新刊紹介:「前衛」7月号

 「前衛」7月号について「興味のある内容」のうち「俺なりになんとか紹介できそうな内容」だけ簡単に触れます。「赤旗記事の紹介」でお茶を濁してる部分が多いです。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
特集「コロナ危機の下で政治に何が求められているのか」
◆疲弊する医療・介護体制への緊急的支援と抜本的な対策を(山本淑子)
(内容紹介)

新型コロナQ&A 第3弾/感染爆発・医療崩壊止めるには/いま何が必要か

 新型コロナ患者の受け入れと受診抑制で病院経営が大変だと聞きましたが…。

 新型コロナへの感染が急増するなか、医療体制を維持・強化していくには、国による抜本的な財政投入が不可欠です。
 病院が新型コロナ患者を受け入れるには、膨大な財政的負担がかかります。
 コロナ患者に対応する病院への独自助成を決めた東京・杉並区は、病院がコロナ患者を受け入れた場合の減収を、1病院当たり月1・2億~2・8億円と試算しています。
 また、コロナの影響を受けた受診抑制で、コロナ患者に対応していない病院や開業医を含め、どこの医療機関も患者数が激減しています。政府の医療費削減路線で厳しい経営になっているところにこの打撃が加わり、このままでは病院が次々と倒産しかねない状況です。

 デイサービスが中止になるなど、介護施設もコロナ対策で大変なようですが…。

 介護施設での感染を防止することが、犠牲者を最小にするうえで、きわめて重要となっています。また、介護事業所はデイサービスや訪問介護の中止・縮小を余儀なくされ、事業所は大幅な減収となっています。このままでは介護事業所の倒産・廃業、介護労働者の離職が相次ぎ、介護サービスの基盤が崩れてしまう危険に直面しています。
 日本共産党は、介護・福祉など社会保障の体制を守るため、事業所・施設の感染防止策を支援し、損失等を補償することを提案しています。

新型コロナ 病院の経営を圧迫/宮城
 新型コロナウイルス問題というこれまで経験したことのない事態の中で、外来患者減などが医療機関の経営を圧迫しています。宮城県の医療従事者らは、地域医療の崩壊を起こさないための財政支援を訴えます。

ということで「いくらの金額をどのように支援するか」というテクニカルな問題はありますが、医療・介護崩壊を阻止するためにコロナで経営が困難になっている医療、介護機関を経営支援すべきだという話です。


◆新型コロナ禍、学生の不安と経済困難に大学はどう向き合うのか(河能笙子)
(内容紹介)

新型コロナQ&A 第3弾/感染爆発・医療崩壊止めるには/いま何が必要か

 大学に合格しましたが、学内は閉鎖、授業もなし、なのに学費は引き落とされています。バイトもできません。どうにかなりませんか。

 日本共産党は、バイトの減収にたいしても8割補償する支援策を提唱しています。また、休校や構内立ち入り禁止期間については、授業料を国が全額補填して返還するなどの支援が必要です。奨学金の返済猶予など負担軽減を求めています。

主張/コロナと学生支援/国の責任で学費を半額免除に
 日本共産党と、立憲民主党、国民民主党などの共同会派は、国の責任で授業料を半額免除することやアルバイトが減収した学生への給付などを盛り込んだ「学生支援法案」を11日に国会に提出しました。

ということで「いくらの金額をどのように支援するか」というテクニカルな問題はありますが、経済的理由による退学、休学を阻止するためにコロナで学業継続が困難になっている学生を経済支援すべきだという話です。
 なお、コロナ以前から共産党や教育関係者、学生団体などが「大学教育無償化」や「奨学金制度の充実(贈与型奨学金や、貸与型でも無利子奨学金の増加など)」を主張していたことを指摘しておきます。


