志村けんについて(追記あり)(志村コント&横溝『女王蜂』『病院坂の首縊りの家』のネタばらしあり)

 これから書くことは、志村けんが亡くなった - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)のコメント欄に書いたことをもとにしていますが。

NHKが志村けんのコメディ再放送「となりのシムラ」「探偵佐平 60歳」 - お笑いナタリー

・4月4日(土)と5日(日)、NHKが急逝した志村けんの関連番組を再放送する。
・4日にNHK総合で放送する「となりのシムラ#5」(2016年9月22日放送)は、出張先のランチで何を食べるか大揉めするサラリーマン、コンビニの独自ルールに困惑するおじさん、娘が連れてきた外国人の彼氏に戸惑う父親、部下の女性に「2人きりで相談したい」と言われて胸ときめく上司などを志村が演じる大人のコメディ。阿部サダヲ、岸本加世子、八木亜希子吉岡里帆高木ブーらが共演した。
・5日には志村が60分の長尺コントに挑戦した「志村けん in 探偵佐平 60歳」(2018年1月2日放送)がBSプレミアムにて届けられる。志村扮する警視庁の経理課を定年退職*1した木野塚佐平は、ハードボイルドに憧れ探偵事務所を設立。往年の大女優が依頼してきた「金魚誘拐事件」を解決しようと、迷推理と珍捜査を繰り広げながら奮闘*2する。原作は樋口有介*3の「木野塚探偵事務所だ」(創元推理文庫)。

志村けんさん、震えるほどの演技だった 放送作家・内村宏幸さん語る|【西日本新聞ニュース】
 「志村けん」が、もういない。
 どうやら、もうバカ殿はキレて扇子を落とさないし、変なオジサンも出没しないし、ひとみ婆(ばあ)さんがマッサージしにやって来ることもない、らしい。
 「志村けん」という名前を認識したのは小学生の時。あの頃、土曜の夜8時にテレビの前にいないというのはありえない事だった。まだ録画機もない時代、8時までに、ごはんとお風呂を済ませてテレビの前に座り、画面の中の志村けんを見て、腹を抱えて笑った。
 それから月日は流れ、僕は自分でも予期していなかった放送作家という肩書になり、そして、NHKの「となりのシムラ」という番組で、とうとう、志村けんさんと仕事をする事になった。
 この「となりのシムラ」は、当初、志村さんが“志村けん本人”を演じる設定で行きたいと制作サイドがご本人に提案したが、素の自分を見せる事だけは頑(かたく)なに拒まれた。
◆コントに向き合う姿勢の次元の違い
 アドリブというのは驚くほど少なかったが、娘が結婚相手を連れて来るというコントで、緊張してなかなか現れない父親を娘が強引に連れて来るという場面、志村さんは、まず彼氏の隣に座って見せた。これは完全にアドリブなのだが、父親の狼狽(ろうばい)ぶりがよく表れていて、台本にはまず書けないと感服した。
 おそらく、台本を納得いくまで読み込んで、その役を完璧に自分のものにして本番に臨んでいるのだろう。撮影現場で、志村さんが台本を開いているのを、まず見たことがなかった。コントに向き合う姿勢の次元の違いを何度も見せつけられた。
 ずっと観察していて、改めて気づいたのは、その超が付くほどの高い演技力だ。コントのキャラクターばかりに目が行きがちだが、シリアスな演技は、俳優の中に混じっても群を抜くレベルだと思う。
 たとえば、普段は家族に邪魔扱いされているが、実は、もの凄(すご)く愛されているのを知った時の表情などは、震えが来るほど上手(うま)い。
 どこにでもいるオジサンを描いた「となりのシムラ」は、シリーズ6まで続いた。まだまだ新しいシリーズもやりたかった、のに。
 志村さん、あなたのコントを見て育った人はたくさんいるけれど、自分が書いたセリフを、あの志村けんが、熟読して本気で演じてくれる。こんな経験をした者はそうはいない。この先も僕は、その事を誇りに生きていけます。もう、一生コントを書き続けます!
 数え切れないほど笑わせてもらいました。本当にありがとうございました。願わくば、東京オリンピックの開会式に乱入する「変なオジサン」を見たかった。

志村けん「一つの役でずっと1時間は初めて」SPコント『志村けんin探偵佐平60歳』1・2放送 | TV LIFE web
 自身初の試みだという、1時間、1人のキャラクターを演じ続けることについては、「今回はわりとドラマタッチで作ってあるので、佐平という人物になろう、なろうとしているんですが、1時間同じ役を演じたことが無いので、できあがりを見てみないと分からないですね(笑)。1つひとつのコントが独立している場合とは違い、『前にこういうことがあったから次がこうなる』というフリが効いてくるのが面白いです。だんだん『この人はこういう人なんだ』という事が分かってくる面白さがありますね」とその魅力を感じている。
 志村が演じる探偵・佐平の秘書役は、『となりのシムラ』での共演歴もある伊藤沙莉。「今回は助手とのやりとりが一番多いので、誰がやるんだろうと楽しみにしていました。『となりのシムラ』では、彼女はコンビニのレジの役だったんですが、さらっと演じるな、うまいなと思っていました。基本的に僕がやっているのはダメな探偵ですから、事務所の運営についても、謎解きに関しても全部助手に先を越されている。彼女がしっかりしているという設定なのですが、その辺がうまいですね」と伊藤を絶賛している。
<STORY>
 警視庁勤続37年(ただし経理一筋)の木野塚佐平(志村けん)は、このほどめでたく定年退職。長年の夢だったフィリップ・マーロウ*4ばりの“ハードボイルドな探偵”になるべく、頭の上がらない奧さん(岸本加世子*5)からの黙認もとりつけ、探偵事務所を開設する。“グラマラスな女性”を条件に秘書を募集し、雇ったのは、理想とは程遠いが頭の切れる梅谷桃世(伊藤沙莉)。そんなある日、往年の大女優(高橋惠子)から誘拐事件解決の依頼が舞い込む。ワイシャツにサスペンダー、トレンチコートに帽子を身につけた木野塚の、珍捜査、迷推理*6がついに暴走する。

ちゃづけ@華花推し
 2018年1月2日
 志村けんはやっぱり志村けん...
 どこかで長さん*7のような変貌を遂げるのではと期待したが。
 いや、長さんが逸材だったというべきか。

 いやーこういう主張には全く同意しませんね。
 ウィキペディアいかりや長介」によれば、いかりや(1931~2004年)は晩年は

◆火曜ミステリー劇場「西村京太郎スペシャル」1-3(1990年7月ー1991年9月、テレビ朝日
 ・警視庁の亀井定雄刑事(十津川省三警部の部下)
火曜サスペンス劇場「取調室*8」1-19(1994年ー2003年、日本テレビ
 ・主演(佐賀県警の水木正一郎警部補)
月曜ミステリー劇場「告発弁護士シリーズ 弁護士猪狩文助*9」1-5(2001年4月ー2003年8月、TBS)
 ・主演(猪狩文助・弁護士)

とミステリードラマの刑事や弁護士役という「お笑い要素のない(あるいは少ない*10)シリアスなドラマ」を演じていますが、そもそも「将来はともかく」、『探偵佐平』時点での志村はそうしたシリアス路線は目指してないでしょう。

東八郎(1936~1988年、ウィキペディア参照)
 志村けんは子供からバカにされることに内心憤慨していた時期があったらしく、その際『バカ殿』シリーズで共演していた東に「東さんはその歳になっても、なぜバカな演技ができるのですか?」と尋ねたところ、東から「子どもにバカにされるのはお笑い芸人として当然のことで、怒っても仕方がない。分かる人は、演者がバカではないとちゃんと分かってくれている。むしろお笑い芸人が利口面をしたがったり、文化人ぶったりするようになったらお笑い芸人としてはおしまいだよ」と諭され、大いに感激したという。志村はことあるごとにこのエピソードを披露し、東に対する敬意を表している。

というエピソードからは志村が「笑いへのこだわり」を持っていたことがうかがえます。
 しかも、若かりし頃のバカ殿やドリフコントと違い「探偵佐平」や「となりのシムラ(今のところとなりのシムラ5しか見ていませんが)」には充分「志村もやろうと思えば、いかりやのようなコント色のないシリアスな演技はいくらでも出来る(しかしあえてやらない)」と思わせる描写はありました。「探偵事務所を開業する」というすっとぼけた中年役とはいえ、志村の「佐平」は「警察をまじめに勤め上げて定年退職した、妻もいるおじさん」と言う設定なので、それなりの「常識人」として描かれてますので。そして推理要素に乏しいとはいえ、犯罪事件が実際に起き、それを志村が解決する「一応ミステリドラマ」のわけです(発生した犯罪事件を探偵がとにもかくにも解決し、ミステリドラマとして一応成立しているという意味では「探偵」と言う設定でも、ミステリドラマとして成立しているとは言いがたいTBS『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』での探偵コントとはNHK『探偵佐平』は大きく違います)。
 あるいは映画「鉄道員(ぽっぽや)」(1999年)での主演・高倉健からのオファーも「志村にシリアスな演技が充分出来ること」の傍証ではあるでしょう(この映画を小生は見ては居ませんが、主演が高倉健である以上、志村がいつものコント演技をしないことだけは確かでしょう)。
 「探偵佐平」「となりのシムラ」からは志村が「年をとってからはバカ殿のようなコントは厳しい」との判断から「よりシリアスさの高い現実社会を舞台にした平凡なおじさんのコント」を目指していたことがうかがえますし、場合によってはそこから志村が「考えを変え」、「コントを死ぬまで続けるにしても」、いかりやのような「コント色のないシリアスな演技」にも本格的にいった可能性もあるでしょう(志村の死でその可能性はなくなりましたが)。

Georgerou_Ishi
@Takajin_Remembe
·2018年1月2日
  #探偵佐平60歳 #nhk こういうの、フジでもやればいいのに。バカの1つ覚えみたいに。バカ殿、変なおじさん、ひとみばあさんばっかりじゃなくて。

ask *TamachanKawaiiヒヨコZ
@ask_aim
·2018年1月2日
  #探偵佐平60歳 #nhk(ボーガス注:志村演じる迷探偵が)美女に弱い辺り(ボーガス注:や事件を実際に解決するのは迷探偵ではなく、別人である辺り)完全に(ボーガス注:名探偵)コナン(ボーガス注:の迷探偵・毛利小五郎)じゃないか 笑笑
 リアルコナンじゃねぇか!笑笑

モリスズ
@mori_78sen1
·2018年1月2日
  #探偵佐平60歳 #nhk(ボーガス注:実質的に事件を解決するのは、伊藤沙莉演じる『頭の切れる女性秘書』であって、志村演じる探偵は珍推理をして助手に突っ込まれるだけなので)これもう伊藤沙莉主演のドラマじゃん

秋坂✩あきさか✩Θ
@akisaka441
·2018年1月2日
  #探偵佐平60歳 #nhk こんな軽薄な番組を作る国営放送に受信料払えるか、みたいな声もあるけれど、ウッチャン*11や志村さん*12を起用して、作家たちと練り込んだコント番組を作ってくれるNHKはやっぱり侮れない。

やす
@crzrainbow
·2018年1月2日
  #探偵佐平60歳 #nhk 伊藤沙莉のツッコミと、ツッコまれてどつかれてることでおもしろさが生まれてるな

ビーグルキネマ
@bgour_kinema
·2018年1月5日
 1/2、NHK『志村けん in 探偵佐平 60歳』視聴。コント職人志村けんさんの世界に豪華な共演者が加わった贅沢なコントドラマ。(ボーガス注:NHK朝ドラ)『ひよっこ』米子役の記憶も新しい伊藤沙莉さんは志村さんと堂々と渡り合う相棒役が見事! 年々美しさを増す堀内敬子さん*13の妖艶さが尋常じゃない!

