査を行った新潟県教育総合研究センターのメンバーは、教員の指導力向上に組織的に取り組んできたことなどを指摘している。その指摘は的を射ているが他にも要因がある。
 2012年の調査結果が出た昨年の12月、この十数年間中国の教育改革をフォローしてきた筆者に対して上海の共同通信の特派員から「なぜ上海がPISA世界1になったのか?」について電話取材を受けた。そこで強調した点は、次の4点であった。
◆なぜPISA世界1に?
1)中国では2001年に発令された「基礎教育課程改革」で、知識伝授型の授業から学習者主体の授業へ転換したが、上海では1990年代から実験的に学習者主体の授業への転換が始まり、すでに定着している。
2)「基礎教育課程改革」によって、児童生徒による探究型の学習活動が増えている。
3)学習者主体の授業を進めるために、小中高の教員が新しい教育方法についての実践研究を重ねており、インターネットを通して自分の授業実践を公開して評価を募ることも多い。
4)一人っ子政策がなされているので、子どもの教育に対する保護者の関心が高く、また、子どもたちも保護者の期待に応えようとよく勉強している。
 かつての中国では、写真1のように児童生徒は背筋を伸ばして先生の教えを一言も聞き漏らさないという姿勢で授業を受けていた。しかし、今では写真2のように、子供たち同士が意見を交わしたり教え合ったり、という協同的な学びの風景が一般化してきている。このように学習者が授業の中心になり、さまざまな課題に主体的に取り組もうという姿勢が定着しなければ、上海のPISA断トツ世界1はあり得なかったと考えている。
◆新しい教育の核心は教師=ファシリテーター
 世界の学校教育の動向に詳しい佐藤学氏は、この20~30年の間に世界の学校内で進行している変化として、(1)学習単元が〈目標–達成–評価〉で組織される「プログラム型」から〈主題–探究–表現〉で組織される「プロジェクト型」へ移行しつつあること、(2)教師による一方的な説明がなされる一斉授業から学習者自身によるペア学習やグループ学習を主体とする協同的な学びに移行していることを指摘している(佐藤学*2『学校を改革する:学びの共同体の構想と実践』、岩波ブックレット、2012)。
 「総合的な学習の時間」で重視されるようになっている「探究的な学習」にしても「問題解決的な学習」にしても、また佐藤学氏が指摘している「プロジェクト型学習」にしても、環境教育の世界では、「ワークショップ」という名称で以前から実践されてきていることである。また、ペア学習やグループ学習といった、学習者(参加者)自身が様々な活動を通して学びを定着させていく協同的な学習形態は、環境教育の世界ではごく普通のことである。
 ワークショップについての実践と理論の両面での第一人者である中野民夫氏*3は、『環境教育辞典』(教育出版、2013年)の「ワークショップ」の項目で、ワークショップを「講演や講義などの一方的な知識伝達型ではなく、参加者が自ら参加・体験して共に何かを学んだり創ったりする、参加型の学びと創造の場」と定義し、「通常、「ファシリテーター」と呼ばれる進行役が、全体の進行を担当し、円滑な学びや創造を促す」と述べている。環境教育の世界ではファシリテーターという用語はかなり広まっているが、人々が集まって話し合ったり学んだりする時に、発言しやすい雰囲気を作ったり適切な解説や発言の促しなどでその場の進行を円滑にする人で、あえて翻訳すれば「促進者」となる。
 そして実は、中国の教員養成の国家基準になっている『教師教育課程標準』では、「教師は児童生徒の学習の促進者であると理解すること」を「基本要求」に明確に記している。「促進者」とは言うまでもなく「ファシリテーター」である。中国の教育改革の設計者と目されている華東師範大学(上海)の鍾啓泉教授は、中国で2001年に「基礎教育課程改革」が発令される以前から、学習者主体の授業においては、教師の役割は「指導者(=インストラクター)」であるだけでなく「指導者」+「促進者(=ファシリテーター)」でなければならないと主張しており、それが『教師教育課程標準』にも取り入れられているのである。
◆今こそ求められている環境教育の学習手法・学習形態
 21世紀もすでに十数年を経た今日、学校教育に求められる学力は、教えられた事柄を記憶した知識の量ではなく、活用力や創造力である。そして、そのための学習手法として「探究的な学習」「問題解決的な学習」「プロジェクト型学習」が注目されている。さらに、学習の中心が学習者であるばかりでなく、教師にもファシリテーターとしての役割が求められるようになっている。

