今日の産経ニュース(2020年5月5日分)

【戦後75年 憲法改正(3)】世界では改憲が常識 社会密着の米憲法、独基本法には国民の信頼 - 産経ニュース
 やれやれですね。
 「海外では憲法改正は珍しくない」などと海外云々と言いながら、一方ではたとえば女帝支持派が「世界では女帝が常識」、死刑反対派が「世界では死刑廃止がトレンド」というと「日本には日本の伝統や事情がある」と言い出すのだからデタラメ極まりない。そもそも誰も「憲法改定それ自体」には反対していません。
 「自民党が目指す右翼的改憲」に反対しているだけのことです。一方で自民党も「天皇制廃止」などの改憲には賛成しないわけです。


緊急事態宣言解除の基準明示を 知事会、延長受け政府に要請 - 産経ニュース
 まあ、国としてそれなりに明確な客観的基準を作れというのは当然でしょう。
1)「解除後、感染者が急増」→「国は解除しろとは言ってない。都道府県の責任です」
2)「解除しないなら、国が休業補償しろ」→「国は解除するなとは言ってない、都道府県に請求しろ」
と「解除するかしないかの自由は都道府県に認めたから国は関係ない」として何でもかんでも都道府県に責任転嫁されてはたまった物ではない。


新型コロナ発端で米中「有事」の懸念 日本に危機への備えはあるのか - 産経ニュース
 「有事」が「米中の経済制裁報復合戦(トランプはコロナを口実に中国に制裁措置を執る用意があると放言)&それによる世界経済の混乱」を意味するならともかく、戦争という意味の「有事」ならまずあり得ない話です。
 なお、トランプの無茶苦茶さを考えると、残念ながら、短期間でアレ、「米中の経済制裁報復合戦&それによる世界経済の混乱」はあり得ないとは言い切れません。


善竹富太郎氏死去 大蔵流狂言師 新型コロナ感染 - 産経ニュース
シャンソン歌手の高木椋太氏さん、新型コロナで死去 - 産経ニュース
 志村(享年70歳)や岡江(享年63歳)のような芸能人が亡くなるとやはりこのように注目されるわけです。
 それにしても享年40歳(善竹氏、狂言師)、享年58歳(高木氏、シャンソン歌手)というのは志村や岡江と比べてかなりの早死にです。人生80年時代では志村や岡江も早死にと言っていいでしょうが。正直、安倍の態度を見ているとこうした死者を少しでも減らそうと言う覚悟がまるで認められない点が恐怖であり腹立たしい点でもあります。政権支持率のことしか考えてないんじゃないのか。


中国がウイルス危険性隠蔽、医療物資買い占めのため 米政府の内部報告書 - 産経ニュース
 「医療用品の中国による入手を円滑にするため(つまり新型コロナ情報によって医療用品の価格高騰や品不足が起こるのを避けるため)、故意に新型コロナウイルス情報をWHOに伝えなかったこと」が事実ならば「その結果、世界各国のコロナ対応に支障を産んだ疑いもある」わけで中国の行為は非難されて当然の政治道徳に反する行為でしょう。ただしこれは当然ながら「トランプが現在、中国に対して行っている責任転嫁」が正しいという話では全くありません。もちろんその逆に「トランプの責任転嫁が不当」だからといって即、「この米国政府発表が虚偽だと言うこと」でもありません。まあ当面は様子見ですね。


【一筆多論】ひたひた迫る「中国流」 長戸雅子 - 産経ニュース

 特許や商標など知的財産の保護を促進する国連の専門機関、世界知的所有権機関(WIPO)のトップを決める3月の選挙では敗れたものの、中国はこの10年余に数々の国際機関にトップを送り出した。現在も国際電気通信連合(ITU)、国際民間航空機関(ICAO)など15ある専門機関のうち4つでトップを務めている。

 「中国の脅威ガー」のいつもの産経ですが、欧米や日本とて「国際機関の要職に自国出身者を送り出してきたし、これからも送り出そうとしている」のだからお互い様です。
 「中国は、送り出した自国出身者によって、自国の国益を追求しようとしてる」て基本的にどこの国だってそれは同じです。
 かつ、いかに「国際機関の要職」に自国出身者を送り出したって、その国際機関限定ですら「何でもできるわけではない」し、ましてや「国際社会という広いスパン」ならなおさら「何でも出来るわけではない」。
 米国が世界銀行などの要職に自国出身者を送り出したところで、トランプ政権の様々な無法は非難されることはその一例です。産経がやたら「脅威」と煽るほどの「中国の脅威」はどこにも存在しないでしょう。