◆新型コロナ禍であらわになった「安心して住む」という福祉の貧困(稲葉剛*1
(内容紹介)
 貧乏な人間はコロナ不況により、居住場所を失い、あるいは居住場所がある場合も「いわゆるタコ部屋」「安かろう悪かろう」で完全な三密状態であり問題があるという話です。
 赤旗の記事紹介で代替。
主張/コロナ危機と住居/安心の住まい確保への支援を
コロナ失業 住居失う/清水氏「事態防ぐ支援ぜひ」
住居がない人の生活保護申請/個室利用の促進を/厚労省事務連絡
住居確保給付金 30日から/求職要件を撤廃/小池書記局長の厚労省要請実る
コロナで困窮 家賃滞納/住まい保障 国に要望/住宅問題3団体


◆コロナ・ショックで露呈した食の脆弱性と処方箋(鈴木宣弘*2
(内容紹介)
 新型コロナによる小麦粉高騰(海外の生産地の混乱で輸出が減ったことが一因)などを例に食糧自給率の向上の重要性が訴えられている。

参考

【経済#word】食料安定供給不安 コロナ余波 輸出国が規制(1/3ページ) - 産経ニュース
 新型コロナウイルスの感染拡大は、食料の安定的な供給を確保する「食料安全保障」にとっても脅威だ。農林水産省によると、今月20日時点でロシアなど14カ国が農産物・食品の輸出制限を実施し、食料囲い込みの動きがみられる。日本への影響は今のところ軽微だが、過度な楽観も禁物だ。日本は国内の食料供給に対する国内生産の割合を示す食料自給率が先進国で最低水準という現実があり、食料の安定供給に向けて不断の備えが求められる。


特集「現行安保60年・対米従属の深淵」
◆占領の延長線上の米軍特権:「占領管理法体系」から「安保法体系」+「密約体系」へ(吉田敏浩*3
(内容紹介)
 『密約:日米地位協定と米兵犯罪』(2010年、毎日新聞社)、『「日米合同委員会」の研究』(2016年、創元社)、『横田空域:日米合同委員会でつくられた空の壁』(2019年、角川新書)、『日米戦争同盟:従米構造の真実と「日米合同委員会」』(2019年、河出書房新社)の著者がある筆者によって、「米兵犯罪が事実上全て不起訴となっていること(『密約:日米地位協定と米兵犯罪』(2010年、毎日新聞社)参照)」「横田基地から発進する米国戦闘機の飛行が事実上米国に白紙委任されていること(『横田空域:日米合同委員会でつくられた空の壁』(2019年、角川新書)参照)」などの「不当な米軍特権」が批判されている。

参考
航空特例法を見直せ/赤嶺氏 米兵が薬服用規律違反/衆院安保委
安保体系 憲法と矛盾/衆院憲法審 赤嶺氏実態を指摘
なんだっけ/「横田空域」って?


沖縄県民の健康を脅かす飲料水のPFAS汚染(桜井国俊)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
横田基地周辺で有害物質/都が調査、井戸から検出
横田 水汚染調査を/米軍基地周辺 共産党、国に要請/笠井、宮本、吉良、山添氏ら
なんだっけ/PFOS・PFOAって?


◆「大阪市廃止=都構想」との新たなたたかい(中村正男
(内容紹介)
 住民投票で否定された大阪都構想を「再び持ち出そうとする大阪維新」への批判。「否決されても懲りずに持ち出す維新」が相手では、もはや「大阪維新を市政、府政与党から引きずり下ろすこと」以外には「決着がつかない」状態にあると思うが弱るのは「未だに維新を支持するバカ」が大阪に多数おり、そのバカは「修正したから再提出した」という維新の詭弁を容認し、実際に都構想が実現する恐れが「ないとは言えない」ことである。

参考
「大阪都」構想また住民投票/来年11月上旬/維新と公明 大筋合意
「大阪都」構想の「協定書」案/維・公が「方向性」確認/共産党反対
大阪市つぶしにひた走る維新/“独裁”の「都」構想/知事やりたい放題体制狙う
大阪市廃止の百害、確認/よくする会がスタート集会

