高世仁に突っ込む(2020年3/20日分)

公開された近財局職員の「手記」 - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 遺族からすれば安倍や佐川、安倍を支持する自民党幹部連や自民党支持層、佐川とともに安倍の言いなりである財務省、捜査を結局躊躇した検察への恨みは相当なものでしょう。
 文春への告発手記掲載と国家賠償訴訟は当然の話です。
 これを契機に森友問題の報道や国会での追及に期待したい。そして裁判所での勝訴判決も期待したい。
 しかし、この自殺で思ったことは、まず「告発しなくてもいい、せめて生きてほしかった」ですね。
 そしてこの自殺で俺は

【現実の事件:ウィキペディア参照】
◆山城屋和助事件での山城屋自殺
 この事件では疑惑の官僚として、長州出身の山縣有朋・陸軍大輔(陸軍次官)の名が上がり、山県は「刑事責任は追及されない」ものの「反長州派(薩摩、土佐、肥前)」の批判もあって一時、無役となります。しかし、後に山県の能力を買う大久保利通・内務卿*1(薩摩出身)の引きにより、「陸軍卿(陸軍大臣)」として出世した形で復帰。その後、山県は内務大臣(第一次伊藤、黒田内閣)、司法大臣(第2次伊藤内閣)、首相、枢密院議長など要職を歴任し、元老にまでなります。 
◆ダグラス・グラマン事件での日商岩井・島田三敬常務自殺
 島田は「日商岩井の皆さん。会社の生命は永遠です。その永遠の為に私たちは奉仕すべきです。私達の勤務はわずか20年か30年でも会社の生命は永遠です。今回の疑惑、会社イメージダウン、本当に申し訳なく思います。責任とります。」という遺書を残して自殺。
 この事件では安倍の祖父・岸*2元首相の名前が浮上。岸は議員引退を余儀なくされます。
【フィクション】
松本清張『点と線』、『ある小官僚の抹殺』や黒澤明『悪い奴ほどよく眠る』での官僚の自殺(に見せかけた他殺)
 清張や黒沢の場合は「自殺に見せかけた他殺」ですし、実際の自殺事件でも、疑惑追及を逃れるための「自殺に見せかけた他殺」や「自殺教唆」の疑惑は良く指摘されます。
山崎豊子不毛地帯』での主人公の友人でもある自衛隊幹部の自殺

を連想しました(他にもこの種の自殺事件はありますが)。

 きょう、ある出会いがあった。
 西サハラ問題を扱かったドキュメンタリー『銃か、落書きか』を観ようと渋谷の映画館に行った。ところが、間抜けなことに、上映時間を間違えて、着いたら映画は終わっていた。
 さてどうしようか、と受付の前の長椅子に座っていたら、隣の男性二人が(ボーガス注:森友事件で自殺した元近畿財務局職員)赤木さんについて議論している。
 ふと見ると、(ボーガス注:そのうちの一人は)元文科省事務次官前川喜平さんだった。
 尊敬している人でもあり、ご挨拶させてもらった。
 前川さんは夜間中学でボランティアで教えているのを知っていたので、私も夜間中学の番組制作にかかわったことなどお話した。
 おもしろいご縁を感じた。
前川前次官の出会い系バー通いの真相 - 高世仁の「諸悪莫作」日記

 「朝鮮学校無償化除外支持」のid:noharraや高世が「加計告発などで前川氏を尊敬してる」という一方で、「前川氏が無償化除外について『無法な差別行為である』として批判的なこと」について完全にネグってしまうのが滑稽ですね。
 しかし

・本来、上下関係にないはずの救う会や家族会にへいこらして、特定失踪者というデマまで容認する高世

天下り問題で引責辞任*3したものの、その後は、『加計告発』『朝鮮学校無償化除外批判』など、政府批判を行い『在任時は保身から物が言えなかった』と自らの非もはっきり認める前川氏

では「月とすっぽん」ですね。高世の下劣さ、愚劣さにはいつもながら呆れますし、「天下り辞任」を割り引いても俺は前川氏を尊敬しています。
 前川氏のような官僚は「奇特な人物」かもしれませんが。

【参考:松本清張

余録:福岡・香椎海岸の男女の情死体… - 毎日新聞
 福岡・香椎(かしい)海岸の男女の情死体の謎を追う松本清張(まつもと・せいちょう)の「点と線」は、アリバイ崩しの傑作ミステリーであるとともに戦後の社会派推理小説の誕生を宣言する作品だった。それが権力悪の犠牲となる官庁の課長補佐の死を描いていたからだ
▲清張はその後も官庁の小官僚が巨悪の捨て駒にされる作品群で、このジャンルを確立する。実際に当時、汚職事件の捜査が実務をになう中間管理職の自殺でうやむやになる例が相次いでいたのである。
▲「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」。
 森友問題で財務省公文書改ざんが発覚した直後に自殺した近畿財務局の赤木俊夫(あかぎ・としお)さんの遺書や手記である。そこには改ざんに抵抗したのに作業を強いられた苦衷が記されていた
▲改ざん指示の元は当時の理財局長・佐川宣寿(さがわ・のぶひさ)氏だったと明記し、省幹部の国会答弁は「嘘(うそ)に嘘を重ねる」ものと指弾している。遺族は赤木さんが改ざんの苦痛と過労でうつ病を発症し、自殺に追い込まれたとして国と佐川氏を提訴した
▲佐川氏ら高級官僚が守ろうとしたのは何だったのか。裁判での謎解きが待たれる「点と線・2020」である。

