新刊紹介:「経済」5月号

「経済」5月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
◆随想「ヒロシマナガサキを人類の記憶に」(林田光弘*1
(内容紹介)
 核兵器廃絶の実現のために「広島、長崎の被爆体験」を世界各国に広めていく取り組みについて述べられている。


世界と日本
米大統領予備選の様相(西村央)
(内容紹介)
 「高等教育の無償化」「国民皆保険」「累進課税の強化」など社民政策を主張するサンダースがどれほど民主党大統領予備選挙で善戦するか、サンダースが予備選で勝利し民主党候補になる場合は勿論、そうではない場合*2も彼の主張が、どれほど大統領選挙本戦に影響するかが注目されるとしている。


◆新型コロナ対策と労働組合田中均
(内容紹介)
 休業補償の充実要求など、世界各地の労組の「コロナに対応した運動」が紹介されている。


エチオピア首相の難題(佐々木優)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

ノーベル平和賞に決まったエチオピア首相──これを喜ばないエチオピア人とは | 六辻彰二 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
 ノーベル賞選考委員会は10月11日、今年*3ノーベル平和賞エチオピアのアビー首相に授与すると発表した。
 アビー首相は就任して以来、周辺地域の緊張緩和に実績をあげてきた。
・隣国エリトリアとの領土問題について和平合意を成立
・争いのタネだったナイル河の水利用について(下流の)エジプト政府と協議を成立
・隣国スーダンでの軍事政権と反政府デモ隊の衝突での調停
 それだけでなく、アビー首相は国内の混乱の収束にも取り組んできた。
 エチオピアでは最大の人口を抱えるオロモ人の間に分離独立を求める動きがあり、2015年頃から連邦政府とデモ隊が衝突を繰り返すなか、数百人が死亡したといわれる。2018年2月、連邦政府はオロミア州に非常事態を宣言し、数多くのオロモ人を「テロリスト」として逮捕・投獄した他、多くが殺害されたとみられる。
 こうした混乱のなか、2018年4月、オロモ人として初めて首相に就任したアビー氏は「それまでの政府の行き過ぎ」を謝罪したうえで、収監されていた政治犯を今年2月までに1万人以上釈放。さらに、非常事態の解除、インターネット遮断の解除、オロモ人政治組織の合法化など、民族間の融和に努めてきた。
 ただし、全てのエチオピア人がアビー首相を評価しているわけではなく、むしろ敵意を抱く者すらいる。アビー首相の改革は自由や民主主義の原則には適うものの、これが皮肉なことに民族間の対立を激化させやすくなってきたからだ。
 エチオピアではもともと人口第2位のアムハラ人による支配の時代が長かった。しかし、1970年代に発生した内戦では、各民族がそれぞれアムハラ人主導の政府を攻撃した。
 各民族からなる4つの武装組織は1991年、連合体組織であるエチオピア人民革命防衛戦線(EPRDF)を結成し、これが1993年に全土を掌握。
 ただし、実際には政権内部でその後、人口第3位のティグライ人が主導権を握るようになった。これはEPRDFの発足を呼びかけて内戦終結に道筋をつけたメレス元首相(2012年に死去)がティグライ人だったことによるところが大きい。
 逆に、最大民族オロモ人の間からは、憲法で保障される分離独立の権利に基づき、本当にオロミア州をエチオピアから分離させるべきとの意見も噴出。ティグライ人主導の連邦政府とオロモ急進派の間の対立は徐々にエスカレートし、先述の2018年2月の非常事態宣言に至ったのである。
 つまり、タテマエで分離独立の権利を認め、対等な民族関係を謳いながら、EPRDFの事実上の一党制のもと、実質的には民族対立が力ずくで押さえ込まれてきたのだ。
 こうした背景のもと、とりわけ弾圧されてきたオロモ人の不満を和らげるため、初のオロモ出身の首相に就任したアビー氏は、先述のように周辺国との緊張緩和だけでなく民族間の融和も推し進め、これが国際的に高い評価を得た。
 しかし、それまでの抑圧にブレーキをかけたことは、結果的にオロモ人急進派を活発化させるものでもあった。例えば、非常事態が解除されてから3カ月後の昨年9月には、首都アディスアベバでオロモの若者が政府支持者と衝突し、多くのけが人が出た。
 彼らがどの程度、実際に分離独立を目指しているかは不明だが、貧困や失業などに不満を抱くオロモの若者が急進派に吸収されることで、こうした衝突はむしろ増えている。
 一方、オロモ人が声をあげやすくなった状況は、既得権を握る他の民族の警戒感も呼んでいる。
 今年6月には北部アムハラ州で軍の一部が蜂起し、連邦政府はこれを「クーデタ」と認定して約250人を逮捕。クーデタの首謀者で、連邦政府に銃殺されたアサミネイ・ツィゲ将軍はアムハラ民族主義者として知られ、連邦政府でオロモ人が影響力を増す状況への反感が、このクーデタを呼んだとみられる。
 この騒乱と並行して、首都ではクーデタ鎮圧の責任者だったセアル・メコネン参謀長ら複数の軍高官が銃撃テロで殺害された。セアル参謀長はティグライ人で、この暗殺はティグライ主導のこれまでの体制への不満が、オロモ人以外からも噴き出し始めたことを象徴する。
 各民族の間で分離独立の気運が高まる状況に、オーストリアグラーツ大学のフロリアン・ビーバー教授らは「エチオピアが第二のユーゴスラビア(1990年代に民族間の対立によって崩壊した東欧の多民族国家)になる危険」に警鐘を鳴らしている。
 11日のノーベル委員会の発表を受け、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルがアビー首相の「顕著な業績」を称賛しながらも「平和賞の授与がエチオピアのさらなる人権保護のきっかけにならなければならない」との声明を出したことは、無理のないことだ。