とろたく
@torotaku7
·4月5日
 (ボーガス注:志村けん追悼番組として)BSでやってる『探偵佐平60歳』、続けていたら志村けん伊藤沙莉の名シリーズになる可能性あった。

もぐっち
@MOguuCh
·4月5日
  #探偵佐平60歳 #nhk コントのようなドラマのような60分
 めっちゃ笑って、この掛け合いが2度と観れないと思うと泣けた
 本当に名コンビだったよね
 シリーズ化して続いてほしかった

ゆめゆめ@xTKa4dPriBeK8Z2
·4月6日
 となりのシムラを見たら、志村けんの主演映画(ボーガス注:『キネマの神様』)見たかったな…と改めて思った。彼のコントから感じたリアリティは、本物の演技力からだったんだとつくづく。生きていたらこの先、俳優としての志村けんをもっと見せてくれたのかもしれないと思うと…本当に惜しい。悔しい

ろく@roku_gii
·4月6日
 #となりのシムラ 見ました。
 ラスト、#志村けん さんのお父さんが本当に良かった。娘さんの相手に戸惑って笑いを取るのかと思ったけど、とても真面目に素のお父さん演じられてた。お子さんがおられたらあんな感じで応対されたんだろな

ベギラマ㌧子さん@tontontontonhin
·4月10日
 録画してあったNHK #となりのシムラ を見た。オジサンや部下を持つ上司の習性や哀愁をよく観察したコントで、ドリフやバカ殿とは違う大人の笑いでジワジワくる面白さ。途中から笑いながら泣いてた。本当にこの天才を亡くした喪失感が半端ない。最後、テロップが本名なのがコント職人の魂を感じた。

Ruru いつもいつでもいつだって秀樹@Ruru28252160
·4月15日
 昨夜、#志村けん さんの追悼番組としてNHKで放送した2番組を録画視聴。
 #となりのシムラ と #探偵佐平60歳  夫と腹が捩れるほど笑った大爆笑大爆笑大爆笑 志村けんさんは言うまでもない、#岸本加世子さん、#伊藤紗莉さんのコメディエンヌぶりも秀逸だった

 こんな番組があるとは知りませんでしたし、当然見たこともないですが、機会があれば見たいですね。
 コントとは言え、「志村がネクタイとスーツを着た初老のサラリーマンとして登場」、「阿部サダヲ、岸本加世子、吉岡里帆*14(となりのシムラ)、岸本加世子、伊藤沙莉、高橋惠子、平泉成志村けん in 探偵佐平 60歳)など共演者が本職の俳優揃い」で明らかに「ドリフコント」「馬鹿殿コント」とは違う「ドラマ寄りのコント」ですよね。「志村けん in 探偵佐平 60歳」の原作はユーモアミステリとは言え、作者はプロのミステリ作家で、「創元推理文庫」、つまりそれなりにまともなミステリとして扱われてるわけですし。当然ながら「コント仕立て」とはいえ、ミステリとしてのきちんとした落ち(つまり謎の提出と、それについての解決編)もついてるでしょう。
 志村も晩年は新境地を目指していたと言うことでしょうか。
 そしてそうした「志村の新境地(冒険)」に

8時だョ!全員集合』(1974~1985年*15)、『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』(1986年~1992年)のTBS
志村けんのバカ殿様』(1986年~)、『志村けんのだいじょうぶだぁ』(1987~1993年)のフジテレビ

など「民放」ではなく「NHKが絡んできた」と言うのも面白い。
 受信料で経営が安定してるNHKの方が「むしろ冒険が出来る」のかもしれません。

【追記その1】

 例えば声優なんかでも、八千草薫里見浩太朗平田昭彦、森光子など、民放では絶対オファーを出さないと思われる超大物にアニメや海外ドラマの声を依頼するようなところは確かにありますね。

という指摘をコメント欄で頂いたのでウィキペディアを参照してみます。

八千草薫
 NHKアニメ『アガサ・クリスティー名探偵ポワロとマープル』(2004年)
  ミス・マープル
里見浩太朗
 NHKアニメ『アガサ・クリスティー名探偵ポワロとマープル』(2004年)
   エルキュール・ポワロ役
平田昭彦
 刑事コロンボ『攻撃命令』(1979年、NHK)の犯人役
◆森光子
 NHKジェシカおばさんの事件簿』(1988年)の探偵役(ジェシカおばさん)

だそうです。

【4/18:追記その2】
 この機会にNHKオンデマンドに登録(無料登録)して4/19までは追悼企画として無料で見れるという「#となりのシムラ5(全部で43分程度)」を見てみます。以下、「かなりアバウト」で「細かい点でズレもあります」がネタばらしがあります。正確に知りたい方は動画を見ましょう(無料で見れるのは4/19までですが)。
 まず第一コント「馴染みの店」。
 志村が演じるのは「佐々木という課長」。
 女性部下二人(高山侑子、志保*16)と男性部下一人(野間口徹*17)と和食の店で飲みながら「二次会は私の馴染みの店でジャズの聴けるバーに行こう、赤ワインもおいしいんだ」といって「課長はセンスがいい」と女性陣の株を上げます。
 ところがジャズバーへ向かう途中で「風俗系の店『もみもみマーメイド』の客引き(深水元基)」に「佐々木さん、今日は寄っていかないんですか?」と声をかけられる。
 慌てて「人違いだ」というのですが、「こないだは、サービスタイムでパンツ一丁になって盛り上がってたじゃないですか!」としつこい客引き。
 女性部下がいる前で佐々木の面子を潰す客引きはいねえだろ、と思うのですが、まあコントですから。すっかり場が白けて「じゃあ今日は解散するか」「俺は一人でジャズバーで飲んでるから、赤ワインがおいしいんだ」と言いながら、三人が姿を消すと「複雑そうな顔をしながら」、風俗店に入店していく志村。
 すっとぼけた中年男ではあるものの、「馬鹿殿」「変なおじさん」などとは違い平凡なおじさん役ですね。大爆笑という感じではなく「クスッ」という感じの笑いがでます。
 次に第二コント「蕎麦屋」。志村が部長、部下が阿部サダヲ
 「上手いそば屋に連れて行く」と志村に連れて行かれた阿部。しかし志村が営業時間を調べていなかったため、「ちょうど営業時間外の昼休み(2時半)」。営業時間は「9~2時、5時~9時」。そこで、近くにイタリアンがあるのを見た阿部は「イタリアンでピザが食べたい」と言い出すのですが、志村は「営業が再開される5時まで待ってでもそばが食いたい」「上司の言うことは部下は喜んで聞くもんだ!(やや怒鳴り気味)」。ところがよく見たら「その日は水曜日」で「水曜日は定休日」。 
 「悪い、さっきは大声上げて」とすっかりしょげて「じゃあイタリアンでパスタでも食うわ」。その1年後、女性部下を連れて「知り合いに連れてもらったんだけどこの辺りにうまいイタリアンがあるんだ、店の名前は忘れたけど」という志村の姿が。
 第三コント「親の真似」。志村が妻子と一緒にいます。小学生の子ども(生駒星汰)が「いいだろ、休みなんだから」「ガッテン承知の助」など志村の口まねをするのを面白がって、「他にもやってみろ」というと「申し訳ございません。全ての私のミスです(以下略)」という取引先へのわびの言葉(?)を真似し出す子ども。
 思わずしんみりして、複雑な顔をし、無言になる志村を見て「止めなさい」と子どもに言う妻(八木亜希子)。これは正直、俺的には笑えないのですが面白いんでしょうか?
 第四コント「相談焼肉」。美人の女性部下(吉岡里帆)から「二人きりで話がしたい」と言われ、オフィスラブ的なことを想像して顔がにやついてしまう志村。
 ただし「あくまでもそれは顔に出さないようにする(しかしどうしても出そうになる)」と言う設定です。
 焼き肉屋へ行くが、いい気分でプレミアムビールと上カルビや上タンなどを奮発する志村。
 で「話って何?」という志村。「いきなりですか?」という部下に「いやだって、俺も何を相談したいのか、わからないで不安だから、まずは聞いておきたいんだ」という志村。
 志村に「同僚に交際を申し込まれ断っても、しつこくつきまとわれてるんで困ってる」「しかも彼がイケメンで人当たりがいいので周囲は付き合えばいいと無責任に言うが私は彼に好意が持てない」という部下。
 しかも、そこで部下から「私、職場の人間には恋愛感情は抱けないんです」と言われてがっかりする志村。そこで「一寸トイレ」といって、店員(佐藤仁美)に「さっきの上カルビとか全部、並にしてくれ」と。
 戻ってきた志村「わかった、俺が注意すればいいんだな」「でも、なんでそんなに彼が嫌なの?」
 部下「私、年上の方が好きなんです」。
 そこで「一寸トイレ」といって、店員に「さっきの並カルビとか全部、特上にしてくれ。並を撤回できないのなら、並は出さなくていいんで、並の分も払うから」と。
 いや「職場の人間に恋愛感情は持てない」といったのは忘れたのかよ、志村?、て話ですよねえ。この時点で、落ちもある程度予想が出来ます(その予想通りですが)。
 戻ってきた志村が、部下の携帯電話が鳴ってるのを見て「電話がかかってるよ?」
 部下「彼氏からですね」
 志村「彼氏?(顔を曇らせる)」
 部下「彼は部長と同じくらいの年齢なんです。心配性な性格で近くまで来たそうです」
 まさかこれ以上食事を続けるわけにも行かず、志村「相談も終わったし、俺から注意しておくから。じゃあ後は彼氏と食事してくれ、俺は帰るから。食事代は俺もちでいいから」。
 そこで帰る志村の元へ現れた彼氏は高木ブー(実年齢は同じくらいではなく志村(1950年生まれ)よりも10歳以上年上(1933年生まれ)ですが)。ドリフでおなじみのBGM『盆回り』が流れ「あいつに負けて悔しい」と泣き顔の志村。
 第五コント「決まりなんで」。後に志村と「志村けん in 探偵佐平 60歳」で「探偵・志村の助手役」で共演する伊藤沙莉がコンビニのレジ役。
 志村が缶ビールを買ってレジに直接並び、伊藤が「レジごとではなく、あそこに並んで頂けませんか、皆さん並んでますし、決まりなんで」。
 そしてついにレジに来て「未成年でないことを確認のためにタッチして下さい」と伊藤に言われ「俺どう見ても未成年には見えないだろ」。
 伊藤「でも決まりなんで」。
 店を出てからたばこがないことに気づき、コンビニに戻ってたばこを買って「未成年でないことを確認のためにタッチして下さい」と伊藤に言われ「俺どう見ても未成年には見えないだろ、それに、ついさっき、俺はビール買ったときにタッチしたよね、忘れた?(やや声を荒げる)」。
 伊藤「覚えていますけど。でも決まりなんで」。周囲が「何、あのクレーマーのおじさん?」という目で見ているのに気づき、「悪いな、俺も言い過ぎた、仕事頑張って」と腰砕けの志村に「いえ、仕事ですので」と笑顔で応対する伊藤。
 伊藤も志村もさらりと演じてますね。第四コントの店員(佐藤仁美)がころころ注文を変える志村に不満顔で愚痴る*18のに比べてもさらっと演じています。
 志村に何を言われても「でも決まりなんで」を笑顔で動じず、繰り返す辺り「大爆笑」というよりは「クスッ」という感じの笑いです。なお、「あそこに並んで下さい」はともかく「年齢確認」についていえば、さすがに本当のコンビニはそこまで杓子定規じゃないでしょう。
 第六コント「二人きり」。後に志村と「志村けん in 探偵佐平 60歳」で妻役で共演する岸本加世子が妻です。
 子ども(娘と息子)が不在でテレビを見ていると

