三浦小太郎に突っ込む(2020年2月23日分)

つくる会教科書 検定不合格。しかし「中華人民共和国」はどう見ても「中国共産党政権」だと思う | 三浦小太郎BLOG Blue Moon
 三浦が「つくる会理事」で「常軌を逸した反中国ウヨ」であることを知っていれば予想の範囲内の記事です。
 しかしこの期に及んでも例の「自称・アンチ右翼歴史修正主義」のid:noharraは「交友関係のある」右翼歴史修正主義者(つくる会理事)・三浦小太郎を批判しないのでしょうねえ。それどころか、多分、

・「三浦らつくる会を批判した場合」三浦との人間関係悪化を恐れて
・一方で、三浦らつくる会を擁護して「歴史修正主義者に賛同するのか!」と非難されることも恐れて

「今回のつくる会教科書不合格」についてツイッターでもブログでも何のコメントもしないでしょう。id:noharra野原燐 (@noharra) | Twitterで彼がツイートしてることは最近ではもっぱら「安倍政権の新型コロナ対応は失敗だ!」ばかりです。
 改めてid:noharraのデタラメぶりには心底呆れます(とはいえ、櫻井よしこ島田洋一福島香織などもこの「つくる会教科書不合格*1」の件については「安倍批判が出来ずに」ツイッターでは黙りですが。安倍の名前を出さないとはいえ、この件に触れてる三浦の方が多分ウヨ業界では珍しい。まあ、三浦はつくる会理事という当事者ですが)。
 なお、今回の「つくる会教科書不合格」やつくる会教科書「中華人民共和国誕生(中国共産党政権)」記述についたと「つくる会が発表した文科省教科書調査官検定意見」については既に拙記事今日の産経ニュースほか(2020年2月21日分)(副題:つくる会歴史教科書不合格、ほか) - bogus-simotukareのブログ新刊紹介:「歴史評論」3月号 - bogus-simotukareのブログでコメントしたのでそちらもご覧頂ければ幸いです。
 では早速、三浦記事を引用し、適宜コメントしましょう。

 (ボーガス注:私、三浦はつくる会理事だが)これはつくる会の意見ではなく、私の個人的な意見としてお読みください。
 今回の文科省検定において、つくる会教科書の記述に対する検定意見として「中華人民共和国共産党政権)成立」という記述について、文科省側から「生徒に誤解を与える表現、建国時の中華人民共和国は連合政権*2」という意見が付いたことが(ボーガス注:つくる会の記者会見に基づいて産経新聞などによって)報じられております。
 歴史的事実を言えば、1949年の中華人民共和国成立時は、共産党以外にもいくつかの左翼政党(というより政治勢力)が存在し、中国人民政治協商会議に参加*3していたことは事実です。当時毛沢東は「新民主主義論」を唱えていて、簡単に言えば、左翼勢力である限り一定の政治勢力の存在を認めていました。
 しかし、中華人民共和国の建国は、あくまで毛沢東中国共産党が、蒋介石国民党政権を軍事的に破って追放したのち、1949年10月1日、毛沢東の名において建国宣言が行われています。これを「中国共産党政権」と呼んでおかしい理由は何もありません。
 ソ連の場合も同様です。レーニンと彼の率いるボルシェヴィキが1917年に革命で政権を打ち立てた時(ほんとは革命じゃなくて非合法クーデタ*4)当時は様々な政党がロシアには合法的に存在し、ソ連政府も初期段階では、左翼社会革命党という同じく革命政党が政権に参加していました。しかし、ソ連の成立を「連立政権の誕生」とはふつう言わないでしょう。
 歴史を専門的に学ぶときは上記のような(ボーガス注:細かい?)部分を知ることは大切かもしれません。しかし、中学生がまず大きく現代史をたどる時、中国で1949年10月1日に成立したのも、1917年にロシアで成立したのも、共産党政権だと学んでなぜいけないのでしょうか。
 毛沢東は建国後、1953年までに反革命派とみなした勢力を数十万殺害、100数十万を逮捕拘束したとされています(もっと多いような気もしますが)54年の段階では「新民主主義論」自体が放棄されます*5。ロシアの左翼革命党は1918年の段階でソ連政権から離反、レーニン政権に反対してテロ活動*6まで行い、徹底的に弾圧されます。他の諸政党が、ロシアの将来の民主化のために期待をかけていた「憲法制定会議」も、レーニンの暴力的弾圧で解散させられました。こういう大局を見れば、中国もソ連も、「共産党(独裁)政権」というくくりで中学生に教えて何ら問題はないはずです。