 このように「中国の教育政策を評価する記事」をどう思うか、「反中国&ダライラマ盲従分子」阿部治平に聞きたい物ですね。やはり逆ギレするか、黙りなのか?(苦笑)


中国が読解力・数学・科学の3分野でトップ-OECDの15歳学力調査 - Bloomberg
OECDの学力調査、読解力・数学・科学の全科目で中国の学生がトップ--人民網日本語版--人民日報
東京新聞:日本「読解力」後退15位 高1の学力 OECD調査:社会(TOKYO Web)

東京新聞:日本「読解力」後退15位 高1の学力 OECD調査:社会(TOKYO Web)
 経済協力開発機構OECD)は三日、加盟国を含む七十九カ国・地域の十五歳を対象に二〇一八年実施の学習到達度調査(PISA)の結果を公表した。日本の高校一年生の読解力は十五位で、八位だった一五年の前回調査から低下。点数も十二点下がり、上位層と差が広がった。低下は二回連続。
 数学的応用力は五位から六位、科学的応用力も二位から五位に後退したが、文部科学省はトップ水準を維持していると分析。三分野の全てでトップは「北京・上海・江蘇・浙江」で参加した中国だった。

OECDの学力調査、読解力・数学・科学の全科目で中国の学生がトップ--人民網日本語版--人民日報
 経済協力開発機構OECD)は3日、世界79ヶ国・地域の15歳の学生約60万人対象に2018年に行った読解力と数学、科学の学習到達度調査(PISA)の結果を公表した。トップは中国大陸部の学生で、以下、シンガポール澳門マカオ)地区、香港地区と続いた。新華社が報じた。
 中国大陸部では北京、上海、江蘇、浙江の4省・市の学生代表が調査に参加した。調査結果によると、読解力、数学、科学の3科目全てのテストにおいて、中国大陸部の学生の得点が他の国・地域の学生を上回った。

 この調査結果(OECDが実施した国際成績比較調査(理数系)で中国が上位にランク)が信用に値するなら、まあ常識的に考えればOECD調査ですからそれなりの信用性があるかと思いますが
基本的に、理数系の学問振興と政治体制・民主主義の程度は関係ないと思う - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)での

 文科系は、たしかに政治体制や民主主義の程度によって学問研究の自由が阻害されることはありますよ。戦前の滝川事件なんかはまさにそうでしょう。天皇機関説事件などもしかり。あるいは歴史研究なども、神話などの関係から研究の自由が阻害されることもあったわけです。しかし理数系の学問や科学技術などの問題は、直接はそういうこととはかかわらないんじゃないんですかね。いいとか悪いとかはともかく。
 例えば旧ソ連は、米国に先駆けて宇宙ロケットや有人飛行を実現しましたよねえ。また、ナチス・ドイツが兵器とかの関係で、非常に優秀だったのも、私が書くまでもないでしょう。
 それで、我が日本はどうですかね。戦前の日本にまともな民主主義なんかがあったわけではありませんが、しかしゼロ戦とか戦艦大和とか、すごいものをつくりましたし、また湯川秀樹が中間子論を発表するなど、優れた自然科学者も輩出したわけです。繰り返しますが、いいとか悪いとかの問題ではなく、特に民主主義や政治体制などは関係ないでしょう。きっちりした教育システムがあり、研究者を養成するそれなりのシステムが確立してて、予算をつぎこめば、こと理数系に関してはそれなりの実績は出せるということです。

という指摘が正しいこと、阿部治平の

 権力維持のために言論統制を強化すれば、密告の土壌は深まり拡大する。だが大学や研究所で、講義や研究さらには人格問題などで密告が行われれば、教育・研究の創造的発展はない。社会科学だけではない。科学・技術の分野でもこれでは定説を越えた新学説が生れにくい。伝統的芸術の革新もできない。実に中国にとって不幸な時代がやってきたといわなければならない。

