今日の産経ニュース(2020年2月4日分)

和歌山・紀の川の小5殺害5年 遺品戻る、父親「都史君が帰ってきた」(1/2ページ) - 産経ニュース

 和歌山県紀の川市で平成27年、市立名手小5年、森田都史(とし)君=当時(11)=が刺殺された事件は、5日で5年。昨年7月には、殺人罪などに問われた中村桜洲(おうしゅう)受刑者(27)に懲役16年を言い渡した2審大阪高裁判決が確定し、遺品の服が検察から父親(71)に返却された。
 父親は「都史君が帰ってきたような感じ」と語る一方、「判決が確定し、事件が世間から忘れ去られるのでは」と風化も懸念する複雑な心境を明かした。

 失礼ながら大抵の刑事事件は時が経てば風化します。
 小生の住む埼玉ですと

狭山事件(1963年発生、冤罪として再審請求が行われている)
・富士見産婦人科病院事件(1980年発生。マスコミの疑惑追及報道の中、病院院長が鈴木内閣の齋藤邦吉*1厚生相に政治献金をしていた事が発覚し、齋藤は大臣を引責辞任。)
宮崎勤事件(東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件)(1988~1989年発生、4名殺害、2008年に死刑執行)
・埼玉愛犬家連続殺人事件(1993年発生、4名殺害、死刑判決が確定)
・本庄保険金殺人事件(1995~1999年発生、2名殺害、死刑判決が確定。容疑者は疑惑発覚から逮捕までの約8ヶ月間、自分の経営する飲食店を会場に記者1人に対して3000~6000円の入店料を徴収する有料の記者会見を203回実施。およそ1000万円稼ぐという前代未聞の行動をした事で話題になった)
・桶川ストーカー殺人事件(1999年発生、ストーカー問題が注目される一つのきっかけとなった)
・熊谷連続殺人事件(2015年発生、6名殺害、無期判決が確定)

などが過去に騒がれた事件でしょうが、多くは風化したと言っていいでしょう(ウィキペディア「日本の刑事事件の一覧」参照)。
 日本全国は勿論、今や埼玉に置いてすら大して話題になどなりません。

 昨年末、犯罪被害給付制度に基づき、遺族給付金の一部に当たる160万円が国から支給された。父親は「葬式代程度だ」と肩を落とす。約7100万円の損害賠償を求めた訴訟で、和歌山地裁が平成30年8月、中村受刑者に約4400万円の支払いを命じたが、現在も支払われていない。

 こうしたカネの問題をまるで騒がず「死刑」云々ばかりが被害者支援であるかのような一部の厳罰論者には正直不快感を禁じ得ません。

 刑事裁判の控訴審判決前に「納得のいく判決が出たら納骨する」と語っていたが、遺骨を入れた骨つぼは今も祭壇に置かれたまま。
 「都史君になんて報告すればいいのか」。
 「悔しい思いをするのは自分だけでたくさん。少しでも被害者の思いが判決に反映されるよう、社会に訴えていきたい」

 要するに死刑ではなく懲役16年にとどまったことが不快なようですが、これはどうしようもないことです。
 日本は「殺人をしたら被告人は例外なく死刑」という法制度じゃないですから。


長州「正論」懇話会詳報 阿比留瑠比・本紙編集委員「自衛隊明記で日本国の意思を」(1/3ページ) - 産経ニュース

 (ボーガス注:安倍政権が今抱える主な政治的課題は)デフレ完全脱却と北方領土問題、拉致問題の解決、そして憲法改正*2。ただ、世界経済の先行きは不透明で、ロシアはプーチン*3大統領が(ボーガス注:次期大統領選挙不出馬表明とともに、大統領退任後の政治力維持を狙ったとされる)憲法改正を打ち出し、(ボーガス注:ロシア政治の今後の動向によっては北方領土問題が)どうなるか分からない。北朝鮮も、いずれ折れてくるとは思うが、いつかはわからない。4つの中で、国内で完結できるのは憲法改正だけだ。だから、今やるべきは、憲法改正だ。