「米の情報提供なし」とWHO 武漢ウイルス研究所起源説で - 産経ニュース
 つまりはまともな証拠は何一つないのでWHOには証拠提出しないと言うことでしょう。
 「中国の研究所からのウイルス流出ガー」と何の根拠もないことを放言して、「中国への責任転嫁」のみに熱心で、あげく「WHOは中国より」と因縁を付けて拠出金支払い拒否までやり出したトランプ政権にはWHOも怒り心頭でしょう。何の根拠もないことを放言されては「新型コロナの感染ルートのまともな把握」にとっては迷惑でしかありません。


【河村直哉の時事論】コロナ禍 国家軽視の左傾のツケ(1/2ページ) - 産経ニュース
 タイトルだけで予想がつくでしょうが、いつもの「左派が緊急事態条項改憲に反対するのが悪い(緊急事態条項を発動すればパチンコ屋の営業もやめさせられるのに)」という言いがかりです。
 この国難に「どうコロナを制圧するか」ではなく「緊急事態条項改憲という火事場泥棒行為」と「左派へのネガキャン*1」にいそしむ(そして安倍の初期対応の失敗には目をつむり批判一つしない)というのだから、その心根の卑しさにはうんざりさせられます。
 大体、外出を自粛したところで防げるのは「感染拡大」だけです。現に感染してる人をどう治療するかという問題は何一つ解決しない。
 かつ「外出を自粛する」のにも限界がある。
 本来は「感染者をできる限り把握して、隔離すれば」必要以上の外出自粛も避けられるわけですが、PCR検査の増加は全然しないのだから呆れます。


【スポーツ茶論】コロナ克服で見える一筋の光 黒沢潤(1/2ページ) - 産経ニュース

 日本がコロナウイルスの脅威に今もおびえるのを尻目に、韓国がコロナ制圧にほぼ成功し、野球界が息を吹き返すとは…。日本のプロ野球界に強烈なライバル意識を燃やす韓国の野球ファンはさぞ留飲を下げていることだろう。

 いや別に溜飲は下げてないんじゃないですかね。
 「韓国のコロナ制圧」を誇らしく思い、「日本の制圧失敗」の無様さに「日本って、この程度の国だったのか(もう少しまともだと思ってた)」と呆れてはいるでしょうが。
 まあ俺個人は、ホワイト国除外とか安倍の無法を考えれば「ざまあ」と溜飲を下げられても仕方がないと思ってはいますが。

 日本海をはさみ、韓国と日本の間には問題が山積しているが、未曽有のコロナ危機を契機に関係修復を図れないかとも思う。
 コロナのPCR検査をめぐり、日本でもテレビで繰り返し報じられたドライブスルー政策、スマートフォンを使った警戒システムなど、韓国が封じ込めに至りつつある諸政策について、日本が知見や経験を積極的に尋ねるのも一案と思う。

 嫌韓国の産経には珍しく正論だと思いますが、安倍にそれが出来るとはとても思えません。以前から野党や一部マスコミなどから「コロナ制圧に成功したという韓国や台湾から学べる物は学ぶべき(日本でもドライブスルー検査をやってはどうか、など)」という指摘も出ていたことを考えれば、それをやるということは「安倍の過去の施策の失敗」を認め、安倍が敵視する韓国に頭を下げることだからです。


【政界徒然草】舛添、枝野両氏に批判続出 岡江さん引き合いに政府批判 - 産経ニュース
 安倍信者が「岡江さんや志村さんの死を政治利用するな」と騒いでるだけの話です。岡江にせよ、志村にせよ「安倍がコロナを蔓延させなければ死なずに済んだのではないか」というのは「安倍信者ではない岡江ファン、志村ファン」なら誰でも思うことでしょう。
 もちろんイフの話なので民主党政権や石破政権などだとしてどうなったかなんとも言えませんがダイヤモンドプリンセス横浜寄港時に『日本も武漢のように蔓延しないか』と危惧する声に対して「十分な対応をとってるから安心して欲しい(安倍)」といった癖にその後「緊急事態宣言(外出自粛の要請)」では安倍信者でない限り「安倍でなければマシだったのでは」「口から出任せだったのか」と思わずにはいられないでしょう(ましてや俺のようなアンチ安倍はなおさらそうです)。
 特に高世仁も書いていますが

岡江久美子さんはなぜ「発熱後4日」様子をみたのか? - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 記事を見て、おや、と思った。
 《岡江さんは今月3日に発熱し、医師から4~5日様子をみるように伝えられ療養していたが、6日に容体が急変。病院に救急搬送されて入院し、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルスの感染が確認されていたという。》
 熱が出て「医師から4~5日様子をみるように」言われ、3日目に容体が急変という経緯をたどったわけだが、いったいなぜ?
 岡江さんは、あの「検査基準」の4日ルールを適用されて手遅れになったのではないのか?
 志村けんさんの時にも、倦怠感(異様なだるさ)を覚えた日から検査で陽性が判明するまで6日もかかっていて、同じような疑問を持った。