【6/19追記】
「大阪都構想」制度案を可決、決定 11月住民投票へ - 産経ニュース

 大阪市を廃止し、特別区に再編する大阪都構想の制度案(協定書)の最終採決が19日、府市の法定協議会で行われ、大阪維新の会公明党自民党大阪府議団の賛成多数により可決、決定された。新型コロナウイルスの感染状況の収束が続けば、11月にも賛否を問う住民投票が実施される見込み。賛成が多数を占めれば、令和7(2025)年元日に大阪市は4つの特別区に移行する。
 協定書は今後、国から承認されれば完成する。11月1日の住民投票実施を目指す維新は、感染状況が落ち着いたままであれば、8月にも協定書を府市両議会に議案として提出、9月上旬の承認を想定している。

 ということでいったんは住民投票で否決された都構想ですが、
1)「問題点を修正したので再提出したい」と維新が強弁、
2)前回、住民投票では自主投票だった公明、反対だった自民大阪府議団が、その後、維新側に変節し都構想に賛成したため都構想成立の危険性が浮上しています。急速に反対運動を強めていく必要があります。
 ただし、現時点では自民大阪市議団は反対の立場ですし、協定書の住民投票については産経記事にあるように「府・市両議会での可決」「国の承認」というハードルもあり、また不幸にして11月の住民投票で維新が勝利しても「正式な移行は2025年1月」です。
 もちろんこうした「ハードル」を過大評価は出来ませんし、今回の府市の法定協議会での都構想住民投票決定は残念ですが、「都構想実現が阻止できない」と悲観するのはまだ早いとは言えるでしょう。


朝鮮人犠牲者追悼式典をめぐる「そよ風*4」の策動と「虐殺否定論」の広がり(加藤直樹*5
(内容紹介)
 問題はこうした右翼策動(関東大震災での朝鮮人虐殺否定論)の背後には「追悼式典への式辞を拒否した極右・小池都知事」がいるということです。小池を新型コロナ関係で持ち上げることしかしないマスゴミには怒りを禁じ得ませんね。
 まあ、新型コロナ限定ですら、小池の対応が適切か甚だ疑問ですし、最近は「以前から小池の疑惑として指摘されていた学歴詐称疑惑」がまたぞろ浮上していますが。名誉毀損になるのでうかつなことは言えませんが「カイロ大学の卒業証明書のコピー」を見せれば済むことでそれをしない(そして疑惑を指摘する週刊誌を名誉毀損で訴えることもしない)小池には疑念を感じざるを得ません。まあこの「朝鮮人虐殺否定論への加担」といい、学歴詐称疑惑といい、「新型コロナでのわざとらしい無内容なパフォーマンス*6」といい俺的には「下劣な小池」は見ているだけで胸焼けがしてきます。

参考
「追悼の辞」再開を/関東大震災時の朝鮮人虐殺/都知事に共産党都議団
関東大震災の朝鮮人犠牲者追悼式典/小池都知事「追悼文出さず」
朝鮮人虐殺追悼式典 都が「誓約書」要請/文化人ら117人 抗議声明
オンライン講演会「朝鮮人虐殺をなかったことにしたい人たち」 – イオWeb


ジェンダー平等の実現と日本政府の責務:第五次男女共同参画計画策定に向けて(米沢玲子)
(内容紹介)

政府、新5カ年計画の検討に着手 男女共同参画会議:時事ドットコム
 政府は12日、首相官邸男女共同参画会議(議長・菅義偉官房長官)を開き、2021年度から5年間を対象とする第5次男女共同参画基本計画の検討に着手した。有識者による専門調査会での議論を踏まえ、来年*712月に策定する方針だ。

ということで今年の12月めどで「2021年度から5年間を対象とする第5次男女共同参画基本計画」を策定予定ですが、それについての論文です。
 赤旗の記事紹介で代替。
男女共同参画を前へ/全労連女性部が政府交渉
議定書批准「早期に」/参院委 女性差別撤廃で井上氏