 「阿比留って本当に政治センスねえな」と心底呆れます(まあ、小生のような護憲派にとって幸いなことに「阿比留ら改憲派に政治センスがない」からこそ改憲が進まないという面もあるのですが)。
 堂々と「改憲が最優先だ、拉致とか不況脱却とか北方領土とか、どうでもいい*4」といって国民の反発を買わないと思える神経が理解できません。
 大体「改憲による近隣諸国の反発」を考えれば改憲とて「国内で完結してる話」ではありません。

 肺炎を引き起こす新型コロナウイルスが流行し、猛威を振るっている。そんな中、「首相の対応は後手に回っている」という批判がある。しかし、首相は前例のない対応をしている。それでも手ぬるく見えるのはなぜか。非常時の規定がない憲法の問題だ。

 「阿比留って本当に政治センスねえな」と心底呆れます。
 どこの世界に今、コロナウイルスを理由に緊急事態条項(戒厳令)を発動してる国があるのか。そして今から改憲したところで「コロナウイルス対策」には全く間に合いません。
 大体「本丸・九条改憲」だけですら楽ではないのに「戦場(改憲テーマ)を他(緊急事態条項)にも広げる」とは全く愚劣です。
 「後手に回ってる」批判にしても、多くの批判は「批判が正しいかどうか」はともかく「現状の法体制でも出来ることが沢山あるのに全然していない」という批判であって「法制度改正」なんて話ではない。ましてや「改憲による緊急事態条項導入」なんて話ではない。
 こうした阿比留のような物言い「改憲による緊急事態条項導入論」には、左派である社民、共産どころか、保守派である「立民・枝野*5」「国民民主・玉木*6」などからも「コロナウイルス対策に改憲など必要ない」「火事場泥棒だ」と批判が出る有様です。

 安倍首相が掲げる憲法への自衛隊明記で何が変化するのか、という人もいる。では、平成11年の国旗国歌法ではどうだったか。あの時も、当たり前だから法律を作らなくてもいいという声があった。しかし、成立した結果、本当にひどかった国旗・国歌反対運動*7がどんどん下火になった*8
 現在も自衛隊を差別するようなふるまい*9は続いている。しかし、憲法に明記すればそれはできなくなる。

 安倍は改憲を批判する世論を恐れて「憲法九条に自衛隊を書き込んでも現状維持で変わらない」といい、共産党など護憲派は「現状維持にすぎないなら改憲する必要はない。首相は嘘つきだ」と批判する。
 この状況下で「憲法自衛隊を書き込めば状況が大きく変わります」と阿比留が言い出すのは阿比留の主観が何であれ、事実上「安倍は嘘つきだ」「共産党などの安倍批判は正しい」といってるのに等しいわけです。安倍からすれば「阿比留は黙ってろ」というところでしょう。


WHO事務局長、渡航制限「必要ない」 新型肺炎でまた中国寄り発言 - 産経ニュース
 反中国・産経らしいですが「世界各国(勿論日本を含む)の観光業に与える悪影響」を考えれば「渡航制限しなくても予防できる」のならそれに越したことはありません。そして渡航制限をすることで「WHOが経済不況に拍車をかけた」と非難されることはWHOも避けたいでしょう。
 この事務局長発言だけでは産経のように「渡航制限が必要なのに、中国に不当な忖度をしている」と決めつけることなど出来ません。
 事務局長発言を批判するには「渡航制限が必要なこと」を証明する必要があります*10
 しかし、勿論産経はそんなことはしません。そもそも産経には「証明する能力がない」のではないか。

【参考:新型コロナウイルスと観光】

北海道の観光損失426億円、中国客半減で 道銀総研推計 :日本経済新聞
 道銀地域総合研究所は4日、新型コロナウイルスによる肺炎の影響で3月まで中国からの訪日客が減少した場合、北海道内の宿泊観光消費の損失額は最大426億円に上るとの推計を発表した。中国人観光客は同19万人減少する。中国政府による同国からの海外団体旅行の禁止が長引けば、北海道経済に大きな影響が生じる見込みだ。

