今日の産経ニュース(2020年2月8日分)

【昭和天皇の87年】日本の敗戦 大東亜共栄の大義は間違いだったのか - 産経ニュース
 今時「大東亜戦争(太平洋戦争)の大義=東南アジアの独立」などというデマを公言するとは呆れますね。
 あの戦争は
1)日中戦争について中国側にたつ英米を叩き、日中戦争を有利にする
2)英国領マレーシア、オランダ領インドネシア、米国領フィリピン、フランス領インドシナ(今のベトナムなど)など欧米の植民地をぶんどって日本の領土(植民地)にすること(インドネシアの石油利権などを手にすること)
が目的であって、「東南アジアの独立」などというのはデマです。
 そもそも「インドで独立運動の中心となったガンジーやネール」は戦争では英国側にたちましたし、ベトナムホーチミンは日本の支援など受けていません。ベトナムインドネシアでは「1945年の日本の敗戦後」に「宗主国との独立戦争」が始まっており、「日本が太平洋戦争を起こしたから独立できた」という単純な話ではない。
 そもそも「朝鮮や台湾を植民地にした日本」、「エチオピアを植民地とするイタリアと軍事同盟を結ぶ日本」の何が「東南アジアの独立」なのか。
 そして産経は別の所では「ハルノートが中国からの撤退を要求するのが悪い」「米国が石油やくず鉄の禁輸なんかするから悪い」といってることと「東南アジアの独立」云々と明らかに矛盾するでしょうに。

 ポツダム宣言発表の2日後、昭和20年7月28日、首相の鈴木貫太郎*1は(ボーガス注:「ポツダム宣言」の「武装解除」部分などに反発する)軍部の突き上げを受け、定例記者会見でコメントした。
 「(ボーガス注:国体護持について明確な記載がない)(ポツダム宣言に)重大なる価値ありとは考へない、ただ黙殺あるばかりで戦争完遂に対する既定方針に何ら変更はない」-
 この土壇場で、受諾拒否ともいえる意思表示は重大な結果を招きかねない。外相の東郷茂徳*2は鈴木に抗議したが、後の祭りだった。対ソ交渉を優先するあまり、ポツダム宣言への対応について政府内で意思統一が図られていなかったことが、そもそも問題だろう(※2)。

 建前はずっと「徹底抗戦」ですからね。かつ昭和天皇や軍部が「国体護持」に固執する以上、「政治的失脚を鈴木が恐れて」こういう話になってしまうわけです。
 「モンスターと化してしまった」救う会、家族会を、政府が恐れて「経済制裁あるのみ」「拉致被害者の即時一括帰国あるのみ」で拉致問題が解決しない今の惨状とある意味似ています。
 「拉致問題での救う会、家族会の対北朝鮮強硬路線」と「戦前日本の対米強硬路線(ポツダム宣言拒否)」に違いがあるとすれば
1)戦争が終わらないと日本人全員が困るが、拉致が解決しなくてもほとんどの日本人は何一つ困らない
2)ポツダム宣言受諾を拒否した日本は「原爆投下」など米国に酷い目にあわされたが、北朝鮮にはそんなことをするパワーはない
程度の事でしょうか。

(※2) 鈴木は「黙殺」発言について戦後、「この一言は後々に至る迄、余の誠に遺憾と思う点であり、この一言を余に無理強いに答弁させた所に、当時の軍部の極端な抗戦意識が、如何に冷静なる判断を欠いて居たかが判るのである」と弁明している(終戦史録)

