新刊紹介:「経済」1月号

「経済」1月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/

■巻頭言「エンゲルス生誕200年」
(内容紹介)
 2018年がマルクス(1818~1883年)の生誕200年で、来年2020年がエンゲルス(1820~1895年)の生誕200年だそうです。エンゲルス生誕200年でググってもヒットしませんが、マルクス生誕200年だと

行き詰まる資本主義救う? マルクス、生誕200年で脚光|出世ナビ|NIKKEI STYLE
・今年*1は「資本論」の著者、カール・マルクスの生誕200年に当たります。日本でも、関連する書籍の出版や国際シンポジウムの開催といったイベントが目白押しです。
・今年1月に東京大学教授の熊野純彦*2著「マルクス 資本論の哲学」(岩波新書)、2月には伊藤誠*3著「入門 資本主義経済」(平凡社新書)が出ました。
マルクス経済学を基盤とする学会である経済理論学会を中心とする7つの学会は12月、「マルクス生誕200周年記念国際シンポジウム」を共同で開き、一般にも公開する予定です。全体のテーマは「21世紀におけるマルクス」。経済理論学会の代表幹事を務める法政大学の河村哲二*4教授は「世界で広がる経済格差、環境問題、グローバル金融危機をいかに分析し、社会経済のビジョンを描くか。研究の蓄積と成果を内外に発信する貴重な機会」と話しています。

マルクス生誕200年、独で式典 抗議の活動も:朝日新聞デジタル
カール・マルクスの生誕200年を祝う式典が5日、出身地のドイツ南西部トリーアで行われた。式典では、中国から「友好の証し」として贈られた高さ5・5メートルのマルクス像の除幕式が行われ、社会民主党のナーレス*5党首のほか、寄贈に関わった中国政府の関係者も出席した。
マルクス像の計画は国内外で波紋を呼んだ。昨年9月の総選挙で初めて連邦議会議席を取得した新興右派政党*6「ドイツのための選択肢(AfD)」は「共産主義は多くの人々を殺害したのに、それを正当化してしまう」などと批判し、ネット上で反対デモへの参加を呼びかけた。
・一方、4日に現地で関連行事に出席したユンケル*7欧州委員長は「マルクスを理解するためには彼が生きた時代を理解しなければならない。彼は陰謀のためではなく、平等の実現のために力を尽くしたのだ」と功績をたたえた。旧東独の独裁政党の流れをくむ連邦議会野党の左派党*8は「銅像は、200年前と同じように人々を搾取し、抑圧するシステムに対する抗議の象徴だ」などと訴えた。

生誕200年記念「マルクス紙幣」に注文殺到 額面は0:朝日新聞デジタル
資本論」で知られるドイツ出身の思想家カール・マルクスの生誕200年を記念して、額面ゼロの「マルクス紙幣」を地元の観光局が売り出したところ、世界中から注文が殺到し、増刷に追われている。
 発行したのは、マルクスが生まれたドイツ南西部トリーアの観光局。マルクス肖像画が描かれ、額面は「0」ユーロとなっている。「マルクスは貨幣に対する疑念を訴えていた。主張の根幹をおもしろく伝えようと思い、0ユーロ紙幣の企画を思いついた」と広報担当者。

独大統領“マルクスは現代に通じる”/きょう生誕200年 多面的業績語る
 ドイツのシュタインマイヤー*9大統領は3日、ベルリンで、同国出身の思想家・革命家カール・マルクス生誕200年に当たり、マルクスの多面的な業績や現代的な意義について触れる講演を行いました。
 同大統領は、マルクスが「熱烈な人道主義、出版の自由、人間的な労働条件、8時間労働、女性の役割の評価、環境保護」に取り組んだと指摘。現代のグローバル化を予言し、“労働者と機械の競争”などの分析は、現代の労働者が直面するAI(人工知能)、ロボットなどの問題に通じると述べました。

マルクス生誕200年、映画「マルクス・エンゲルス」ラウル・ペック監督に聞く : 映画ニュース - 映画.com
 資本論で知られ、科学的社会主義を打ち立てたカール・マルクスが5月5日に生誕200年を迎える。マルクスとその盟友フリードリヒ・エンゲルスの若き日々を描いた映画「マルクス・エンゲルス」(公開中)のラウル・ペック監督が、作品を語った。

など、いくつか記事がヒットしますね。来年になるとエンゲルス生誕200年でググってヒットする記事(つまり記念イベントなど)も出てくるんでしょうか?


■随想「トヨタの「社員手帳」」(岡清彦*10
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。「今まで配布していたが、コストカットで廃止」ではなく「初めて配布」というのが意外です。
 自動車業界最大手で、概ね経営も順調、労使協調トヨタでは今更配布する必要があるとも思えませんが。

◎トヨタ 「社員手帳」が配布されたが… トヨタで生きる
 トヨタ自動車が社員に「社員手帳」を配布しました。こうした手帳は初めてといいます。
 内容は、「はじめに」「第1章 プロとは」「第2章 豊田綱領」「第3章 TPS*11」「第4章 原価低減」「第5章 私たちの心構え」から成っています。
(中略)
 豊田綱領、TPS、原価低減など、いずれも豊田社長が常日頃、強調していることです。それを全社員が理解すべき「必須項目」としてまとめ、社員が常時携帯することで、徹底しようというものです。
 ある社員は、「社員証と同じで会社からの貸与品といわれている。退職時に返さなければならない。サイズが大きいので常時携帯は現実的ではないです」と語ります。


■世界の鉄鋼産業再編(大場陽次)
(内容紹介)
 生産過剰による最近の鉄鋼会社再編(日本での新日鉄住友金属の合併による日本製鉄誕生など)について触れています。


GMでの長期ストが妥結(西村央)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。「医療費の自己負担率引き上げは撤回」など労組の要求が一部受け入れられた反面「工場の閉鎖」を受け入れざるを得なかったわけで「痛み分けの解決」といえるでしょう。

GM長期スト終結、昇給・正社員登用などで組合が新協約を承認 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
 自動車大手ゼネラル・モーターズ(General Motors、GM)の従業員が25日、GM側との新たな労働協約を投票で承認し、過去50年近くで最長となる40日間に及ぶストがようやく終結した。
 GM全米自動車労組UAW)の発表によると、新協約では、昇給、協約改定時の(正社員)1人当たり1万1000ドル(約120万円)のボーナス、非正規従業員の正社員登用の迅速化などが認められるほか、医療費の自己負担率引き上げは撤回された。
 一方、新協約ではGMの米4工場の閉鎖計画のうち3工場の閉鎖が決まった。