1)NHKダーウィンが来た』的な番組
 発情期になるとライオンは一日に50回交尾します*19
2)バラエティ番組
 妻「私の夫は今も週3回で月に12回です」
 司会「旦那さん、お元気ですね」
 妻「おかげさまで子どもが五人おります」
3)バラエティ番組
 司会「離婚したい一番の理由は何ですか」
 妻「お恥ずかしい話ですがセックスレスなんです。結婚して5年たってからそうなってしまって。今は夫は私のことを女としてみてないんじゃないか」
4)再度、NHKダーウィンが来た』的な番組
 これは貴重なサイの交尾シーンです。交尾は1時間にも及びます*20

など、どこのチャンネルにしても性関係の番組で気まずくなって、チャンネルを切る志村。しかし、「子どもがいないのだから」とテレビに煽られた奥さん*21に露骨に精力ドリンクをすすめられ、真面目な顔で、ドギマギしながらも、ドリンクを飲んでから、それではと、岸本とベッドに向かおうとするが、そこに予想外にも子どもが現れてドギマギする志村と奥さん。
 奥さん「今日はお友達の家に泊まるんじゃなかったの?」
 大学生の子ども「一寸予定が変わって、泊まるのは来週になった」
 子どもに精力剤を見つけられて慌てて「父さん、最近風邪気味でな」と言い訳し、わざとらしく咳をする志村に子どもが「ふーん。じゃあ、お休み」。
 志村は「娘が居るんじゃ今日は無理だな(いつ出来るか分からないが、子どもがいないときでないと)」と言う表情をするところ、奥さんが「志村の飲み残した精力ドリンク」を一気飲み。
 「え、娘が居るのに今日するのか?(だから一気飲み?)」とドギマギするところで終わり。
 第七コント「娘の相手」。
 父親(志村)、母親(床嶋佳子)、娘(第五コントに続いて、また伊藤沙莉)、彼氏(副島淳)の四人です。
 母親「今日は怒鳴らないで下さいよ」
 志村「あのときは酒飲んで酔っ払って来て、ろくに挨拶も出来ないから。アレじゃ誰でも怒鳴るよ」
 母親「前と違って早苗(伊藤演じる志村の娘)も今回はかなり本気みたいだし、相手もちゃんとした人みたいだから、あなたもちゃんと話をきいてあげて下さい」
 伊藤「お父さん、紹介するね、ジョージ君」。
 娘が連れてきた外国人(黒人)の彼氏に「外国人が彼氏なんて聞いてない」と戸惑う父親の志村。
 伊藤「何してるの?。早く(床の間に)来てよ」
 まあ、伊藤沙莉がうまいですね。第五コントでの「志村とは全くの赤の他人のコンビニ店員」と第七コントでの「志村の娘」がどちらも違和感がないです。小生も芸能界に疎いので彼女のことはよく知らないのですが、

伊藤沙莉(1994年生まれ、ウィキペディア参照)
 2003年に日本テレビのドラマ『14ヶ月〜妻が子供に還っていく〜』で芸能界デビュー。当時わずか9歳で演技未経験ながら、身体が少女に若返ってしまった女性研究員という難役をこなし、話題を集めた。2005年にはドラマ『みんな昔は子供だった』(フジテレビ)、『女王の教室』(日本テレビ)に出演。

ということで、子役から長い芸歴のある名脇役のようですが。
 彼女が志村と共演したという「探偵佐平」を見たくなってきました。
 がちがちに緊張してまずは「彼氏の正面ではなく隣に座ろうとするボケ」を演じ「何やってんの?」と伊藤に突っ込まれたあげく、次は「ハウアーユー、ナイスツーミーチュー」とブロークン英語の志村に、「これはつまらない物ですがどうぞ、お父さんがお好きだと聞いた物で」と日本語ぺらぺらの彼氏。
 伊藤「ジョージはカナダ出身で5年前に日本に来て、今はカナダに日本文化を紹介する仕事をしてるの。日本語は独学で覚えたんだって。私が知らない言葉も知ってるのよ」
 彼氏「お気持ちはお察しします。いきなり外国人が現れたら驚きますよね」
 土産を手に取って
 母親「これお父さんが好きなお漬物だわ」
 彼氏「早苗さんからお好きだと聞きましたので」
 「ちょっと早いけど、お酒でも出しましょうか」と台所に向かう母親。
 伊藤「お父さん、何か聞いたら」
 志村「ジョージってのはどんな字を書くの?(緊張のあまりとんちんかんな志村)」
 伊藤「何言ってるの、お父さん」
 母親「早苗ちゃん、一寸手伝って」で席を外す娘の伊藤。
 彼氏「何でも聞いて下さい」
 志村「身長は何センチあるの?」
 彼氏「195センチあります。アフロヘアも入れれば2メートル10センチぐらいあります」
 志村「(薄い頭髪を気にしながら)アフロヘア入れると2メートル10センチか(何を聞いたらいいのか、悩み顔で暫く黙り)」
 彼氏「あの、アレはお父さんが?(志村が黙りの上、誰も戻ってこないので空気を変えないといけないと思って)」
 志村「ああ、盆栽かい。一寸趣味でね」
 彼氏「近くで見てもいいですか。立派な五葉松だ。やはり瑞祥がお好きなんですか?。日本に来たとき、盆栽の美しさにすごく感動して、僕の国の人間にも伝えたいと思いました。お父さんは土の配分はどうされてるんですか?。やはり赤玉土がメインですか?。鹿沼土は配合が難しいですからね」
 志村「まあ、色々な土を混ぜるんだな(趣味とは言え、そこまで詳しくないのか、外国人の彼氏が詳しいことにびっくりしてるのか、それとも単に照れてるのか、やや困惑気味の志村)」
 「お茶でもどうだ」という志村。
 お茶を入れようとする志村に彼氏「僕が入れます」。
 彼氏「お茶の入れ方も彼女に、早苗さんに教えてもらったんです。彼女、お父さんはそういうことには厳しい人だからって。彼女、お父さんの話をするときはすごくいい顔をするんです。どうぞ」
 志村「すまんな」
 そこへビールと料理を持って「お待たせしてごめんね」と娘を連れて戻ってくる妻。
 彼氏「お父さん、お母さん、僕は決していい加減な気持ちじゃありません。早苗さんとのお付き合いを認めて下さい」。
 そこで志村が彼の入れた茶を見たら茶柱が立っていて、にっこりした志村が「どうだ、一杯」とのみ言って、彼氏にビールをついで、志村が「いい父親」といった、ほのぼのとした感じの終わり方で「アレ、第四コント『相談焼肉』(部下とのオフィスラブを期待したが、夢破れた上、部下の彼氏が高木ブー)みたいな落ちとかないの?」と一寸肩すかし的な気がしないでもありません。いずれにせよどのコントも「馬鹿殿」「変なおじさん」などに比べたらドラマ寄りではあります。
 最後に「志村けんさんは三月二十九日に亡くなられました。謹んで哀悼の意を表します」というテロップが流れます(なお、時間的には第四コント「相談焼肉」と第七コント「娘の相手」が比較的長く、第三コント「親の真似」と第五コント「決まりなんで」が比較的短いです)。
 他の「となりのシムラ」と「探偵佐平」も見たいところです(特にミステリ小説が原作なので、コント仕立てとはいえ、一応謎の提出と解決編があるであろう、そして今回、芸達者なところを見せた伊藤沙莉が助手役の「探偵佐平」が見たいところです)。


【追記その3】
 「著作権侵害の違法動画なのかなあ?」と悩みながら、YouTube動画で「探偵佐平」を見て見ます。創元社推理文庫の原作通りかどうかが気になるところです。一応「謎の提出と解決編」はあるものの、ドラマは本格ミステリ的な話ではなく大して推理らしい推理もないので(後で機会があれば原作を読みたいところです)。なお、ドラマ寄りのコント、コメディであり「となりのシムラ」同様、志村は「とぼけてはいるが平凡なおっさん」ですし、共演者もお笑い芸人ではなく俳優揃いです。以下、「かなりアバウト」で「細かい点でズレもあります」がネタばらしがあります。正確に知りたい方は動画を見ましょう。以下「志村(木野塚佐平役)」と「伊藤(梅谷桃世役)」だけは役名ではなく「志村」「伊藤」という芸名で書いていきます。「志村のボケ、伊藤(あるいは岸本)の突っ込み」あるいは逆に「伊藤(あるいは岸本)のボケ、志村の突っ込み」が基本的な笑いどころです。
 しかし、志村のとんちんかんな捜査には小生は

 金田一の推理を聞きながら途中から唐突に「よし、わかった!」「つまり、ホニャララと言うことですね、金田一さん!(市川崑監督、石坂浩二主演の金田一映画での等々力警部(加藤武))」と発言し「違います」と金田一にダメ出しされる加藤武