ジェンダー覚書:The personal is political『給付金問題が浮き彫りにした差別の構造とリプロ後進国の課題』(飯田洋子*8
(内容紹介)
 給付金問題というのは「個人支給ではなく世帯主支給なのでDV被害女性は受け取れない恐れがある」という例の話です。
 リプロとは聞き慣れないでしょうが、「リプロダクティブライツ(生殖についての権利)」の略ですね(こちらは必ずしもコロナには関係しません)。関連する赤旗記事を紹介しておきます。

中高生妊娠 懲戒だめ/田村智氏 「保護と教育こそ」
 日本共産党の田村智子議員は20日、参院内閣委員会で、中高生の妊娠、出産にともなう退学などの問題をとり上げ、懲罰ではなく保護と教育の問題として対応するよう求めました。

里帰り受け入れ中止/出産、どこで…/戸惑う妊婦と家族
 新型コロナウイルスの感染拡大で、里帰り出産の受け入れを中止する地方の病院が出ています。予定の変更を余儀なくされ、「どこで出産できるのか」と戸惑う妊婦や家族。東京では「困っている妊婦さんを救おう」と、産婦人科医たちが支援のとりくみを始めました。

妊婦にPCR検査を/助産師有志が国に要望/小池氏ら同席
 新型コロナウイルス感染症が拡大する中、安全安心の出産ができるよう環境の整備を求める助産師有志が13日、妊婦にPCR検査を実施するための緊急要望書を加藤勝信厚生労働相あてに提出しました。日本共産党小池晃書記局長、吉良よし子参院議員、立憲民主党阿部知子衆院議員が同席しました。

コロナ禍 中高生の妊娠相談増/弱みつく性的搾取許すな 吉良氏 支援・教育充実求める/参院文科委
 日本共産党の吉良よし子議員は21日の参院文教科学委員会で、新型コロナウイルス感染拡大で学校の休校が長引くなか中高生の妊娠相談が急増しているとして、相談支援体制の強化や性教育の充実を求めました。


アスベスト被害を防ぐために 震災時と平時の課題(中地重晴)
(内容紹介)
 既に発がん性のあるアスベストの使用は禁止されていますが、禁止前に建設されたアスベスト使用の建物は今も残っており、そうした建物全てでアスベスト除去工事が行われたわけではありません。そういう意味で今後も新たなアスベスト被害は起こりうる。決して「被害者の救済」だけがアスベスト問題の現状ではない。
 もちろん平時では「アスベスト建物」であることを知らずに取り壊してアスベストが飛散という危険性がある。
 一方、阪神大震災東日本大震災のような大規模地震の場合、「アスベスト建物が地震で崩壊して飛散」と言う危険性があるわけです。
 地震による倒壊の危険性を考えれば、早急なアスベスト除去が求められます。

参考

アスベスト飛散防止徹底へ 改正大気汚染防止法が成立 | NHKニュース
 建物の解体工事でアスベストの飛散防止を徹底するため、一定の規模以上の建物は事前にアスベストの有無を調査し、都道府県に報告することなどを義務づけた改正大気汚染防止法参議院本会議で可決、成立しました。


◆「核兵器も戦争もない世界」を実現しよう!:特に、アメリカの友人たちへの提案(大久保賢*9
(内容紹介)
 日本反核法律家協会事務局長の筆者が執筆した協会声明文「核兵器も戦争もない世界」を実現しよう! ―特に、アメリカの友人たちへの提案―を今回、前衛に転載するに辺り加筆訂正したものです。

「核兵器も戦争もない世界」を実現しよう! ―特に、アメリカの友人たちへの提案―
 2018年10月に、アメリカがロシアの違反を理由に破棄を表明し2019年2月に破棄通告した中距離弾頭弾(INF)全廃条約(※5)は、今年8月2日に失効している。早速、アメリカは、8月19日、中距離ミサイル実験を再開し、成功したと発表している(※6)。忘れてならないことは、トランプ大統領核兵器を持っているのになぜ使用できないのかと、1時間に3回、外交専門家に質問した人だということである(※7)。アメリカは核兵器を使用する体制を維持している。そして、核兵器のボタンを持つ人は、その使用にためらいがない人なのである。