 アンチ中国の三浦らつくる会一味にとって「建国当時の中国は共産党単独政権ではなく連立政権だったから記述として不適切だ!。書き直せ!」などという検定意見*7が「彼らウヨが敵視する村山社会党委員長や菅民主党代表」が「首相の政権」ならまだしも「よりにもよって彼らが褒め称えてきた極右業界のプリンス」安倍晋三の内閣においてついた上、不合格となったことはまさに「驚天動地の出来事だった」といっていいでしょう(既に拙記事今日の産経ニュースほか(2020年2月21日分)(副題:つくる会歴史教科書不合格、ほか) - bogus-simotukareのブログ新刊紹介:「歴史評論」3月号 - bogus-simotukareのブログでコメントしたように、実は俺にとっても大きな驚きでしたが)。
 独ソ不可侵条約に「欧州情勢は複雑怪奇」と述べて内閣総辞職した平沼騏一郎をまねればまさに「複雑怪奇」だったでしょう。
 このつくる会の「中国共産党政権」の記述が「従来から記述があり、そのときはすんなり通っていた」のか、「今回、新たに書き加えたら検定意見がついて、不合格」なのかは不明ですが、「従来問題なく通っていたのに今回、突然検定意見*8」ならなおさら「驚天動地」「複雑怪奇」です(その辺りはよく分かりませんが)。
 しかも「今年4月上旬」には習主席訪日が予定されています。
 三浦らウヨとしては

・『中国には政治協商会議(政協)が建国当時から今に至るまである。政協には「非共産勢力」も建国当時から参加している*9。中国は欧米とは違うが、中国独自の民主主義を実行している。欧米から反民主的などと批判されるいわれはない』などという習近平ら中国指導部に対する安倍のアシストか!。安倍の野郎、そこまで、中国に媚びるか!
・絶対に習主席国賓訪日は(延期した場合でも)今年中に実行する、反対する奴らには徹底的に報復する、つう見せしめか!

という疑念を感じずには居られなかったでしょう*10
(まあ、実際には「安倍の圧力」「安倍への忖度」などなく、学問的見地からは文科省意見の方が正しい、少なくともほとんどの中国学者はそう評価している、つう可能性もありますが)。
 この「つくる会教科書不合格」の件については今後も可能な限り、拙ブログでも取り上げたいと思います。


【参考:『民主主義』についての中国政府の主張】

「協商民主主義」が中国政治のホットワードに--人民網日本語版--人民日報
 昨年*11、「協商民主主義」が中国政治の流行語となった。昨年9月の中国人民政治協商会議成立65周年慶祝大会で、異例にも中共中央の最高指導者・習近平総書記が大いに「民主主義」を論じたことが広く注目された。
 大会で習総書記は「民主主義」について「民主主義実現の形式は豊富で多様であり、(ボーガス注:欧米モデルが最も正しいなどと言う)型にはまったモデルに拘ってはならない」「民主主義は装飾品ではなく、飾りに用いるのではなく、人々が解決を要する問題の解決に用いる必要がある」との考えを示した。
 中共中央の最高指導者は、利益面の訴えが日増しに多元化する中、協商民主主義制度を運用して、事前に民衆と十分な意思疎通や相談を行い、民意を汲み取れば、打ち出す政策はより合理的になり、より順調に実行されるということを認識している。
 「協商民主主義」の主要な場である中国人民政治協商会議はまさに日増しに重要な役割を発揮している。これは中国共産党、8つの民主党*12無党派民主人士、人民団体、各少数民族、各界の代表、台湾同胞、香港・澳門マカオ)同胞、帰国同胞の代表、および特別招待者からなり、現在全国政協委員は2000人余りおり、広範な社会的基礎を備えている。毎年の両会では、政協委員の公正な発言が常に深い印象を残す。
 第18回党大会以降、中国人民政治協商会議は隔週協商座談会を設け、政府が注目し、民衆が関心を寄せる議題を選び、政協委員と政府部門、専門家、学者を招待して胸襟を開いて話し合い、アイディアを出すなど一連の改革を行った。