を連想しました(加藤の等々力警部については例えば加藤武 生前明かしていた「犬神家の一族・等々力警部」の役作り | アサ芸プラス)。

◆第1章「佐平の夢」
 最初に志村が「ハードボイルド風の探偵として現れる」が「犯罪者(野間口徹ほか)に返り討ちに遭い」、『おいおい?』と思ったところでそれが夢落ちであることが分かる。
 疲れていて警察署内で居眠りをしていた志村。それを見ながら「勤務中に居眠りか」などと陰口をたたく志村の部下(野間口徹ほか)。
 警察の会計課を定年退職し、会計課の部下(野間口徹ほか)から花束贈呈と見送りを受けた木野塚佐平(志村)。会計課一筋なので警察官ではあるが犯罪捜査経験は全くない。
 志村「俺、新しく仕事をやりたいんだ」
 妻(岸本加世子)「何がやりたいの?」
 志村「探偵だ」
 妻「探偵?。どうやって?」
 志村「まず事務所を開いてだな」
 妻「パンティーになるのに事務所が必要なの?」(真顔で言う辺りがポイントです)
 志村「バカだな、お前。私立探偵の探偵だよ。パンティーはどうでもいいんだ。俺は警察に長年勤めていたし、(ボーガス注:チャンドラーの)フィリップ・マーロウも全作品*22読んでるから問題ないと思うんだ。駄目か」
 妻「朝のゴミ出しは誰がやるの?」
 志村「それは今まで通り俺がやるから安心してくれ。お前は今まで通り朝九時まで、いや永遠に寝ていてもかまわない」
 「永遠に寝ていても」に「死んで欲しいのか?」と不機嫌そうな顔をする妻に失言をしたことに気づいて顔を引きつらせる恐妻家の志村。
(場面が転換して)
 志村「駄目だって言われなかったから許されたんだよな、許されたことにしよう(独り言)」
 そしてメモを書き始める志村。
 メモの内容は「新宿に事務所を借りる」「トレンチコートを買う」「バーボンを机にしのばせる」「行きつけのバーを見つける」「美人秘書を雇う」。
 志村「それで美人秘書の条件が大事だなあ」
(場面が転換して)
 トレンチコートを着て新宿の事務所に現れる志村。
(場面が転換して)
 印刷会社に「美人秘書求む」「容姿端麗」「20~30代」「胸囲86センチ以上」「身長160センチ以上」「経験不問、給与応相談」でチラシ原稿を出す志村。
 しかし印刷会社社長(平泉成)からは「秘書に容姿端麗、胸囲86センチ以上とか必要ないでしょう。このご時世、こんなん広告したらセクハラって言われますよ」。
 志村「ハードボイルドの世界には必要なんですよ。胸囲は82センチ以上に譲歩してもいいですけど」
 社長「あんたがどうしてもこの条件でやれ、つうならやるけど、これで求人なんか来ないよ」
(場面が転換して)
 「美人秘書求む」「容姿端麗」「20~30代」「胸囲82センチ以上」「身長160センチ以上」「経験不問、給与応相談」と書かれたチラシを持ちながら「あれから三日経ったがまだ応募は来ない。私だって百人も二百人も来るとは思ってないが、少なくとも2人以上の候補から容姿だけでなく才能も加味して厳選するつもりだ(志村のナレーター:つまり最低でも二人は来る、一人だけしか来ないとか、誰も来ないなんて事はないと思っている志村)」。
 そこへドアをノックする音。
 志村「はい、どうぞ」。
 伊藤沙莉「お届けに参りました(といって観葉植物を持ってくる業者)。どちらに置きましょう」
 志村「(応募じゃないのかとがっかりした表情で)ここに置いてくれ」
 そのまま帰ろうとする伊藤に
 志村「一寸待てよ、代金がまだだろ」
 伊藤「代金はいいです。サービスです」
 志村「何でよ?」
 伊藤「ウチの社長、ギャンブルで借金抱えて今朝失踪したんです。」
 志村「ここは新宿区歌舞伎町だから失踪は日常茶飯事だな」
 伊藤「ウチの会社は四谷ですけど」
 志村「あのな、四谷も新宿区なの。社長が失踪したのに何で配達するの?」
 伊藤「注文を受けた以上、配達しなかったらお客さんが困るから。配達先も5、6件だったし、これが最後です」
 志村「親切だな。(帰ろうとする伊藤に)一寸待てよ。ただで返すような野暮なことはしないよ。時間あるんだろ、何か飲んでいけよ、何にする。コーラでいいか?」
(場面が転換して)
 コーラを飲む童顔の伊藤を見ながら
 志村「(童顔なので)君は高校生のバイトか?」
 伊藤「バイトだけど大学生です」
 志村「そうか、大学生か。私の予想通りだ」
 伊藤「さすが探偵ですね。でも全然探偵に見えない。(探偵に見えるように、トレンチコートを着ているので、顔色を変える志村に)でも探偵に見えない方が犯罪者に警戒されないから仕事はやりやすいでしょ?(と言われて嬉しそうな志村)。で秘書の応募はあったんですか?」
 志村「何で秘書を応募していると?」
 伊藤「誰も使ってない新しい机があるからです」
 志村「何で使ってないと分かる?」
 伊藤「机に(購入した時の?)テープが貼られたままです。外の看板もピカピカだから、まだ開業したばかり。求人広告を出してから三日は経ってるけど誰も応募が来ない。ウチに注文が来たのが3日前ですから。求人広告を出す前に観葉植物は頼まないでしょう。応募がないと思ったのは私の顔を見て(応募者ではないのか、と)明らかにがっかりしていたから」
 (志村の心の声)「美人秘書という点で問題はあるものの、推理能力は申し分がない」
 志村「合格だ」
 伊藤「え、面接が始まってたんですか?」
 志村「名前は?」
 伊藤「梅谷桃世」
 志村「梅谷君を木野塚探偵事務所の秘書として採用する」
◆第2章「意外な依頼人
 金魚新聞の編集長(堀内敬子)「御社で私どもの新聞に広告を出して頂けたらと思いまして(と言いながら胸の谷間や、太ももをそれとなく強調、こうしたドリフやバカ殿のお色気ネタで良く流れる音楽がBGMで流れる)」
 志村「(美人に弱いので)是非広告を出させて頂きます」
 伊藤「え?」
 金魚新聞の編集長「通常十万円の所、八万円にサービスします(と言いながら胸の谷間や、太ももをそれとなく強調、こうしたドリフやバカ殿のお色気ネタで良く流れる音楽がBGMで流れる)」
 伊藤「所長、ウチにはまだそんな余裕は」
 志村「(美人に弱いので)検討します」
 伊藤「所長!、八万円なんか絶対駄目ですからね」
 志村「(美人に弱いので)前向きに検討します(注:後の「志村と伊藤のやりとり」で分かるように実際に八万円を払ってしまう)」
(数日後)
 鍵をかけた事務所に電話の音が。
 伊藤「早くあけて下さいよ、電話が切れちゃう」
 志村「カギが四個有るからどれだか分からないんだ」
 伊藤「何で分かるようにしとかないんですか!、いつまでもたついてるんですか!」
 開けてから部屋に入るが電話(ちなみに探偵事務所の電話は今時あり得ない昭和の黒電話)が切れてしまう。
 志村「そもそもお前はカギ持ってないのかよ(逆ギレ)」
 伊藤「持ってました」
 志村「助手のお前が開けろよ!(といってひっぱたく)」
 伊藤「痛いなあ」(明らかに往年のドリフコントです)
 そして部屋を出て、伊藤が鍵をかけるとまた電話の音が。
 志村がまたカギを開けられず、もたついているところを伊藤が「いつまでもたついてるんですか!」「私が開けます」であける。
 今度は切られずに伊藤が出るが、伊藤「間違い電話でした」(明らかに往年のドリフコントです)。
 また電話が鳴って伊藤が出て「早速伺います」。
 伊藤「所長、初の依頼です」
 志村「依頼者の依頼内容は何だ?」
 伊藤「誘拐です。依頼者は成瀬和子さん。世田谷の弦巻です。1時間後に伺うと約束しました」
 志村「誘拐されたのは誰だ」
 伊藤「東錦(あずまにしき)だそうです*23
 志村「誰それ?。力士か?」
 伊藤「東錦は金魚です」
 志村「金魚?。金魚って水槽で買う魚の金魚か?」
 伊藤「ええ、朝から見当たらないそうです」
 志村「ふざけてるのか?。断れよ」
 伊藤「(ネット検索をして)依頼者の成瀬さんは元女優のようですよ」
 志村「(ネット上に出てきた写真を見て)高峰和子か!。(高峰のファンなので、前言撤回し)おい行くぞ」
◆第3章「金魚誘拐事件」
 成瀬宅で
 志村「あの高峰和子だぞ!」
 伊藤「私、知らないし(うかれまくる高峰ファンの志村に対し仏頂面で)」
 志村「デビュー作が女子高生ブルースというんだよ。しかし人気絶頂で結婚して引退したんだ。ショックだった」(明らかに成瀬(旧姓:高峰)和子役の高橋恵子のデビュー作『高校生ブルース』とかけてます。そもそも高峰和子と言う名前自体が高橋恵子をもじってるのでしょうが(そして高峰秀子ももじってる?)。つまりここの「女子高生ブルース」と言うネタは高橋恵子がこの役を引き受けてくれないと成立しないギャグです)
 伊藤「(鞄からカメラを取り出す志村を見ながら)所長、何してるの?」
 志村「写真とるんだよ。俺は写真撮影で忙しいからお前が事情聴取してくれ(もちろん高峰和子ファンとして、色々と記念に撮影したいと言うことで事件捜査とは関係ない)。お前助手だろ?」
 伊藤「お前探偵だろ?」
 志村「お前って何だよ!(といってひっぱたく)」
 伊藤「痛いなあ」
 そこへ現れた成瀬夫人(高橋恵子)「成瀬和子です」
 志村「探偵の木野塚佐平です」 
 伊藤「助手の梅谷桃世です」
 志村「早速お話をお伺いたいんですが金魚の名前は」
 伊藤「金魚の名前はどうでもいいでしょ」
 成瀬夫人「主人は大将と呼んでいました。2年連続で金魚オブザイヤー*24を受賞しました。主人には断っても断っても譲って欲しいという話がありました」
 志村「その金魚の値段はいくらぐらいするんですか」
 成瀬夫人「一千万円するそうです」
 志村「それは誘拐されてもおかしくない。身代金の請求はありましたか」
 成瀬夫人「ありません。今朝忽然と姿を消してしまって」
 志村「この話は警察には」
 成瀬夫人「いえ、夫が帰国するまでに内々に解決できたらと思いまして。」
 志村「まだ誘拐と決まってないからな。単なる家出かもしれない*25
 伊藤「(金魚が家出?、て)はあ?(呆れた様子で)」
 成瀬夫人「そういえば何か言いたげな顔をして金魚が時折口をぷかぷかさせてました」
 伊藤「(金魚が何か言いたげだった、て)はあ?(呆れた様子で)」
 志村「私は後は現場の写真を撮りますが気になさらずに。後は助手が2,3質問をします」
 伊藤「この家の家族構成を教えて下さい」
 成瀬夫人「夫と息子が一人おります」
 伊藤「その息子さんは今は?」
 成瀬夫人「息子のたかよしはハーバード大学に留学していまして、経営学修士課程におります。」
 伊藤「ご主人は今はいらっしゃらないんですか」
 成瀬夫人「夫はドバイ*26に出張しています」
 志村「(写真を撮り終えてから成瀬夫人に聞こえないように小声で)じゃあそろそろ帰るか?。金魚の居場所なんかわかるわけないだろ」
 伊藤「(成瀬夫人に聞こえないように小声で)この事件を解決したら金魚新聞のあの色っぽい編集長がたぶん喜びますけど、もう帰るんですか?」 
 志村「(前言撤回して)事件を解決しよう」
 伊藤「奥様、大将は必ず生きています。ご安心下さい。大将が居なくなったことに最初に気づいたのはどなたですか?」
 成瀬夫人「清子さんです」
 伊藤「清子さんを呼んで下さい。奥様はご心労でお疲れでしょうから少しお休み下さい」
◆第4章「成瀬家の秘密」
 志村「お前、金魚は必ず生きてると言ったな。根拠は何だ」