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3896316.html
 新型コロナウイルスの感染拡大で、中国人観光客が減少し、観光大国・フランスにも暗い影を落としています。
 年間およそ8600万人と世界一の外国人観光客を誇るフランス、アジアの国では最多となる220万人の中国人が訪れています。しかし、凱旋門などの観光地でその姿を見かけることが少なくなり、いつもは行列ができるシャンゼリゼ通りの高級ブランドショップで客足が落ち込んでいます。先月30日にエールフランスがすべての中国便の運航を停止するなどした影響が色濃く出た形です。
 「お客さんの半分以上が中国人というこちらのお店、大打撃を受けています」(記者)
 この免税店では先週初めごろからパタリと中国人ツアー客が途絶えたといいます。パリに来る中国人1人あたりの平均支出額は1024ユーロと他の国を大きく引き離していて、店は売り上げの柱を失った状態です。
 「中国人が一番買ってくれるので本当に困っています。(新型コロナウイルスの騒動が)早く終わらないと店が生き残れない」(免税店「パリ ルック」 マネージャー)
 また、中国人ツアー客を主に受け入れているホテルなどではキャンセルにより3割の減収になると予測されていて、フランスの観光収入を直撃しています。


【主張】次世代加速器 未来見据えて政治決断を - 産経ニュース

・次世代加速器国際リニアコライダー(ILC)」について、日本学術会議は優先度の高い「重点大型研究計画」への選定を見送った。
・中国はILCとは別に次世代加速器を建設する計画を進めている。ILC誘致を見送れば、日本は相応の分担金を支払って中国の加速器実験に参加することになるだろう。落差は大きい。
 ILC誘致は、日本の安全保障にとっても重要な意味を持つと、認識しなければならない。
 日本学術会議は平成13年と18年にもILC誘致に慎重、消極的な見解を示してきた。10年間で4千億~5千億円と見込まれるホスト国負担が他の研究分野を圧迫することへの懸念から、内向きの議論に終始した。

 いい加減「中国に負けていいのか」つう感情論はやめてほしい。
 しかも以前も別記事で書きましたが「科学予算の総額では日本が中国に負けていること(その結果、中国の大学や研究機関に就職する若手日本人研究者まで登場)」については無視。
 「科学予算総額の増額要求」を「予算が厳しいから無理(ただし安倍の軍拡は容認)」の一言で片付けるのが産経だから「そんなんで科学技術分野で中国に勝てるのかよ!」「加速器だけ勝てればいいのか!」て話です。
 そりゃILCとやらに関係ない研究者からすれば「科学予算全体が増えないのならILC以外は冷遇されるってことやん。そこまでILCが大事なのかよ!」という怒りを禁じ得ないでしょう。まあ俺も科学素人とは言え「ILCがそこまで大事とは思えません」が。
 ちなみに以前弘兼が「島耕作(シマコー)」でこの誘致計画を絶賛してましたね。

参考
【中国と加速器

東京新聞:中国、世界最大の加速器 22年着工へ 先端物理でも主導権狙い:国際(TOKYO Web)
 世界最大の加速器の建設が中国で計画され、早ければ二〇二二年の着工を目指していることが分かった。計画を主導する中国科学院高能物理研究所の王貽芳(おういほう)所長が本紙の取材に応じ、「二〇三〇年ごろの完成が目標だ」と明らかにした。日本でも次世代型の大型加速器の建設が検討されているが資金面で難航しており、先端物理学研究の分野で中国に先を越される可能性が出てきた。 
 米中ハイテク戦争で中国の科学技術への注目が高まる中、先端物理学の分野でも中国が世界の主導権をとろうとする勢いだ。
 次世代加速器としては、宮城・岩手県境に建設が検討されている加速器国際リニアコライダー(ILC)」が先行していた。だが総額八千億円ともいわれる建設費がネックとなり計画は足踏み状態だ。

