「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2020年1/21日分:荒木和博の巻)

突破【調査会NEWS3170】(R02.1.21): 荒木和博BLOG

 先日、大学の授業で学生に提出させている質問の中に、「(拉致問題は)自分が物心ついたころから北朝鮮によるものというイメージが先行していたため、拉致被害者の家族や国民は当初拉致はないと思っていたことに驚いた」というのがあり、なるほど時間が経つというのはこういうことかと感じました。

 荒木の授業をとるような学生では「荒木と同類のウヨ」、あるいは「荒木へのこびへつらい」の可能性もありますが、まあ「小泉*1訪朝(2002年)以降に生まれた若者」「小泉訪朝時に既に生まれていたが、まだ幼稚園児」なんかだとそう言う人も居るかもしれません。
 小生(1970年代後半生まれ)とて「満州事変(1931年)は関東軍の犯行」「トンキン湾事件(1964年)は米国の捏造」「カンボジア虐殺(1976~1979年)は事実でポルポト*2の犯行」などといったことが「物心ついたときには既に常識」なので知識としては「満州事変は中国側の行為と当時の日本政府は宣伝し、それを信用した日本国民によって主戦論が煽られた」「トンキン湾事件当時は米国政府の発表を信じた米国民によって主戦論が煽られた」「カンボジア虐殺当時は情報が錯綜しており虐殺否定論もあった*3」とは知っていても実感はないですね。

 初代拉致議連の会長だった中山正暉*4衆議院議員も一度平壌を訪れて帰ってきたら「亡命者の証言は信用できない」とか言い始めました。

 中山氏の発言は荒木が誹謗するようなもの(拉致の全否定)ではなく「亡命者の発言は安易に信用できない*5」「がっちり証拠を固めた上でないと安易なことは言えない。間違いだったら北朝鮮の反撃を招いてかえって立場が悪くなる」というものであり当然の話です。
 当時においては拉致は「北朝鮮がやったかもしれない」という疑惑にすぎません。小泉訪朝で北朝鮮が拉致を認めるまでは決定的な証拠は何もない。
 「北朝鮮に買収された(あるいは丸め込まれた)」とでも荒木は印象操作したいのでしょうが、というよりは「訪朝して北朝鮮とやりとりしてる」内に「北朝鮮に拉致を認めさせて、拉致被害者を取り戻す」には今の状況では「難しい」ということに中山氏は気づいたのでしょう。
 「自分は少し問題を甘く考えていた。この程度の材料では北朝鮮に拉致を認めさせるには弱い(中山氏)」と。そして、巣くう会などウヨの反発を覚悟しながらも「自らの信じる良心に従った」のでしょう。
 ちなみにこうした発言がたたって(?)、巣くう会など中山氏を敵視するウヨ連中によって「後に中山氏を排除する形で別途、拉致議連が作られ」その拉致議連の会長になったのが極右・平沼赳夫*6です。「平沼を会長とした拉致議連」は当初から「打倒北朝鮮」が本音だったわけです。
 そして中山氏のような良識派(例:田中均*7蓮池透*8、和田春樹氏*9)をその後も「北朝鮮の手先か」と敵視し排除した結果が今の拉致敗戦です。全ては「巣くう会のいいなりに良識派を敵視し排除した家族会の自業自得」としか俺は思いません。家族会はもはや死ぬまで「田中氏、中山氏、和田氏」らに謝罪できないのはもちろん(?)、「昔の同志」蓮池氏とすら和解することは出来ないのでしょう。
 なお、中山氏は「石原慎太郎*10中川一郎*11藤尾正行*12らウヨ議員が1970年代に結成した自民党内右翼集団・青嵐会の元メンバーで台湾ロビー」「中曽根*13派所属の改憲派」であり左派でないのは勿論、河野洋平*14加藤紘一*15のような自民党リベラルとさえ言えません。そんな右寄りの中山氏ですら「亡命者の発言は安易に信用できない」「がっちり証拠を固めた上でないと安易なことは言えない。間違いだったら北朝鮮の反撃を招いてかえって立場が悪くなる」という程度の常識はあったわけです。
 改憲右派でも、その種の常識がない平沼赳夫などとは中山氏は偉い違いです。