ということで筆者はトランプ政権の核政策に危惧の念をまず表明しています。
 もちろん「中露、北朝鮮などの米国以外の核保有がどうでもいいわけではない」ですが、ウヨが仮想的扱いする中露、北朝鮮よりも核保有という意味で最も危険な国は「最大の核保有国」米国であり、思いつきで動いてるとしか思えないトランプが大統領であることによってその危険性は未だかつてないものになっていると言えます。

「核兵器も戦争もない世界」を実現しよう! ―特に、アメリカの友人たちへの提案―
 私たちは、憲法9条を改定しようとする勢力との戦いの正念場を迎えている。

 もちろん核兵器廃絶運動と「護憲運動」はストレートに直結してはいませんが、『日本の九条改憲右派に核兵器保有論者が多数いること』を考えれば、九条改憲は「核兵器廃絶」を遠のかせることにもなりかねません。憲法九条の存在が「核は専守防衛のための自衛兵器とは言えない」として日本の核保有のストッパーの一つとなっていることも重要な点です。
 核兵器廃絶を単独の運動として行うのではなく、同時に『いざとなったら戦争によって問題を解決する』という考えをどうなくしていくか、そのためにどう平和外交を進めていくかも核廃絶のためには重要な課題であり、そのためにも護憲(日本は米国の戦争には共同軍事作戦の形では加担しないという従来方針の維持)が重要だとする筆者です。
 なぜなら、現に核を保有している国がある以上、「いざとなったら戦争で問題を解決する」という立場に立てば
1)「向こうが核保有しているのにこちらが核を廃棄したら、自分が不利になる→核廃絶なんか出来ない」という論理に既存の核保有国(米国とロシア、インドとパキスタン)が傾斜したり
2)「向こう(中国や北朝鮮イスラエル)が核保有しているのだからこちら(台湾や韓国、イラン)も対抗措置として核保有して何が悪い」と言う論理に現在は核保有していない国が傾斜したりすることが容易に予想がつくからです。
 そして核廃絶のためには「インドとパキスタン」「イスラエルとイラン」「北朝鮮と韓国」「中国と台湾」などの緊張緩和が重要と言えるでしょう。そうした緊張緩和なしでは「向こう*10が核保有しているのにこちらが現在保有する核を廃棄したら(また『現在、核保有してない場合』は核保有の選択肢を将来に亘って完全に廃棄したら)、自分が不利になる→核廃絶なんか出来ない」と言う話になりやすいからです。


◆暮らしの焦点『「給与ファクタリング」に名を借りたヤミ金』(山川幸生)
(内容紹介)
 「給与ファクタリングってなんやねん」ですが

新ヤミ金注意喚起促せ/大門議員 「新型コロナで広がる」
「給与ファクタリング」とは利用者が受け取る予定の給料を、業者が債権として買い取り、給料日よりも前に現金を融通します。

だそうです。
 「利息制限法」の規制を免れようとしてこうした手法をとっているわけですが、実質貸金と変わらないので「利息制限法」の規制は適用されるそうです。とにかくこうした違法業者は徹底的に取り締まるべきでしょう。


メディア時評
◆テレビ:新型コロナ禍の注目すべき番組(沢木啓三)
(内容紹介)
 TBSニュース23の『雇用調整助成金』批判、フジテレビ『Live News it!』の安倍記者会見報道などが紹介されている。