習近平中国人民政治協商会議成立65周年祝賀大会における演説』(2014年9月21日)から一部引用
人民民主主義社会主義の生命であるが、人民政治協商制度は人民民主主義の重要な形態である。
・人民政治協商会議は憲法と政治協商会議規約、関係政策を拠り所とし、中国共産党の指導する多党合作・政治協商制度を保障として、協商・監督・参画・合作が四位一体となって機能し、社会主義協商民主の重要なルートである。
社会主義協商民主は中国の社会主義民主政治の特有の形態にして独自の優勢であり、中国共産党の大衆路線を政治分野において具現化した重要なものである。
・われわれは、社会主義協商民主が中国の社会主義民主政治の特有の形態にして独自の優勢であるという重要な断定を全面的に認識しなければならない。
・民主の実現形態は多種多様であるので、硬直化したモデルに固執することはもとより、世界のどこにも適用できる評価基準は一つしかないと断言してはならない。
・協商民主は中国社会主義民主政治の独自の民主形態である。
・協商民主はこれまで中国の社会主義民主政治の全過程においてしっかりと定着している。中国の社会主義協商民主は中国共産党の指導を堅持しつつ、各方面の積極的な役割も果たしており、人民の主体的地位を堅持しつつ、民主集中制の指導制度と組織原則を貫いており、人民民主主義の原則を堅持しつつ、団結・調和の要請に順応している。この意味から言えば、中国の社会主義協商民主は民主の形態を豊かにし、民主のルートを広げ、民主の中身を厚くした。

両会の視点から社会主義協商民主を観察_人民中国
 「協商民主」が西方ではまだ一つの政治概念にすぎなかった頃、半世紀も前に中国ではそれがすでに根を下ろし、また基本的な政治制度になっていた。「何でも相談して処理する」というのは、中国人の協商民主に対する俗な言い方で、新たな深意を与えている。
 今年の両会(全国人民代表大会全国政治協商会議)を前に、中国共産党中央委員は『社会主義協商民主建設強化に関する意見』を公布し、その中の7種の協商民主のルートに関する新たな取り上げ方が人々の注目を集めている。

習政権は「アメとムチ」の社会統制 九州「正論」懇話会でアジア経済研究所の江藤名保子副主任研究員講演 - 産経ニュース
 習氏は昨年*13から、中国には「特徴ある民主主義」が存在すると、盛んに言っている。選挙制度に基づくものではないが、民意をくみ取る「協商民主」だと主張している。

【専欄】「中国の民主」と「西側の民主」、その違い (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト
 共産党機関誌「求是」のサイトもこの間、学者、研究者らによる70年を記念する文章をほぼ連日掲載した。その中のいくつかは中国の民主について論ずる内容だった。
 中国人民大学教授の秦宣は、「民主は全人類の共通の価値だが、世界にまったく同じ政治制度は存在せず、全ての国に適用できる政治制度のモデルも存在しない。国情に合致した民主政治の道を歩まねばならない」と述べた上で、「民主を実現する形式は多様である。協商民主は中国の特色ある社会主義民主の独特で独自な民主形式」と強調している。協商とは、話し合うという意味である。
 中国社会科学院政治学研究所研究員の房寧は、民主を西側の選挙民主と中国の協商民主に分け、両者の違いについて、レストランでの食事を例に、西側の民主では客はコックを指名するが、料理はコックまかせで、中国の民主では客はどんな料理を食べるかをコックと相談できると説明している*14
 これらの文章からは、中国の民主に対する自信、さらには優越意識、そして、西側の民主への懐疑的姿勢がうかがわれる。
 むろん、中国にも(ボーガス注:全人代などの)選挙はあり、中国の民主政治の特徴は協商民主と選挙民主の相互補完にある、というのが公式見解である。
 2003年に米国のハーバード大学で講演した温家宝*15(当時、首相)は、国や省(自治区直轄市)レベルの指導者を間接選挙で選んでいることについて、経済上の大きな格差や国民の教育水準の低さなどを挙げて、直接選挙を実施する条件がまだ成熟していないと述べている。この温家宝発言は、中国がいずれは直接選挙を実施することを示唆したものと好意的に受け止められた。
 だが、中国の制度や理論などへの自信を唱え、協商民主の長所を強調する習近平は、温家宝とは異なる見解を持っていると思われる。

