今日の産経ニュース(2020年3月17日分)(副題:オウム残党について色々)(追記あり)

【追記】
 現在のオウム真理教の後継団体には、これといった「危険性」はないと思う - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)で拙記事をご紹介頂きました。ありがとうございます。
 現在のオウム真理教の後継団体には、これといった「危険性」はないと思う - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)もご指摘のように麻原時代オウムの犯罪は「太陽寺院集団自殺」のような異常な物で、詐欺宗教一般と同一視できるもんではありません。そして今のオウム残党はせいぜい「サギ宗教」でしかないでしょう。
 今のオウム残党をテロ宗教であるかのように危険視するのは

自衛隊関係者が、戦前軍部のように、張作霖爆殺、満州事変(いずれも関東軍の犯行)、515事件(海軍青年将校による犬養*1首相暗殺)、226事件(陸軍青年将校によるクーデター未遂。齋藤*2内大臣、高橋*3蔵相、渡辺*4陸軍教育総監を暗殺)などの無法をまたやるかもしれない
・ドイツがまたヨーロッパ侵略するかもしれない
日本共産党がまた火炎瓶闘争するかもしれない
中国共産党がまた文革するかもしれない
北朝鮮がまた韓国に侵攻するかもしれない
中核派革マルがまたテロをやるかもしれない

レベルの与太でしょう。
【追記終わり】


【地下鉄サリン25年】被害者らの支援者 「ようやく事件を語れるように」 - 産経ニュース

 オウム真理教の後継団体に被害者は恐怖心を持っている。

 「ホンマかいな」ですね。「麻原を未だに信奉するのか?」という猜疑心や嫌悪感や憎悪ならまだしもそんな恐怖心を感じるような団体ではもはやないでしょうに。


【地下鉄サリン25年】被害者遺族 「時間が経過したという意味での風化は小さなこと」 - 産経ニュース

 オウム真理教は名を変え、後継団体は若い人を中心に信者獲得の手口が巧妙化。危険性は増していると思う。

 ああした犯罪をやらかすかという意味での危険性はないですね。まあ「詐欺宗教の一種ではないか?」との疑念はあります*5が、仮にそうだとしても、何も詐欺宗教はオウム残党ばかりではない(有名どころでは世界平和統一家庭連合(旧名:統一協会)、幸福の科学など)。オウム残党ばかり騒ぐのは違うでしょうし、そうした「詐欺話」をオウム残党に限定するのはむしろまずいでしょう。問題は人の弱みにつけ込む「詐欺宗教」「エセ医療(例:ホメオパシーなど)」などをどう撲滅していくかという話です。遺族がオウム残党にこだわるのは「人の情」として仕方がないですが、我々がそれに付き合う必要は全くないと思います。


東京拘置所へ「巡礼」継続か 地下鉄サリン25年 麻原元死刑囚への帰依なお強固 - 産経ニュース
 個人的には東条英機元首相らA級戦犯を英雄として祀ってる靖国神社の方が、オウム残党よりよほど恐ろしいですね。信者数もオウム残党より多いし。
 そして東條らが殺した人間の数の方がオウムより多いわけです。そう言うと産経などウヨは怒り出すのでしょうが。


森友事件で自殺した職員の手記 - 産経ニュース
 「すべて佐川局長の指示です」森友事件で自殺した財務省職員「遺書」入手 | 文春オンラインということで週刊文春のスクープだそうです。
 「佐川元局長の命令でやった」と告白してるそうです。「告発手記を残して自殺」するくらいなら前川元次官の加計告発のように「生きて告発してほしかった」とは思います。
 それにしても、佐川や「佐川に命令したであろう安倍」が未だに刑事責任追及もされない(佐川の場合、国税庁長官辞任に追い込まれたが安倍に至っては首相辞任のような政治責任追及もない)のでは自殺に追い込まれた元職員が浮かばれません。しかし「改憲右派」とはいえ、森友で安倍をかばう産経とは違い、文春は「安倍のような腐敗政治家は許せない」と思ってるようですね。もちろんそうした記事を文春読者が望んでる(文春読者には安倍批判派、石破支持*6が多い?)という「商売の論理」もあるでしょうが。


立民・枝野代表、消費税減税の必要性に言及 - 産経ニュース
 おやおやですね。「可能なら5%や3%まで減税したい*7」といっていた共産やれいわと違い「8%」ですら消極的だったくせに何があったんでしょうか。


容疑者の文教大准教授 ゼミから警察官や家裁調査官を輩出 埼玉刺殺事件 - 産経ニュース

・さいたま少年鑑別所職員の浅野法代さん(53)が埼玉県庁前で刺殺された事件で、殺人未遂容疑*8で現行犯逮捕された浅野正容疑者(51)は、文教大人間科学部臨床心理学科の准教授
・文教大の近藤研至学長は17日、越谷キャンパス(埼玉県越谷市)で記者会見を開き「被害者の冥福を祈るとともに、世間をお騒がせしたことをおわびします」と陳謝した。

 別居中の妻(さいたま少年鑑別所職員)を夫が職場近くで待ち伏せし(別れ話のもつれから?)刺殺なんてのは、その夫が大学教員でも「大学研究費の横領」「学生や部下へのセクハラやパワハラ」といった大学での犯罪じゃないですからね。謝罪しないと「何故謝罪しない」などと批判する輩もいるのでしょうが、俺個人は被害者の冥福を祈るのはともかく「大学が謝罪する話ではないだろう」と思います。
 「組織の構成員の犯罪、不祥事なら何でも組織がわびないといけない」というのは「違う」と思いますね。こんなことまで面倒見切れないでしょう。
 こんなことで大学が謝ることはないだろ - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)清原亜希は、いかなる点でも謝罪する必要がないし、謝罪などしてはいけない - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)と似たような話だと思います。