と言う主張が間違ってることが「改めて証明された」といえるでしょう(もちろん中国全土ではなく、北京や上海などといった「親が裕福で学力も高い学生が多いであろう」大都市の学生に参加が限られてること、地方の学生も含めればおそらく順位は落ちるであろうことには注意が必要ですが、それにしても中国大都市部の学生は欧米や日本の学生と比べて学力が上回ってるわけです)。おそらくこの調査結果についてどう思うか阿部に聞いても都合が悪いので黙りでしょうが。まあ、阿部が自らの間違いを認め「基本的に、理数系の学問振興と政治体制・民主主義の程度は関係ない」と考えを変えれば終わる話ですが、あの男はそういう柔軟性は皆無でしょう(苦笑)。無様で哀れな男だと思います。


【三井美奈の国際情報ファイル】フランス海軍拠点の町に中国ネット教育企業が進出 ビジネススクール経営の狙い - 産経ニュース
 有料記事なので途中までしか読めませんが、いつものくだらない中国への言いがかり、誹謗中傷でしょう。


【産経抄】12月4日 - 産経ニュース

「中国の夢」(チャイニーズ・ドリーム)は、習近平国家主席が好んで使う言葉である。
▼習政権の世界戦略の土台となったのは、その3年前に出版されてベストセラーになった『中国の夢』という著作だといわれている。著者の中国国防大学教授、劉明福(りゅう・めいふく)氏は、世界一の軍事強国を追求して、世界に中国時代をもたらすべきだ、と主張する。

 おそらく「インパクトのある、人目を引く言葉なので、習氏が使ってるだけ」で「劉明福氏が習氏のブレーン」などの事実はないでしょう。

 人民解放軍内でもタカ派として知られた劉氏が2日、都内で開かれたシンポジウムで、武力による台湾統一に言及した。なんと米国で1865年まで4年間続いた、南北戦争を手本にするという。北軍は米南部の海岸を封鎖することで、綿花の輸出と武器弾薬の輸入を阻止して勝利に結びつけた。

 おそらく「米国だって、南部の独立を武力で阻止した。我々が台湾独立を武力で阻止して何が悪いのか」という米国への皮肉、嫌みでしょう。つまりそれほど深い意味がある発言ではないのであってまともに相手するのもばかばかしい。そもそも産経の言うような意味が仮にあるとしても「経済封鎖で戦争に勝利する」なんて「当たり前すぎてほとんど何も言ってないに等しい発言」でしょう。そもそも「台湾の経済封鎖」なんてそう簡単にできることではない。台湾にせよ欧米諸国にせよ、それを黙認するわけもない。

「中国の夢」の実現は、世界にとっては、悪夢の到来である。

 反中国・産経にとってはそうなのでしょう。

*1:著書『沸騰する中国の教育改革』(編著、2008年、東方書店)など

*2:学習院大学特任教授。東京大学名誉教授。著書『米国カリキュラム改造史研究』(1990年、東京大学出版会)、『教育方法学』(1996年、岩波テキストブックス)、『教師というアポリア』(1998年、世織書房)、『教育改革をデザインする』(1999年、岩波書店)、『「学び」から逃走する子どもたち』(2000年、岩波ブックレット)、『授業を変える 学校が変わる』(2000年、小学館)、『学力を問い直す』(2001年、岩波ブックレット)、『教師たちの挑戦』(2003年、小学館)、『習熟度別指導の何が問題か』(2004年、岩波ブックレット)、『学校の挑戦 学びの共同体を創る』(2006年、小学館)、『教師花伝書』(2009年、小学館)、『教育の方法』(2010年、放送大学叢書)、『学校見聞録』(2012年、小学館)、『学校改革の哲学』(2012年、東京大学出版会)、『専門家として教師を育てる:教師教育改革のグランドデザイン』(2015年、岩波書店)、『学び合う教室・育ち合う学校』(2015年、小学館)、『学びの共同体の挑戦』(2018年、小学館)など

*3:東京工業大学教授。著書『ワークショップ』(2001年、岩波新書)、『ファシリテーション革命』(2003年、岩波アクティブ新書)、『学び合う場のつくり方』(2017年、岩波書店)など