参考

「雇用調整助成金」ほとんど使えない!『NEWS23』小川彩佳が報じた「制度と実際との乖離」(水島宏明) - 個人 - Yahoo!ニュース
 新型コロナのような経済的な苦境になっていると多くのニュースは「こういう救済制度がある」という報道にばかり走ってしまう。 
 理由は政府がそれをアピールするからだ。
 メディアも実際に制度が運用されている現場を取材しないと、政府の説明を報道で追認するばかりになってしまう。
 しかし「救済する制度が存在する」という法律上の問題と、実際にそうした「制度が運用上使いやすいか」はまったく別の問題である。
◆「雇用調整調整助成金」は実際には使いにくく、ほとんど運用されていない
 こうした実態を4月28日(火)のTBS『NEWS23』が特集した。
 「雇用調整助成金」の制度は、企業が休業中の従業員に支給する休業手当の一部を国が助成する制度だ。
 NHKでも民放でもニュース番組ではこの制度の説明をさかんに繰り返している。
 しかし実際には支給に至った数はわずか「0.1%」に過ぎないと番組は報じた。
(中略)
 日々のテレビのニュース番組や情報・報道番組を見続けている筆者の印象では、「雇用調整助成金」という制度の実際に「使いにくさ」や実際に困っている人たちからの相談を受けている人の話を中心に、救済制度の盲点をついたすぐれた報道だったと思う。
 生活に困った人のための「制度」はあっても、「実際の運用」ではうまく機能していないということは、たとえば生活保護制度をひとつとっても言えることで、筆者も貧困問題を取材していた時期に番組づくりをする上では藤田さんのような現場で「生の声」を聞いている人の言葉を聞かずに政府などの説明だけを聞いていては「乖離」が生じるというケースをたくさん見て、痛切に感じてきた。
 ただ、こうした現場の実態を実際に取材した上で報道する行為は、時間や手間暇がかかってしまい効率は悪い。現在はテレビも新聞もそうした効率が悪い取材を避けたがる傾向があることで報道の質が劣化していると感じている中、この日の『NEW 23』は久しぶりに「現場の実感」を伝えようとする迫力あるものだった。

