今日の産経ニュースほか(2020年3月26日分)(副題:中学歴史教科書検定で色々)

【追記】
 この記事の「教科書検定に触れた部分」が「自由社」の中学歴史教科書の検定不合格とともに、「従軍慰安婦」の用語の復活なども非常に興味深い - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)でご紹介頂きました。いつもありがとうございます。なお、「自由社」の中学歴史教科書の検定不合格とともに、「従軍慰安婦」の用語の復活なども非常に興味深い - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)では拙記事とは別に山川出版の中学教科書が「慰安婦」記述 - Apeman’s diaryも紹介されているので参照下さい。
【追記終わり】

「こんな日本に誰がした」 ー いま、切実に問わなければならない。 | ちきゅう座澤藤統一郎

 森友問題、加計問題、桜問題、東京高検検事長定年延長問題……。こんな日本に誰がした。安倍氏をおいて他にない。
 安倍晋三の罪は重い。国政を私物化し、国政をウソとゴマカシで固めたのだ。「こんな日本」の「こんな総理」に、国民の支持がいまだに4割を超える。その国民の責任も大きい。森友、加計、桜、検事長定年延長…、これだけあって何ゆえ「こんな総理」が生き延びているのだ。「こんな日本に誰がした」は、今切実な発問である。

 澤藤氏の「安倍を支持するバカども」への怒りと嘆きには全く同感です。


つくる会のツイート

新しい歴史教科書をつくる会【公式】がリツイート
青葉あさひ
 教科書検定は、必要だと思いますけど、問題は恣意的な運用で、普通の教科書は排除*1され、自虐史観反日思想が満載の教科書が検定をパスしてしまうことです。

 「事実に反する」ならともかく「自虐、反日」とためらいなく言える辺りつくる会の馬鹿さにはいつもながら呆れます。

新しい歴史教科書をつくる会【公式】がリツイート
月刊『Hanada』編集部
【文科官僚のクーデター?】左翼利権か、中韓への忖度か、それとも、前川喜平氏の怨念か

 「文科官僚のクーデター」「左翼利権*2」「前川氏の怨念」とはばかばかしくて話になりませんね。本心ではそんなことをつくる会も花田も何一つ思ってないでしょうに。いわゆる「オッカムのカミソリ(最もあり得る合理的な考えのこと)」を使えばあり得る考えは「安倍首相と萩生田文科相つくる会不合格も、学び舎合格も、慰安婦記述も容認した」、これ以外にはあり得ません。「安倍や萩生田が何ゆえそうしたのか(秋の習主席訪日のための条件整備?)」はともかく、「安倍と萩生田が容認したこと」を否定するまともな根拠が一体どこにあるのか。そして前川氏にそんな政治力があれば、「退官後の彼が主張する朝鮮学校即時無償化」は既に実現していたでしょう。
 この件で「安倍や萩生田の責任を否定する」より、まだ「末端が暴走した。上層部は知らなかった」という北朝鮮拉致問題での言い訳の方がよほど説得力があります。
 「秘密裏に行われた犯罪行為」である拉致を「金正日が知らなかった(実は末端の暴走だった)」ということはもしかしたらあるかもしれない(なお、お断りしておきますがあくまでも「可能性の指摘」であり、「知らなかった」主張が正しいとはいっていません)。
 「公然と行われ、マスコミも広く報じてる行政行為(もちろん合法であると文科省は主張)」について「安倍や萩生田が知らない」だの、「安倍や萩生田の意向に反する行為だが、つくる会が騒ぎたてても、何もしない(コロナ対応で手一杯だから?)」だの、あるわけもないでしょう。
 大体、「財務官僚を恫喝して国有地の不当廉売や公文書改ざん(森友疑惑)をやらせる」「検察官僚を恫喝して森友疑惑で籠池夫婦以外は誰一人訴追させない(籠池の私的犯罪として処理させる)」「内閣府官僚を恫喝して桜を見る会には何の問題もないと答弁させる」「人事院総裁を恫喝して検事長定年延長には何の問題もないと答弁させる」無法者・安倍に逆らうような官僚が文科省にいるわけもない。いても粛清され、「自由社版・つくる会教科書合格」や「慰安婦記述排除」が安倍によってごり押しされるだけの話です。
 そもそも自由社版が不合格で、育鵬社版が合格という事態からは今回の事件は「育鵬社(つまりは、つくる会と対立する日本教育再生機構一味(八木秀次一味)&育鵬社が所属する産経グループ)の依頼を受け入れた安倍と萩生田による自由社潰し」なんてことはよほどのバカでない限り容易に分かる話です。何で「産経&日本教育再生機構一味(八木秀次一味)を許さない」「安倍と萩生田を許さない」とつくる会一味(高池や藤岡、三浦小太郎など)はいえないのか。
 今回の件は「八木秀次を安倍は支持し、高池や藤岡を切り捨てた」と言う話にすぎません。
 まあ「中韓への忖度」はあるかもしれませんが、勿論忖度の張本人は安倍と萩生田であり「文科官僚のクーデター」なんて話ではない。
 大体、これが