 伊藤「金魚を殺したいのなら(わざわざ持ち出さなくても、酸素を水槽に送り込む)ポンプのスイッチを切ってもいいし、水槽に毒を入れてもいい。一方、サメやシャチより大きな金魚なんか居ませんよね。つまり水槽から金魚を持ち出すのは誰でも出来る。つまり犯人は大将を殺さずに(自分の手元に欲しいから、あるいは転売して儲けるために)生きて持ち出したんです*27
 志村「私も実は同じ推理をしていた*28
 伊藤「何故って聞いたのに?」
 志村「うるさいな。助手の意見を参考に聞いちゃいけないのか、ウア?。大体、助手の意見は(助手は探偵の部下なのだから)探偵の意見と同じようなもんだろ」
 伊藤「焦ってるから早口ですね」
(場面が変わって)
 伊藤「大将が消えたことに最初に気づいたのは清子さん、あなただそうですが」
 清子「今朝七時すぐに大将が居ないことに気づきました」
 伊藤「では、あなたが大将を最後に見たのはいつですか?」
 清子「夕べの八時です」
 伊藤「ということはつまり」
 志村「(伊藤の発言を遮って)犯人はあなたでしょう!」
 清子「え?」
 伊藤「え?。違いますよ*29
 志村「え?」
 清子「違います」
 志村「(掌返しで)違いますね。この事件はそんなに簡単じゃない。話を聞かせて下さい」
 伊藤「この屋敷には今あなたと奥様の二人しか居ないという。これは嘘じゃないですか?」
 志村「(伊藤から、こう言えと耳打ちされて、棒読みの調子で)あなたは、たかよし君が、犯人だと、確信されてますね。(棒読みなので伊藤から「もう一度きちんと」と言われて)」
 「もう一度きちんと(志村のとんちんかんさにあきれ顔の伊藤)」
 「(伊藤のあきれ顔を見て、自分の勘違いに気づいて今度はまともな物言いで)あなたは、たかよし君が犯人だと確信されてますね。」
 清子「実は何日か前に発泡スチロールのケースが欲しいと申されまして」
 志村「つまり犯人はたかよし君だと言うことだな。俺が奥さんに伝えてくる」
 伊藤「所長、待って下さい。犯人は別にいます」
 志村「ええ?」
 伊藤「たかよし君を操ってる人物が他にいてそれが真犯人です」
◆第5章「真犯人は誰?」
 真犯人の正体を知るために、金魚の入った箱を持ち、自宅を出たたかよしを尾行する志村と伊藤(実はハーバード云々は事実ではなくひきこもりだった)。ある場所で人を待っている様子のたかよしに近づく伊藤。志村は自動車内で伊藤を待っている。
 伊藤「たかよし君ですね?」
 たかよし「君があやのちゃん?」
 伊藤「あやのちゃんて誰?。私はあなたのお母さんが雇った探偵の助手。あなたが待ってるその人はあなたをだまそうとしている。そのあやのちゃんは一千万円の金魚が欲しいだけよ」
 たかよし「あの金魚そんなにするの?」
 伊藤「あの金魚のことを何も知らないのね?。その上着を脱いで私と交換しましょう。あなたを危険な目に遭わせるわけにはいかない。私があなたの振りをしてあやのちゃんと会うわ」
 たかよしの服を脱がせようとしていて、犯人に背後から殴られ失神する伊藤。
 自動車内で伊藤を待ちながら「遅いな」と焦る志村。
(場面が変わって)
 たかよしと共にイスに縛りつけられる伊藤。
 そこに居たのはあやのちゃんではなく中年の男性(津田寛治*30)とその子分たち。
 伊藤「(たかよしに)ネットのなりすましよ」「(中年男性たちに)あんたらの目的は一千万円の金魚でしょ。欲しければくれてやるわ」
 中年男性「一千万じゃなくて二億だ」「中国の大富豪がこの金魚を2億で買いたいと言ってるんだ」「そしてお前らはどこかの土地の中に埋められると」
 たかよし「僕を殺すのか」
 中年男性「ボンボンでもそのくらいは分かるのか」
 伊藤「安心して、私が絶対にそんなことさせない」
 たかよし「安心なんて出来るか。(イスに縛られた状態で)どうやって逃げ出すんだ」
 伊藤「人生からずっと逃げてきたあんたならここから逃げることも出来るでしょ」
 たかよし「僕は逃げてない」
 中年男性「俺を無視してごちゃごちゃうるせえ!。今の立場が分かってるのか?。俺を馬鹿にするな」とナイフを持ちだして伊藤を脅す中年男性めがけて、死角から趣味のコイン投げで、男性の手にコインを当ててナイフを落とさせる志村(注:これより以前、志村が銭形平次気取りのコイン投げが趣味だという描写があった)。
 しかし見つかってしまい逃げ出す志村。
 なお、この逃亡シーンでも
中年男性「今の奴は誰だ?」
子分1「さあ?」
子分2「誰ですかね?」
子分3「俺は分かりません」
子分4「俺も分かりません」
中年男性「お前らバカか?。とっととあいつを捕まえてこい!」
というギャグが入っています。
 追いかけてくる暴徒たちを死角からコイン投げで次々倒していく志村(いくら何でもコインでそんなことはあり得ませんがまあコントですので)。この部分は、志村大活躍です。
 全員倒したと安心した志村の背後から謎の人物が拳銃を突きつけ抵抗を抑圧される志村。
 一方、犯罪者集団全員が志村を追いかけて、居なくなったすきに逃亡する伊藤とたかよし(イスに縛られてそんなことが出来るのかという話ですが、まあコントですので)。
 志村が危ない、と彼を探しに行く伊藤とたかよしの前に現れる背後に銃をつきつけられた志村。そこに現れた「銃で志村を脅す黒幕」はなんと金魚新聞編集長(堀内敬子)だった。
 伊藤「豊胸手術の偽物にだまされて八万円の広告料なんか払うからこんなことになるんですよ!」
 志村「すまん」
 編集長「悪いけど(豊胸手術の偽物ではなくて)本物なの。その金魚を素直に渡しなさい。命だけは助けてあげるわ」
 伊藤「嫌だ。あんたみたいな女は大嫌い」
 志村「(顔を引きつらせながら)おい、刺激するな」
 伊藤「うるさいぞ、ジジイ」
 志村「ジジイ?」
 伊藤「あんた、若作りしてるけど、結構、年くったおばさんでしょ」
 編集長「何ですって!」
 志村「(顔を引きつらせながら)おい、やめろ。拳銃持ってるんだぞ」
 伊藤「その拳銃だって偽物のモデルガンでしょ?」
 志村「(顔を引きつらせながら)おい、やめろ」
 偽物でないことをアピールするために天井めがけて発砲する編集長。
 たかよし「金魚はあげます」
 伊藤「これ、あんたのもんじゃないでしょ」
 編集長「次はこの人の脳みそよ(といいながら、腰を抜かしてへたり込んだ志村の頭に銃を突きつけ脅す編集長)」
 志村「(顔を引きつらせながら)渡してくれ」
 悔しそうな顔つきで編集長をにらみながら仕方なく金魚の入った箱を渡す伊藤を銃で威圧しながら立ち去る編集長。
 志村「済まん」
 伊藤「いやこちらこそ。すぐに渡すと怪しまれるので」
 志村「え?」
 伊藤「早くここから立ち去りましょう」
 そこに「志村のコイン投げのダメージ」から回復して、現れる中年男性率いる犯罪者集団。
 伊藤「警察には言わないからここから立ち去って」
 中年男性「悪いが俺は貧乳の言うことは信じない主義でね」
 伊藤「今なんて言った?。あたしが貧乳であることであんたら何か迷惑してるのか!。(昔の)恋人に谷間じゃなくてむしろ、えぐれてると言われたときのあたしの気持ちが分かるか!。許さない。覚悟しろ」と一人で全員たたきのめす伊藤。暴れまくる伊藤を呆然とした表情で見ている志村とたかよし。
(場面が変わって)
 中国人富豪の元に金魚を持ち込む編集長。しかしそれは金魚オブザイヤーを受賞した「大将」ではなく成瀬家から伊藤が持ち出した金魚のおもちゃであった。伊藤にだまされたことに気づき、顔を引きつらせる編集長。
(場面が変わって)
 成瀬夫人「どうもありがとうございました。木野塚さんにお願いして本当に良かった」
 志村「いや、今回はまあ軽い仕事でした。屈強な男十人ぐらいに囲まれましたが、私が得意の空手でたたきのめしました(伊藤が犯罪者集団をたたきのめした現場に成瀬夫人の息子たかよしがいた以上、こんなフカシをしてもモロバレなのですが)」
 そこで流れるテレビニュース。
 「一千万円の金魚を詐取しようとした犯罪者グループが逮捕されました。逮捕されたのはグループの主犯、高村麗華容疑者(金魚新聞編集長(堀内敬子))(36歳)、実行犯の菊地龍一容疑者(犯罪者集団のボスだった中年男性(津田寛治))(48歳)で*31」云々。
 伊藤「じゃあ、そろそろ行きましょうか」
 志村「おい、サイン」(と言いながら元女優の成瀬夫人からサインをもらおうと色紙を取り出そうとする志村)
 伊藤「忘れてました。調査報告書に署名をお願いします。これで全て終了となります(そっちのサインじゃねえ!と言う顔つきの志村)」
 (志村の心の声)「サインは諦めよう。しかし高峰和子と握手だけはして帰ろう」
 成瀬夫人と握手しようとする志村に駆け寄り、志村に握手する夫人の息子・たかよし。
 たかよし「金魚が奪われずに済み、犯人も逮捕されたのは探偵さんのおかげです、ありがとうございます」
 ネクタイを締めたスーツ姿のたかよしを見て 
 伊藤「どうしたんですか?」
 成瀬夫人「今日、就職面接があるんです(嬉しそうに)」
 たかよし「桃世さんもありがとうございました。せっかく助けてもらったのに引きこもりのままでは悪いので頑張って働いてみます」
 伊藤「そう、頑張ってね」
 たかよし「もしお帰りでしたら僕が車でお送りします」
 志村「いや握手がだな(成瀬夫人と握手したいが、はっきりそう言うことに躊躇してしどろもどろの志村)」
 たかよし「握手がどうかしたんですか、今僕としたじゃないですか?。」
 志村とたかよしのとんちんかんなやりとりを苦笑しながら見ている伊藤と成瀬夫人。成瀬夫人の様子からこの事件解決の最大の功労者は志村ではなく伊藤だと言うことを彼女が分かってるが、志村に気を遣ってあえて突っ込まないらしいことが示唆される。
(場面が変わって、志村の自宅)
 妻(岸本加世子)「事件が解決したんだ?」
 志村「ああ、大変だったよ、危ない奴らに命を狙われて」
 妻「危険なことは止めて下さいよ」
 志村「ああ(嬉しそうな顔で)」
 妻「ゴミ出しをあなた以外の誰がやるんですか?」
 志村「(しょげた顔で)ゴミ出しかよ(とつぶやく)」
 妻「そうだ、お土産があるのを忘れてた」
 志村「お土産?」
 妻「(精力ドリンクを取り出しながら)これを飲むと疲れが吹き飛ぶんだって。何か今夜は寝付きが悪そうなの。あなた、今夜は私につきあって」(完全に「となりのシムラ5」の第六コント「二人きり」の再現です)
 ドギマギして、志村「一寸トイレ行ってくる」といって、トイレに向かう途中で段ボール箱に足をぶつける志村。
 段ボール箱の中には大量の精力ドリンクが!。苦笑いする志村。
(場面が変わって、探偵事務所)
 探偵事務所にかかってきた電話を取った伊藤(探偵事務所の電話は未だに今時あり得ない昭和の黒電話)。
 伊藤「はい、木野塚佐平探偵事務所でございます。かしこまりました。早速伺います」「所長、誘拐事件です」
 志村「誘拐されたのは誰だ」
 伊藤「ハムスターです」
 志村「(苦笑しながら)ウチは動物専門じゃねえんだけどなあ。行くぞ」
 伊藤「急ぎましょう」
 事務所を出て行く志村、伊藤。事務所の中には「捜査を口実」に「高峰和子ファン」志村が伊藤にとらせた「成瀬夫人と志村のツーショット写真」が飾ってある。
 志村のナレーター「どんな依頼にも応える、私は」
(完)

