黒坂真に突っ込む(2019年12月13日分)

■黒坂ツイートにコメント

黒坂真
‏ 浅野ふみ子さん。引用記事で斎藤豊*1教授*2が、性交での同意の有無をどうやって証明するかが大事だ*3、と述べています。しかし日本共産党は、同意なき性交を重罪とする刑法改正のために邁進。貴方は私を強姦したと言われたら、加害者とされた側が同意の存在を証明せねばならない

 おいおいですね。実は「フェミニストでも何でも無い」俺個人はこの件についてはあまり興味もなく、不勉強(?)で定見もないのですが、それでも黒坂の無茶苦茶な物言いには呆れます。
 なぜ「同意なき性交を強姦としよう」つう話が出てくるかと言えば「現在の要件(暴行脅迫で抵抗を完全に抑圧した場合)」だと「抑圧されてないから強制わいせつにとどまる、強姦罪については無罪(もちろん強制わいせつの方が罪が軽い)」ということになりかねないからです。

“性暴力”で相次ぐ無罪判決に被害者団体がNO 刑法の見直しを求め法務大臣へ要望 | ハフポスト
 3月12日、福岡地裁久留米支部では、女性が飲食店で深酔いして抵抗できない状況にあるなか、性的暴行をしたとして準強姦罪に問われた会社役員の男性に無罪を言い渡した。
 判決文によると、裁判所は女性が「抵抗できない状態だった」と認めながら女性が目を開いたり、声を発するなどしたため「女性が許容していると被告が誤認してしまうような状況」と判断。「女性が拒否できない状態であったことは認められるが、被告がそのことを認識していたと認められない」とした。
 続く19日には、静岡地裁浜松支部で、被害者が「頭が真っ白になった」などと供述したことから、女性が抵抗できなかったのは精神的な理由だとして「被告から見て明らかにそれとわかる形での抵抗はなかった」と認定。
 強制性交等致傷罪に問われたメキシコ人男性は無罪を言い渡された。
 名古屋地裁岡崎支部の判断も、疑問の声が多く沸き起こっている。
 3月26日、中学2年生のころから父親によって性的虐待を受けていた女性(19)の被害をめぐって、判決公判があった。
 2017年8、9月の性交に対し、長女が「性交に同意していなかった」と裁判所は認めたものの、拒んだ際に受けた暴力は恐怖心を招くようなものではなく、従わざるを得ないような強い支配、従属関係だったとまでは言えないとして、父親は無罪となった。
 これらの判決に対し、Springの山本潤*4代表理事は記者会見で「とても被害当事者として納得できない、苦しい気持ちを抱えている」と憤りを見せた。
 山本さんは「父親からそういうことをされること自体が、すごい驚きでもあるし、育ててくれている人であって拒めない。抵抗できないほどの状況であったことが認定されなかったということ自体がありえない」と話す。
 そしてこの判決について「これまでの判例に引きずられていると思った。完全に支配されていないから抵抗できただろうとなると、同意がなくて被害を受けていても罪とならない」と説明したうえで、被害者のおかれる立場をこう説明した。
「性暴力被害者の半分がPTSDになり3割がうつ病になるという統計がある。長い期間、心身の回復に時間を要するにもかかわらず、法律の条件によって罪としても認められず起訴もされない」
 そして、現在の刑法の状況を「非常に社会的な問題ではないかと思う」と訴え、2020年に実施される可能性のある刑法の見直しを強く求めた。