◆細川、羽田、鳩山、菅、野田といった非自民政権の首相
◆自民政権(自社さ連立を含む)だが産経が敵視する宮沢、村山、福田康夫といった首相
◆「細川、羽田内閣の赤松*3文相(いわゆる民間人文相)」「小渕内閣の有馬*4文相」など非右翼の文相、文科相

ならためらいなく「政権(首相や文科相(文相))が左傾化してる!」「政権は中韓に媚びている!」「慰安婦記述を容認する現政権を許さない!」などと批判するであろうに安倍なら「安倍総理がそんな裏切りをするわけがない」「これは文科官僚のクーデターだ」とは呆れて二の句が継げませんね。どこまで安倍相手にチキンなのか。というか文句があるなら、家永氏のように行政訴訟すればいいだけの話です。


中国の捜査を注視 北海道教育大教授めぐり副長官 - 産経ニュース

 政府としての対応は「事柄の性質上、コメントは差し控えたい」と述べるにとどめた。

 せめて「教授氏の早期帰国を願うご家族の気持ちに応えたい」くらい言ったらどうなんですかね。


北海道教育大教授の音信不通で嘆願書 中国総領事館に同僚 - 産経ニュース
道教大教授不明 長男が協力訴え:北海道新聞 どうしん電子版
寄稿:中国人研究者拘束問題 日中関係の試験紙だ=岩下明裕(北海道大教授・国境学) - 毎日新聞
中国、音信不通の北海道教育大教授をスパイ容疑で捜査(1/2ページ) - 産経ニュース
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20200326/7000019524.html

北海道教育大教授の音信不通で嘆願書 中国総領事館に同僚 - 産経ニュース
 北海道教育大(札幌市)の袁克勤*5(えん・こくきん)教授(東アジア国際政治史)が中国に帰国してから半年以上音信不通となり、拘束の可能性が指摘されている問題で、同僚の百瀬響*6(ひびき)教授や教え子らが23日、袁教授の職場復帰に向けた支援を求める嘆願書を在札幌中国総領事館に提出した。
 百瀬教授らは嘆願書で、袁教授が近年、北海道教育大で中国人留学生の受け入れ窓口となり、指導を積極的に担うなど、日中友好に貢献してきたとして支援を要請した。

道教大教授不明 長男が協力訴え:北海道新聞 どうしん電子版
・北海道教育大札幌校の中国人教授、袁克勤(えん・こくきん)氏(64)が昨年5月下旬に帰国後、音信不通となっている問題で、袁氏の長男成驥(せいき)さん(28)が5日、道庁で記者会見し、問題解決へ協力を呼びかけた。
・袁氏と交流があり、会見に同席した北大スラブ・ユーラシア研究センターの岩下明裕*7教授は、袁氏の状況について「複数の関係者によると、袁氏は昨年5月29日、中国吉林省長春の路上で中国の国家安全部門に拘束され、今もスパイ容疑で取り調べを受けている」と述べた。
 袁氏と大学時代に同級生だった立教大法学部の佐々木卓也*8教授は「袁氏は大学時代に天安門事件の抗議運動をしていた」とし、「拘束に関係している可能性がある」と指摘した。