 と言うことで紹介しました。こうしたコント作品は「志村や岸本、伊藤の演技」を見ないと、あらすじを読んだだけでは面白さが充分伝わりませんが。

・なぜ、『清子さんが真犯人をかばっていて、その真犯人がたかよしだ』『たかよしのバックに事件の黒幕がいる』と伊藤が推理したのか、それともただの山勘、当てずっぽうなのか、明確な説明がない
・そのように推理した伊藤は成瀬夫人の『息子はハーバード大学』という発言を何らかの理由で「嘘だ」と見抜いたのか、それともただの山勘、当てずっぽうなのか、明確な説明がない
・清子さんが『真犯人がたかよしだ』と思ってるなら、彼女が正直に伊藤らに話しさえすればほとんど推理する必要もない

という「謎解き要素の弱さ」が残念ですが、お笑いとしては「うまいなー」と言うところが色々ありますね。
【1】

 佐平(志村)「俺、新しく仕事をやりたいんだ」
 妻(岸本加世子)「何がやりたいの?」
 佐平「探偵だ」
 妻「探偵?。どうやって?」
 佐平「まず事務所を開いてだな」
 妻「パンティーになるのに事務所が必要なの?」
 佐平「バカだな、お前。私立探偵の探偵だよ。パンティーはどうでもいいんだ。俺は警察に長年勤めていたし、フィリップ・マーロウも全作品読んでるから問題ないと思うんだ。駄目か」
 妻「朝のゴミ出しは誰がやるの?」
 佐平「それは今まで通り俺がやるから安心してくれ。」

伊藤「机にテープが貼られたままです。外の看板もピカピカだから、まだ開業したばかり。求人広告を出してから三日は経ってるけど誰も応募が来ない。ウチに注文が来たのが3日前ですから。求人広告を出す前に観葉植物は頼まないでしょう。応募がないと思ったのは私の顔を見て明らかにがっかりしていたから」
 (志村の心の声)「美人秘書という点で問題はあるものの、推理能力は申し分がない」
 志村「合格だ」
 伊藤「え、面接が始まってたんですか?」
 志村「名前は?」
 伊藤「梅谷桃世」
 志村「梅谷君を木野塚探偵事務所の秘書として採用する」

 時間が1時間と短いので「何で探偵になりたいの?(岸本)→俺は昔からフィリップ・マーロウに憧れてるんだ*32(志村)」「何ですか合格って?(伊藤)→秘書採用試験だ(志村)」などとやっているわけにいかず、笑いにつながりそうにないところはどんどんはしょって、このくらいテンポ良くやらないと話が進んでいかないんですが、テンポ良く掛け合いが進んでいくし、それに違和感もあまりない。
 ベテラン岸本(1960年生まれ)は当然として、まだ若い伊藤(1994年生まれ)のうまさには舌を巻きます。

【2】

 伊藤「豊胸手術の偽物にだまされて八万円の広告料なんか払うからこんなことになるんですよ!」
 志村「すまん」
 編集長「悪いけど本物なの。その金魚を素直に渡しなさい。命だけは助けてあげるわ」
 伊藤「嫌だ。あんたみたいな女は大嫌い」
 志村「(顔を引きつらせながら)おい、刺激するな」
 伊藤「うるさいぞ、ジジイ」
 志村「ジジイ?」
 伊藤「あんた、若作りしてるけど、結構、年くったおばさんでしょ」
 編集長「何ですって!」
 志村「(顔を引きつらせながら)おい、やめろ。拳銃持ってるんだぞ」
 伊藤「その拳銃だって偽物のモデルガンでしょ?」
 志村「(顔を引きつらせながら)おい、やめろ」
 偽物でないことをアピールするために天井めがけて発砲する編集長。
 編集長「次はこの人の脳みそよ(といいながら、腰を抜かしてへたり込んだ志村の頭に銃を突きつけ脅す編集長)」
 志村「(顔を引きつらせながら)渡してくれ」
 悔しそうな顔つきで編集長をにらみながら仕方なく金魚の入った箱を渡す伊藤を銃で威圧しながら立ち去る編集長。
 志村「済まん」
 伊藤「いやこちらこそ。すぐに渡すと怪しまれるので」
(場面が変わって)
 中国人富豪の元に金魚を持ち込む編集長。しかしそれは成瀬家から伊藤が持ち出した金魚のおもちゃであった。伊藤にだまされたことに気づき、顔を引きつらせる編集長。

というのも見ていて、伊藤の「すぐに渡すと怪しまれるので」がなくてもそれ以前に落ちが読めた人は居るでしょうが、ここも「うまいな」と。
 この場面での伊藤の演技のうまさもありますが、これ以前の

 金魚新聞の編集長(堀内敬子)「御社で私どもの新聞に広告を出して頂けたらと思いまして(と言いながら胸の谷間や、太ももをそれとなく強調、こうしたドリフやバカ殿のお色気ネタで良く流れる音楽がBGMで流れる)」
 志村「(美人に弱いので)是非広告を出させて頂きます」
 伊藤「え?」
 金魚新聞の編集長「通常十万円の所、八万円にサービスします(と言いながら胸の谷間や、太ももをそれとなく強調、こうしたドリフやバカ殿のお色気ネタで良く流れる音楽がBGMで流れる)」
 伊藤「所長、ウチにはまだそんな余裕は」
 志村「(美人に弱いので)検討します」
 伊藤「所長!、八万円なんか絶対駄目ですからね」
 志村「(美人に弱いので)前向きに検討します」

 伊藤「早くあけて下さいよ、電話が切れちゃう」
 志村「カギが四個有るからどれだか分からないんだ」
 伊藤「何で分かるようにしとかないんですか!、いつまでもたついてるんですか!」
 開けてから部屋に入るが電話が切れてしまう。
 志村「そもそもお前はカギ持ってないのかよ(逆ギレ)」
 伊藤「持ってました」
 志村「助手のお前が開けろよ!(といってひっぱたく)」
 伊藤「痛いなあ」(明らかに往年のドリフコントです)
 そして部屋を出て、伊藤が鍵をかけるとまた電話の音が。
 志村がまたカギを開けられず、もたついているところを伊藤が「いつまでもたついてるんですか!」「私が開けます」であける。

 志村「あの高峰和子だぞ!」
 伊藤「私、知らないし(うかれまくる高峰ファンの志村に対し仏頂面で)」
 志村「デビュー作が女子高生ブルースというんだよ。しかし人気絶頂で結婚して引退したんだ。ショックだった」
 伊藤「(鞄からカメラを取り出す志村を見ながら)所長、何してるの?」
 志村「写真とるんだよ。俺は写真撮影で忙しいからお前が事情聴取してくれ。お前助手だろ?」
 伊藤「お前探偵だろ?」
 志村「お前って何だよ!(といってひっぱたく)」
 伊藤「痛いなあ」

 志村「早速お話をお伺いたいんですが金魚の名前は」
 伊藤「金魚の名前はどうでもいいでしょ」

 志村「まだ誘拐と決まってないからな。単なる家出かもしれない」
 伊藤「(金魚が家出?、て)はあ?(呆れた様子で)」

 志村「私も実は同じ推理をしていた」
 伊藤「何故って聞いたのに?」
 志村「うるさいな。助手の意見を参考に聞いちゃいけないのか、ウア?。大体、助手の意見は(助手は探偵の部下なのだから)探偵の意見と同じようなもんだろ」
 伊藤「焦ってるから早口ですね」

 志村「(伊藤から、こう言えと耳打ちされて、棒読みの調子で)あなたは、たかよし君が、犯人だと、確信されてますね。(棒読みなので伊藤から「もう一度きちんと」と言われて)」
 「もう一度きちんと(志村のとんちんかんさにあきれ顔の伊藤)」
 「(伊藤のあきれ顔を見て、自分の勘違いに気づいて今度はまともな物言いで)あなたは、たかよし君が犯人だと確信されてますね。」

と言う前振り(志村とのやりとり)がここで効いているわけです。編集長相手に切れる伊藤が「金魚のすり替えをばれないようにするための演技ではなく」マジで切れてるように見えてしまう。

【3】

 志村「あの高峰和子だぞ!」
 伊藤「私、知らないし(うかれまくる高峰ファンの志村に対し仏頂面で)」
 志村「デビュー作が女子高生ブルースというんだよ。しかし人気絶頂で結婚して引退したんだ。ショックだった」