 些細なことを極大化*16して「あの証言には矛盾がある」とか、あるいは「在日の帰国者が多数いるのに中1の女の子を拉致してどうするのか*17」とかまあ、今ふりかえると良くもあんなに言ってくれたものだと思います。今で言えば特定失踪者が国内で見つかると直ぐに鬼の首でも取ったように「だから(ボーガス注:特定失踪者は)全部根拠がない」とか言う人たち*18がそれにあたる*19

 全然違いますね。「特定失踪者が40人も国内で見つかった」「何故そのような間違いが起こったのか、荒木らにはまともに説明できない(認定がデタラメだから)」「今後そのような間違いが起こらないと確約することも出来ない」なんてのは些細な間違いでは全くありません。
 「明らかな間違い=特定失踪者の国内での発見」を「些細な間違い」と荒木が強弁することによって、蓮池透氏は荒木に疑念を抱き、荒木ら救う会批判を始めました。
 そしてそれに対し、荒木ら巣くう会が蓮池氏を敵視し、「家族会をそそのかして蓮池氏を家族会から除名させたこと」で多くの人間は巣くう会と家族会にあきれ果てたわけです。そして拉致は今や完全に風化した。
 拉致なぞより最近話題なのは政治問題ではむしろ「桜を見る会疑惑」や「ロシアの内閣総辞職」などのわけです。
 正直「特定失踪者デマ」が「蓮池氏の巣くう会への疑惑」を決定的にし、「蓮池氏の巣くう会批判→理不尽な家族会除名」を招き、その結果、拉致の風化を招いたと言っていいでしょう。
 内心では荒木もそのことは分かってるでしょう。内心では「特定失踪者デマのせいで、蓮池に批判されたのは痛かった」と思ってるでしょうが、今更「特定失踪者は間違いだった、蓮池氏に謝罪したい」といえないわけです。荒木ら巣くう会はどうでもいいとして家族会も良くもこんなデマに付き合って「蓮池透家族会除名」なんかできるもんです。
 つきあうことによって「モノホンの拉致」の解決が遅れるのだから全く馬鹿げています。

 元拉致問題担当大臣でも「拉致認定をするとそうでなかったときに北朝鮮から攻撃されるから認定しない方が良い」と言う人がいる

 正確には「よほど堅い証拠がない限り、北朝鮮から反撃されてかえって立場が悪くなるから、認定しない方がいい」ですね。もちろん堅い証拠があれば大いに認定すればよろしい。しかしそんな証拠はないわけです。
 したがってこの「元拉致担当相」の発言は全く正しい。
 しかしこの「元拉致担当相」とは誰なんですかね。
 名前を出さないと言うことは「河村建夫*20麻生内閣官房長官(拉致担当相兼務))」「加藤勝信*21(第三次安倍内閣一億総活躍等担当相、第四次安倍内閣厚労相(拉致担当相兼務))」のような「ある程度常識がある、極右でない自民党関係者」なので「自民党応援団」として荒木は都合が悪いので名前が出せないのか。はたまた逆に「民主党政権の大臣」だから名前も口にしたくないのか。ただし荒木だったら「民主党政権の大臣」なら口汚く罵倒しそうだからやはり「自民党大臣」ですかね。

 間違いなく言えるのはこの学生のように、若い世代*22にとっては北朝鮮が拉致しているのは当然のことという認識になっており、もはや朝鮮総聯も含めてそれを否定できないということです。