寄稿:中国人研究者拘束問題 日中関係の試験紙だ=岩下明裕(北海道大教授・国境学) - 毎日新聞
 昨年5月29日、大学の用務で中国・瀋陽*9に向かおうとした袁克勤(えんこくきん)・北海道教育大教授は、同国長春*10の路上で、突然、中国国家安全部(公安)と思われる男たちに配偶者とともに連行された。親族と現地の安全部当局とのやりとりによると、袁教授は「スパイ容疑」で取り調べられ、既に9カ月が経過した。この間、親族、弁護士らも一切、接触できていない。安全部は公式には拘束の事実すら認めず、外交部(外務省)も問い合わせに一切、答えない。袁教授は、かつて天安門事件の際に民主化運動を主導した「闘士」でもある。親族によると安全部の取り調べに屈せず、証拠もないため起訴できないまま、とされている。メンツを重視する安全部の一部当事者が、自分たちの行き過ぎを隠蔽(いんぺい)し続けているように見える。

中国、音信不通の北海道教育大教授をスパイ容疑で捜査(1/2ページ) - 産経ニュース
 中国外務省の耿爽(こう・そう)報道官は26日の記者会見で、中国で昨年から音信不通となっていた北海道教育大の中国人研究者、袁克勤(えん・こくきん)教授(東アジア国際政治史)について、「スパイ犯罪」に関する容疑で中国の国家安全部門から取り調べを受けていることを明らかにした。
 耿氏は、袁教授が「犯罪事実に対して包み隠さず自供している」と述べ、「証拠は確かだ」と主張した。
 袁教授は中国吉林省生まれ。昨年5月、母親が亡くなったために一時帰国し、6月に大学側と連絡が取れなくなった。
◆袁教授の長女がコメント
 袁教授の長女でカナダ・バンクーバー在住の長女、袁●(=くさかんむりの下に宝のうかんむりがわかんむり)(えん・けい)さんが26日、産経新聞の電話取材に応じた。袁さんのコメントは以下の通り。
『当局が拘束を続けるのは、何らかのシナリオに沿って父を有罪にしようとしているからとしか思えない。「法にのっとった手続きを進めている」という中国の発表はウソ。ぜひ父を助けてほしい。』

https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20200326/7000019524.html
 袁教授について、中国外務省の耿爽報道官は26日の記者会見で「スパイ犯罪に関わった疑いで、中国の国家安全部門により法に基づいて取り調べを受けている」と述べ、中国の情報機関が取り調べを行っていることを明らかにしました。
 中国政府が袁教授の拘束を認めるのは初めてです。
 そのうえで耿報道官は「本人は犯罪事実について包み隠さず供述し、証拠は確かであり、すでに検察機関に送られた。当局は彼の司法に関する権利を十分に保障している」と述べました。
 一方で、具体的な容疑の内容については明らかにしませんでした。
 袁教授の同僚で、これまで中国政府に情報提供を求める活動を行ってきた北海道教育大学の池田考司専任講師は「中国当局に拘束されているだろうと思ってはいたが、改めて驚いている。袁教授の専門は日米中の戦後初期の政治史で、スパイ行為に関わる立場ではない。中国の刑事手続きは日本とは全く異なるので、どのような状況に置かれているのか健康面を含めてとても心配している。解放され大学に復帰できるよう、引き続きやれることは何でもやっていきたい」と話していました。

 「中国が正式に身柄拘束していること」を認めたことはひとまず「グッドニュース」です。いつまでも「ノーコメント(中国)」では交渉のしようがありませんので。
 まあ、この件で産経ら反中国ウヨが「こんな無法なことをする中国は許せない。秋の習主席訪日反対」と叫び、しかし安倍が「それとこれとは関係ない(俺も関係ないと思います)」「日中友好は重要」と習主席訪日を予定通り推進していくことは間違いないでしょう。