◆日本製鉄の「合理化」計画(大場陽次)
(内容紹介)
 過剰生産力を縮小するとする日本製鉄の合理化計画が取り上げられている。
1)こうした合理化が日本製鉄のみならず日本や世界の製鉄業界にどんな影響を与えるか、また
2)現時点では「整理解雇などの強硬措置」は表明されてないが、今後そのような強硬措置が発動されない保証はなく、労働者の雇用にどんな影響があるか
が今後注目されるとしている。

参考

日鉄閉鎖、地元に衝撃 呉の企業幹部「街衰退の始まり」:朝日新聞デジタル
 呉製鉄所は(中略)協力会社を含めて3千人余りが働く。7日午後、仕事を終えた20代の協力会社の男性従業員は「会社からは何も説明がない。本当にここがなくなるなら、次の仕事を探さなくては」と戸惑う。
 影響は製鉄所内だけにとどまらない。市内には金属加工や機械の卸売りといった関連産業が集積し、製造品出荷額のうち鉄鋼が約3割を占める。さらに設備の補修や運送業者など幅広い業種が連なる。
 機械加工を手がける地元中小企業の社長は「会社の存亡に関わる事態だ」と危機感を募らせる。売り上げの大半は製鉄所の設備まわりの仕事だ。
「従業員の生活を守らないといけない。新規の取引先開拓など、やれることをやるしかない」