 「言いたくなかったけど、軍部が恫喝するから仕方なく言った」って「お前、ふざけんな」「首相のくせに責任転嫁するな」「恥を知れ」て話ですね。

 「聖断」がなければ、犠牲がさらに拡大したことは疑いない。

 逆ですね。「昭和天皇の戦争責任研究」をライフワークとする山田朗氏などが批判するように「遅すぎた聖断」でした。この点は山田氏の著作『昭和天皇の戦争指導』(1990年、昭和出版)、『遅すぎた聖断:昭和天皇の戦争指導と戦争責任』(纐纈厚氏との共著、1991年、昭和出版)、『大元帥昭和天皇』(1994年、新日本出版社)、『昭和天皇の軍事思想と戦略』(2002年、校倉書房)、『昭和天皇の戦争:「昭和天皇実録」に残されたこと・消されたこと』(2017年、岩波書店)、『日本の戦争III:天皇と戦争責任』(2019年、新日本出版社)が詳しいですが。もっと早く降伏していれば「東京大空襲(1945年3月)」「沖縄戦(1945年4~6月)」の悲劇はありませんでした。そもそも東条*3内閣の「崩壊理由」である「1944年7月のサイパン陥落」時点で日本の敗北は確定してました。その時点で降伏すれば「犠牲はもっと少なかった」。
 しかし、「国体護持」、つまり「自らと天皇一族の保身」にこだわる昭和天皇は降伏せず、いたずらに犠牲を増やしました。

 少なくとも戦争終盤において、名も無き日本兵の、命にかえての奮戦は、決して無駄ではなかった。無条件降伏要求の壁を崩し、条件明記のポツダム宣言をもたらしたからだ。

 やれやれですね。
 「日本兵の奮闘」が「米国による戦後の天皇制温存政策につながった」というなら正しいかもしれない。
 しかし「ポツダム宣言が条件降伏」というのは明らかなデマです。条件降伏でないから、昭和天皇は受諾を躊躇し「ソ連の対日参戦」で「ソ連を仲介役とした和平構想」が崩壊し「受諾は不可避」と思うまでは「ソ連を使った和平構想」に固執しました。
 そして「日本兵の奮闘」が「米国による戦後の天皇制温存政策につながった」としても、そんなことは「天皇制維持のためにはどれだけ日本人が死んでもかまわない」という産経や日本会議神社本庁のような「天皇制至上主義の極右」のみに通用する話です。俺はそんな立場ではない。俺は「天皇制が廃止されようとも日本人の死者が少ない方が良かった。もっと早く降伏すれば良かった」「保身のために降伏を遅らせたくせに『終戦の聖断』と強弁する昭和天皇が許せない」という立場です。


【昭和天皇の87年】「ミカドの保持を」…ポツダム宣言は無条件降伏ではなかった - 産経ニュース

 重要なのは、ポツダム宣言が「条件」を明記している点だ。「無条件降伏」の文言はあるが、それは国家に対してではなく、軍隊に対して求めている。しかるに戦後、「日本は無条件降伏をしたのだから何をされても文句はいえない」とする誤解や歪曲が意図的に広められ、現在の日本を歪める一因となっているのだが、それは後述する。

 まあ何というか突っ込みどころしかないアホ文章です。
 第一に「日本軍は無条件で降伏しろ」という勧告をどう理解すれば「日本国の無条件降伏を求めてない」と理解できるのか。
 そんな理解はへりくつでしかないし、もちろん昭和天皇以下、当時の日本政府はそんなとんちんかんな理解はしませんでした。彼らは「これは無条件降伏要求だ」と「正しく理解」したからこそ、宣言を当初受諾しなかったわけです。
 第二に「無条件降伏」というのは「事実認識」でしかありません。
 当然ながらそうした事実認識は「だから日本は連合国にどんな扱いを受けても仕方がない」という価値観を当然にはもたらしません。
 「事実認識」と「価値観」は別物ですし、日本の降伏は事実認識として「無条件降伏」としか理解しようがないでしょう。繰り返しますが、もちろん昭和天皇以下、当時の日本政府は「これは無条件降伏要求だ」と「正しく理解」したからこそ、宣言を当初受諾しなかったわけです。

 いずれにせよ、日本民族が綿々と受け継ぎ、日本軍将兵が命にかえて守ろうとした国体*4は、明文化こそされなかったものの、保持されると読み取れよう(※4)

 どう理解すればそんな理解が出来るのか。ポツダム宣言のどこにもそんなことは書いていません。
 実際には「天皇制を維持すべきだ(ジョセフ・グルー*5国務次官(元駐日大使)など*6)」「廃止すべきだ(バーンズ国務長官など)」「今すぐに結論を出さずにひとまず保留にしよう」など米国政府内の意見が分かれていて統一意見が出来なかったがために天皇制については何も書かなかったのが事実でしょう。そしてそれについて当時の日本政府は「天皇制について何も書いてないから不安だ」として受諾を当初否定したわけです。