■結成30年を迎えた全労連(鹿田勝一)
(内容紹介)
 もちろん「2019年は全労連30年」ということは「連合30年」「全労協30年」でもあるわけですが、共産党全労連と友好関係にあり、他の2つとは「批判的関係にある(敵対関係とまでは言えないでしょうが)」からこそ「全労連」が前面に出るわけです。

参考

全労連結成30周年レセプション/新しい時代開く役割/市田副委員長があいさつ
 全労連は22日、川崎市で結成30周年記念レセプションを開きました。
 純中立労組懇談会の砂山太一全農協労連委員長、日本共産党市田忠義副委員長、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の高田健*12共同代表、全国商工団体連合会の太田義郎会長、新日本婦人の会の米山淳子会長らがあいさつし、「全労連の努力が運動を支えている。一緒に安倍政権を倒そう」(高田氏)と述べました。
 市田氏は「30年の歴史を踏まえて、新しい時代を切り開く大きな役割を果たされていることに敬意を表します」と述べました。
 全労連が、(1)市民と野党の共闘をつくりだす原動力(2)新しい市民運動と連帯し支える縁の下の力持ち(3)ナショナルセンターの違いを超えて要求にもとづく共同を先進させるかなめ―の役割を果たしてきたとたたえました。


特集『激動の世界経済2020年』
■2020年の世界経済をどう見るか:米中貿易摩擦アメリカ経済(中本悟*13
(内容紹介)
 米中経済対立がどう解決するかが今後の世界経済に大きく影響するという観点からもっぱら論じられています。
 その点では、トランプが再選されるのかどうかも重要な要素でしょう。トランプが退陣し、民主党政権交代すれば今の対中貿易摩擦がよりマイルドな形で解決する可能性もあるからです。


■欧州はどこに向かうか(森本治)
(内容紹介)
 英国のEU離脱問題がどう解決するかが今後の世界経済に大きく影響するという観点からもっぱら論じられています。


■ブラジルのボルソナロ政権と社会の様相(山崎圭一*14
(内容紹介)
 ブラジルでボルソナロ右派(新自由主義)政権が誕生したことに論じられています。
 ボルソナロ政権により教育、福祉予算の大幅カットが危惧されるが
1)労働党前政権の教育、福祉政策はそれなりに支持されてきたこと
2)明確に与党といえる政党は「下院513議席中121議席に過ぎず、残りの議席は野党ないし、中道派(是々非々の立場)」であるため、独裁的な政権運営は困難
であり、今後に注目したいとしています。

【参考:ボルソナロについて】

アマゾン森林破壊、過去10年で最悪 ボルソナロ政権の開発優先政策が影響か | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
 ブラジル・アマゾン地域の今年に入ってからの森林破壊が過去10年間以上で最悪規模となったことが、18日公表のブラジル政府統計で分かった。右派ボルソナロ大統領の政権下でアマゾンの森林破壊が急速に進んだことが裏付けられた。
 環境保護グループや非政府組織は、違法行為増加の背景としてボルソナロ氏が経済発展を振りかざして森林開発を強力に支持、環境保護を弱める政策を導入していることがあると指摘している。
 アマゾンの森林火災は8月に大規模化。破壊の進行が世界的な関心を集め、フランスのマクロン大統領がブラジル政府の対応を批判した。

ディカプリオVSボルソナロ 森林火災めぐり応酬―ブラジル:時事ドットコム
 南米アマゾン熱帯雨林の火災をめぐり、ブラジルのボルソナロ大統領が環境保護活動に熱心な米俳優レオナルド・ディカプリオさん*15と応酬を繰り広げている。ボルソナロ氏は、明確な根拠を示さないままディカプリオさんが「放火」に関与した環境保護団体に資金提供していると批判。ディカプリオさんは(ボーガス注:そもそもボルソナロ大統領が名前を挙げたその環境保護団体には寄付しておらず)事実無根と反論した。

 「経済」今月号の山崎論文でも読まない限り、「日本マスコミもそんなに報じない」こともあって、ブラジルになど興味の無い小生ですがそれはさておき。
 根拠レスでディカプリオを「放火の共犯」呼ばわりとは米国のトランプや、イタリアのベルルスコーニ、フィリピンのドゥテルテや我が国の安倍、石原慎太郎並みに低レベルな御仁のようですね。そもそも「一部の環境保護団体が俺への嫌がらせで放火してる」と言う主張自体がやはりデマ中傷のようですが。以下もボルソナロの問題発言です。ブラジルは大丈夫なのかという危惧を感じますね。

グレタさんは「小娘」 ブラジル大統領、先住民問題言及にいら立ち?:時事ドットコム
 ブラジルの右派ボルソナロ大統領が10日、政府の先住民軽視姿勢に警鐘を鳴らしたスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)を「小娘」呼ばわりした。ボルソナロ氏は環境保護に後ろ向きだとして内外から批判を浴びており、グレタさんの言葉にいら立ったとみられる。
 ブラジルのアマゾン一帯では最近、先住民活動家らが暗殺される事件が相次いでいる。グレタさんは8日にツイッターで「違法伐採から森を守ろうとしている先住民が殺されている。世界が黙っているのは恥ずべきことだ」と発信。これを受けてボルソナロ氏は「メディアがこんな小娘の言うことを取り上げるなんて」と嘆いてみせた上で「どんな死でも(私にとっては)気がかりだ」と反論した。
 一方のグレタさんは、ツイッターの自己紹介欄を、ブラジルの公用語であるポルトガル語で「小娘」と変更。皮肉を込めてやり返した。
 ボルソナロ氏は8月にアマゾンで火災が深刻化した際、後手に回った対応を批判したマクロン仏大統領に激しくかみつき、マクロン夫人の容姿をやゆ。11月末には、米俳優レオナルド・ディカプリオ氏が森林放火に関与した環境保護団体に資金提供していると主張し、「ディカプリオという男はクールじゃないか。放火のために寄付をしている」と根拠を示さずにこき下ろした。