「協商民主」:中国式民主主義 - 京都大学☆坂出ゼミ☆国際政治経済ブログ
 中国社会科学院政治学所所長である房寧が、先日人民網に興味深い記事を載せていたので紹介します。
「協商民主」は中国の民主政治発展の重要な形式
 彼によると、民主主義には欧米流の「選挙民主」と中国(+α)流の「協商民主」があり、中国は後者を選択したとのこと。
 「選挙民主」とは文字通り「選挙こそが民主主義の要」という姿勢で、これは時に非効率や排他的悪政を招くと指摘しています。
 「協商民主」はいわゆる「3つの協調(でしたっけ?)」路線のことで、国内勢力が選挙ではなく話し合いによって資源配分などを決定する方法。迅速な意思決定、絶妙な配分などが可能になるとか。
 要するに、「民主主義には各国の様式があるから、欧米は欧米流のそれを押し付けるな」ということだと思うのですが、最近はブラジルのルラ大統領といい、「(欧米流)民主主義」というイデオロギーを理論的に打破する動きがありますね。ブッシュ政権負の遺産と、新興経済の進展が同時に影響している感じでしょうか。
 そういえば、京大で中国経済を教えていらっしゃる先生が、「マズロー*16の5つの欲求*17」を引いて、「民主主義は贅沢品。腹いっぱい食えないのに、どうして贅沢品を求めようか*18」とおっしゃっていました。また、一般的な教科書では「天安門以降、中国民衆は民主化に関心がなくなった」と書いてあるところではあります。
 皆さんは「中国と民主主義」についてどう思われるでしょう?
 簡単なものでも構わないので、皆さんの意見をお聞かせください。
 僕はとても興味を持っています。

「西側デモクラシー」と「中国デモクラシー」の違い|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ
 習近平*19・中国を胡錦濤*20・中国以前から隔てる最大のポイントは中国社会主義に対する確固とした自信・確信にあると思います。特に「中国デモクラシー」に関しては、胡錦濤・中国までは西側の攻勢に対する受け身的・防衛的議論が主調であったのに対して、習近平・中国においては、近年における西側諸国のデモクラシーが様々な問題を露呈しているのに対して、中国の国情を踏まえた独自のデモクラシーに関する積極的・肯定的主張が明確に行われるようになっています。
 建国70周年に当たり、中国共産党の理論誌『求是』は「中央網信弁」(国家互聯網信息弁公室)と組んで、思想理論界の専門家の執筆による「中国穏行前行」と題する一連の文章を発表しています。9月2日付の求是網は、「中国民主の道程の4つの経験」と題して、中国社会科学院政治学研究所所長・房寧署名文章を掲載しました。
◆「中国民主の道程の4つの経験」から一部引用
<現段階における中国民主政治の重点は協商デモクラシー>
 デモクラシーを形式において「選挙デモクラシー」と「協商デモクラシー」とに区別することは、中国によるデモクラシーに対する理論的創造である。西側の学者の中にも競争的選挙の欠陥及び問題に着目するものがいる。中国は改革開放のプロセスの中で賢明にも、この歴史段階における民主政治を発展する方向及び重点として協商デモクラシーを選択した。
 鄧小平はかつて「積極性を動員することが最大のデモクラシーである」と述べたことがある。これこそは中国と西側のデモクラシーの理念における重要な違いである。西側のデモクラシーの理念はその形式をより重視し、権利と自由を重視する。しかし中国のデモクラシーの理念はその社会的機能をより重視し、民生に対する働きかけを重視する。
 比喩を用いて西側デモクラシーと中国デモクラシーの違いを説明しよう。西側デモクラシーはあたかも、レストランで食事をするとき、客はコックを指名するというようなものだ。イタリア料理のレストランに行けば、コックはピザを作り、中華レストランに行けば、コックは宮保鶏丁*21を料理するだろう。中国デモクラシーはあたかも、客がレストランで食事をするとき、料理を何にするかについて相談するというようなものだ。協商デモクラシーの本質は、政策を行う上で人々の意見を吸収するということであり、結果を重視するデモクラシーであって、デモクラシーの形式だけにこだわるものではない。
 ある国家がいかなるデモクラシーのスタイルを実行するかは、当該国家の社会的発展段階、社会が当面する主要任務及び国際環境によって主に決まる。同時に、その国家の歴史、文化、伝統の影響にも一定程度左右される。中国は、当面する情勢及び任務に鑑みて、協商デモクラシーをもって民主政治建設の重点として選択したのであり、「選挙デモクラシー」をもって重点とはしなかったのである。
 比較的に言うならば、協商デモクラシーの長所・メリットは極めて明らかである。協商の前提及び基礎は各人の地位の平等であり、協商の内容は利益の相交わるところを求め、最大の「公約数」を求めるということであり、協商の機能は各人の利益を考慮し、共同の利益を形成することを促進することにある。特に、矛盾が多く、容易に発生する時代においては、協商デモクラシーは社会矛盾を協調させることに有利であり、小異を残して大同につき、共通認識を拡大することに有利である。今日の中国は社会主義現代化及び中華民族復興の鍵となる時代にあり、協商デモクラシーは現段階にもっともふさわしいデモクラシーの形態である。