育休給付金、給与の80%へ引き上げ 男性取得推進へ検討 - 産経ニュース
収入手厚く…男性の育休取得、背中押す政府 少子化阻止に危機感 - 産経ニュース

 政府が育休給付金の引き上げを検討するのは、特に男性に懸念が多い収入面の手当てを厚くして育休の取得を進め、夫婦が協力して育児に携わる環境を整えるためだ。

 改憲なんてもんは世間受けが明らかに悪いし、「小泉jrの育休が話題」だし、「少子化対策で頑張ってる感じを出してみるか」「少子化対策なら各論はともかく総論としてなら野党も皆賛成してるし(改憲の場合、総論でも反対が多い)」つうことなんでしょうね。
 「金のばらまき」なら世間受けは良さそうですし。選挙前に自民が「金のばらまき」をやりたがるのはいつもの話です。
 まあ一方で消費税増税など国民負担増政策してるんで「朝三暮四も甚だしい話」で「育休給付金が増えても、『消費税増税』とか、他を減らしてるんだから、トータルでは国民に大してメリットないだろ!」「馬鹿にしてるのか!」と思いますが。
 で「少子化対策が受けたらその後で改憲とかに可能なら手を出そう」と。
 当然ながらこういうことやり出した背景には「ロシア外交」も「拉致」もろくな成果が上がらず「何か世間受けのいいもんやらないと次の選挙が危ない、改憲できるか分からない」とか「安倍政権としてのレガシーを残したい」とかあるんでしょうね。まあ、今更ですが安倍に拉致を解決する気なんかかけらもないでしょう。


【田村秀男のお金は知っている】「新型ウイルス、経済への衝撃」にだまされるな! 災厄自体は一過性、騒ぎが収まると個人消費は上昇に転じる - 産経ニュース
 消費税増税などの影響を考えれば「新型コロナが収まれば消費は上向く」かどうか疑問ですが、それはさておき。
 現時点において「中国人観光客の減少」などの被害があり、新型コロナの沈静化の見通しも立ってないのにこんなことをいうのは「楽観論がすぎる」というべきでしょう。

 連日のように訪日中国人の旅行消費が減ったり、中国の現地工場の生産に支障をきたすと騒ぎ立てる国内メディアとは一線を画したい。

 アンチ中国の産経・田村はそうした事実から目を塞ぎたいのでしょうが、事実は事実です。

 米トランプ政権のように中国人の入国禁止など思い切った隔離政策に逡巡(しゅんじゅん)しているように見える安倍晋三政権の対応に違和感を覚える。

 そりゃそんな政策をとったら観光業への経済的ダメージがでかいですからね。
 かつ「現時点では」WHOはそうした入国禁止政策をとる必要はないとしている。
 また、現時点での公開データを信じる限り新型コロナは「ワクチンがない」とはいえ死亡率、感染率ともにインフルエンザと同程度です。
 「新型コロナが蔓延してる武漢湖北省(これについては安倍も現時点で入国禁止にしています)」ならまだしも中国全土を「入国禁止にする必要は乏しい」と見るべきでしょう。

*1:海軍次官連合艦隊司令長官、海軍軍令部長侍従長、枢密院議長、首相を歴任

*2:東条、鈴木内閣で外相。戦後、禁固20年の判決を受け服役中に病死。後に靖国に合祀

*3:関東憲兵隊司令官、関東軍参謀長、陸軍次官、陸軍航空総監、第二次、第三次近衛内閣陸軍大臣を経て首相。戦後、死刑判決。後に靖国に合祀。

*4:国家体制の意味。この場合は天皇制のこと。

*5:著書『滞日十年』(ちくま学芸文庫

*6:戦後の対日政策では最終的にはグルー路線が採用され、天皇制廃止や昭和天皇訴追どころか、昭和天皇退位すらありませんでした。