 「はあ?」ですね。それが何なのか?。
 だからといって「荒木らの与太」特定失踪者が正しいと言うことには全くならない。荒木らの「即時一括全員帰国がない限り経済制裁」などという方針が正しいことにも全くならない。
 そして北朝鮮が拉致を認めたのは「小泉訪朝の成果」であって荒木ら巣くう会の手柄ではありません。
 また「拉致自体を認めても」、北朝鮮が「帰国させた5人以外に生存してる拉致被害者はいない」といって、何ら打つ手がない状況でこんなことを言ったところで何の価値があるのか。
 「こうすれば拉致被害者を取り戻す事が出来ると思う」といえずに「拉致問題の解決」と言う意味では何の意味もないことを書いてどや顔してるのだから荒木の馬鹿さには心底呆れます。
 こんなことでは何年経とうが拉致の解決の見込み、展望は無いですね。俺は当事者(拉致被害者家族)でないし「田中均氏や蓮池透氏に対する家族会の無礼極まりない態度」にマジで怒ってるので正直、家族会がどうなろうと知ったことではないのですが。ええ、俺はそう言う冷たい人間です。家族会の連中については同胞意識などかけらも感じていません。軽蔑や憎悪といった負の感情しかありません。

 何人かでも未認定の拉致被害者*23を取り返せれば状況はまた大きく変わります。ともかくどんな手段を使っても壁を突破する、自分たちの使命はそれに尽きると思っています。

 「どう取り返すんだ、いってみろ」て話ですね。結局何ら中身のある話を荒木は出来ないわけです。

*1:宮沢内閣郵政相、橋本内閣厚生相を経て首相

*2:カンボジア首相、カンボジア共産党書記長

*3:この辺りについては本多勝一『検証・カンボジア大虐殺』(1989年、朝日文庫)を紹介しておきます。

*4:池田内閣厚生相(日本初の女性閣僚)を務めた中山マサ衆院議員の息子。海部内閣外相を務めた中山太郎衆院議員の弟。竹下内閣郵政相、村山内閣総務庁長官、小渕、森内閣建設相(国土庁長官兼務)など歴任

*5:実際、安明進は後に覚醒剤使用で摘発され「覚醒剤購入のカネほしさにあることないこと言ったこと」を告白しています。

*6:村山内閣運輸相、森内閣通産相小泉内閣経産相たちあがれ日本代表、維新の会代表代行、次世代の党党首など歴任

*7:著書『日本外交の挑戦』(2015年、角川新書)、『見えない戦争』(2019年、中公新書ラクレ)など

*8:著書『私が愛した東京電力福島第一原発の保守管理者として』(2011年、かもがわ出版)、『13歳からの拉致問題』(2013年、かもがわ出版)、『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(2015年、講談社)、『拉致と日本人』(共著、2017年、岩波書店)、『告発:日本で原発を再稼働してはいけない三つの理由』(2018年、ビジネス社)など

*9:東京大学名誉教授。著書『歴史としての社会主義』(1992年、岩波新書)、『金日成満州抗日戦争』(1992年、平凡社)、『歴史としての野坂参三』(1996年、平凡社)、『北朝鮮:遊撃隊国家の現在』(1998年、岩波書店)、『朝鮮戦争全史』(2002年、岩波書店)、『朝鮮有事を望むのか:不審船・拉致疑惑・有事立法を考える』(2002年、彩流社)、『同時代批評(2002年9月〜2005年1月):日朝関係と拉致問題』(2005年、彩流社)、『テロルと改革:アレクサンドル二世暗殺前後』(2005年、山川出版社)、『ある戦後精神の形成:1938〜1965』(2006年、岩波書店)、『日露戦争 起源と開戦(上)(下)』(2010年、岩波書店)、『これだけは知っておきたい日本と朝鮮の一〇〇年史』(2010年、平凡社新書)、『北朝鮮現代史』(2012年、岩波新書)、『領土問題をどう解決するか』(2012年、平凡社新書)、『「平和国家」の誕生:戦後日本の原点と変容』(2015年、岩波書店)、『慰安婦問題の解決のために』(2015年、平凡社新書)、『アジア女性基金慰安婦問題:回想と検証』(2016年、明石書店)、『米朝戦争をふせぐ:平和国家日本の責任』(2017年、 青灯社)、『レーニン:二十世紀共産主義運動の父』(2017年、山川出版社世界史リブレット人)、『ロシア革命』、『スターリン批判・1953〜56年:一人の独裁者の死が、いかに20世紀世界を揺り動かしたか』(以上、2018年、作品社)、『安倍首相は拉致問題を解決できない』(2018年、青灯社)、『韓国併合110年後の真実:条約による併合という欺瞞』(2019年、岩波ブックレット)など