増岡弘さん死去 「サザエさん」スタッフ「カッコいい自慢の夫、気遣い上手な娘婿」 - 産経ニュース
 マスオさん降板の時点で予想の範囲内ですが、もはや「当初からのメンバー」はサザエさん加藤みどり)、タラちゃん(貴家堂子(さすが・たかこ))だけなんだなと痛感します。
 既に永井一郎(1931~2014年。波平役)、麻生美代子(1926~2018年。フネ役)、高橋和枝(1929~1999年。カツオ役)は故人であり、別の人間に変わっています。また野村道子(1938年生まれ)は存命ですがこれまたワカメ役をすでに降板しています。
 増岡氏(1936年生まれ)よりは若いとはいえ、加藤みどりが1939年生まれ、貴家堂子が1941年生まれですからね。近い将来、降板(交代)は避けられないでしょう。
 そう言う意味で言えば、2005年にスパッと一気に声優陣を変えたドラえもんなどは「うまく交代劇ができた」といえるでしょう。
 ドラえもんたてかべ和也(1934~2015年、ジャイアン役)、肝付兼太(1935~2016年、スネオ役)は既に故人です。


衆院解散「コロナ終息後いつあってもおかしくない」 伊吹元議長 - 産経ニュース
 実に腹立たしいですね。そんなことはコロナが終息してない今言うべきことなのか。


WHOは「中国保健機関」麻生氏、国会答弁で - 産経ニュース
 国会答弁でWHOを誹謗中傷するとは麻生も呆れたバカです。


【阿比留瑠比の極言御免】教科書改善を訴えた前愛媛知事の思いは… - 産経ニュース
 有料記事なので途中までしか読めませんが、まあ、阿比留のことなので、結論としては、「学び舎合格」「慰安婦記述の復活」などにウヨとしてマジギレしながらもどうしても安倍、萩生田批判が出来ないという醜態をさらしてるのでしょう。
 しかし「教科書改善を訴えた前愛媛知事」て。加戸が「愛媛玉串料訴訟」でしられる「右翼県」「自民党王国」愛媛で政治的に出世するために教科書問題でも商売右翼を演じていたのか、ガチで右翼だったのかが気になるところです。どっちにしろ「リクルート事件での、リクルート側からの過剰接待で文部省官房長引責辞任(退官)→晩年は加計疑惑」という加戸(リクルート事件で有罪判決が下った高石元次官の元側近)の生き様は醜悪でしかありませんが。
 「政界進出に成功した高石=加戸」「政界進出に失敗した加戸=高石」というべきでしょうか(高石は次官退官後、衆院選挙に出馬するが落選)。


中曽根氏「大きな問題」 中学校教科書「従軍慰安婦」復活に - 産経ニュース

 自民党中曽根弘文元外相は26日の二階派会合で、令和3年度から中学校で使われる一部の歴史教科書で「従軍慰安婦」の呼称が復活し、先の大戦で日本軍が「沖縄を『捨て石』にする作戦だった」との記述があることについて「自虐史観的なものや誤った記述*11が通ってしまったのは非常に大きな問題だ」と述べた。近く党文部科学部会などで関係者から事情を聴取する考えも示した。

 そもそも安倍首相や萩生田文科相の意向を無視して文科省がこんなことをやるとも思えず、安倍や萩生田の意向に従ったのに、文科省を非難のしようもないと思いますがそれはさておき。
 「自虐史観」云々とは中曽根某*12の馬鹿さに心底呆れます。親父もこのレベルのクズでバカだったのか。
 それにしても「この男があの前川元次官の義弟」というのも驚きの事実ではあります(中曽根の妻が前川氏の妹らしい)。
 「慰安婦戦争犯罪」も「昭和天皇は沖縄を捨て石にした」も事実であり何ら問題はない。というか慰安婦はともかく、下手に沖縄のことに口を出せば「本土の自民党は沖縄を馬鹿にしている!」と沖縄の「反自民感情」を強めかねないのに全く呆れたバカです。


【産経抄】3月26日 - 産経ニュース

従軍慰安婦」は戦後の造語である。

 「それがどうかしたのか?」と言う話ですね。小生も無知なので本当に「従軍慰安婦」が「戦後の造語(リアルタイムで使用された言葉ではない)」か知りませんが、そんなことは歴史用語として不適切だという理由には全くならないわけです。
 「当時使用されていた用語」が「現在、使用する上で適切でない(あるいはそもそも用語がない)」なら、新たに用語をつくって使用するなどと言うことは何らおかしな事ではない。
 例えば弥生土器なんかは当時なんと呼んでいたかなんかもちろん分からない。だから最初に発見された場所の地名(弥生町)をとって、現在、我々は弥生土器と呼ぶわけです。