 民事訴訟での謎解き以前に「国会での追及」「検察の捜査」「マスコミの報道」がまずはされるべきです。

(葦)清張が迫った闇、今も 多賀谷克彦:朝日新聞デジタル
 松本清張に「ある小官僚の抹殺」という小編がある。ある事業者と政治家とのパイプ役となった霞が関の課長が「自殺」を遂げ、汚職事件の捜査が行き詰まってしまう。自殺であったかどうかも疑わしい、というあらすじである。
 清張は他にも、権力と組織の板挟みになった役人の苦悩を書いている。社会派推理小説の代表作「点と線」も、その闇が背景にある。

『ある小官僚の抹殺』 | シピオンの日記
 昨夜の「相棒16」最終回の中で、「付き添って病院に行ったのは、因果を含めるため」という台詞が、サラッと右京の口から出ましたが、若い人は「因果を含める」なんて意味わかるのでしょうか。
 さて、「因果を含める」といえば、さまざまな松本清張の小説で、現場の官僚が上から自殺を説得される物語を思い出します。そのなかで私の本棚にあって、すぐ読める短編があったので、思わず読み返してしまいました。
「聞くところによると、事件が起こって課長補佐級が参考人として任意出頭して取り調べられ、役所に帰されると、今度は上役たちから、どんなことを尋問されたか、どういうふうに答えたか、などと鋭い目で見られてうるさく追及されるそうである。
 今まで笑いながらものを言ってくれた上役が急に恐ろしくなる。その追及は一種の拷問と同じ状態にその人間をおとしいれることになる。事件が急迫するにつれてそれは酷烈になる。彼は捜査当局の取調べと、上役の査問とで神経が消耗してしまうであろう。 もとより小心な人間と言ってよい。発狂に近い状態に追い込まれるかも知れない。 そこを上役からじゅんじゅんとさとされる。恩義を忘れてはならない。役所に迷惑をかけてはすむまい、と言うかも知れない。あるいは家族のことは心配するな、十分に考えている、と、遠まわしに言うかもしれない。要するに、さとすよりも、錯乱した彼の頭に《因果》をふくめるのである。私は疑獄事件で自殺した課長級の人たちは、精神的な他殺ではないかと思っている。他から圧力がなければ、とても自発的に死ぬ気持にはなれまい。」 
・『ある小官僚の抹殺』(新潮文庫松本清張傑作短編集⑥」所蔵)より
 今回自殺した近畿財務局職員は、さすがに因果を含められたとは思いませんが、組織による精神的な他殺である点は同じだと思います。

[大弦小弦]松本清張の初期の短編「ある小官僚の抹殺」は… | 大弦小弦 | 沖縄タイムス+プラス
 松本清張の初期の短編「ある小官僚の抹殺」は、汚職事件に関与したノンキャリア官僚の死の真相をめぐる推理小説。社会派と呼ばれた作家らしい筆致で、権力と職務のはざまで苦悩する役人の末路を描く
▼巻き込まれた下級官僚は死に追いやられ、政治家や高級官僚は巧みに追及を逃れる。半世紀以上前の作品の描写は「昭和」そのものだが、主題は古びていない。どこかで聞いた現在進行形の話のようで読後の味は苦い
加計学園問題で「首相案件」と書かれた文書が焦点となった11日の衆院予算委の集中審議。相手の自治体が面会記録を残しているのに官僚の答弁は「記憶にない」「すでに破棄」の連発だった
▼一流大学を出て各省庁で競争を勝ち抜き、国会答弁に立つまでに出世したキャリア官僚の仕事ぶりがそれほどいいかげんだと本気で信じる人がいるだろうか
安倍晋三首相は2014年、テレビ番組「笑っていいとも」に出演し、03年に当時の小泉純一郎首相が電話出演した際の会話内容を詳しく語って司会のタモリさんを驚かせた*4。「そういう記録は全部残ってるんですね、やっぱり官邸には」とうれしそうに語る様子がネット上に残っている
▼バラエティーの会話記録があるなら職務上の面会記録も残っているはずだ、やっぱり官邸には。心ある官吏は早く思い出してほしい。

*1:明治新政府では建前上は太政大臣(トップ)三条実美、右大臣(ナンバー2)岩倉具視が大久保より地位は上ですが、三条、岩倉は「良きに計らえ」で大久保に基本的に実務を任せていたので、大久保が事実上のトップとされます。

*2:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、日本民主党幹事長、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相

*3:もちろんこれも「文科省OB官僚(前川氏の先輩)や文科族議員、文教関係の民間団体(大学、特殊法人など)との間の長い間のしがらみ(天下りシステム)」に前川氏が従ったものであり、彼が「安倍のモリカケ」のように積極的に悪事に荷担したわけではないでしょうが。

*4:どれほど成果があったかはともかく、こうした小泉や安倍の出演が「フジテレビ加担による人気取り工作」であることは言うまでもないでしょう。嘆かわしい話です。