今日の産経ニュースほか(2020年2月3日分)

【正論】ゴーン事件にみる法の誇りと劣化 早稲田大学名誉教授・上村達男 - 産経ニュース

 日産自動車前会長、ゴーン被告の逃亡先での発言は、脱走犯の見苦しい自己弁護にすぎない。

 こうしたゴーン批判は他にも

澤藤統一郎の憲法日記 » ゴーン逃亡正当化の口実と、香港市民の逃亡犯条例反対の理由。両者は相似たるか、似て非なるか。
 ゴーンによる日本の刑事司法の欠陥の具体的な指摘は歓迎する。しかし、刑事司法の制度と運用に不満だからという理由での国外逃亡を容認することはできないし、してはならない。

などがあり俺も同感です。ゴーンのような卑劣漢には怒りを禁じ得ません。
 とはいえ、澤藤統一郎の憲法日記 » ゴーン逃亡正当化の口実と、香港市民の逃亡犯条例反対の理由。両者は相似たるか、似て非なるか。も指摘するように「ゴーンの卑劣さ」とは関係なく、日本に人質司法という問題があることは事実であり、ゴーン逮捕以前から学者や日弁連などから指摘されてきたことです。しかし、産経文化人である上村氏*1は「人質司法問題」は勿論完全に無視します。
 そもそも法学者とはいえ刑法学者でも刑訴法学者でもない「商法学者」の上村氏に「商法の特別背任(ゴーンの起訴容疑)」について話を聞くならともかく「人質司法問題」についてコメントさせること自体が産経はおかしいし、それに応じる上村氏もおかしな御仁です。まあ所詮、産経文化人ですからね。


長州「正論」懇話会 阿比留編集委員「衆院解散は決断次第でいつでも」 - 産経ニュース
 新型コロナウイルス問題に一段落つくまでは「本心がどうであれ」安倍自民も野党側も「解散がどうこう」など「新型ウイルスをなめてるのか!」「そんなことはウイルス問題に片がついてから言え!」「党利党略の解散などするな!」と批判されるのが怖くてとても言えるものではないでしょう。
 何せ、コロナ対応が最優先として「当面は質問通告が事前にない場合は厚労相の国会出席は不要*2」と与野党が合意したほどですし。
 しかし、「今すぐ解散してもいい」とはいつもながら阿比留も産経も非常識です。
 この結果「コロナウイルスガー(あげく『緊急事態条項ガー』)」の産経が、日本では未だ死者が出ていないからか、中国が海外渡航を原則禁止にしたからか、本心では「コロナなど怖くない(だから今すぐ解散しても何ら問題ない)」となめてることがモロバレになるわけです。まさに語るに落ちています。


他の衆院議員の立件見送り | 共同通信
 検事長の定年を強引に延長したのもこういう話(特捜部に検事長が圧力をかけて捜査を潰した見返りに定年延長)なんでしょうか。もはや今後、安倍が退陣しても、野党に政権交代しても「警察や検察に政界の犯罪捜査ができるのか?」「警察や検察の失われた信頼が取り戻せるのか?」というまずい状況になっていると言っていいのではないか?。いずれにせよマスコミや野党の追及を期待したいところです。


【主張】死刑判決の破棄 裁判員に無力感を与える - 産経ニュース
 何も裁判員が「無力感を感じるであろう話」は「有罪→無罪」「死刑判決→無期」に限らず「無罪→有罪」「無期→死刑」でも話は同じでしょう(ただし厳罰論・産経や検察が騒ぎ立てるのは前者のみであり、そこからして、彼らはデタラメの極みです)。
 いやそれどころか裁判員ではなく「職業裁判官」だって自分のした上級審で判決が取り消されれば無力感を感じるでしょう。
 「自分のした行為」が否定されれば誰でも「無力感は感じます」。
 俺だって「生徒や部下としての行為」が「教師や上司に否定されれば」無力感は感じます。
 しかし「裁判員判決を取り消したことが間違ってる」というならともかく、「裁判員のやる気がなくなる」というのは馬鹿げてるとしか言い様がありません。繰り返しますが、そもそも上級審で取り消されれば無力感を感じるのは職業裁判官だって同じ話です。
 仮に「裁判員のやる気云々」と言う話をするにしても
1)高裁が地裁判決を取り消したことについて、裁判員が納得するような理由を判決にきちんと記載する
2)そもそも裁判員判決が取り消されることがないよう、地裁判事がきちんと「素人である」裁判員をリードする
などの話をすべきであって「裁判員判決を取り消すな」というのは「生徒や部下のやる気がなくなるから教師や上司は生徒や部下を叱るな、何があってもダメ出しせずに全て自由にやらせろ」というくらい無茶苦茶です。
 「やる気を阻害しない」ような「叱り方への注意は必要」でしょうが、「どんなトラブルが起ころうが部下や生徒を放任する。絶対に叱らない」なんてことはできるわけもない。
 裁判員判決にしても話は同じです。
 こんなことを産経が言うようならもはや「裁判員制度はやめた方がいい」のではないか。当初、期待された「国民による司法(裁判所、検察、警察)の監視(冤罪などの防止)」どころか「ただの感情論の炸裂」では害悪が大きいだけです。

*1:著書『会社法改革』(2002年、岩波書店)、『企業法制の現状と課題』(2009年、日本評論社)など

*2:もちろん「出なくてもいい」と言う話にすぎず「国会に出ても対応できるのなら、出るべき」ですが。