 慰安婦が従軍記者のように、直接軍の管理下にあったかのような誤解を与えてきた。

 突っ込みどころ満載の文です。
 まず第一に「従軍」と言う言葉それ自体には「軍が管理する」と言う意味はありません。この場合の「軍に従う(従軍)」とは「軍に同行する」と言う意味であって「軍の管理に従う」と言う意味ではない(もちろん戦場で非軍人に好き勝手に動かれても軍の活動に支障を来すので多くの場合、戦場での非軍人の活動については軍による何らかの管理は行われますが。なお、日本軍における従軍慰安婦の管理はもちろんそのレベルの管理ではない)。
 第二に従軍慰安婦はもちろん「軍の管理下」にありました。
 軍直営の慰安所(産経の言う『直接軍の管理下』?)もあったし、民間経営の場合もそれは「軍の委託」でした。
 例えるなら、慰安所は民間経営の場合も「自衛隊員が常連客の民間食堂のようなもん」ではなく「自衛隊が外部委託した、自衛隊員専用食堂のようなもん」だったわけです。それで軍の責任がないなんて言い訳は通らない。かつ軍直営の場合も実はあった。
 第三にむしろ「従軍慰安婦」と言う呼び方には「従軍慰安婦のような形態は日本軍以外にほとんどないし、行為主体をはっきりさせるためにも日本軍慰安婦と呼ぶべきだ」「慰安婦では性的サービスだと言うことが分からない(慰安という言葉に性的サービスという意味は勿論ありません)。従軍慰安婦では強制性がわからない(むしろ従軍という言葉から自発的イメージが出てこないか?)→むしろ日本軍性奴隷と呼ぶべきだ」などとして批判する声もあります。
 研究者の著書も

【吉見義明*13
従軍慰安婦』(1995年、岩波新書
『日本軍「慰安婦」制度とは何か』(2010年、岩波ブックレット)
『買春する帝国:日本軍「慰安婦」問題の基底』(2019年、岩波書店)
林博史*14
『日本軍「慰安婦」問題の核心』 (2015年、花伝社)

ということで最近ではそういう批判を反映して『従軍慰安婦』ではなく
1)カギ括弧付きの慰安婦
2)日本軍とはっきり行為主体を付ける
『日本軍「慰安婦」』という言葉が使われるようになっている。その意味で「従軍慰安婦と言う用語が許せない」という産経は「時代に遅れてる」と言うべきでしょう。
 産経の言うのとは違う意味で今や「従軍慰安婦」と言う言葉はあまり使われなくなっている。
 これについては

山川出版の中学教科書が「慰安婦」記述 - Apeman’s diary
 右翼のつまらない言い掛かりとは別に「従軍慰安婦」という呼称は支援団体も使わなくなっていますから、なんだったら「日本軍性奴隷」にしてもらってもいいんですけどね。

と言う指摘もあります。

 このいかがわしい呼称が、中学校の歴史教科書で使われるようになったのは、(ボーガス注:橋本内閣だった)平成9年からだ。
 背景にあったのは、その4年前に当時の河野洋平*15官房長官が発表した談話である。従軍慰安婦の強制連行を認める内容だった。もっとも、軍や官憲によって戦場に送り出されたと、確認できるものはない。韓国との外交関係を優先するあまりの、政治的な発言だったことが明らかになっている。

 もちろん韓国との外交関係に対する配慮はあります。しかしそれは「当時の宮沢内閣が外交関係に配慮して、戦前日本軍に無実の濡れ衣を着せた」などという話では全くない。慰安婦の違法性、不当性は否定できない事実の訳です。だからこそ「宮沢*16内閣で出た河野談話」はその後「細川*17、羽田*18、村山*19、橋本*20、小渕*21、森*22、小泉*23、安倍*24、福田*25、麻生*26、鳩山*27、菅*28、野田*29、(また)安倍」と歴代首相に踏襲されてきた。あるいは国連のクマラスワミ報告、マクドガル報告や米国下院の慰安婦決議などが出た。