「中国的民主」とは何か|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページから一部引用
 4月29日の学習時報(中央党校機関紙)WSは、「党の大衆組織のリーダーシップによる郷村協商ガヴァナンス」と題する文章を掲載しました。この文章は、農村における協商民主の現状と問題点を指摘したものです。なお、中国語の「協商」とは「協議」、「話し合い」という意味です。
 中国の「協商民主」は、「選挙民主」とともに「中国的民主(デモクラシー)」を構成する要素とされているものです。「中国的民主=選挙民主+協商民主」ということになります。私はかねてから、このコラムで「協商民主」について紹介したいと考えてきました。
 「中国には民主主義はない」というのが日本を含む西側の受け止めです。しかし私は、中国は中国なりの「民主(デモクラシー)」、すなわち「中国的民主」を真剣に模索し、試行錯誤をしていると受け止めています。「中国的民主」を優れて「中国的」なものとしているのが「協商民主」です。冒頭の学習時報所掲文章は、もっとも基層レベルである郷のさらに基層にある自然村における協商民主の実情を報告しているものです。
 なお、「協商民主」が何ものであるかの説明なしでこの文章だけを紹介するのは、「手抜き」になります。そこで、かねてから紹介したいと思っていた、「協商民主」に関する詳しい説明を行っている文献も取り上げることにしました。昨年(2019年)9月20日付けの人民日報に掲載された、教育部習近平新時代中国特色社会主義思想研究中心「協商民主:人類政治文明における中国の智慧」です。

1.「協商民主」とは何か
(1)協商民主の展開
 2007年に国務院新聞弁公室が発表した「中国政党制度」白書は、「選挙民主と協商民主との結合が中国社会主義民主の一大特徴である」と指摘した。
(3)協商民主の中国的独自性・独創性
 政治協商会議における協商は我が国特有の協商民主形態である。
 中国共産党が領導する多党合作協商制度は独特の特色を持った政党制度である。中国の政党制度は一党制でもないし、多党制でもなく、中国共産党が領導する多党合作及び政治協商の制度である。
(4)不断に顕彰される社会主義協商民主の独特な優位性
 民主を実現する形式は豊富多彩であり、ステレオタイプに拘泥することはできない。世界には、どこにもぴったり当てはまるような模範的モデルは存在しない。いかなる民主が適合しているかは、一国のガヴァナンスにおける実際の効果を以て判断するべきである。我が国の社会主義協商民主は、人民民主の重要な形式として独特の優位性を示し、巨大な優越性を顕彰している。

 「協商民主主義」という主張をどう評価するにせよ「リベラル21の阿部治平や田畑光永」のように「中国を一党独裁としてただただ批判するだけ」では適切ではないように思いますね。少なくとも建前では中国は民主主義を否定していません。
 「中国には欧米とは違う協商民主主義がある」としているわけです。
 まあこうした浅井先生のような指摘をアンチ中国の阿部や田畑は「中国擁護」と否定的にしか理解しないのでしょうが。

*1:とはいえ、これは自由社つくる会なので、育鵬社版・つくる会がどうなるかは分かりません。「育鵬社版・つくる会は合格」という理不尽なことがないとは現時点では言えません。もし、仮にそうした理不尽な事態になった場合に1)「育鵬社版・つくる会」が「自由社版」を応援するのか(それとも見すてるのか)、2)「育鵬社版・つくる会」が「自由社版・つくる会」を見すてた場合、自由社版(藤岡信勝や三浦小太郎など)が育鵬社版を批判するのは当然として産経や日本会議はどういうスタンスになるのか、気になるところです。それとも三浦や藤岡らは「我々も仲間にしてくれ」と頭を下げて「育鵬社版」に屈服するのか?