ビジネス特集 呉製鉄所 全面閉鎖の衝撃~冬の時代に入った鉄鋼業界~ | NHKニュース
 協力会社を含めると3300人が働く呉製鉄所の全面閉鎖。日本の鉄鋼業界の歴史の中でも極めて異例の決断を、業界最大手の日本製鉄が下した。なぜいま業界のトップ企業が大規模な合理化に踏み出したのか。その背景に迫った。
 なぜ日本製鉄が大規模な合理化に踏み切る必要があるのか。鉄鋼業界を取り巻く経営環境がこれまでにない厳しい状況になっているからだ。要因の1つが、中国の鉄鋼メーカーによる過剰生産と、それに伴う市況の悪化だ。
 また、アメリカと中国の貿易摩擦の影響で海外向けの鉄鋼製品の輸出が落ち込んでいる上、国内も今後、需要の伸びは見込めない。にもかかわらず、国内の鉄鋼メーカーの生産能力は過剰な状態にあり、日本製鉄にかぎらず、生産設備の削減に踏み切らないかぎり収益の改善は見込めない状況になっているのだ。
 こうした背景もあって、2月7日に発表された内容はかなり踏み込んだものとなった。まず、子会社の「日鉄日新製鋼」が持つ広島県呉市の「呉製鉄所」を2023年9月末をめどに閉鎖。さらに和歌山県の和歌山製鉄所にある2基の高炉のうち1基を2022年の9月までをめどに休止することなどが柱だ。
 今回の発表に、閉鎖が打ち出された呉製鉄所の地元は大きな衝撃が走った。
 関係会社も含めるとおよそ3300人の従業員が働いている。周辺を歩くと、製鉄所で働く人がよく利用する飲食店やタクシー、ガソリンスタンドなどがあり、地域の経済を支える存在になっているのがよく分かる。
 日本製鉄は、希望退職は募集せず雇用の場の確保に最大限の取り組みを行うとしているが、会社の長い歴史の中でも例のない“製鉄所の全面閉鎖”となれば、地域に与える影響は避けられない。今回の発表に、関係会社で働く20代の男性従業員は「まだ何も会社から説明を受けていない。どうなるか不安だ。簡単に転勤なんてできない」と不安そうに話した。
 広島県呉市などと緊急対策本部を設置し、10日、初会合を開いた。湯崎知事は、地域経済に与える影響は計り知れないとして、迅速な対策を講じていきたいという考えを示した。
 鉄鋼業界の大規模な設備の削減は今後も続くのか。専門家は、今回の日本製鉄の発表は“始まりの始まりにすぎない”と指摘する。
 鉄鋼業界に従事する人はいまでも全国でおよそ19万6000人に上り、地方の雇用の受け皿としても重要な役割を担ってきた。その役割が担えないほど鉄鋼業界はいま厳しい状況に置かれている。一連の取材の過程で、日本製鉄の関係者は次のように話した。
「強い反発を受けるのは覚悟している。しかしこのタイミングで大規模な再編を行わないと日本の鉄鋼業は国際競争力がなくなり、日本から鉄鋼業そのものがなくなってしまう」。
 反発は覚悟の上で、今手を打たなければ日本から鉄鋼業が消えてしまうという強い危機感がにじむ。
 日本製鉄の今回の決断は、ほかの鉄鋼メーカーにも波及すると見られる。別の鉄鋼メーカーの幹部は、「全面閉鎖は驚いたが、当然の流れだ。需要に見合った生産規模はわれわれも考えないといけない」として再編の可能性を示唆した。

追跡:日鉄9拠点合理化 製鉄所閉鎖、地元に打撃 下請け悲鳴「呉が崩壊」 和歌山、高炉休止に絶句 - 毎日新聞
 鉄鋼国内最大手の日本製鉄(日鉄)が打ち出した合理化策が各地で波紋を広げている。日鉄にとって高炉を擁する製鉄所の閉鎖は初めてで、対象となる呉製鉄所の地元・広島県呉市では「呉が崩壊しかねない」と悲鳴が上がる。
 「製鉄所とは一緒に成長してきたのに、日鉄からは何も説明がない」。
 呉製鉄所を抱える日鉄日新製鋼(日本製鉄が4月に吸収合併する子会社)の1次下請けとして、金属加工を手掛ける広本鉄工所(呉市)の広本祐三社長(60)は憤った。創業は1940年で、戦艦大和を建造した海軍工廠(こうしょう)跡で51年に稼働を始めた呉製鉄所と取引を続け、今では売り上げの8割を依存する。


特集「マルクス経済学のすすめ2020」
◆21世紀に生きる古典・マルクス資本論』(鶴田満彦*4
(内容紹介)
 マルクス資本論の意義として剰余価値論を指摘するなどしているが、小生の無能のために詳細な紹介は省略します。


◆新版『資本論』の刊行とその特徴(山口富男*5
(内容紹介)
 新日本出版社から刊行される新版『資本論』の意義として『新マルクスエンゲルス全集(新メガ)』の成果の反映があるとしている。