 自国をいやしめるのが、果たして望ましい歴史教育といえるのか。

 その「国家主義万歳」の理屈なら

・ドイツの教科書にホロコーストは書くべきではない
・ロシアの教科書にスターリン粛清は(以下略)
・中国の教科書に文革は(以下略)
・台湾の教科書に228事件は(以下略)
・韓国が竹島を、ロシアが北方領土を自国領と教えるのは当たり前

となるでしょう。朝鮮学校教科書が産経の言うように北朝鮮政府に大甘(大韓機爆破など北朝鮮のテロ行為に触れてない)*30だろうとむしろ「当然のこと」です。
 しかし勿論産経はそうは言わない。
 「日本の教科書に慰安婦南京事件は書くな。しかし朝鮮学校教科書には北朝鮮のテロ行為を書け(産経)」なんて理屈がどこの世界に通用するのか。

 教科書の記述の偏りに危機感を強めていた言論人は、「新しい歴史教科書をつくる会」を発足させた。自民党の若手議員も立ち上がった。「歴史教育のあるべき姿は、自身が生まれた郷土と国家に、その文化と歴史に、共感と健全な自負*31を持てるということだ」。
 その一人だった安倍晋三首相の発言である。

 「言論人」「若手議員」には「ウヨ」を付けろ、て話です。まともな人間は従軍慰安婦の教科書記述に因縁など付けませんので。

 (ボーガス:小泉内閣の時代である)平成16年度の検定以降は使われなくなっていた「従軍慰安婦」が、令和3年度の教科書で復活する。「南京事件」などで、日本軍の冷酷さを強調する記述も目立つ。一方で、「つくる会」が執筆する教科書*32は不合格となった。一体、何が起こっているのか。
 つまり多くの人*33が教科書に無関心になった結果、「従軍慰安婦」が亡霊のようによみがえった。

 民主党政権時代で復活せず、安倍政権で復活するとは実に皮肉です(つまり民主党は党内に旧民社党グループ(極右グループ)がいることもあって産経などウヨが言うほど左派でもリベラル保守でもない)。
 つまりは事情や思惑が何か(習主席訪日の条件整備ための中国への配慮?)はともかく「安倍自民がそれを容認した」と言うだけの話です。
 産経が強弁する

 多くの人が教科書に無関心になった結果

ではない。
 昔から、大抵の日本人は教科書記述になど大して関心もないでしょう。
 モリカケ(背任などの疑い)、桜を見る会公選法違反などの疑い)、検事長定年延長(従来の政府見解を議論もなく変更)という「違法行為の疑い濃厚な」無法な政治私物化すら実行して恥じない安倍なら「慰安婦記述」を教科書から排除したいならそうするでしょう。
 しかし産経にとって「安倍総理は僕らの仲間だ、味方だ!」という前提は「神聖にして犯すべからず」です。
 これが「細川、羽田、鳩山、菅、野田といった非自民政権」「自民政権(自社さ連立を含む)だが産経が敵視する宮沢政権、村山政権、福田康夫政権」ならためらいなく「政権が左傾化してる!」「政権は中韓に媚びている!」「慰安婦記述を容認する現政権を許さない!」などと批判するであろう産経も安倍政権相手には「一体、何が起こっているのか?」「多くの人が教科書に無関心になった結果か?」ととぼけ、安倍批判から逃げる有様です。どこまで安倍相手にチキンなのか。

*1:今回のつくる会不合格の是非はともかく「モリカケ」「桜を見る会」「検事長定年延長問題」の無法者・安倍ではそうした恣意的な違法検定の危険性は、現在及び将来において当然否定できません。

*2:むしろこの件は「育鵬社利権」でしょうよ。大体「学び舎」はともかく他の教科書出版社は左翼とはとても言えません。

*3:労働省婦人少年局長、駐ウルグアイ大使など歴任。著書『うるわしのウルグアイ:女性大使の熱い三年』(1990年、平凡社)、『均等法をつくる』(2003年、勁草書房)、『忘れられぬ人々:赤松良子自叙伝』(2014年、ドメス出版)、『続 忘れられぬ人々:赤松良子自叙伝』(2017年、ドメス出版)、『続々 忘れられぬ人々:赤松良子自叙伝』(2019年、ドメス出版)など