ブラジル大統領、グレタさんを「ガキ」呼ばわり 写真12枚 国際ニュース:AFPBB News
 ブラジルのジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領は10日、スウェーデンの高校生環境活動家グレタ・トゥンベリ(Greta Thunberg)さん(16)を「ガキ」呼ばわりした。トゥンベリさんは、先週末にアマゾン(Amazon)の熱帯雨林で先住民2人が殺害された事件を非難していた。
 ブラジル北東部マラニョン(Maranhao)州で7日、先住民グアジャジャラ(Guajajara)の2人が射殺され、警察が事件として捜査を進めている。同地域では数週間前に先住民1人が殺害される事件が起きたばかりだった。
 この事件を受け、トゥンベリさんは8日、先住民の人々が違法伐採を阻止しようとしたために殺害されているのに、世界が声を上げないのは「恥ずべき」ことだとツイッターTwitter)に投稿した。
 極右のボルソナロ氏は首都ブラジリアの大統領府を出発する際、「グレタさんは、先住民がアマゾンを守っていたために死亡したと言っている」「あんなガキにマスコミが紙面を割くとは驚きだ」と述べた。
 さらに、「誰の死であろうと憂慮すべき」と述べた上で、自身の政権は違法伐採に反対していると主張した。
 今年1月に就任したボルソナロ大統領は、アマゾンでの農鉱業開発を提唱している。ブラジルは先月に統計を修正し、2019年の1月~7月に伐採された熱帯雨林の面積は100万ヘクタールを上回り、この10年超で最大となったと発表した。

ボルソナロ大統領が児童労働を擁護、「私は8歳で働いていた」 ブラジル 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
 ブラジルのジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領に物議は付き物だが、今度は児童労働を擁護する発言を繰り返し、世間を騒がせている。
 ボルソナロ氏は自身のフェイスブックFacebook)で公開討論を毎週、ライブ配信しているが、4日の配信映像の中で、極右の同氏は「聞いてくれ。どこかで8歳か9歳の子どもが働いていると、多くの人たちが『強制労働』とか『児童労働』だとか言って非難する。だが、そうした子どもがコカインペーストを吸っていても、みな知らんぷりだ」と訴え、「労働は男性にも女性にも尊厳をもたらす。年齢は関係ない」と主張した。
 その後も、ボルソナロ氏は同様の発言を繰り返している。5日の公式行事では「私は8歳の頃にはトウモロコシを植えたり、バナナを収穫したりして働いていた。同時に勉強もしていた」と述べ、「その結果が現在のこの私だ。扇動しているのではない。これは真実だ」と豪語した。
 さらに6日にも、米ホワイトハウス(White House)でドナルド・トランプDonald Trump)大統領の大ファンだという11歳の少年、フランク・ジアチオ(Frank Giaccio)君が芝刈りをする2017年のAFP動画を、再び自身のフェイスブックに投稿。「労働は人に品格を与える」とのコメントを付けている。
 ブラジルの法律は16歳未満での労働を禁じているが、例外として見習いの場合は14歳から労働が認められる。ブラジル地理統計院(IBGE)によれば、ブラジルでは5歳から17歳までの子どもや青年約250万人が労働に就いている。

ブラジル経済相、マクロン仏大統領夫人を侮辱 「本当に醜い」 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
 ブラジル経済相が5日、ブリジット・マクロン*16(Brigitte Macron)仏大統領夫人について、「本当に醜い」と発言した。数日前にもブラジルのジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領が、ブリジット夫人の容姿を侮辱する支持者の投稿に賛同するようなコメントを寄せていた。
 パウロ・ゲジス(Paulo Guedes)経済相は経済フォーラムで、ブリジット夫人の外見に関するボルソナロ大統領の発言は「本当のことだ」と述べ、「あの女性は本当に醜い」と続けると、会場からは笑いと拍手が起きた。
 先月末にはボルソナロ大統領の支持者がフェイスブックFacebook)に、ブリジット夫人と、同夫人より29歳若いボルソナロ大統領のミシェル(Michelle Bolsonaro)夫人の写真を並べ、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領が「ボルソナロを困らせる理由が分かるだろう?(ボーガス注:若い妻を持つボルソナロに嫉妬してるのだ)」と投稿。
 ブリジット夫人がミシェル夫人ほど魅力的でないことを暗に伝えるようなこの投稿に対して、ボルソナロ大統領は、「やつに恥をかかせるなよ、ハハ」と賛同するようなコメントを寄せた。
 マクロン大統領はボルソナロ氏の発言を、「極めて無礼」と非難。ボルソナロ氏は後にコメントを削除した。
 ブラジルとフランスはここ数週間、アマゾン(Amazon熱帯雨林の火災の対応をめぐって対立している。

批判的な主要紙、行政府から一掃へ=ブラジルのボルソナロ大統領:時事ドットコム
 ブラジルのボルソナロ大統領は1日までに、自身への批判の急先鋒(せんぽう)に立っている主要紙フォリャ・デ・サンパウロについて、連邦行政機関での購読を中止する方針を示した。
 ボルソナロ氏はかねて同紙は「フェイク(偽)ニュース」だらけだと批判。フェイスブックで「行政府の購読契約を破棄することを決めた。こんな新聞にこれ以上金を払うつもりはない」と強調した上で、読みたい人は外の売店で買えばよいと述べた。
 フォリャ紙は昨年の大統領選の際、ボルソナロ氏不利と報じたほか、今年1月の大統領就任後も同氏の暴言や失言を厳しい論調で批判。最近では、スタッフ水増し疑惑を伝えていた。
 ボルソナロ氏は契約破棄が報道の自由の阻害や検閲には当たらないと指摘。一方のフォリャ紙は「公然の差別だ」と反発した上で「われわれはどの党にもくみしない立場で政権批判を続ける」と主張している。