と言う問題がありますからね。「四日間ルールのせいで岡江や志村は死んだのではないか」というのは「安倍信者ではない岡江ファン、志村ファン」なら誰でも思うことでしょう。まあ、この程度の事で「安倍を批判するな」と騒ぎ立てる産経もまったく狭量なことです。


【正論6月号】日中の学者を公然と「誘拐」 許してならない中国の国家犯罪 産経新聞論説副委員長 佐々木類(1/4ページ) - 産経ニュース
 「タイトルの『日中(日本と中国?)の学者』て何だろう?」と思って本文を読んだら「日中(昼日中)堂々と」と言う意味の「日中」のようですね。
 ただ「夜中にこっそり連行すればいい」つう話でもないし、「日本の大学(国立北海道教育大学)に勤務する中国人学者が中国帰国中に中国官憲によって連行」つう話ではどうしても「日中=日本と中国」と読んでしまうので、タイトルはいかがなもんかと思います。せめて「白昼堂々」とか誤読しない書き方にして欲しい。まあ個人的には「日中とか白昼堂々とか記事タイトルにいらん」と思いますが。

 習近平国家主席国賓来日の一件も含め、とかく北京の顔色ばかりうかがっているようにしか見えない日本政府だが、中国が先に公表した以上、さすがに反応せざるを得なかったのだろう。
 西村明宏*2官房副長官は翌日の記者会見で「袁教授は長年にわたってわが国の大学で教職に就かれていると承知している。関心を持って注視している」と語った。だが「事柄の性質上、コメントは控えたい」と述べるにとどまった。

 まあ「水面下で交渉してるのなら、批判を控えても別にいいんじゃねえの?」と個人的には思います。
 産経的には「解放交渉に支障が出てもいいから中国を罵倒しろ」なんでしょうが。ただし問題は「安倍政権がどんな水面下交渉をし、どのような状況なのか」ですね。
 現時点では「何の成果も上がってない」わけで、まあ、問題の難しさを考えれば「アンチ安倍の俺ですら」安倍政権をいたずらに悪口雑言する気は無いですが、とはいえ「いつまで経っても何の成果もないのではまずい」わけです。
 安倍だと「厄介なことは部下に丸投げで後は放置(全然話が進まない)」の危険性大ですからね。

「正論」6月号 主な内容
【大特集 国難を乗り切る】
コロナに打ち克てるのは安倍総理しかいない 内閣官房参与 荒井広幸

 「え、荒井って今そんな役職に就いてるの!」とびっくりです。とっくに政界引退してるかと思ってました。
 「郵政民営化は間違ってる」と叫び、自民を離党し、「新党日本田中康夫・元長野県知事が代表、荒井が幹事長)」に参加しその後も「改革クラブ新党改革」の「郵政族議員だった」荒井ですが

荒井広幸*3ウィキペディア参照)
 2006年9月26日、小泉純一郎*4首相の退陣に伴う首班指名選挙では、統一会派を組む国民新党綿貫民輔*5代表ではなく、自由民主党総裁に選出されたばかりの安倍晋三に投票。荒井が幹事長を務める新党日本は、田中康夫代表が国会議員でなかったため首班指名に関しては自主投票を決定していたが、国民新党側が荒井の安倍への投票を問題視し、結局統一会派を両院で解消した。

ということで以前から安倍シンパ(?)だったことが幸いしてか、「新党日本改革クラブ新党改革」がいずれも惨敗(荒井も落選)したあげく「自民党に戻りたい」と泣きついて復党(この点は次世代の党が惨敗したあげく復党したいと泣きついた平沼赳夫*6に似ています)したあげく、「安倍政権の内閣官房参与」に就任し、安倍御用雑誌「正論」にも安倍おべっか論文を書かせてもらえたわけです。
 それにしても、「初動対応の失敗」でコロナを蔓延させた男を「コロナに打ち克てるのは安倍総理しかいない」とよくもまあ恥知らずなことがいえたもんです。まあ自民党内にも「自民党を離党していった奴を内閣官房参与にするなんておかしい。荒井なんて当選回数が多いわけでも、選挙に強いわけでも、実務能力があるわけでも何でもない。単に安倍さんのお気に入りなだけだ。他の自民党議員連中がこれでは納得しない。安倍さんの身びいきも度が過ぎる」という批判があり、それに荒井が対抗するためには「安倍に媚びるしかない(安倍が総理を辞めたらほぼ確実に荒井は干されるので)」ということでしょうが、なんとも醜悪です。そこまでして政界に居続けたいのか。