参考

新版『資本論』刊行記念講演会『新版『資本論』の特徴と魅力』山口富男日本共産党社会科学研究所副所長)
 新版『資本論』は、一九八〇年代に刊行された新書版を全面的に改訂したものです。
 新書版の完結後、この三〇年の間に、『資本論』をより充実した内容で読むことのできる、新しい条件が発展してきました。
 一つは、マルクスエンゲルスの書いたすべての文章を収める、新しい『マルクス・エンゲルス全集』=略称『新メガ』の刊行が、すすんだことです。二〇一二年には、『資本論』とその準備のための草稿を収録した『新メガ』第二部が完結しました(一五巻二三冊)。その結果、私たちは、『資本論』に関係するマルクスの草稿の全体を、はじめて読むことができるようになりました。また、国内でも、マルクスの二つの経済学草稿、『一八五七〜五八年草稿』と『一八六一〜六三年草稿』が翻訳され、『資本論』第二部、第三部関係の草稿の翻訳もすすみました。
 二つ目には、資料の公開によって、イギリスの『工場監督官報告書』、『児童労働調査委員会報告書』など、『資本論』で利用された公的な報告書、それから経済分野の専門著作の多くが、インターネットやマイクロ・フィルムの利用によって、わが国でも直接、読めるようになったことです。
 こうした条件を生かした研究によって、『資本論』の草稿の状態、マルクス自身の研究の発展史が、詳しくつかめるようになりました。さらに、第二部、第三部の編集にあたったエンゲルスのたいへんな苦労とともに、編集上の問題点も浮き彫りになってきました。
 私たちは、このような条件を踏まえて、新版刊行の準備にあたってきました。
 まず、新版『資本論』の全体的な特徴から、紹介したいと思います。
 はじめに訳文です。翻訳ですからたいへん大事になります。訳文は、新書版での達成を生かして、ひきつづき平易で明快なものをめざし、全体を改訂しました。また、各種の報告書、著作からの引用も直接読めるようになっているのですから、可能な限り原典に当たり直し、訳文や数字などを改訂しています。
 つぎに訳語です。『資本論』を執筆するなかでつくられたマルクス独自の重要概念である「独自の資本主義的生産様式」と「全体労働者」について、今回、訳語を統一しました。それぞれの用語の内容については、はじめて登場する箇所で訳注をつけて説明しています(第一部第五篇第一四章、同第四篇第一一章)。
 訳注については、大きく改訂し、相当数の訳注を新たに加えました。新しい訳注では、『資本論』の著作構成の変化、恐慌論、再生産表式論、未来社会論などでのマルクス自身の探究と発展を重視しました。さらに、エンゲルスの編集上の問題点を検討し、この面での訳注を充実させ、必要な場合には、マルクスの草稿そのものを訳出することにしました。
 また、経済学史、一九世紀の政治史や諸事件などの歴史的事項についても、その内容をつかめるように、大幅に訳注を増やしています。
 マルクスの独特のいいまわしについても、注意を払いました。たとえば、マルクスは、この人物は、〝取引所のピンダロス〟、〝自動化工場のピンダロス〟、などといいます。新版では、なぜ、このような呼び方をするのか、訳注で、つぎのように説明しています。
ピンダロス
 古代ギリシアの叙情詩人。オリンピア祭での競技の勝利者への賛歌で知られる。マルクスは、資本主義社会のあれこれの諸制度の誇大な礼賛者にたいして、しばしば、この詩人の名を借りて皮肉った(第一部第二篇第四章)。
 『資本論』全三部は、よく知られているように、第一部だけが、マルクスによって仕上げられました。第二部と第三部は、マルクスの死後、残された草稿をエンゲルスが編集したものです。こうした経過も反映して、新版『資本論』には、全三部のそれぞれに、改訂の特徴が生まれました。
 つぎに各部ごとの特徴を紹介したいと思います。
 まず、第一部「資本の生産過程」です。
 翻訳上の底本は、一八九〇年に刊行された第一部第四版を使いました。この版が、エンゲルス校閲した最後の版となっているからです。