「ブラジルのトランプ」、疑惑報道のテレビ局に脅し | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
 ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は、人権派の女性市議マリエル・フランコ*17の暗殺に関与した疑いを報じられて激怒し、このニュースを流したテレビ局に放送免許を取り上げると脅した。
 「下劣なクソ野郎ども、おまえらに愛国心はない」
 ボルソナロはブラジル最大のテレビ局をそうののしったと、「国境なき記者団」は伝えている。
「おまえらのジャーナリズムは腐りきっている。堕落し、非道徳的だ。おまえらは役立たずだ! 嘘をばらまくだけだ!」
「TVグローボよ、おまえらはマリエル殺害と私を結びつけようとしている。TVグローボのゲス野郎ども。悪党ども、そうは問屋が下さんぞ。私は誰にも何にも借りがない。リオデジャネイロで、誰かを殺さねばならない理由など一切ない。私がこの女性市議を見て存在を知ったのは、彼女が処刑されたその日が初めてだ」
◆容疑者とのツーショット写真も
 ボルソナロと事件の関連性を伝えたのは、TVグローボの報道番組「ジョナル・ナシオナル」だ。
 フェミニストの黒人女性で、リオ政界では異色の存在だったマリエル・フランコは昨年3月、車で帰宅中に運転手のアンデルソン・ゴメスと共に銃弾を浴びて死亡した。今年3月、退役した軍警察官ロニー・レッサが主犯格として逮捕され、やはり軍警察に勤務していたエルシオケイロスが共犯容疑で逮捕された。事件は政治的理由による暗殺と見られ、ボルソナロが容疑者2人と接触していた疑いは以前から取り沙汰されていた。
 「これはTVグローボによる腐った極悪のジャーナリズムだ」と、ボルソナロは断じた。
 「TVグローボよ、おまえら知性の片鱗もないのか。常識はどこにやった」
 これに対し、TVグローボは不適切な報道は一切していないと答えている。
 TVグローボは報道について謝罪せず、「大統領が良質のジャーナリズムの使命を知らないことを自ら暴露し、ブラジル市民に正確な情報を提供した報道チームを不公正な表現で侮辱したこと」を遺憾に思うと述べた。
 放送免許に関しては、同局はボルソナロの脅しにビクともしない姿勢を見せつけた。
 「大統領はこれ以上いかなる行動もとることはできない。TVグローボは過去54年間、社会におけるその役割を忠実に果たしてきたからだ」

ブラジル検察、市議殺害容疑で警官2人を逮捕 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News
 ブラジル・リオデジャネイロRio de Janeiro)で昨年、人権派市議で黒人や同性愛者の権利を推進する活動家だったマリエル・フランコ(Marielle Franco)氏(当時38)が殺害された事件で、ブラジル検察当局は12日、警官2人が逮捕されたと述べた。フランコ氏が殺害され同国に衝撃が走った日から間もなく1年を迎える。
 フランコ氏と同氏の運転手アンデルソン・ゴメス(Anderson Gomes)さんは政治活動家らとの会合を終えた2018年3月14日夜、リオデジャネイロ中心部で走行していた車から銃弾を浴び死亡した。これを受け世界各地で抗議デモが発生、ブラジルでも多くの人がデモに参加した。
 リオデジャネイロ検察当局は、車ですれ違う際にフランコ氏の乗った車に向かって銃弾13発を撃った容疑でロニー・レッサ(Ronnie Lessa)憲兵下士官(48)を逮捕したと述べた。またエルシオ・ビエイラ・デ・ケイロス(Elcio Vieira de Queiroz)元憲兵隊員(46)は、フランコ氏の後をつけた車を運転していた容疑で逮捕された。
 特別組織犯罪部門の検察官らは、犯行は3か月かけて綿密に練られたものだったと指摘。フランコ氏の政治活動と同氏が擁護する運動が原因となり同氏が「略式の処刑」を受けたのは間違いないと述べている。
 フランコ氏の助言者だったマルセロ・フレイソ(Marcelo Freixo)連邦議員は今回の逮捕について「決定的な一歩だが、事件はまだ解決されていない」と表明。グロボテレビ(Globo TV)に対し「誰が殺害を命令したのか?政治的動機は何だったのか?」と述べた。

 記事を信じる限り、ブラジルのマスコミはなかなか気骨があるようですね。しかし「市議暗殺犯との交遊が疑われる人物が大統領」とはブラジルもなんとも恐ろしい国です。安倍のモリカケ、トランプのウクライナゲートすらかわいく思えてきます。