*4:東京大学理学部長、東京大学総長、理化学研究所理事長など歴任。著書『物理学は何をめざしているのか』(1995年、ちくまプリマーブックス)、『大学貧乏物語』(1996年、東京大学出版会)など

*5:著書『アメリカと日華講和:米・日・台関係の構図』(2001年、柏書房

*6:著書『文明開化 失われた風俗』(2008年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)など

*7:著書『中・ロ国境4000キロ』(2003年、角川選書)、『北方領土問題』(2005年、中公新書)、『北方領土竹島尖閣、これが解決策』(2013年、朝日新書)、『入門国境学』(2016年、中公新書)など

*8:著書『アイゼンハワー政権の封じ込め政策』(2008年、有斐閣)など

*9:遼寧省省都

*10:吉林省省都

*11:もちろん誤りなどどこにもありません。

*12:中曽根康弘元首相の長男。森内閣文相(科技庁長官兼務)、麻生内閣外相、自民参院議員会長など歴任

*13:著書『草の根のファシズム』(1987年、東京大学出版会)、『毒ガス戦と日本軍』(2004年、岩波書店)、『焼跡からのデモクラシー:草の根の占領期体験(上)(下)』(2014年、岩波現代全書)など

*14:著書『沖縄戦と民衆』(2002年、大月書店)、『BC級戦犯裁判』(2005年、岩波新書)、『シンガポール華僑粛清』(2007年、高文研)、『戦後平和主義を問い直す』(2008年、かもがわ出版)、『戦犯裁判の研究』(2009年、勉誠出版)、『沖縄戦 強制された「集団自決」』(2009年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『沖縄戦が問うもの』(2010年、大月書店)、『米軍基地の歴史』(2011年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『裁かれた戦争犯罪:イギリスの対日戦犯裁判』(2014年、岩波人文書セレクション)、『暴力と差別としての米軍基地』(2014年、かもがわ出版)、『沖縄からの本土爆撃:米軍出撃基地の誕生』(2018年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)など。個人サイトWelcome to Hayashi Hirofumi'

*15:新自由クラブ代表、中曽根内閣科学技術庁長官、宮沢内閣官房長官、村山、小渕、森内閣外相、衆院議長など歴任

*16:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相。首相退任後も小渕、森内閣で蔵相

*17:熊本県知事、日本新党代表を経て首相

*18:中曽根、竹下内閣農水相、宮沢内閣蔵相、細川内閣副総理・外相などを経て首相

*19:社会党国対委員長、委員長などを経て首相

*20:大平内閣厚生相、中曽根内閣運輸相、海部内閣蔵相、自民党政調会長(河野総裁時代)、村山内閣通産相などを経て首相。首相退任後も森内閣で行革等担当相

*21:竹下内閣官房長官自民党副総裁(河野総裁時代)、橋本内閣外相などを経て首相

*22:中曽根内閣文相、自民党政調会長(宮沢総裁時代)、宮沢内閣通産相、村山内閣建設相、自民党総務会長(橋本総裁時代)、幹事長(小渕総裁時代)などを経て首相

*23:宮沢内閣郵政相、橋本内閣厚生相などを経て首相

*24:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官などを経て首相

*25:森、小泉内閣官房長官などを経て首相

*26:橋本内閣経済企画庁長官、森内閣経済財政担当相、小泉内閣総務相、第一次安倍内閣外相、自民党幹事長(福田総裁時代)などを経て首相。現在、第二~四次安倍内閣副総理・財務相

*27:細川内閣官房副長官新党さきがけ代表幹事、民主党幹事長などを経て首相

*28:社民連副代表、新党さきがけ政調会長、橋本内閣厚生相、鳩山内閣副総理・財務相などを経て首相

*29:鳩山内閣財務副大臣菅内閣財務相、首相、民進党幹事長(蓮舫代表時代)など歴任

*30:大甘かどうかは俺は知りませんが

*31:南京事件慰安婦否定という歴史修正主義から生まれる自負など明らかに健全ではありません。

*32:正確には「歴史教科書」ですね。「つくる会」の公民教科書は合格になっています。またつくる会と似たり寄ったりのウヨ歴史教科書(育鵬社)も合格になっています。

*33:その「多くの人」とやらに「安倍首相や萩生田文科相が含まれるのか」と産経に問いただしたいところです。