今なすべきは次なる国家緊急事態への備え 拓殖大学学事顧問 渡辺利夫*7 

 【戦後75年 憲法改正(1)】コロナで露わになった憲法の不備 宙に浮く「緊急事態条項」 - 産経ニュースなどもそうですが、「火事場泥棒、マッチポンプもいい加減にしろよ」ですね。
 安倍の失策で「初期消火(コロナ予防の初期対策)をきちんとすればボヤ(小規模の感染)で済むところを大火事(コロナ蔓延)にしておきながら」、安倍の謝罪も求めずに、『大火事になったのは安倍首相のせいじゃない、もっと立派な消火装置(緊急事態条項)が必要だ。火事を消火したいなら装置の購入に賛成しろ』とは全くふざけるにもほどがあります。しかもその「消火装置」が消火装置として有効かどうかに疑問符がつくわけです。

忘れられた日本人虐殺「尼港事件」から百年 シベリア抑留問題研究者・翻訳家 長勢了治*8

 別記事でも書きましたが、「尼港事件が忘れられた」というより「国費と人命を失っただけで、目的だったレーニン政権転覆もシベリア利権獲得も果たせず、惨敗に終わったシベリア出兵(日中戦争、太平洋戦争敗北以前では近代日本唯一の敗戦)」それ自体が「日本政府、軍部の黒歴史」としておそらく意図的に忘れ去られたわけです。シベリア出兵が忘れ去られたことでその一部にすぎない尼港事件も忘れ去られたと。
 なお、日本軍側もイワノフカ事件という「シベリア出兵版・三光作戦」をやらかしてるのでロシア側を一方的に非難できる話でもありません(なお、イワノフカ事件についての本には広岩近広*9 『シベリア出兵:「住民虐殺戦争」の真相』(2019年、花伝社)があります)。
 そもそも「尼港(ニコラエフスク)」とはロシアの領土であり、なんでそんなところに日本人がいたのかと言ったら満州国建国と同じで「日本軍の武力をバックに日本人が進出していった」わけです。平和的にロシアにやってきた日本人が虐殺されたという話ではない。
 とはいえ正論に掲載される記事ではそんな「日本にも非がありロシア側を一方的に非難できない」なんて記事でないことは間違いないでしょう。

*1:ただし緊急事態条項改憲に否定的なのは社民、共産などの左派だけではないですが。保守政党の国民民主、立民も否定的だし、公明党自民党だって世論の反発を恐れて反対はしないものの曖昧な態度です。そうした改憲に前のめりなのは「安倍周辺」と維新だけと言っていいでしょう。まあ産経的には「緊急事態条項改憲に反対する奴=左派」という無茶苦茶なレッテル張りがあるわけです。

*2:第三次安倍内閣国交副大臣(復興副大臣兼務)などを経て現在第四次安倍内閣官房副長官

*3:森内閣自治政務次官新党日本幹事長、新党改革幹事長、新党改革代表など歴任

*4:宮沢内閣郵政相、橋本内閣厚生相を経て首相

*5:中曽根内閣国土庁長官(北海道・沖縄開発庁長官兼務)、海部内閣建設相、衆院議長、国民新党代表など歴任

*6:村山内閣運輸相、森内閣通産相小泉内閣経産相、維新の会代表代行、次世代の党党首など歴任

*7:著書『社会主義市場経済の中国』(1994年、講談社現代新書)、『新世紀アジアの構想』(1995年、ちくま新書)、『韓国経済入門』(1996年、ちくま学芸文庫)、『現代アジアを読む』(1999年、PHP新書)、『成長のアジア・停滞のアジア』(2002年、講談社学術文庫)、『新脱亜論』(2008年、文春新書)、『アジアを救った近代日本史講義』(2013年、PHP新書)、『士魂:福澤諭吉の真実』(2016年、海竜社)、『台湾を築いた明治の日本人』(2020年、産経新聞出版)など

*8:1949年北海道美瑛町生まれ。北海道大学法学部卒業後、三菱ガス化学入社。退職後、シベリア抑留問題を研究している。著書に『シベリア抑留全史』(2013年、 原書房)、『シベリア抑留』(2015年、新潮選書)、『知られざるシベリア抑留の悲劇:占守島の戦士たちはどこへ連れていかれたのか』(2018年、芙蓉書房出版)。訳書にヴィクトル・カルポフ『シベリア抑留:スターリンの捕虜たち』(2001年、北海道新聞社)、アナトーリー・グートマン 『ニコラエフスクの日本人虐殺:一九二〇年、尼港事件の真実』(2020年、勉誠出版)(ウィキペディア『長勢了治』参照)

*9:著書『被爆アオギリと生きる:語り部沼田鈴子の伝言』(2013年、岩波ジュニア新書)、『核を葬れ!:森瀧市郎・春子父娘の非核活動記録』(2017年、藤原書店)、『医師が診た核の傷:現場から告発する原爆と原発』(2018年、藤原書店)など