ブラジル「差別発言大統領」が支持される事情 | 中南米 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
 「ブラジルのトランプ」。
 こう呼ばれる極右のジャイル・ボルソナロ氏が1月1日、ブラジルの大統領についてから早10日が過ぎた。同性愛者や女性などに対する極端な差別発言から欧米のリベラルメディアを中心に警戒されている同大統領だが、サンパウロで人々の声を聞いてみると意外と期待感が高いことに驚く。
 思えば、2018年10月末、社会自由党(PSL)の同氏が労働党(PT)のフェルナンド・アダジ前サンパウロ市長を破り、大統領当選が決まった瞬間からそうだった。サンパウロの町には爆竹が鳴り響き、一気にお祝いムードに包まれたのである。
 実際、PT時代は政治的汚職が横行し、景気も乱高下。労働者は生活にあえぎ、失業者が続出した(現在失業率は11.8%以上)。それにもかかわらず政治家の巨額不正が次から次へと発覚し、国民の不満は募る一方であった。
 景気改善を望む向きは強く、現地紙「フォーリャ・デ・サンパウロ」が12月に行った調査によると、回答者の65%が今後数カ月間で景気は回復すると期待している。ボルソナロ大統領自身は、経済の専門家ではないものの、シカゴ学派エコノミストで、ピノチェト政権時代にチリで財務大臣を務めた経験のあるパウロ・ゲデス氏を経済顧問に起用するなどして経済改革に取り組む姿勢を見せている。
 治安改善も懸案事項の1つだった。非営利団体「ブラジル公安フォーラム」の調査によると、2017年には過去最悪の6万3880人が殺人の被害にあっている。現地紙「ニッケイ新聞」によると、「サンパウロ市では、2014年に強盗・窃盗事件が前年比18%、窃盗殺人が5%増えて以来、つねに高い比率で事件が起きている」。こうした中、ボルソナロ大統領は1日の就任演説で、治安改善に取り組む方針を示した。
 とはいえ、誰もがもろ手を挙げて新大統領誕生を祝っているわけではない。
 同氏が大統領になることでブラジルは右傾化し、軍政時代に戻ることを心配する人も少なくない。こうした中、大統領戦中にはブラジル全国の州都ばかりか世界各地の都市で、「Ele nao(彼はノ―だ)」というスローガンが掲げられ、数十万人の反ボルソナロ運動が巻き起こったほどだ。
 そんな人物がなぜ大統領選で勝てたのだろうか。選挙では、ボルソナロ氏が極右で支持者は主に高所得者層、アダジ氏が左翼で支持者は低所得者層と見られていた。これまで、PTは低所得者層に対して生活扶助制度「ボルサ・ファミリア」などの福祉政策を行ってきたことから、低所得者層に絶大な人気があった。実際、今回の選挙でも低所得者層が多い北東部のすべての州で労働党のアダジ氏が勝利している。
 ブラジルは低所得者高所得者に比べて圧倒的に多いほか、ボルソナロ氏を嫌う女性や同性愛者も少なくないため、普通に考えればバダジ氏が勝利したはず。それにもかかわらず、ボルソナロ氏が勝利した理由がわからなかった。そこで、選挙後、無作為に選んだ人々40人に、誰に投票したか、そして、その理由を尋ねてみた。
 すると、8割がボルソナロ氏に投票し、その理由として「そろそろ新しいブラジルになるべきだ。PTはもうたくさん」「汚職贈賄にはうんざり」「治安の良化を欲する」と、皆ほぼ同じような答えが返ってきた。多くの国民は、政治家の巨額な汚職贈賄・マネーロンダリングなど不正にうんざりし、悪化する景気、治安に疲弊し辟易していたのである。
 今回の下院選に、(ボーガス注:収賄疑惑で議会によって)大統領を罷免されたジルマ*18元大統領がリオ・グランデ・ド・スル州から出馬した。当初その知名度から当選を確実視されていたが、その結果は落選であった。このことからも、いかに労働党が国民に信頼・人気がなくなっているかがわかる。
 「とにかくPTには入れたくなかった。約14年にわたりブラジルを自分のもののように扱ってきた。PTはもうたくさん。そろそろ新しいブラジルになるべきだ」。
 アダジ氏に入れなかった理由として同様に答える人が多かった。
 いろいろ問題はあるものの、汚職まみれだったPTに比べてボルソナロ氏の方が「マシ」と考える人は多い。低所得者層からも、新しいブラジル、クリーンな政治家を望む声が増えていた。その一方で政治離れがおき、今回は1989年以来、無効票または無投票が28.8%となり、最高を記録した。そのことも少なからず影響していると思われる。
 ボルソナロ氏に投票した多くの有権者は、極端な右翼化や軍政に走る可能性は少ないだろうと考えている。実際、大統領選以来、ボルソナロ氏の極端な主張は和らげられ影を潜めてきた。
 前述の中小企業経営者も「今回選ばれた閣僚の4人(22人中)が元軍関係者で副大統領も元軍人だが、ブラジルは今では経済大国になっているので、今さら軍政には戻ることはないのではないか。軍自体も同様のことを言っているからその心配はないだろう」と話す。
 一方、政治面ではボルソナロ政権では、政府機関の数を29省から最大17省に削減することを明言し、ルラ・ダ・シルバ元大統領を刑務所送りにしたセルジオ・モーロ判事を法務大臣に指名した。また、紛糾している年金制度改革可決を年内に目指すなど活発に動き出した。経済面でも、市場重視の政策に移行することを掲げている。
 ただし、「国会でも大部分が野党*19なので、社会保障改革をしようとしているが、結局は実現できないのではないか」と電気技師の男性(23)は悲観的だ。
社会保障のプログラムを縮小する政策をするようなことを言っているが、そうなれば大部分の国民は経済的に打撃を受け、富裕層や銀行が利益を得ることになり、ますます貧富の差は大きくなるだろう」。
 国民の期待を背負って走り出したボルソナロ政権の先行きはいかに。

 与党への不満(特に不況問題)からボルソナロが当選したようで、その点もまさに「民主党への不満(特に不況問題)から当選したトランプ」そっくりですが、全く困ったもんです。ただし「議会を完全に政権与党がおさえてるわけではないこと」「マスコミもそれなりに批判報道していること」は希望ではあります。

ジャイール・ボルソナーロ(Wikipedia参照)
・2018年10月7日、大統領選挙の第1回目投票において46.03%の票を獲得し、労働党フェルナンド・アダジ(29.28%)候補と共に決選投票に進んだ。ボルソナーロはアダジに対して優位に決選投票を進め、2018年10月28日の決選投票で当選した。
■極右言動
・議員時代に強姦罪で有罪を宣告された受刑者たちに、「自発的な化学去勢」を可能とする法案を提出した。また、公に同性愛を非難し、同性愛者のカップル、子供の同性結婚や養子縁組などLGBTの人々の権利を付与する法律の施行、性転換のための民事登録の変更に反対している。
・いくつかのインタビューでは計画的な殺人の場合、ブラジルの「死刑制度」復活への好意的な立場を示している。
・1998年12月2日に雑誌Veja誌のインタビューの中で、3,000人以上の国民と20万人の亡命者を虐殺したとされるチリのピノチェト政権について、「もっと多く殺すべきだった」と述べ、批判された。ボルソナーロのこうした言動に対してチリのセバスティアン・ピニェラ大統領は「ブラジル側のピノチェト体制賞賛は極めて不幸なことだ」と苦言を呈した。
軍事独裁政権時代がブラジルの歴史において「輝かしい経済発展の時代」だったと主張している。
・2011年、ジャーナル・デ・ノティシア誌とのインタビューでボルソナーロはゲイと幼児愛者との関係について聞かれ、 「ゲイのカップルに養子にされた子どもたちの多くは虐待されるだろう」と断言した。
・2015年2月、新聞ゼロ・オーラとのインタビューで、出産休暇の権利が企業の生産性を損なうとし、妊娠する女性に男性と同じ給与が与えられるべきとは信じていないと主張した。
■アマゾンの火災対応
 2019年8月、前年同期に比べて、アマゾンの火災件数が85%増加している事が判明した。ブラジル国立宇宙研究所の報告では、2019年6月の火災件数は、2018年の同月に比べて88%増加しており、識者はボルソナーロが大統領に就任した2019年1月以降、火災件数が大きく加速したと指摘する。ボルソナーロ批判派からは彼の開発重視、環境軽視の姿勢が火災の拡大につながったと批判されている。
 こうした批判の後、ボルソナーロはブラジルにおける森林伐採の増加を強調したブラジル国立宇宙研究所の所長リカルド・ガルヴァンを解任した。また2019年8月21日、「私が民間公益団体(NGO)の財源を削減したことで、私の施政を辱めるためにNGOが火を放っている可能性がある」と放言し、批判をよんだ。
 2019年8月23日夜、環境問題を重視する欧州諸国からの圧力を受けて、火災対処のため、ブラジル軍の派遣を許可する大統領令を発令した。この問題は、8月24日からフランスで開催されているG7(主要国首脳会議)でも議題に取り上げられたが、ボルソナーロは「当事国が参加しないG7で議論することは植民地主義的思考だ」と反発した。さらに1800万ユーロもの資金援助が提案されるも、8月28日、ボルソナーロは「マクロン大統領はノートルダム大火災さえ避けられなかったのに、私たちに何が言えると言うのか」と、その申し出を拒否した。
 ボルソナーロはこの火災に対する世界的注目の元凶がマクロン大統領の環境保護発言にあると目し、「アマゾンの主権はブラジルにある」「わたしはG7ではなく、G7に参加する大統領のひとりに対して反対している」とマクロンに反発する姿勢を強めている。9月23日、ニューヨークで催された国連気候サミットで演説し、アマゾンの森林火災は「詐欺」によって、誇張されたとし、マクロン大統領と併せてメディアを非難した。
■就任百日後
 エルパイス紙は就任わずか3ヵ月の間で2人の大臣を解任したこと、1964年の軍事クーデターを祝うよう軍に働きかけ、ブラジルの内外で非難を呼んだこと、「ナチズムが左翼から起きた運動だったことは疑いの余地はない」と述べてドイツの歴史家に否定されたことなどを書き、ボルソナーロを批判した。
イスラエルとの関係
 当初、在イスラエル・ブラジル大使館をエルサレムに移転すると発表していたが、アメリカに続いてブラジル大使館をエルサレムに移動させるというボルソナーロの当初の提案は、アラブ諸国との関係を悪化させ、ブラジルのハラール肉輸出による数十億ドルの利益を危うくする可能性があることから、結局取り消されている。
■対中関係
 選挙戦においては右翼政治家として、共産主義社会主義を攻撃し、社会主義国である中国に対しても「中国人はブラジルではなにも買わず、ブラジルそのものを買う」と批判していたボルソナーロだが、当選後は訪中した際に「中国は最大の貿易相手国だ。貿易や投資をさらに増やしたい」と述べ、BRICS*20首脳会議をブラジリアで主催した際は選挙中の発言を中国に謝罪し、現実的な路線に修正することとなった。