“緊急事態”延長の首相会見でテレビが伝えた政府批判の「街の声」の中身は?(水島宏明) - 個人 - Yahoo!ニュース
 フジテレビの夕方ニュース番組『Live News it!』が記者会見の中継映像を流しながら、ちょっとユニークな放送をしていた。
 首相の中継映像を流しながら、それを見ている「街の人」らがフリップに感想を書いてみせるという放送だった。
 フジテレビの『it!』は首相の記者会見の放送と同時に、教育評論家の尾木直樹さん、埼玉県戸田市でスーパー「マルヤス」を経営する松井順子さん、千葉県南房総市で割烹旅館を経営する女将の清都みちるさん、東京都北区赤羽で「やきとん大王」の店長を務める篠原裕明さんを生中継で結び、会見を見た感想をフリップで示してもらった。首相の会見の映像と同時にこの4人の中継映像をワイプ映像(小窓の映像)で放送するユニークなスタイルだった。
(旅館の女将・都みちるさん)
 「具体的なことはどうしても見えてきてないのでみんな不安に思っています」
(「やきとん大王」店長・篠原裕明さん)
 「いろいろ(総理が)言われていることはわかるんですが、けっきょく自分たちがやっているこういう商売に対して何も出してくれていないという一言ですね。この間から『デリバリーの支援もある』と言っているんですけど、もう私たちは仲間うちでデリバリーサービスを始めたんですが、そういうことに支援も一切ない。もう少しそういうのも考えてほしいと思います」
(スーパー経営・松井順子さん)
 「コロナウイルスが終息していない以上、緊急事態宣言の延長はやむをえないと思っています。ただ、今営業を続けている店舗。スーパーだけに限らず、三密を避けるための安全対策費がかなりかかっている。そういったところの支援をしていただくことができたら各店舗でもっと手厚い安全対策ができます。それが感染拡大を防ぐためにつながっていくと思っています」
 さて、5月4日18時から行われた安倍晋三首相の記者会見ではフジテレビだけでなく各局が夕方のニュースで中継した。
 NHKも18時からの『ニュース』の中で安倍首相の中継を40分以上伝えた後で、岩田明子記者がスタジオで首相が会見で伝えたことを要約して伝えた。ここでは安倍首相の会見の内容を首相の側に立って整理して伝えるだけで、フジテレビ『it!』では存在していたような、庶民の側から見た場合の「政策批判」はいっさいなかった。
 『ニュース7』は、他方、事態宣言の延長決定で、飲食店や観光地、企業などへの影響についての「声」をVTR取材していた。
 東京都内で40年以上続く洋食店を経営している豊嶋正さん(69)の店では3月下旬から休業を続けて毎月の売り上げがゼロになった。
 従業員2人への給与の支払いも厳しくなっているという。
 この日、緊急事態宣言の延長を受けて、閉店を決めた。
洋食店を経営・豊嶋正さん)
「毎日、調理場で料理を作っていたが、ここ2か月半くらいほとんど料理を作らない生活が続いてモチベーションが全然上がらず、心が折れてしまっています。これだったら閉めるしかないというのが本当の実感」
 夕方ニュースで他のテレビ局の報道を見てみよう。
 日本テレビnews every.』はフジテレビのように安倍首相の記者会見を同時に見てもらうというスタイルではなかったが、緊急事態宣言の延長の感想を「街の人」として放送していた。
(2人の子供がいる40代女性)
「先が見えない中で家で頑張り続けるのはきついですね」
 同番組では飲食店の経営者らの困難な状況を伝えていた。
 東京・板橋区のラーメン店「麺’sBar らーめん勇人」は東京都の休業要請に応じて、夜の営業時間を4時間短縮していたが、緊急事態宣言の延長に肩を落とす。
(鈴木真由美店主)
「いやー、もう相当にきついと思います。いつ自分たちもつぶれちゃうのかとか、毎日危機感をもってやっています」
 この店ではデリバリーやテイクアウトを本格的に始めているという。 
 先月8日から営業を自粛していた東京・三家茶屋の漫画喫茶「まんがの図書館ガリレオ」は安倍首相の発言を聞いてこう話す。
(まんがの図書館ガリレオ・上関久美子代表)
「5月6日までということで希望を持って進めてきたので、もうこれ以上は無理だなと。本当にギリギリまで追い詰められたなと。本当に先が見えない」
 一時は廃業を検討したもののお客さんの寄付で持ち堪えてきたが、5月末で営業を再開できないと本当に廃業するしかないという。
 都内で渋谷など3か所で映画館「アップリンク」を経営する浅井隆さんも「先行きは見えない」と話す。
 休業したことで月5000万円の売上げがゼロになっている。
アップリンク浅井隆代表)
「あと1か月を休館しろということは売上がゼロということで、映画館としては限界を超えているのが現状です」
 テレビ朝日スーパーJチャンネル』でも小売り業や飲食業などの悲痛な声を伝えた。
 広島市の観光スポット「お好み村」が20軒以上の広島風お好み焼き店が集まる場所だが、現在は臨時休業が続いている。
 各局のニュース番組を見る限り、「街の声」はそれぞれの人たちの悲痛な境遇を訴えながらも、適切な対策をとってくれない政府や政権トップへの批判の色合いが次第に濃いものになっている印象だ。
 第二次安倍政権以降、テレビであまり放映されていなかった「政権批判」のトーンの「街の声」。それがここに来て放送においても増加している印象だ。


文化の話題
◆美術:新型コロナウイルスの感染拡大と美術(朽木一)
(内容紹介)
 新刊紹介:「前衛」6月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した◆美術『休館長期化で注目される美術館のインターネット発信』(武居利史)と内容的にはかなりかぶります。ただ、緊急事態宣言が解除されたことでインターネット配信だけでなく「コロナ予防を行った上での開館」という選択肢も出てきた点で違いはあります。


