今日の中国ニュース(2020年1月21日分)

海峡両岸論 第110号 2020.1.20発行 - 蔡再選、「他力本願」では喜べない 「反浸透法」、両岸関係緊張へ - | ちきゅう座

 統一地方選挙では「韓流旋風」を起こした韓国瑜*1だが、馬英九*2前総統や王金平・元立法院長ら、国民党エスタブリッシュメントとの関係調整に失敗。国民党予備選で指名を争った鴻海の郭台銘や、「第3勢力」を代表する柯文哲・台北市長からの支持取り付けにも成功せず、国民党内に亀裂が入った。「そもそも総統の器ではない」という見方は以前からあったことを付け加える。

 つまりは「蔡サイドがとにもかくにも党をまとめたのに対し、韓はそれに失敗した」という面が大きいようです。

 蔡は12日午後、安倍*3首相の実弟岸信夫*4衆院議員や山口県議らを公邸に招き「日本との関係をより緊密にし、共に地域の平和と安定を維持していけることを期待する」と述べた。

 当然ながら「安倍の実弟」や「安倍の選挙区・山口県の議員」が訪台したあげく、蔡とあえば「岸信夫らは安倍の名代か」「蔡は安倍の力を借りて我が中国に敵対するのか、現状を大幅に変更する気か」「我が国を馬鹿にするな」と中国側が反発するのも当然です。
 とはいえそれでも安倍は「今年春(4月頃?)に習*5主席を国賓として招く予定」ですが。「安倍批判派にとって幸いなことに安倍が早晩、退陣(習主席が訪日予定の4月まで在職しない)」の場合でも、ポスト安倍(枝野*6立民党代表でアレ、石破*7自民党幹事長でアレ、誰でアレ)は今更「安倍政権の決定は間違いだったから改める」として「国賓訪問」を撤回しないでしょう。訪問撤回がないのは勿論「訪問するが国賓扱いしない」もない。そんなことをしたら日中関係が確実に悪化しますので。

・同法制定の理由は、「域外敵対勢力」が台湾に密かに浸透・介入することを防ぎ、国家の安全と社会の安定を確保、中華民国の主権と自由民主の憲政秩序を維持するため、とされる。中国を「域外敵対勢力」として名指ししているわけではない。しかし定義を読むと「我が国と交戦している、もしくは武力で対峙している国、政治実体、団体。あるいは非平和的手段で我が国の主権に危害を加える国、政治実体、団体」と規定されている。中国以外の国は考えられない。
 「浸透ソース」として同法は、「域外敵対勢力の政府、政党の組織、団体などが設立した、ないしは事実上掌握している組織、機構、団体及びそこから派遣される人物」と定義する。拡大解釈すれば、中国資本が入ったメディアも対象になる。
・拡大解釈すれば、大陸との統一を主張する野党(ボーガス注:国民党の)政治家やメディア報道も、摘発の対象になる恐れがある。
・無理筋な法律を成立させた理由について、台湾では「中国に対する恐怖感を煽って、選挙利用するのが目的」という受け止め方が多い。しかし、中台関係が専門の趙春山・台湾淡江大名誉教授(注3)は、「選挙のためと言うなら、圧勝したのだからその理由は消えたはず。もし蔡政権が強力にこの法律を推し進めれば、台湾社会に大きな分裂と傷をもたらし、中台交流にも悪影響が及ぶ」と述べ、蔡政権に慎重な対応を求めた。

 蔡勝利を「民主主義の勝利」として絶賛する連中(例:澤藤統一郎*8)に比べればバランスのとれた記事です。
 「反浸透」が何を意味するのか曖昧で拡大解釈の結果、メディア、企業の言論活動や商業活動の萎縮をもたらしかねない法を成立させた蔡を澤藤もよくもまあ手放しで褒められたもんです。安倍が同じ事(定義が曖昧な法律の制定)をやったら批判するのが澤藤ではないのか?
 澤藤が無知なのか、「反中国で頭が狂ってる」のか知りませんが全く困ったもんです。こんな輩がリベラルを自称するなど悪い冗談です。澤藤の馬鹿さにはただただ呆れます。 

 反浸透法が実際に適用されれば、中国は躊躇なく「倍返し」どころか、大報復に出るだろう。国務院台湾事務弁公室スポークスマンも15日の記者会見(注4(写真))で、蔡が法律に署名、発効したのを受け「正真正銘の悪法」と非難した。

 「中国企業の行動に反浸透法を適用して嫌がらせ」という可能性が否定できないですからね。当然中国は反発するし、悪法との批判も当然でしょう。
 ただし蔡が本当にそんな「嫌がらせをやれば」岡田氏も指摘するように中国も黙っては居ないでしょう。
 「やられたらやり返す、倍返しだ(半沢直樹)」ということで「中国版反浸透法(すでにあるのか、これからつくるのかはともかく)」で台湾企業に報復することがすぐに考えられます。

 一方、中国のSNSでは、蔡圧勝に「もう平和統一の可能性は失われた。武力統一を」という強硬論の書き込みが急増した。

 もちろんこれを「武力統一の危機が高まった」と見るのは馬鹿げています。中国版ネトウヨのフカシとみるべきでしょう。
 中国政府も「無理に押さえ込むより放置した方がガス抜きになる」と思って放ってるだけでしょう。

 中国政府は18年2月、台湾人の大陸での学習、起業、就業、生活に対し大陸中国人と同等に処遇する「31項目の台湾優遇政策」を発表。総統選挙前の11月4日には、次世代通信規格「5G」など先端技術の研究開発で、台湾人に内国民待遇を与える「26項目の優遇政策」も発表した。

 つまりは「蔡英文がそれなりの対応をすればあめ玉をやるがふざけた態度をとればムチでぶったたく」と言う話です。
 ただしそのムチは「経済的締め付けや断交ドミノ」といった「非軍事的手法」でしょう。国際的非難をあびる軍事攻撃などやるわけもない。

 台湾の対中輸出依存度は依然として4割に上り、台湾の経済的生存にとって大陸市場は不可欠である。
 台湾の経済命脈を握る中国は、蔡政権への圧力は決して緩めない。中台関係の一層の悪化が経済に波及すれば、蔡政権のレームダック化は予想以上に早く訪れるだろう。

 その可能性は十分あるでしょうね。どこの国でも経済失政をやらかした政権は通常、崩壊しますので。蔡英文の勝利に浮かれてる「反中国」澤藤は脳天気すぎでしょう。

*1:高雄市

*2:連戦内閣法相、台北市長、総統など歴任

*3:自民党幹事長(小泉総裁時代)、(小泉内閣官房長官を経て首相

*4:第二次安倍内閣で外務副大臣

*5:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*6:鳩山内閣行政刷新担当相、菅内閣官房長官、野田内閣経産相民主党幹事長(海江田、岡田代表時代)、民進党代表代行(前原代表時代)を経て立憲民主党代表

*7:小泉内閣防衛庁長官福田内閣防衛相、麻生内閣農水相自民党政調会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)、第三次安倍内閣地方創生担当相など歴任

*8:著書『「日の丸・君が代」を強制してはならない:都教委通達違憲判決の意義』(2006年、岩波ブックレット