ブラジル “爆買い”中国へ熱視線 | 国際報道2019 [特集] | NHK BS1
 中国による農産物の“爆買い”で、ブラジル経済が潤っている。貿易摩擦の影響でアメリカからの農産物の輸入を制限している中国が、調達先をブラジルに切り替えているのだ。就任当初から(ボーガス注:反共右翼政治家として)中国批判を繰り返してきたボルソナロ大統領も、経済の立て直しを迫られ、中国からの投資を歓迎している。
 急速に進むブラジルの“中国シフト”を追った。
 ことし6月。中国の大手スマートフォンメーカー「シャオミ」が、ブラジル最大の経済都市サンパウロに1号店をオープン。店の前には、開店の1日前から長蛇の列ができた。中国製のスマートフォンは、アメリカなどのメーカーと同じような機能でも、値段は2割から3割程度安く、ブラジル人の人気が高い。
 インフラにも中国企業が進出している。
 去年までに大手タクシー会社3社を中国企業が買収し、タクシーアプリの運用を始めた。アプリは、いまブラジルで最も使われているタクシーアプリの一つで、都市部での利用者のシェアは、約3割に上ると見られている。
 ブラジルには、「メイド・イン・チャイナ」があふれているのだ。
 こうした中、今月(11月)、ブラジルの首都ブラジリアで開かれたBRICS首脳会議。ブラジルのボルソナロ大統領は満面の笑みで中国の習近平国家主席を迎えた。両国は、関税を免除し合う仕組みを作ることで一致。中国側が、ブラジルの大手石油会社に投資する約束も交わした。
ボルソナロ大統領
「習主席がブラジルを訪れて下さり、大変光栄だ。中国は最高のパートナーだ」
習近平*21国家主席
「ブラジルとの緊密な関係をより深めて、両国の利益と発展を進めていきたい」
 ブラジルにとってこの10年間、中国は最大の貿易相手国となっている。去年の輸出額に占める割合は、26.7%と、2位のアメリカの2倍以上に上っている。
◆米中貿易摩擦が“渡りに船”に
 ボルソナロ大統領は、就任前の去年、台湾を訪問した際、台湾を1つの国と認めるような発言をするなど、中国への警戒をあらわにしていた。
ボルソナロ大統領
「日本や韓国に続き、訪問先に選んだのが台湾だ。これは神様が導いてくれたものだ」
 さらに中国企業が、ブラジルの資源やインフラ関連の会社を買収していることを批判。国民に「中国は、ブラジルを買い占めようとしている」と訴えた。
 ところが、就任から3カ月。中国に対する姿勢が一変する。
 経済の立て直しに有効な手だてを打てずにいたボルソナロ政権に対し、賃上げを求める労働団体などがデモを繰り返し、批判が高まったのだ。そこに、貿易摩擦が激しくなるアメリカに代わり、農作物や資源を確保できる相手を探していた中国から、声をかけられた。ボルソナロ大統領にとって、まさに「渡りに船」だった。
 先月(10月)には、ボルソナロ大統領みずから中国を訪問。習主席と会談し、ブラジルとの取り引きの拡大を訴えた。経済成長に向けたお互いの思惑が一致したことで、両国間の取り引きが加速し始めたのだ。
◆“中国の爆買い”で経済潤う
 “中国の爆買い”によって、最も活性化しているのが農業だ。特に大豆は中国への輸出量が増え、いまや輸出全体の6割に上る。
 大豆農家のエミリオ・ケンジさん(60)。米中貿易摩擦の影響で、去年からことしにかけてブラジル産の大豆取り引きが拡大。そのおかげで、価格が約15%上昇したという。エミリオさんは、需要が今後も伸びると見て、1台3000万円の機械を2台購入。大豆の栽培面積をさらに増やす計画だ。
「中国人がよく買ってくれてとても助かっている。中国が安定的に大豆を買ってくれると、私たちも機械などを購入する投資ができる」(エミリオ・ケンジさん)。
 中国がブラジルから買い占めようとしているのは、大豆だけでない。これまでほとんど中国に輸出してこなかった主要産業のコーヒーも、来年から大規模に輸出することになった。背景には、中国でし好品としてコーヒーの人気が高まり、消費量がこの5年でほぼ2倍に増えていることがある。ことし8月には、ブラジルの6つの州の知事と、コーヒーメーカー30社の代表が北京を訪問。サンパウロ州は、中国に月500トン以上のコーヒーを輸出することで合意した。訪問団に参加したメーカーの一つは、ことしから月に100トンの輸出が決まった。いまや中国は、アメリカを抜いて売り上げの30%を占める最大のビジネス相手になっているという。
 「中国は有望な市場だ。今後もどんどん伸びていくだろう」(コーヒーメーカー社長)。
 中国には、アメリカとの貿易摩擦が続く中、「アメリカの裏庭」ともいわれる南米で一定の影響力を持ち続ける狙いがあると見られる。
 中国としては、南米の大国ブラジルとの経済的な結びつきが、アメリカに対する大きなけん制になるとして重視しているのである。ボルソナロ大統領も、ブラジル国内の景気が冷え込む中、中国が内政に干渉してこない限り、関係を強化し、投資を歓迎し続ける姿勢をとるとされている。