◆演劇:「演劇の灯は消さない」(鈴木太郎)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

新型コロナ:演劇界が「ネットワーク」構築 公演再開へ道探る :日本経済新聞
 政府が新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を39県で解除した5月14日、演劇界で「緊急事態舞台芸術ネットワーク」が設立された。国立劇場新国立劇場を除いて、歌舞伎やミュージカル、現代演劇の興行会社や、公立・民間の劇場、劇団など40以上の団体が参加しており、日本の演劇界を横断する異例の取り組みとなる。
 同ネットワークはまず、今年2月末以降、公演中止が続いている演劇界のダメージを把握すべく、アンケートを実施した。結果、約3000回の舞台が中止になり、160億円以上の赤字が出たことが判明。また、興行会社のうち3分の1以上が、政府の支援策を利用したとしても、事業の継続は困難、または、大幅な縮小が避けられないとしている。
 一方で、公演再開の可能性も見えてきた。緊急事態宣言の一部解除に伴って、公共劇場の団体である「全国公立文化施設協会」(公文協)が「劇場、音楽堂等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」を発表し、必要な対策の目安を示した。その中には「前後左右を空けた座席配置」「出演者間で十分な間隔を取る」など、順守が容易でない項目もあるが、ガイドラインのすべての実施が求められているわけではなく、今後、同ネットワークで具体策を話し合うという。

演劇・音楽・映画業界「復興基金」創設要望 コロナで存続危機 | NHKニュース
 新型コロナウイルスの影響で存続の危機を迎えている、演劇、音楽、映画の3つの業界の関係者が、損失の補填(ほてん)や今後の活動を支えるための「文化芸術復興基金」の創設を求めて、国に要望書を提出しました。

演劇の灯は消さない、配信で支援を:朝日新聞デジタル
 新型コロナウイルスの影響で公演の自粛が続くなか、演劇文化とその担い手を守るため、舞台専門の配信サイトを立ち上げる動きがある。
 「演劇支援プロジェクト SAVE THE THEATRE」は、5月末までの期間限定サイト(https://savethetheatre.zaiko.io/)を開設した。


◆音楽:コロナ禍のなかの音楽(小村公次*11
(内容紹介)
 ネットでの演奏配信など、音楽業界の取り組みを紹介するとともに政府の支援を求めています。

*1:つくろい東京ファンド代表理事住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人生活保護問題対策全国会議幹事。立教大学大学院特任准教授。個人サイト稲葉剛公式サイト。著書『ハウジング・プア』(2009年、山吹書店)、『貧困の現場から社会を変える』(2010年、堀之内出版)、『生活保護から考える』(2013年、岩波新書)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために:野宿の人びととともに歩んだ20年』(2015年、エディマン)、『ハウジングファースト:住まいからはじまる支援の可能性』(編著、2018年、山吹書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける:排除と貧困に抗うソーシャルアクション』(2020年、朝日新書)など(稲葉剛 - Wikipedia参照)

*2:東京大学教授。著書『食の戦争:米国の罠に落ちる日本』(2013年、文春新書)、『牛乳が食卓から消える?:酪農危機をチャンスに変える』(2016年、筑波書房)、『亡国の漁業権開放』(2017年、筑波書房ブックレット)など

*3:著書『民間人も「戦地」へ:テロ対策特別措置法の現実』(2003年、岩波ブックレット)、『ルポ 戦争協力拒否』(2005年、岩波新書)、『反空爆の思想』(2006年、NHKブックス)、『赤紙と徴兵』(2011年、彩流社)、『沖縄:日本で最も戦場に近い場所』(2012年、毎日新聞社)など

*4:小池に追悼式典式辞拒否を働きかけたとみられる極右団体。関東大震災での朝鮮人虐殺否定論を公然と主張している。

*5:著書『九月、東京の路上で:1923年関東大震災ジェノサイドの残響』(2014年、ころから)、『トリック:「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』(2019年、ころから)

*6:この点は大阪の吉村も同じですが。立川談志楼が「和歌山県知事のように不言実行でやれ、コロナで自己宣伝するな」と小池、吉村を批判するツイートをしていましたが全く同感です。

*7:2019年の記事なので2020年のこと

*8:日本共産党ジェンダー平等委員会事務局次長(中央委員会の機構と人事(第28回党大会)|党紹介│日本共産党中央委員会参照)

*9:著書『「核の時代」と憲法9条』(2019年、日本評論社

*10:韓国や台湾自体は核保有していませんが同盟国の米国は核保有しているので当然ながら中国や北朝鮮は「自分たちが核廃棄したら不利になる」と認識するでしょう。

*11:著書『徹底検証・日本の軍歌』(2011年、学習の友社)