 第一部の改訂では、一八六七年の初版にたいするその後の版での書き換え、また、マルクス自身が独自の意義をもつと語ったフランス語版『資本論』(一八七二〜七五年)とその成果を反映させた第三版(一八八三年)、および第四版(一八九〇年)での改訂個所を重視しました。この面での新しい訳注は、新たに一〇〇カ所あまりに増えています。
 初版では、「価値形態」論が本文と「付録」で二重に叙述されていました。マルクスは、第二版(一八七二〜七三年)でそれまでの二重の叙述を一本化し、第一章「商品」を書き直しました。新版では、この経過を訳注で示し、必要な場合には、その後の版で取り除かれた叙述や原注も訳出しています。
 マルクスは、第一部に一一〇〇を超える原注を付けています。新版では、これらが、初版以降、第四版までのどの版でつけられたものか、わかるようにしました。たとえば、マルクスは、第二版で、新たに三八の注を追加し、一一カ所で追記を加えています。
 このような改訂の結果、第一部では、叙述改善に努めたマルクスの足跡が、これまで以上につかみやすくなったと思います。
 つぎに、第二部「資本の流通過程」です。
 翻訳上の底本には、一八九三年に刊行された第二版を使用しました。これも、エンゲルス校閲した最後の版となったものです。
 新版では、第二部の初版と第二版で叙述の異なる個所を示し、エンゲルスが草稿に付け加えた文章や追加した注、また、草稿の読み誤りなどについて、訳注で、くわしく指摘することにしました。これに関連した新訳注は、一一〇カ所あまりとなります。また、三つの篇の表題、二一の章の表題、それから節の表題についても、これまでの訳注を改訂し、マルクスの草稿との違いについての記述を充実させました。
 マルクスの残した八つの草稿と第二部におけるその利用状況については、最近の研究による情報を示し、恐慌論などでは、関連するマルクスの草稿を訳出することにしました(第二篇第一六章の「注32」、第三篇第二一章の末尾など)。
 こうして、エンゲルスの編集上の問題点も、『資本論』にそくして、具体的に検討していただけるものと思います。
 つづいて、第三部「総過程の諸姿容」(マルクス)です。
 翻訳上の底本は、エンゲルスが編集し、一八九四年に刊行した第三部第一版を使いました。
第三部の草稿は、『資本論』の草稿のなかでも、もっとも早い時期に準備されたものです。そこには、執筆時期の異なる二つの部分がありました。第一篇から第三篇までが一八六四年に執筆された前半部分、第四篇から第七篇が、前半部分の執筆から半年後に取り組まれた後半部分です。そして、前半部分にあたる第三篇には、後半部分の執筆にあたって、すでにマルクスが乗り越えていた見解――利潤率の傾向的低下を資本主義的生産の没落の動因とする立場が残っていました。
 新版は、こうした点に留意しながら、新しい訳注でマルクスの研究の発展と到達点を示し、草稿の記述と異なっている個所、また、エンゲルスによって文章が混入された個所などを、くわしく示すことにしました。この面での新しい訳注は、二五〇カ所あまりとなります。
 つぎに、第三部で行った編集上の工夫について、二点、紹介します。
 第一。新書版は、古い理論的命題の残る第三篇と、その後に執筆された第四篇とを同じ巻に収録していました(新書版第九冊)。新版では、マルクスの理論的発展を考慮して、第三篇と第四篇とを同じ巻に収めず、二冊に分けることにしました(新版第八分冊と第九分冊)。
 第二。新版の全体の編集は、翻訳上の底本に従っています。唯一の例外が、第三部の第七篇第四八章「三位一体的定式」です。この章では、エンゲルスによる原稿配列を組み替え、マルクスの草稿どおりに、未来社会論を論じた部分を章の冒頭に置くことにしました。この点については、不破さんの記念講演で、その意義が明らかにされると思います。
 私の話の最後に、第一二分冊の巻末に収録する「人名索引」について、触れたいと思います。
 索引では、それぞれの人名について主な経歴を示し、経済学者については、代表的な著作も紹介しました。これも、『資本論』を読み、活用するうえでの手助けになるものと思います。
 以上、新版『資本論』の特徴と魅力について、紹介させていただきました。