 当初、反中国的な態度をとりながら結局、一帯一路参加を表明したような安倍のようなもんです。「お前らそんなことなら最初から無茶苦茶な中国批判するなよ」といいたくなります。


■韓国の輸出主導型経済の変調(大津健登*22
(内容紹介)
 韓国経済は韓国国内の市場規模が小さい*23ために「輸出依存型*24」であり、そこにおいて主要な「外貨獲得産業」はサムスンなどの半導体、電気機器関係*25であるが、中国半導体・電子機器企業の急速な追い上げ*26により、韓国企業が厳しい状況に追い込まれており、経済が長期に停滞していることが指摘されています。
 ということで「韓国経済崩壊」などという嫌韓国ウヨの主張は「デマ」ではあるものの、韓国経済が長期停滞であることは事実です。
 また、「韓国は媚中国」などという嫌韓国ウヨの主張は「デマ」ではあるものの、こうした厳しい経済状況において、韓国が「重要な貿易相手国」「経済大国」中国との関係に配慮せざるを得ないことも事実です。これは何も文在寅政権に限らず、今後、政権が仮に自由韓国党になろうとも変わらないでしょう。「重要な貿易相手国」「経済大国」中国をいたずらに敵視するのはどの国でも一部の反中国極右ぐらいのものです。
 なお、ホワイト国除外、フッ化水素水の事実上の禁輸などは「影響ゼロは言えないが、韓国政府・企業側もそれなりの対応をしており、安倍政権が当初画策したほどのダメージはない」と大津氏は見ています。


■デジタルIT企業と国際課税ルール(合田寛*27
(内容紹介)
 新刊紹介:「前衛」1月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した■論点:「デジタル化」と多国籍企業課税(合田寛)と内容的には大分かぶります。

参考
IT企業 税逃れ防げ/宮本徹議員 政府に独自策求める/衆院財金委
主張/GAFA/規制と課税の新機軸が必要だ
GAFAへの課税ルール/日本が役割果たせ/大門氏/参院財政金融委
公正なルール実現を/井上氏 デジタル課税で指摘


■日本の植民地支配責任をどう果たすのか:1965年の日韓国交正常化を問い直す(吉澤文寿*28
(内容紹介)
 内容的には新刊紹介:「前衛」12月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した徴用工問題をめぐる問題点の整理と解決の展望について(川上詩朗*29)や新刊紹介:「前衛」1月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した■日韓請求権協定で「解決ずみ」なのか(太田修*30)と大筋では同じです。
 川上氏、太田氏同様に、徴用工問題についてはむしろ韓国側の主張にこそ道理があり、それを否定する安倍政権や日本マスコミこそが間違ってる、まずはWin-Winの合意を目指して、日韓間で対話することが必要とする吉沢氏です。
 なお、吉沢氏は月刊世界10月号の『日韓・日朝関係をどう解きほぐすか:国交正常化交渉の歴史的経過から』(吉澤文寿)も参照してほしいとしています。
参考
元徴用工問題 本質は人権侵害/日本の弁護士有志が声明
シリーズ 日韓関係を考える/徴用工問題 協議開始を/弁護士 川上詩朗さん
徴用工 大法院判決から1年/安倍政権の異常対応/植民地支配 無反省が障害に
生放送!とことん共産党/「徴用工」問題の核心を考える/小池氏「植民地支配の反省を」 川上氏「人権問題として解決」
日韓法律家「共同宣言」/徴用工 迅速に被害者救済を
政治考/徴用工判決と日韓請求権協定/“国際法の発展からの検討必要”


■香港の事態から見る「一国二制度」の現状と課題(小林拓也)
(内容紹介)
  筆者は赤旗外信部記者。香港デモについて、「中国&香港当局」、デモ隊側が対立を深めるのではなくお互い対話を行い一定の共通合意に達してほしい、そのためにはお互い妥協が必要ではないかとしています。
 また台湾の蔡英文政権が再選狙いで香港デモについて中国を激しく非難*31し、対立を深めていることについても「中国側の台湾への態度」について問題が無いとは言わないが、蔡の態度も問題として、これについても中台間の対話による一定の合意を期待しています。結局「お互い対立をエスカレートさせても」得るものは無いと思いますので小生も同感ですね。中国側を全面擁護する気は無いですが、一方で対立ばかりを深める蔡や台湾デモ側にも賛同しがたいですね。
 

アベノミクス通商政策の三つの性格(上)(関野秀明*32
■日米の貿易交渉を検証する(真嶋良孝*33
(内容紹介)
 内容的にはどちらも「日米FTAに対する批判」です。
 なお、関野氏の言う3つの性格とは
1)海外輸出大企業(例:トヨタ自動車)の利益を重視するが故に国内産業(例:農林水産業)の犠牲をためらわない「海外輸出依存性、大企業依存性」
2)米国には逆らえないとする対米従属性
3)1)や2)について詭弁でごまかそうとする欺瞞性
ですね。

参考
日米貿易協定 国内の農業に大打撃/井上氏「ご都合主義」批判/参院外防委
主張/日米協定承認可決/国民無視した強行を糾弾する


■AIと資本主義を考える:友寄英隆*34『AIと資本主義』を読んで(北村洋基*35
(内容紹介)
 副題から分かるように友寄氏の新著『AIと資本主義』(2019年、本の泉社)の書評です。
 小生は友寄本を読んでいませんし、また北村氏の批評をうまくまとめるだけの能力も残念ながら無いので詳細の紹介は省略します。