*10:福田内閣環境庁長官、竹下内閣運輸相、都知事、維新の会共同代表、次世代の党最高顧問など歴任

*11:福田内閣農水相、鈴木内閣科学技術庁長官など歴任

*12:鈴木内閣労働相、自民党政調会長(中曽根総裁時代)、中曽根内閣文相など歴任

*13:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相

*14:中曽根内閣科学技術庁長官、宮沢内閣官房長官自民党総裁、村山、小渕、森内閣外相、衆院議長など歴任

*15:中曽根内閣防衛庁長官、宮沢内閣官房長官自民党政調会長(河野総裁時代)、幹事長(橋本総裁時代)など歴任

*16:それはむしろ慰安婦問題で「高齢となった慰安婦の些細な記憶間違い」に因縁をつけて慰安婦の違法性を否定しようとする荒木らゲス右翼の方でしょう。

*17:これは誰しも感じる常識的な疑問でしょう。そもそも「めぐみさん拉致についての唯一の証拠」といっていい安明進の証言は「安が拉致した」というものではなく、「同僚の工作員から聞いた」という伝聞証言です。ご存じの方も居るでしょうが刑事裁判では「原則として伝聞証言は使えない、法廷証言だけが証拠として使える(例外的場合のみ伝聞証言が使える)」し民事裁判でも伝聞証言は「使える」ものの、その証拠価値は通常、法廷証言より低く評価されます。なぜなら1)伝聞証言については法廷証言と違い、そもそもそのような証言者はいないという「証言者の捏造」の危険性すらあるから、2)伝聞証言にはいわゆる伝言ゲーム(聞き手の誤解)による証言内容の変化の危険性があるから、3)(刑事弁護の場合)法廷証言と違い、伝聞証言は弁護側が『直接の証言者』に反対尋問が出来ず弁護側の防衛権を侵害する恐れがあるから、です。安の証言について信頼性が疑われるのはむしろ当然の話です。

*18:和田春樹氏にせよ蓮池透氏にせよまともな人間は特定失踪者なんて与太は相手にしていません。もちろん彼らは北朝鮮シンパではない。

*19:それ以前に特定失踪者という代物を知らない人間も多いでしょう。あまりにも馬鹿馬鹿しくてまともに報じる気になれない代物ですからね。実際、産経ですらたまにしか報じません。

*20:小泉内閣文科相麻生内閣官房長官自民党選対委員長(第二次安倍総裁時代)など歴任

*21:第二次安倍内閣官房副長官、第三次安倍内閣一億総活躍等担当相、第四次安倍内閣厚労相自民党総務会長(第二次安倍総裁時代)など歴任

*22:別に若くなくても「小泉訪朝以降」は「拉致は北朝鮮自身が認めたこと」なのだから「北朝鮮が拉致をした」というのは常識となっています。いずれにせよそんなことは荒木の与太「特定失踪者デマ」が正しいことを全く意味しません。

*23:特定失踪者デマが「国内の発見者」のせいでごまかせなくなってることがよほどつらいようです。そもそも「認定拉致被害者」であっても取り返せば状況は変わるのに何で「未認定」云々というのか。取り返す可能性が高いのは誰が考えても「認定拉致被害者」でしょう。かつ仮に未認定の拉致被害者がいたとしても(居るか居ないか勿論知りませんが)「未認定の拉致被害者が帰ってくれば俺たち巣くう会の特定失踪者のデマがごまかせる」などと馬鹿なことを荒木が公言すれば「荒木という敵」に塩を送るようなまね(未認定の拉致被害者帰国)を北朝鮮がするわけもない。普通の人間なら「とにかく拉致被害者に誰でもいいから帰ってきてほしい」と書くでしょうにねえ。