ということで、「実際そう言う不当な無罪判決もある」という指摘もあります。それでいいのか、何か改善しなくていいのか、つう話ですが、黒坂はそうしたことはいつものように全く無視します。
 そもそも黒坂は「加害者とされた側が同意の存在を証明せねばならない」などと「被害者の言い分がストレートに認められる」かのような強弁をしますがそんなことになるわけがないでしょう。
 「同意の不存在」を検察が証明するに決まってるわけです。これは不同意性交に限りません。
 自称・被害者が「俺は詐欺被害に遭った」「俺は恐喝された」といえばそれだけで「正当な商行為ではなく詐欺や恐喝だ」と裁判所が認定してくれるのか。検察(刑事裁判)や弁護士(民事裁判)に立証の必要は無いのか。そんなことはないわけです(むしろ正当な商行為を偽装していて処罰が困難なケースもある)。
 自称・被害者が「俺は職場の上司からパワハラを受けた」といえばいえばそれだけで「正当な教育的指導ではなくパワハラだ」と裁判所が認定してくれるのか。検察(刑事裁判)や弁護士(民事裁判)に立証の必要は無いのか。そんなこともないわけです。
 「共産党の刑法改正案の是非」に関係なく黒坂の主張は完全なデマです。
 黒坂がこうしたデマ主張を「正しい」と本気で思ってるのなら「論外のバカ」だし、「故意にデマを垂れ流してる」のなら「クズ」です。
 いずれにせよ、黒坂が「性暴力を根絶すること」に何の興味もないことだけはよく分かります。俺も「そんなに興味があるわけではありません」が人の情として、こうした運動はできる限り応援したいと思うし、当然ながら「因縁つけしかしない」黒坂のようなクズには怒りしか感じません。
 いい加減、大阪経済大学(黒坂の所属大学)も「黒坂への口頭注意」ぐらいしたらどうなのか。
 それはともかく、「殴る蹴る」などというわかりやすい「暴力による強姦行為」なら「同意はありません」ですみます(SMプレイなどという特殊ケースでも無い限り「暴行があったけど強姦じゃない」なんてことはありえないし、SMと「強姦での暴行行為」はさすがに見分けがつくでしょう)。
 問題は「だましや脅しなど暴力が使用されないケース」ですね。この場合「同意無き性交は犯罪」としたところで「だましや脅しなど」の存在を証明することは「殴る蹴るなどの暴力行為」を証明することほど楽ではない。「同意の不存在が証明できないから無罪」では「要件を変えたこと」の意義が大きく失われます。
 しかし、だからといって安易に「だましや脅しなど」の存在を認定すれば確かに「別れ話のもつれから恨みを持った女性」が「私はレイプされた」と嘘をついたのをレイプ認定して、冤罪という「黒坂の言うような事態」が発生しかねないことも事実です。
 しかしそこで「だから今のままでいいんだ」つう話(黒坂)には全くなりません。
1)強姦罪を不同意性交罪に変えた上で不同意の存在を適切に認定していくことを目指す
2)現状の要件のままで「暴力による抵抗抑圧」の認定をもっと適切な物に変えていく
のどちらかしかないでしょう。
 大体この件、

性犯罪刑法のさらなる改正求め、要望書提出。支援団体が作成した改正案叩き台の内容とは? | ハフポスト
 性犯罪被害者を支援する12の市民団体が結成した「刑法改正市民プロジェクト」が11月21日、性犯罪規定の更なる改正を求めて、東京・永田町の衆議院第二議員会館で院内集会を開いた。同日、再改正に向けた審議の実施などを求める要望書も法務省に提出された。
 団体は、強制性交等罪(旧強姦罪)の成立要件となっている「暴行・脅迫」部分の撤廃などを求めた改正案を作成。集会ではその資料も配布された。
 性犯罪は、2017年7月に厳罰化された。1907年の制定以降初めて改正刑法が施行され、被害対象が男性も含まれるようになったり、親告罪が廃止されたりした。
 しかし、現在の刑法では有罪の立証に高いハードルがあるとして、支援者や専門家らは更なる法改正を求めている。
 その理由の一つが、強制性交等罪(旧強姦罪)などにおける「暴行・脅迫」要件だ。現行法では、「被害者の反抗を著しく困難にする程度の暴行や脅迫」がなければ、罪が成立しない。
 2019年3月には性被害をめぐる裁判で無罪判決が相次ぎ、暴行脅迫要件の見直しを求める声が高まった。
 院内集会には、性暴力の被害者や支援者らでつくる一般社団法人「Spring」や性暴力の相談を24時間受け付ける「性暴力救援センター・東京(SARC東京)」、国際人権NGOの「ヒューマンライツ・ナウ」のメンバーらが登壇。2020年に行われる性犯罪刑法の見直しに向けて、被害の実態や現行法の課題などを話し合った。

といった記事で分かるように共産党が言い出しっぺというよりは「犯罪被害者団体」「女性権利団体」などの働きかけを受けて共産党が動いてる話です。「共産支持者の俺ですが、あえて、共産党に対して厳しいことを言えば」、こうした団体の働きかけがあるまでは共産の動きも鈍かったわけです。
 威迫による不同意性交等罪を新設すべきである(園田寿) - 個人 - Yahoo!ニュースでわかるように法学者の中にもそうした動きを支持する研究者はいる(まあ例は園田教授でなくてもいいのですが)。なお、園田*5教授は「未成年者との淫行(都道府県条例)という形で不同意性交の一部が既に処罰されている以上、刑法での不同意性交処罰が不当とは言えない」との認識を示しています。
 一寸ググってもいい記事が見つからなかったのですが、何もこうした動きに好意的に呼応してる政党は共産党だけでもない。そう言う「共産主義が全く関係ない話」で共産党にだけ因縁を付ける黒坂は明らかに「異常な反共」です。そして黒坂がこの「性犯罪問題」を全くまともに考えてないことも明らかです。
 荒木和博や島田洋一櫻井よしこなども黒坂と比べたら「ずっとましに見える」。

*1:著書『国家秘密法制の研究』(1987年、日本評論社)、『少年法研究(1)適正手続と誤判救済』(1997年、成文堂)、『少年法研究(2)少年法改正の検討』 (2006年、成文堂)など

*2:正しくは名誉教授(甲南大学

*3:もちろん斎藤名誉教授は黒坂と違い「不同意性交罪」に賛成した上での発言です。

*4:著書『13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル』(2017年、朝日新聞出版)

*5:著書『情報社会と刑法』(2011年、成文堂)など