■『空想から科学へ』ドイツ語版序文を読んで(長久理嗣)
(内容紹介)
 『空想から科学へ』ドイツ語版序文*36について長久氏の解説ですがうまくまとめるだけの能力が残念ながら無いので詳細の紹介は省略します。
 なお、「ドイツ語版序文」というと「ドイツ語版じゃない序文があるのか?」と思う「マルクス・エンゲルス素人(小生も実はその一人ですが)」がいるでしょうが、実はその通りです。英語版があるそうで、それはドイツ語版とは微妙に違うそうです。

*1:2018年のこと

*2:著書『レヴィナス入門』(1999年、ちくま新書)、『西洋哲学史』(2006年、岩波新書)、『和辻哲郎』(2009年、岩波新書)、『再発見 日本の哲学・埴谷雄高:夢みるカント』(2015年、講談社学術文庫)、『レヴィナス』(2017年、岩波現代文庫)、『マルクス 資本論の哲学』(2018年、岩波新書)など

*3:著書『現代の資本主義』(1992年、講談社学術文庫)、『『資本論』を読む』(2006年、講談社学術文庫)、『日本経済はなぜ衰退したのか:再生への道を探る』(2013年、平凡社新書)、『経済学からなにを学ぶか』(2015年、平凡社新書)、『入門 資本主義経済』(2018年、平凡社新書)など

*4:著書『パックス・アメリカーナの形成:アメリカ「戦時経済システム」の分析』(1995年、東洋経済新報社)、『第二次大戦期アメリカ戦時経済の研究』(1998年、御茶の水書房)など

*5:メルケル内閣労働相、社民党党首など歴任

*6:「排外主義極右政党」とでも書くべきでしょう。

*7:ルクセンブルク財務相、首相を経て欧州委員会委員長

*8:確かに「そうした流れもある」のですが左派党には「シュレーダー政権(社民党主流派)の路線を右傾化と批判して離党した社民党左派の流れ」もあるし、さすがに左派党は「旧東ドイツ政権党の流れ」も含めて旧東ドイツ時代を美化などしていませんので極めて問題のある書き方です。「旧東独の政権与党」「旧東独の共産党」ではなく「旧東独の独裁政党」と書く辺り左派党への悪意や偏見すら感じます。そもそも「旧東ドイツが最大の支持基盤」「社民党メルケル政権与党に比べれば少数議席」とはいえ過去に対する反省なしでドイツ国会に左派党が議席を持てるわけもない。

*9:シュレーダー内閣官房長官メルケル内閣外相を経て大統領

*10:著書『トヨタ 世界一の光と影』(2007年、いそっぷ社)、『ルポ トヨタキヤノン“非正規切り”』(2009年、新日本出版社

*11:Toyota Production System(トヨタ生産方式)の略

*12:著書『改憲・護憲 何が問題か:徹底検証・憲法調査会』(2002年、技術と人間)、『護憲は改憲に勝つ:憲法改悪国民投票にいかに立ち向かうか』(2004年、技術と人間)、『自衛隊ではなく、9条を世界へ』(2008年、梨の木舎

*13:著書『現代アメリカの通商政策』(1999年、有斐閣)など

*14:著書『リオのビーチから経済学』(2006年、新日本出版社)、『進化する政治経済学:途上国経済研究ノート』(2013年、レイライン)など

*15:2016年に『レヴェナント:蘇えりし者』でアカデミー主演男優賞を受賞。環境保護活動に熱心なことでも知られ、2015年に、自身の名を冠した環境保護団体「レオナルド・ディカプリオ財団」から、世界中の環境保護団体に総額で1500万ドルを寄付することを発表した。

*16:オランド政権財務相を経て大統領

*17:1979~2018年。リオデジャネイロ市議。2018年3月14日、銃により暗殺された。ブラジル全国で数千人が街頭デモに参加し、アムネスティ・インターナショナルおよびヒューマン・ライツ・ウォッチフランコの死に対して非難する声明を発表した。

*18:鉱山エネルギー大臣、大統領首席補佐官、大統領を歴任

*19:これについては山崎論文も指摘しています。

*20:ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのこと

*21:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*22:著書『グローバリゼーション下の韓国資本主義』(2019年、大月書店)

*23:韓国の総人口は5000万程度です。

*24:まあ日本もトヨタなど大企業は「輸出依存」ですが。

*25:造船、鉄鋼、自動車などは「半導体、電気機器関係」に比べ国際競争力が弱いと指摘されています。

*26:この点は日本も他人事ではなく中国企業の追い上げなどにより経営危機に至ったシャープは台湾企業・鴻海精密工業の子会社になっています。

*27:著書『大増税時代:消費税率二ケタ化へのシナリオ』(2004年、大月書店)、『格差社会と大増税』(2011年、学習の友社)、『タックスヘイブンに迫る』(2014年、新日本出版社)、『これでわかるタックスヘイブン』(2016年、合同出版)、『パナマ文書とオフショア・タックスヘイブン』(2016年、日本機関紙出版センター)

*28:著書『新装新版・戦後日韓関係:国交正常化交渉をめぐって』(2015年、クレイン)、『日韓会談1965』(2015年、高文研)、『歴史認識から見た戦後日韓関係:「1965年体制〕の歴史学政治学的考察』(編著、2019年、社会評論社

*29:著書『徴用工裁判と日韓請求権協定:韓国大法院判決を読み解く』(共著、2019年、現代人文社)

*30:同志社大学教授。著書『[新装新版]日韓交渉:請求権問題の研究』(2015年、クレイン)

*31:当初、経済不況から国民党候補より低い支持率だった蔡だが、香港デモ問題をきっかけとした台湾内での反中国感情、台湾ナショナリズムの盛り上がりで、支持率が逆転している(勿論今後どうなるかはなんとも言えないが)。

*32:著書『現代の政治課題と「資本論」』(2013年、学習の友社)、『金融危機と恐慌』(2018年、新日本出版社

*33:著書『いまこそ、日本でも食糧主権の確立を!』(2008年、本の泉社)

*34:著書『「新自由主義」とは何か』(2006年、新日本出版社)、『「国際競争力」とは何か』(2011年、かもがわ出版)、『大震災後の日本経済、何をなすべきか』(2011年、学習の友社)、『「アベノミクス」の陥穽』(2013年、かもがわ出版)、『アベノミクスと日本資本主義』(2014年、新日本出版社)、『「一億総活躍社会」とはなにか』(2016年、かもがわ出版)、『「人口減少社会」とは何か:人口問題を考える12章』(2017年、学習の友社)など

*35:著書『情報資本主義論』(2003年、大月書店)

*36:取り上げられているのは序文のみで本文についての言及はありません。