というのも高橋恵子(1955年生まれ)のデビュー作「高校生ブルース」(1970年)について知ってる人間には

・志村(1950年生まれ)の年代なら「高校生ブルース」を知っていても不思議はないが、伊藤(1994年生まれ)の年代ならそりゃ知らないよな

と「クスッ」と来るやりとりです。
 一方で「高校生ブルース」を知らない世代には面白くも何ともない普通のやりとりですが、「話のテンポを遅くする」などの蛇足にまではなってない。
 むしろファンがひいきの女優についてデビュー作を語るのはごく自然です。
 まあ、考えれば考えるほど「良く出来たコントだな」と。
 たとえば

・妻「朝のゴミ出しは誰がやるの?」

・妻「危険なことは止めて下さいよ」
・志村「ああ(嬉しそうな顔で)」
・妻「ゴミ出しをあなた以外の誰がやるんですか?」

というのは突拍子もない表現とは言え「妻の照れ隠し(ゴミ出しを毎日きちんとやるつもりなら危ないことはしないだろうという気持ちの表明)」とも理解可能なわけです。 
 あるいは「助手は巨乳にしたい」「巨乳の金魚新聞編集長に上手く丸め込まれて八万円払う」などという志村の「巨乳にこだわるスケベぶり」も見ていてばかばかしい。それがあるからこそ『貧乳で何が悪い!』と最後に暴れまくる伊藤のアクションシーン(?)も実にばかばかしくて笑える。
 あるいは

 志村「一寸待てよ、代金がまだだろ」
 伊藤「代金はいいです。サービスです」
 志村「何でよ?」
 伊藤「ウチの社長、ギャンブルで借金抱えて今朝失踪したんです。」
 志村「社長が失踪したのに何で配達するの?」
 伊藤「注文を受けた以上、配達しなかったらお客さんが困るから。配達先も5、6件だったし、これが最後です」
 志村「親切だな。(帰ろうとする伊藤に)一寸待てよ。ただで返すような野暮なことはしないよ。時間あるんだろ、何か飲んでいけよ、何にする。コーラでいいか?」
(場面が転換して)
 コーラを飲む童顔の伊藤を見ながら
 伊藤「秘書の応募はあったんですか?」
 志村「何で秘書を応募していると?」
 伊藤「誰も使ってない新しい机があるからです」
 志村「何で使ってないと分かる?」
 伊藤「机に(購入した時の?)テープが貼られたままです。外の看板もピカピカだから、まだ開業したばかり。求人広告を出してから三日は経ってるけど誰も応募が来ない。ウチに注文が来たのが3日前ですから。求人広告を出す前に観葉植物は頼まないでしょう。応募がないと思ったのは私の顔を見て(応募者ではないのか、と)明らかにがっかりしていたから」

という伊藤と志村のやりとりからは

・「伊藤は好人物(志村が言うように配達しない方が普通でしょう)」 
・「志村も好人物(たいした物ではないとは言え、『代金無料でそのまま帰すなんて野暮なことはしない。たいしたもんじゃないがコーラでも飲んでけ』という必要は別にないわけですから)」
・「伊藤は以前から志村同様、探偵への憧れがおそらくあった(志村に頼まれても居ないのに推理を披露する必要もない)」

ということでお互い何のかんの言っても、名コンビ(?)として探偵事務所を続けていく理由(志村と伊藤の人間関係、伊藤の探偵への憧れなど)が上手く描かれてるかと思います。

【参考:加藤武の等々力警部】
 志村「探偵佐平」での「志村の珍捜査」を見て連想した「加藤武の等々力警部」についていくつか記事を紹介しておきます。

加藤武 生前明かしていた「犬神家の一族・等々力警部」の役作り | アサ芸プラス
 「よしっ、わかった!」と威勢のいい声を上げるが、まるで見当違いな推理に観客は大笑い。金田一耕助シリーズにおける等々力警部は、突然世を去った名優・加藤武(享年86)のハマリ役だった。
 黒澤明*33市川崑*34今村昌平*35深作欣二*36‥‥日本映画界の巨匠たちに愛された個性派の脇役が加藤武である。悪役から人情派まで幅広くこなし、文学座代表たる演技力に定評があった。
 週刊アサヒ芸能には近年、何度か登場して「役作り」を明かしている。
 例えば「仁義なき戦い」(73~74年、東映)では、腰抜けの打本昇*37組長に扮したが、「これほど痛快な役はなかった」と加藤は言う。
 金子信雄扮する山守義雄組長にイビられ、満座の前で悔し涙を流す。
「金子さんの憎たらしい演技がうまいんだ。で、俺がヒイヒイ泣くんだが、言ってみれば金子さんの山守が大悪党、俺のが小悪党だよ。卑怯未練なだらしない様が、どこかコミカルで妙な現実感がある。今まで演じた中で最も気に入っているよ」
 やがて打本は、抗争相手の武田明(小林旭)に、密告を条件に借金を申し込む。武田に「このボケ!」と一喝される姿は、打本らしかったと加藤は言う。
「ヤクザを辞めてでも生き延びたい。かっこいいのはどんどん消されて、山守とか打本とか悪党は生き延びる。現実を見ると、あの原発事故にも当てはまるんじゃない? 現場の作業員は放射能と戦い、上の者はおびえて視察にも行かないような状況がね」
 そんな加藤の最もポピュラーな当たり役は、「犬神家の一族」(76年、角川春樹事務所)に始まる金田一耕助シリーズの等々力警部だろう。いつも早合点して「よしっ、わかった!」と犯人を特定するが、当たったためしはない。これぞ加藤の緻密な演技プランだった。
金田一シリーズは(ボーガス注:『犬神家の一族』の『生首菊人形』、『病院坂の首縊りの家』の『生首風鈴』など)凄惨な場面が多いから、コメディリリーフとして等々力が出るとホッとする効果がある。それに観客も犯人は誰かと推理して観ている。そこに警部が『よしっ、わかった!』と見当違いなことを言う。客に『バカだなあ』と優越感を持たせるのが役目なんだよ」
 粉薬を吹きこぼすシーンもおなじみだが、これも加藤の案で「龍角散3にクリープ7」で調合。画面に最も映える比率を考えてのことだ。

加藤武 金田一耕助Part2 五人の金田一篇
 市川崑監督の金田一シリーズに欠かせない名脇役。「よ~し!わかった!」という威勢の良い名台詞と共に自信たっぷりに、的外れの推理をぶちかます愛すべきキャラクター。
 オールバックのヘアスタイルにラテン系の口髭、そしていつも着ている黒のスーツ…。毎回、金田一を紹介されると「あれ?どこかで会ったような…」という怪訝な表情をしてからバカにしたように鼻で「フン!」と笑う。おどろおどろしい横溝正史のミステリーでコメディリリーフを一手に引き受けている加藤武は、ある意味、石坂浩二以上に金田一シリーズには、なくてはならない存在かも知れない。と、言うのも市川監督版の本シリーズで、唯一、石坂浩二金田一を演じなかった『八つ墓村*38』においても、お馴染みの出で立ちで等々力警部として登場。いやそれどころか、市川監督が『病院坂の首縊りの家』終了直後に製作した浅見光彦の探偵もの『天河伝説殺人事件』でも、刑事役で出演するなど、シリーズ全体のハブとなっているのだ。
 当初、この決めゼリフは『犬神家の一族』の脚本には存在しなかったという。撮影中に加藤武が大袈裟に演じたところ市川監督が「これは面白い!繰り返してやろう」と現場で決定。このセリフをオーバーに言うために役の性格も単純な男に変更。まさか、加藤武が発した一言がシリーズを通じてキャラクターのイメージまで変えてしまう事になろうとは本人も予想し得ない出来事だった。
 左手を握った右手でポンと叩き、叩いた右手を高くかざしながら「よ~し、わかった!」が出てくるとドロドロしたドラマの中でホッとさせられる…言わば箸休めみたいな存在。あまりにムチャクチャな推理に部下の刑事たちすら「へっ?」と、唖然としてしまう。『女王蜂』では、勝手に犯行現場に金田一を通してしまった伴淳三郎*39演じる警官を頭から怒鳴りつけるシーンが印象的だが、のべつまくなしイライラして怒鳴っている彼には胃薬は欠かせないアイテム。時には、口に含んだ粉クスリを豪快に撒き散らしながら怒鳴る姿も忘れられない。ちなみに、この粉クスリは、撮影用に“龍角散”と“クリープ”を混ぜ合わせたもの。この調合が難しいらしく加藤武自ら美術スタッフに細かく注文していたという。リメイク版『犬神家の一族』のパンフレットには8:2の配合が最適な吹き出し方が出来ると記載されている。部下にしてみると大変口うるさい上司だが、実は誰よりも情の厚い一面を持ち合わせている。特に、その性格が顕著に表れたのは『病院坂の首縊りの家』で演じた等々力警部だ。佐久間良子扮する犯人が犯行を起こすきっかけとなったある写真の乾板(その中には彼女の女として明るみに出せない姿が収められている重要な証拠品なのだが)を金田一が犯人の心情を察し、破壊するために持ち出したのをあえて見て見ぬ振りを決め込む。また、『犬神家の一族』のラストでは、いがみ合っていた金田一を見送りに行こうと、大事な消防署長との打ち合わせを待たせる事までしている。
 「僕の役は観客に優越感を持たせる役で、自信を持って見当違いの事を言うと、お客さんは笑って僕の事を見下すわけです。でも、それはとっても大事な事なんだよね。その役目を市川監督は全て僕にやらせたんですよ」と語る(金田一耕助DVDボックスに収録)。
 最後に「私の演じた警部を愛してくれるファンの方がいるというのは、役者冥利に尽きる事です」と語っていたのが印象に残った。