*2:ただし文科省からは現時点では「そうした意見を付けた」とも「付けない」とも反応はありません。まあ、こんな話をつくる会が捏造するとも思えないので付けたのでしょうが。

*3:今日の産経ニュースほか(2020年2月21日分)(副題:つくる会歴史教科書不合格、ほか) - bogus-simotukareのブログ、でも触れましたが、『国家副主席(中国国民党革命委員会名誉主席の宋慶齢中国国民党革命委員会主席の李済深)、国務院の閣僚や全人代副委員長、全国政治協商会議副主席などのポストを民主党派に渡し』ており、単に政治協商会議に民主党派が参加したにはとどまりません。

*4:いやー、アンチソ連の三浦らしいです(苦笑)。

*5:ウィキペディア『新民主主義論』によれば『1940年1月に出版された毛沢東による著作であり、またその思想。これは、発展途上の農業国という中国の特殊な条件下で共産主義を実現するため、まず第一段階として反帝国主義・反封建主義の「民主主義革命」を行い(新民主主義革命)、ある程度生産力が発展した段階で、第二段階として「社会主義革命」を実施するもの。二段階革命論の1形態である。この理論においては、中国共産党による「一党独裁」を否定。労働者・農民・勤労知識人の革命的諸党派による「連合独裁」を主張した(人民民主主義)。しかし1954年に制定された中国憲法では、中国共産党による党の指導性が明記され、形式的には複数政党制であるが他の政党は実質的には衛星政党となり、新民主主義革命後に実現するとされた「新民主主義社会」は放棄された』。とはいえ、百花斉放百家争鳴運動(1956年)とそれに対する反動としての反右派闘争(1957年)を考えれば1954年時点ではまだかなり自由度は高かったのではないか。

*6:例えば「ブレスト=リトフスク条約締結に反対し」1918年に発生した『ドイツの駐ロシア大使ヴィルヘルム・フォン・ミルバッハ』や『ドイツ軍のキエフ方面軍司令官ヘルマン・フォン・アイヒホルン』の暗殺。あるいは1918年のレーニン暗殺未遂事件。レーニン1924年死去)の直接の死因は脳梗塞だが暗殺未遂事件での負傷が体調を悪化させ、死期を早めたとする見方もある(ウィキペディア「社会革命党」「レーニン」参照)。

*7:三浦に限らずつくる会にとっておそらく「一番予想外で衝撃的」で「一番許しがたい」検定意見は「この中国関係の検定意見」でしょう。

*8:「従来問題なく通っていたのに今回、突然検定意見」の場合、当然ながら検定意見について「違法、不当の疑い」が生じます。従来の方針を変更した場合「裁量権を逸脱した、恣意的な変更の危険性を排除するため」、それなりの説明責任が求められます。「方針変更の理由」についてまともに説明できなければ当然ながら裁判を起こされれば「違法処分」認定されて負けます(ただしつくる会は現時点は「訴訟を起こす気は無い」としている)。

*9:とはいえ建国当時から今に至るまで政協主席は共産党幹部で「共産党が主導権を保持」していますが。

*10:とはいえ、この期に及んでも「文科省官僚許すまじ」とはいっても「安倍首相許すまじ」とはいわない三浦らウヨです。他の首相、特に自民出身でない細川(日本新党)、羽田(新生党)、村山(社会党)、鳩山、菅、野田首相民主党)なら「今回の不合格(特に中国関係検定意見)」で「中国に媚びるのか!」などと確実に悪口雑言でしょうが。

*11:2015年の記事なので2014年のこと

*12:ウィキペディア中国人民政治協商会議」に寄れば中国国民党革命委員会中国民主同盟中国民主建国会中国民主促進会中国農工民主党中国致公党九三学社台湾民主自治同盟のこと。

*13:2019年記事なので2018年のこと

*14:「西側デモクラシー」と「中国デモクラシー」の違い|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページで浅井先生が紹介した論文です

*15:党中央弁公庁主任、副首相などを経て首相(党中央政治局常務委員)

*16:アメリカの心理学者

*17:1)生理的欲求、2)安全の欲求、3)所属と愛の欲求、4)承認の欲求、5)自己実現の欲求の5つの欲求。

*18:つまり、マズロー風に言えば「生理的欲求や安全の欲求が満たされないのに、なんで自己実現の欲求なんか求めるだろうか」つう話です。

*19:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*20:中国共産主義青年団共青団)中央書記処第一書記、貴州省党委員会書記、チベット自治区党委員会書記などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*21:鶏肉とピーナッツ(あるいはカシューナッツ)を唐辛子とともに炒めた四川料理ウィキペディア「宮保鶏丁」参照)。