高世仁に突っ込む、ほか(2020年2/12日分)

新型肺炎めぐって噴き出す「言論の自由」の叫び - 高世仁の「諸悪莫作」日記

《改革派の弁護士や学者が李克強首相らに対し、言論の自由を求める書簡をインターネット上で公開した。感染の発生に早くから警鐘を鳴らした湖北省武漢市の眼科医・李文亮さん(33)の死去を受けたもので、感染拡大を「人災」と批判している。》
 李文亮(Li Wenliang)医師(34)は、早くも昨年12月に新型ウイルスについて警鐘を鳴らしたが、湖北省当局から訓戒処分を受け、これ以上「違法行為」をしないとする合意書への署名を強制された。李医師は、今月1日にウイルス感染が確認されたこともSNSで公表していたが、6日亡くなった。

 「政治表現の自由」「報道の自由*1」を軽視している、あるいは「中国政府を免罪している」という誤解を恐れず言えば「報道の自由があれば防疫体制がきちんとなる」というわかりやすい因果関係にはないですからねえ。
 小生なんかは「人の死を自らが希望する『政治改革』に無理やり結びつけてるんじゃないか」という「何だかなあ」感がありますね。
 個人的には「まずは新型コロナの沈静化」で「責任追及は後でもいい」と思いますが。

 中国政府による検閲があるうえ、本土の資本を頼る合作映画が増加。急成長する中国映画と裏腹に香港映画は衰退しているという。

 まあ、ここでいう「衰退」とは「(香港における)映画製作の自由度」といったことでしょうね。
 「本土の資本」が流入しているのならむしろ、経済的には繁栄ではないか(それがいいと言うことではなく単なる事実の指摘です)。


リベラル21 新型肺炎の蔓延について思うこと
 アンチ中国の阿部治平&リベラル21らしい記事で内容的には新型肺炎めぐって噴き出す「言論の自由」の叫び - 高世仁の「諸悪莫作」日記と大して変わりません。
 しかし「どうやって新型コロナを沈静化するか(習政権や安倍政権*2の対策をどう評価するか)」とか「中国人観光客減少でダメージを受ける日本観光業をどうするか」について何一つ触れずに習指導部への悪口雑言に終始する辺りが「なんだかなあ」ですね。

 日本のマスメディアのなかには、武漢湖北省などの地方幹部が新型肺炎の感染拡大について事実を隠蔽したとか、2003年の(ボーガス注:サーズの)教訓を学んでいないなどと非難するものがあるが、これは中国の政治体制をしっかり見ない、見当違いの見かただと思う。
 中国には地方自治がない。

 まあ「中央政府沖縄県を敵視する日本に地方自治があるのか、中国を偉そうに批判できるのか」とは思いますが、確かに「県知事が官選だった戦前日本*3」同様に中国に「100パーセントの地方自治はない」でしょう。
 しかし、だからといって、阿部やリベラル21のように「武漢の市長や党書記など、地方幹部悪くない、習近平指導部が悪い」と無茶苦茶なことはいえない。これは中国に限らず戦前の日本だってそうです。
 「戦前日本は官選知事なんだから、地方幹部に責任なんかない。全て中央政府が悪い」なんて阿部治平も言わないでしょう。
 中国の件について、そのように言えるのは地方幹部が「この新型コロナは重大な問題だ!」と上に話を上げてるのに、上が「あまり騒ぎ立てるな」と押さえ込んだときだけでしょう。
 そして「将来はともかく」今のところ、そのような事実は認められていない。
 普通に考えれば、責任問題をおそれた「武漢市など現地幹部」が「たいした問題じゃない(実際、たいした問題じゃないと思っていたのかもしれませんが)」と習指導部など上に報告して、こうした事態に至ったとみるべきでしょう。
 もちろん習指導部が「政権中央」である以上「結果責任」はあります。これは習指導部に限らず、「日本も含めて」古今東西どこの国、組織でも同じですが。例えば企業において「部下の行為だから社長の俺に責任はない」は「よほど些末な問題でない限り」通りません(特に少なくとも建前は住民選挙による『地方首長』はともかく、地方の党書記は、地方の推薦によるとしても、最終的には習指導部が任命するので当然ながらそうした意味でも責任があります)。
 しかし「習指導部にも結果責任はあるけど、一次的責任は当然、現場責任者だよね」という「習指導部免罪でも何でもない」当然の指摘を「アンチ習指導部」として否定したいが故に「中国に地方自治はないんだ!」と言い出す阿部治平とリベラル21は無茶苦茶というもんです。
 もちろん

 2003年の「非典*4」と2020年の新型肺炎の中国社会には、変わらない部分と変わった部分がある。変わらないのは、専制的集権的政治体制の弊害である。変わったのは、それが中国社会のありかたに一層適合しなくなり、弊害が一層ひどくなったことである。

と阿部治平らが決めつける根拠は何もありません。
 単に「とにかく習指導部を批判して、中国の民主化万歳という方向に話を持って行きたい阿部治平とリベラル21」がそう言う話をしているにすぎません。
 繰り返しますが、「中国政府を免罪している」という誤解を恐れず言えば防疫体制は「報道の自由があれば防疫体制がきちんとなる」というわかりやすい因果関係にはないですからねえ。

*1:今回について言えば政策批判ですから「表現の自由一般」というより「政治表現の自由」「報道の自由」でしょう

*2:リベラル21が安倍政権批判をテーマとするサイトである以上「安倍政権の対策について論じるべき」でしょうが1)論じる能力や興味がないのか、2)現時点では目立った落ち度がなく安倍批判できないからか、論じないのだから呆れます。

*3:たとえば沖縄では悪名高い泉知事も、彼の後任である「戦前最後の沖縄県知事」島田知事もいずれも官選です。なお、今の日本は憲法で「首長の公選」が定められています。

*4:サーズのこと