【シマコーとILC】

『会長 島耕作』がILC日本誘致を応援 - 高橋真理子|論座 - 朝日新聞社の言論サイト
 『会長 島耕作』の国際リニアコライダー(ILC)編が「モーニング」(ボーガス注:2019年)1月24日発売号から始まった。東北・北上山地の地下に全長20キロの直線型加速器をつくるというILC計画*11は、日本学術会議が「(ボーガス注:『かかるコストに、メリットが見合わない』『他の科学予算が大幅削減される恐れがある』などとして)日本誘致を支持するには至らない」との意見書を昨年12月19日に文部科学省に手渡したあと、日本政府が「誘致に対する関心」を表明して他国と協議を始めるかどうかが焦点になっている。表明の期限は3月7日*12とされる。それが迫る時期に連載を始めた作者、弘兼憲史さんに思いを聞いた。
◆高橋記者
 どうしてILCを取り上げようと思ったのですか?
◆弘兼
 以前から知り合いだった三菱重工の西岡(喬)さんに去年の春ごろかな、一緒に飯を食おうと誘われたんです。三菱重工の元会長で、今は特別顧問をされている。西岡さんから『ちょっとお願いがある』と言われた。そのとき、2008年ごろから国際リニアコライダーの誘致をやっているんだけど、ほとんどだれにも知られていないと聞きました。それで、島耕作で描きますと約束したんです。

 弘兼的には「三菱重工元会長とのつきあい」は「鼻高々」なんでしょう。実に「鼻持ちならない俗物」だと思います。

*1:労働事務次官から政界入り。田中、鈴木内閣厚生相、中曽根内閣行政管理庁長官など歴任

*2:安倍が「少子化克服は安倍政権にとって最重要課題の一つ」と最近、演説したことは阿比留にとってはどうでもいいようです。まあ、少子化を持ち出すと「国内で完結するのは改憲だけだ」つう話の展開に持って行けなくなりますからね。「少子化問題の解決の方に力を入れた方がいいんじゃねえの?。改憲と違って「各論(具体的対応)はともかく」総論(少子化克服)では野党も反対してないし」つう反論を招いてしまう。

*3:エリツィン政権大統領府第一副長官、連邦保安庁長官、第一副首相、首相を経て大統領

*4:阿比留や産経は興味がないのでしょうがそれだけでなく「安倍の今の総裁任期中には北方領土問題も拉致も解決しない」と見ているのでしょう。にもかかわらず未だに安倍にしがみつく拉致被害者家族会も呆れたバカです。

*5:鳩山内閣行政刷新担当相、菅内閣官房長官、野田内閣経産相民主党幹事長(岡田、海江田代表時代)、民進党代表代行(前原代表時代)を経て立憲民主党代表

*6:民主党政調副会長、民進党幹事長代理、希望の党代表などを経て国民民主党代表

*7:反対されてるのは多くの場合「卒業式などでの日の丸、君が代の強制」であって必ずしも「新国歌、新国旗をつくろう」という運動ではないので「国旗・国歌反対運動」という表現は明らかに不適切です。

*8:国旗国歌法」を口実に文科省や教委などが締め付けを強めたことは事実ですが、もちろん「国旗国歌法成立で下火になった」というほど話は単純ではありません。

*9:阿比留や産経の場合、もちろん「自衛隊批判は皆差別」だから話になりません。

*10:中国シンパと誤解されたくないのでお断りしておきますが、渡航制限が必要なら俺は勿論それに反対しません。その辺の素人ではない「WTOという国際的な医療専門組織」が「渡航制限の必要はない」というなら批判する場合もそれなりの理論武装がいるという話です。これはWHOが逆に「渡航制限が必要だ」といった場合も同じです。基本的に俺は「よほどの疑う理由がない限り」、WHOなどの「それなりの権威がある専門組織」の言うことは「素人は信じるべきだ」と思う人間です。その方がリスキー度は低いでしょう。安易に渡航制限など唱えることはパニックを助長しかねません。

*11:もちろん岩手県的には「茨城の筑波学園都市の夢を我が県でも」つう思いが多分あります。

*12:しかし2019年3月7日までに「どこの国も正式には誘致場所に手を上げなかった」「しかし計画は撤回されなかった」ため「英国のEU離脱期限の延期」のように期限が延長されるという笑えない状況になっています。正直「予算が巨額すぎてどこの国もびびって正式には誘致したがらないような代物」を日本に誘致すべきとはとても思えません。