週刊金田一 「加藤武」 | たまひめ。のブログ
 加藤さんと言えば「よし、分かった!」ですよねぇ。
 2006年の(ボーガス注:1976年版と同じ市川崑監督、石坂浩二主演でのリメイク版)「犬神家の一族」。実は、私はがっかりした一人なんですが加藤さんの「よし、分かった!」は30年前と変わらず輝いていて、感動しました。
 本当に若々しくすばらしかった。
 そして加藤さんと言えば、胃薬!!
 必ず登場します。
 犬神家ではしゃべりながらボロボロこぼす程度だったのに、獄門島から派手に吹き出すようになった。
 最後の病院坂になると、吹き出す技術も上達したのか、粉の量を増やしたのか、見事な噴出を見せます。
 加藤さん・・・いろいろお茶目なシーンが満載で、すべてをチェックしてたらとてもシリアスな映画のシーンとは思えず、何度も笑ってしまいました。
 加藤さんの演じる警部さんは、最初はとにかく感じ悪い人(どこかほほえましいんだけど)。金田一をずっと小馬鹿にした感じが笑えます。
 加藤さんは毎回、金田一とは初対面という設定。
 だけど、一瞬「どこかであったことあるか・・・」という顔をするのが、ちょっとだけ視聴者をドキドキさせます。
 たいていは「何だね、君は!!」と言い、「探偵さんです」と紹介されると、しばらくぶつぶつ思い出そうとする間がある。
 でも結局思い出せず・・・
 病院坂ではちょっと思い出しそうになるんです。
◆等々力「あの男どっかで会ったような気がするんだが・・・。君、知ってるかね」
◆阪東刑事*40「いえ、全然」
 毎回、初対面のはずなのに、探偵に対する偏見は変わりません。
◆等々力「無責任なんだなぁ。探偵なんてもんは・・・」 
 繰り返し出てくるこのセリフも大好きです。
 最初は、金田一に感じ悪い等々力警部さんですが、映画の最後、本当の本当の最後にはとってもステキなセリフを言って、胸をじーーーんとさせてくれる。
 「女王蜂」の最後では、初めて満面の笑みで金田一に声をかけてきた。
◆等々力「毛糸が編めるのか?すごいもんだなぁ」
金田一「いや、少し上手になりたいと思いまして」
◆等々力「神尾秀子*41もよく編んどったな」
金田一「今度の事は、どうも僕の失敗でした」
◆等々力「真犯人のことか?いや、君は間違ってなかったさ」
 本当は加害者の悲しい境遇についても、ちゃんと分かってくれる方なんです。
 「病院坂」でも、さりげない優しさを見せてくれた。
◆阪東刑事「あ、主任、重要な証拠品の乾板はどうなりました?」
◆等々力「そんな物があったかな」
◆阪東刑事「えーーーーー!!!」

*1:「警視庁の経理課を定年退職した」という設定であるなら、いかに「定年後、探偵事務所を開業するような変人」であっても「ある種の常識人(そうでなければ警察の経理課で定年まで勤務などあり得ないので)」として演技しなければならず、「見ては居ませんが」おそらくは馬鹿殿とは違った演技が求められるわけです。

*2:単発物のようですが、シリーズ化して欲しかったところです。

*3:1988年『ぼくと、ぼくらの夏』(現在は文春文庫)でサントリーミステリー大賞読者賞を受賞しデビュー。著書『彼女はたぶん魔法を使う』、『探偵は今夜も憂鬱』、『初恋よ、さよならのキスをしよう』(以上、2006年、創元推理文庫)、『風少女』、『刺青(タトゥー)白書』、『誰もわたしを愛さない』、『不良少女』、『夢の終わりとそのつづき』、『林檎の木の道』(以上、2007年、創元推理文庫)、『木野塚探偵事務所だ』、『木野塚佐平の挑戦だ』(以上、2008年、創元推理文庫)、『プラスチック・ラブ』(2009年、創元推理文庫)、『捨て猫という名前の猫』(2012年、創元推理文庫)、『片思いレシピ』(2014年、創元推理文庫)、『海泡』、『魔女』(以上、2018年、創元推理文庫)、『少女の時間』(2019年、創元推理文庫)など(ウィキペディア樋口有介』参照)

*4:レイモンド・チャンドラー(1888~1959年)が生み出したハードボイルド小説の探偵。「タフでなければ生きて行けない。優しくなければ生きている資格がない」(『プレイバック』)の名台詞で知られる。以下の作品が映画化されている。『大いなる眠り』(1946年、ハンフリー・ボガート主演(日本公開での題名は『三つ数えろ』)、1978年、ロバート・ミッチャム主演)、『湖中の女』(1947年、ロバート・モンゴメリー主演)、『かわいい女』(1969年、ジェームズ・ガーナー主演)、『ロング・グッドバイ』(1973年、エリオット・グールド主演)(ウィキペディアレイモンド・チャンドラー』参照)

*5:1960年生まれ。1999年、映画『菊次郎の夏』で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞(ウィキペディア『岸本加世子』参照)

*6:見た感想を言えば、珍捜査とはいえますが「迷推理」ではないですね。推理のほとんどは伊藤が行い、その伊藤の推理に「つまり、ホニャララと言うことですね、金田一さん(市川崑監督、石坂浩二主演の金田一映画での等々力警部(加藤武))」的なことしか志村は言わないからです(そして石坂・金田一が「違います」と加藤・等々力に突っ込むように伊藤も志村に「違います」と突っ込む)。

*7:いかりや長介のこと

*8:原作は笹沢佐保

*9:原作は『赤かぶ検事奮戦記』で知られる和久峻三

*10:赤かぶ検事奮戦記』でのフランキー堺でわかるように、いかりや出演作品のウチ、和久峻三作品には若干コミカルな面はあります。

*11:内村光良ウッチャン)が出演した『サラリーマンNEO』のこと

*12:志村が出演した『となりのシムラ』のこと

*13:1971年生まれ。劇団四季在籍中は『キャッツ』、『美女と野獣』、『ウエストサイド物語』、『夢から醒めた夢』、『エビータ』など数々のミュージカル作品でヒロインをつとめた。1999年に劇団四季を退団後も、『レ・ミゼラブル』、『屋根の上のバイオリン弾き』、『12人の優しい日本人』、『コンフィダント・絆』、『ガールフレンズ』など数々の芝居やミュージカルの舞台に出演している(ウィキペディア堀内敬子』参照)。

*14:1993年生まれ。2019年に映画『パラレルワールド・ラブストーリー』、『見えない目撃者』の演技で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞(ウィキペディア吉岡里帆』参照)。

*15:ウィキペディア8時だョ!全員集合』によれば、放送開始は1969年からだが、志村の出演は1974年から。

*16:以下、出演者名は全て「となりのシムラ」のテロップを参考に書いています。

*17:「探偵佐平」でも佐平(志村)を「パソコンもろくに使えないロートル」として馬鹿にする警察の部下として最初の方に少しだけ出てきます(本編にはあまり関係がない)。

*18:とはいえ佐藤も割とさらりと演じていますが

*19:ググったら実際にそのようですね

*20:ググったら実際にそのようですね

*21:それまで岸本加世子演じる奥さんはそんな感じは全くなかったのが、テレビに煽られて豹変する辺り(しかもあくまでも真面目な顔)が「クスッ」とさせられます。

*22:著書『かわいい女』(創元推理文庫)、『大いなる眠り』、『湖中の女』、『さらば愛しき女(ひと)よ』、『高い窓』、『長いお別れ』、『プレイバック』、『リトル・シスター(注:創元推理文庫の『かわいい女』と内容は同じ)』(以上、ハヤカワ・ミステリ文庫)

*23:ここで「金魚です」と言わないのは勿論「力士か?」という志村のギャグをかますためであり、不自然ですが、テンポ良い掛け合いなので、あまりに気にならないですね。

*24:もちろんキングオブザイヤーとかけてる。

*25:明らかに「はあ?」という変なことを言っており、ドリフや「大丈夫だあ」なら「志村が大げさな身振り手振りをしたり、馬鹿馬鹿しさを強調するBGMが流れたりするところ」でしょうが、伊藤の「はあ?」以外には特にそうした強調もなく、さらりと描かれています。

*26:アラブ首長国連邦を構成する首長国の一つ「ドバイ首長国」の首都

*27:まあ、あえて突っ込めば推理としては弱いですよね。「持ち出した上で殺す」と言う可能性はゼロではないので。

*28:小生はここでテレ朝「江戸川乱歩の美女シリーズ」での船越警部(荒井注:志村のドリフ加入前のドリフメンバー)の「明智君(天知茂)の推理を聞きたい→僕も実は同じ推理をしていた」を思い出しました。志村が荒井を念頭にこのギャグをやったのかはわかりませんが。

*29:この場面、金田一の推理を聞きながら途中から唐突に「よし、わかった!」「つまり、ホニャララと言うことですね、金田一さん!(市川崑監督、石坂浩二主演の金田一映画での等々力警部(加藤武))」と発言し「違います」と金田一にダメ出しされる加藤武を連想しました。加藤も「コメディアン志村と違い、新劇界の重鎮でシリアスな芝居もする(むしろその方が多い?)」し、そもそも横溝原作ではあそこまで等々力警部はとんちんかんではない(そのため横溝ファンには等々力を滑稽に描いたあの描写を嫌う人も居る)のですが、良くああした演技をした物だと感心(?)します。

*30:1965年生まれ。俳優を目指して上京し、アルバイトをしながら小劇場系の劇団員として活動していた。そしてアルバイト先である都内の喫茶店に来店した北野武ビートたけし)に「自分は役者を目指しています。北野さんの映画で使って欲しい」と売り込んだことがきっかけで、北野監督作品『ソナチネ』(1992年、喫茶店のボーイ役)で映画デビューを果たす。その後も北野映画『教祖誕生』(1993年)、『みんな〜やってるか!』(1995年)、『キッズ・リターン』(1996年)、『HANA-BI』(1998年)に出演。また、数多くの映画やテレビドラマ、舞台、アニメ作品での声優など幅広く出演を重ねている(ウィキペディア津田寛治」参照)

*31:堀内は1971年生まれ、津田は1965年生まれなので役の設定は実年齢より若い。

*32:志村がマーロウに憧れてることはこの時点で既に視聴者には分かっています。

*33:加藤は『七人の侍』(1954年)、『蜘蛛巣城』『どん底』(1957年)、『隠し砦の三悪人』(1958年)、『悪い奴ほどよく眠る』(1960年)、『用心棒』(1961年)、『天国と地獄』(1963年)、『乱』(1985年)に出演(ウィキペディア加藤武』参照)。

*34:加藤は『石坂浩二金田一耕助シリーズ』(1976年、1977年、1978年、1979年)、『天河伝説殺人事件』(1991年)、『八つ墓村』(1996年)に出演(ウィキペディア加藤武』参照)

*35:加藤は『豚と軍艦』(1961年)、『日本のいちばん長い日』(1967年)に出演(ウィキペディア加藤武』参照)。

*36:加藤は『仁義なき戦い 代理戦争』(1973年)、『仁義なき戦い 頂上作戦』(1974年)に出演(ウィキペディア加藤武』参照)。

*37:これも「金田一の等々力警部」同様、かなりコメディ色の強い滑稽なキャラです。

*38:野村芳太郎監督、渥美清金田一の1977年版とは別に1996年に「市川崑監督、金田一豊川悦司」で『八つ墓村』の映画が製作されている。

*39:1908~1981年。喜劇俳優として活躍する一方、1964年、内田吐夢監督、水上勉原作の『飢餓海峡』の老刑事の演技で毎日映画コンクール男優助演賞を受賞するなど、シリアスな演技にも独特な味わいを見せた(ウィキペディア伴淳三郎」参照)。

*40:岡本信人が演じた(ウィキペディア病院坂の首縊りの家』参照)

*41:岸惠子が演じた(ウィキペディア「女王蜂」参照)