「抗拒不能」要件撤廃を 性犯罪の刑法改正、法相に要望 - 産経ニュース
 共産党なども主張している「不同意性交罪」を求める動きの一つです。森法相が会っただけではどうなるか分かりませんが、仮に安倍政権が「不同意性交罪」の方向に動いた場合、この件でさんざん「冤罪ガー」とほざいて共産を誹謗していた黒坂真ら一部反共ウヨがなんというかは気になるところです。たぶん1)過去の発言をなかったことにして黙りか、2)「安倍政権案と共産党案は違う」と根拠レスで強弁でしょうが。


【産経抄】3月17日 - 産経ニュース
 「障害者は社会に利益をもたらさないから殺す」は「論外」「問題外」にしても「障害者に対して(あるいは弱者に対して)日本社会は果たしてやさしいのかどうか」は問題でしょう(明らかに冷たいと思いますが)。
 「殺さなければいい」という問題ではありません。
 そもそも「利益をもたらさないから云々」といえば杉田水脈「生産性発言」、長谷川豊「人工透析・自業自得発言」がまさにそうした差別発言だったし、それらをろくに批判しなかったのが産経の訳です。

 横浜地裁は昨日、植松被告に死刑を言い渡した。当然の判決である。

 これから書くことは「きれいごとだ」「遺族の多くは納得しないだろう」「俺も遺族の立場になれば、犯人への憎悪から死刑判決を望む可能性が高い(ええ、俺は情けないながらそういう『岡村勲的な人間』だと思います)」ということは十分理解の上で書いていますが

「障害者は生きる価値がないから殺す」といって大量殺人した男を「鬼畜のお前には生きる価値がないから殺す」といって死刑判決

というのは「ある種の矛盾」じゃないですかね。「日本の過去の判例(複数殺人の場合、それも無差別通り魔殺人の場合、死刑判決が出る可能性が高い)」「日本人多数派の世論(死刑支持論)」では当然でしょうが、死刑反対派の立場では決して当然ではない。
 いや「障害者には生きる価値があるが植松被告のような大量殺人鬼の『鬼畜、人でなし』には生きる価値がない。障害者と大量殺人鬼では性格が違うからこれは矛盾でもダブスタでもない(確実に産経など死刑賛成派はそう言うでしょうが)」つうのも一つの価値観でしょうが「それ恣意的な論理じゃねえの?」つう気はします。勿論、死刑廃止論の最も主要な理由は日本でも海外でもそう言う道徳論(?)ではなく「冤罪の危険性」ですが。
 「帝銀事件(1948年発生、強盗殺人、獄中で病死)」「三鷹事件*9(1949年発生、列車転覆致死、獄中で病死)」「名張毒葡萄酒事件*10(1961年発生、殺人、獄中で病死)」「袴田事件(1966年発生、強盗殺人、再審決定で保釈)」「北海道庁爆破事件(1976年発生、殺人、獄中)」など、無罪ではないものの冤罪の疑いが指摘されている死刑判決事件や「足利事件(1990年発生、幼女誘拐殺人)」など「死刑判決が出てもおかしくなかった無期懲役の冤罪事件(上告無罪や再審無罪)」は除いても、「上告によって逆転無罪判決が出た死刑冤罪」「再審無罪判決が出た死刑冤罪」に限っても

◆免田事件*11(1948年発生、強盗殺人)
 再審無罪
松川事件(1949年発生、列車転覆致死)
 一審、二審の死刑判決が最高裁で破棄差し戻し→逆転無罪
◆財田川事件*12(1950年発生、強盗殺人)
 再審無罪
◆八海事件(1951年発生、強盗殺人)
 一審、二審の死刑判決が最高裁で破棄自判→逆転無罪。映画「真昼の暗黒」(今井正監督)で有名。
◆島田事件(1954年発生、幼女誘拐殺人)
 再審無罪
◆松山事件(1955年発生、放火殺人)
 再審無罪

などがありますからね。また特殊なケースですが戦前には「明らかなでっち上げ」である「大逆事件」という死刑えん罪(幸徳秋水らが死刑)があるわけです。
参考
長谷川豊の主張にのっとれば、香川伸行は世間に迷惑をかけなかったということになるのだろう - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

*1:第一次大隈内閣文相、第二山本内閣逓信相(文相兼務)、加藤高明内閣逓信相などを経て首相

*2:第一次西園寺、第二次桂、第二次西園寺、第三次桂、第一次山本内閣海軍大臣朝鮮総督、首相、内大臣を歴任

*3:日銀総裁、第一次山本、原、田中、犬養、齋藤、岡田内閣蔵相など歴任

*4:陸軍航空本部長、台湾軍司令官、陸軍教育総監を歴任

*5:オウム残党の現在の詳しい状況を知らないので「サギ宗教だ」と断定はしませんが。

*6:文春読者には野党支持はおそらく少ないでしょう。

*7:もちろん馬鹿正直に「8%でもOK」といったら「消極派」枝野が図に乗ることを考慮して共産やれいわが「あえてふっかけてる(このくらい言わないと枝野は8%すら認めないと評価)」ぐらいのことは俺にも分かります。

*8:逮捕時点では死亡していなかったため。被害者の死亡後に殺人に容疑が切り替わった。

*9:松川事件下山事件とともに「国鉄三大怪事件」と呼ばれる

*10:これについては、江川紹子『六人目の犠牲者:名張毒ブドウ酒殺人事件』(2011年、岩波現代文庫)参照

*11:財田川事件、松山事件、島田事件とともに「四大死刑冤罪事件」と俗に呼ばれる。

*12:これについては鎌田慧『死刑台からの生還』(2007年、岩波現代文庫)参照