◆不可欠にして希有な第二バイオリン・エンゲルス石川康*6
(内容紹介)
 エンゲルスの生涯の簡単な説明だが、小生の無能のために詳細な紹介は省略します。
 なお、「第二バイオリン」とは以下のような話です。

参考

http://jinminsensen.com/1s-3.html
 マルクスが死んだあとすぐエンゲルスは親しい友人のヨハン・フィリップ・ベッケルに手紙(一八八四年十月十五日付)を書いたが、その中で彼はつぎのように書いてる。
 「不幸というのはむしろ、僕たちがマルクスを失っていらい、僕が彼の代わりをつとめなければならないという点にある。僕は一生の間、それをなすのが僕の本領であるところの仕事、すなわち第二ヴァイオリンを弾くということをやってきたのであって、そしてまた僕は自分の仕事を全く相当にやりとげたと信じている。そして僕は、マルクスのようにあんな抜群の第一ヴァイオリンをもっているのを嬉しく思っていた。
 だが、さて僕が急に理論の仕事においてマルクスの位置を引き受けて、第一ヴァイオリンを弾かなければならないという段になると、僕は勢い失策なしにその仕事をやり通せない。しかも、僕ほどにこのことを痛感しているものはないのだ。そして時勢が多少とも動きだすというようなことになれば、われわれはマルクスの死によってどんな損失をしたかを、初めて本当に悟るであろう。急速に処置せられなければならぬような万一の瞬間にも、つねにそれによって彼が事物の核心をとらえ、直ちに決定的な急所につっこんでゆく洞察力、それはわれわれの誰もがもっていないものである。なるほど、平穏無事のときには、事件がときどきマルクスに反して、僕の方が正しかったことを立証したことも、あるにはあったが、革命的瞬間には、彼の判断にはほとんど一点の非も打ち難きものがあった」(向坂逸郎*7著『マルクス伝』新潮社、一九六二年五月刊)。


◆『資本論』の剰余価値論を読む(山中敏裕)
(内容紹介)
 『資本論』の剰余価値論の簡単な説明だが、小生の無能のために詳細な紹介は省略します。


◆自然環境破壊とマルクスの物質代謝・小農民経営論(村田武*8
(内容紹介)
 マルクスエンゲルスが「環境に配慮した小規模農業」を評価すると共に、大規模農業はあくまでも「自然環境に配慮したものでなければならない旨」主張していたことを指摘。
 そのマルクスらの先見の明を評価すると共に、スターリンソ連における大規模農場(コルホーズ)をマルクスの主張に反し環境破壊をもたらした不適切な物だったと否定的に評価している。

*1:著書『核兵器禁止条約を使いこなす』(共著、2018年、かもがわ出版

*2:この西村論文執筆時にはサンダースは予備選から撤退していませんが、結局、彼が撤退し。バイデン元副大統領が候補になりました。

*3:2019年のこと

*4:中央大学名誉教授。著書『グローバル資本主義と日本経済』(2009年、桜井書店)、『21世紀日本の経済と社会』(2014年、桜井書店)など

*5:日本共産党社会科学研究所副所長。著書『新しい世紀に日本共産党を語る』(2003年、新日本出版社)、『21世紀と日本国憲法』(2004年、光陽出版社)

*6:神戸女学院大学教授。全国革新懇平和・民主・革新の日本をめざす全国の会)代表世話人。個人サイトはげしく学び はげしく遊ぶ-石川康宏研究室。著書『現代を探究する経済学』(2004年、新日本出版社)、『いまこそ、憲法どおりの日本をつくろう!: 政治を変えるのは、あなたです。』(2007年、日本機関紙出版センター)、『覇権なき世界を求めて』(2008年、新日本出版社)、『人間の復興か、資本の論理か:3・11後の日本』(2011年、自治体研究社)、『マルクスのかじり方』(2011年、新日本出版社)、『橋下「日本維新の会」がやりたいこと:何のための国政進出?』(2012年、新日本出版社)、『「おこぼれ経済」という神話』(2014年、新日本出版社)、『社会のしくみのかじり方』(2015年、新日本出版社)など

*7:1897~1985年。九州大学名誉教授。社会主義協会代表。著書『資本論入門』(1967年、岩波新書)、『わが資本論』(1972年、新潮選書)など

*8:九州大学名誉教授。著書『世界貿易と農業政策』(1996年、ミネルヴァ書房)、『WTOと世界農業』(2003年、筑波書房ブックレット)、『コーヒーとフェアトレード』(2005年、筑波書房ブックレット)、『戦後ドイツとEUの農業政策』(2006年、筑波書房)、『現代東アジア農業をどうみるか』(2006年、筑波書房ブックレット)、『現代の『論争書』で読み解く食と農のキーワード』(2009年、筑波書房ブックレット)、『ドイツ農業と「エネルギー転換」:バイオガス発電と家族農業経営』(2013年、筑波書房)、『日本農業の危機と再生』(2015年、かもがわ出版)、『現代ドイツの家族農業経営』(2016年、筑波書房)など