教科書採択 育鵬社から切り替え相次ぐ 専門家「リーダーシップ持った教育委員、首長不在」懸念 - 産経ニュース
これまで育鵬社版の歴史・公民を使ってきた自治体で既に状況が明らかになっている主なケースを見ると、栃木県大田原市が継続使用を決めた*1一方、横浜市のほか、東京都の都立中高一貫校*2▽神奈川県藤沢市▽大阪府河内長野市(公民のみ)▽同府四條畷市-などが他社版に切り替えた。
埼玉県教育委員長を務めた経験がある麗澤大*3の高橋史朗特任教授は「教育長をはじめ教委事務局には、内容が偏っていたとしても現場の教師の意見重視という考えが基本にある。これまで横浜などでは委員側が、そうした考えを抑えてリードしてきたが、(ボーガス注:委員)交代により勢力が変わった」と指摘。
文部科学省によると、採択のシステムは各自治体で定める。しかし、調査員として選ばれた教員が各教科書の長所や短所などを調査した内容を基に、校長や学識経験者らでつくる委員会などで答申をまとめ、それをベースに教育委員が可否を議論するというケースがほとんどだ。
高橋氏は「答申などに対して説得力のある反論ができる委員がいなくなれば、より現場の意向に流されやすくなる。首長らがリーダーシップを持って見識のある委員を加えるよう努める必要がある」と語った。
「予想の範囲内」ですが、専門家と言って登場するのが高橋史朗なんだから呆れて二の句が継げませんね。専門家じゃ無くて当事者(つくる会元副会長)じゃ無いですか。
しかも公然と「育鵬社採用のために首長がリーダーシップを発揮して欲しい」て特定企業を優遇するために首長が政治介入しろってそれ構図としては「安倍の政治介入で森友や加計が優遇された、安倍のモリカケ」と全く一緒なんですが(呆)。しかも「育鵬社は産経グループ」ですからねえ。同業他社(朝日、読売、毎日)が同じことをしたとして産経はそれを容認するのか。
「系列会社への利益誘導を自治体に要望するのは新聞倫理上おかしい、法律違反でなければいいという話では無い」と産経は同業他社を批判するのでは無いのか。いつもながらデタラメな産経です。
それにしても「育鵬社でなければそれでいい」という単純な話でも無いですが「育鵬社は最悪の選択」なので「育鵬社を辞めた自治体が増えたこと」をまずは素直に喜びたい。それにしても「記事もろくに書かずにほとんど放置プレーのつくる会不合格」とは偉い違いですね。「採択されない」程度でここまでむきになるわけですから。つくる会からすれば「その熱意をつくる会不合格問題にも使えよ!」でしょう。
ベイルート爆発、トランプ氏「攻撃とみられる」 根拠は示さず - 産経ニュース
軍事攻撃の痕跡が今のところ見つかっていないが為に「事故説が有力」なのによくもまあデタラメが言えたもんです。
【主張】「徴用工」問題 現金化なら直ちに制裁を - 産経ニュース
制裁して何がどうなるのか。「三権分立」であるために韓国政府にできることは「合法的な行為」としては何もありません。裁判所判決に政治介入なんかしたら明らかな違法行為です(まあ仮にできることがあったとしても「政治的、道義的な意味ですべきかどうか」は話が別ではありますが)。
「以前も別記事で書いたこと」ですが、「光華寮訴訟中国敗訴判決(1987年、大阪高裁:ただし後で述べますが、2007年に最高裁で破棄差し戻しになり、事実上、中国が逆転勝訴)の時に『判決は日中平和友好条約批判だ、日本政府は何とかしろ』と抗議した中国相手に『三権分立だから政府には何もできない』として1987年・大阪高裁判決当時の中曽根*4政権が釈明したことをどう理解してるのか?」と安倍自民と産経を問い詰めたくなります。
産経は当時、「共産党一党独裁の中国は三権分立を理解していない」「裁判判決に政府が介入したら違法行為だ」と中国を非難し、中曽根の釈明を支持していたはずですが。にもかかわらず韓国政府相手に「日本製鉄敗訴判決をなんとかしろ」「判決は日韓基本条約違反だ」だそうです。どこまで産経はデタラメなのか。
安倍自民の制裁論が正しいなら「中曽根政権の釈明は間違いであり、中曽根は中国の要望に応えるべきだった」し、中曽根が正しいなら安倍の制裁論は間違っています。「中曽根の釈明は正しいが、安倍の制裁論も正しい」なんてことはない。
しかし話が脱線しますが光華寮も今は「完全に廃墟」だそうですからね。そして最近の若者は「光華寮訴訟って何?」でしょう。何せ最高裁判決が出た2007年から数えても既に13年が経過しています。
時の流れは速いもんです。
【参考:光華寮訴訟】
学士会アーカイブス | 会報・発行物 | 一般社団法人学士会
◆これからの日中関係
中江要介(前中国大使・原子力委員会委員)No.779(昭和63年4月号)から一部引用
※本稿は昭和63年2月10日夕食会における講演の要旨であります。
光華寮裁判の本質は何かというと、二つあります。一つは国内私法上の問題で、つまり所有権に基づく明渡し請求です。
京都地裁の一審では簡単に言うと、居座っている学生の勝ち――つまり中国系の学生の勝ち、大阪高裁から差し戻し後の再審判決では所有権者側の勝ち、所有権者はだれかというと、登記簿には「中華民国」と書いてある。これを不満とした中国系学生側の控訴を今回大阪高裁は棄却して、京都地裁再審判決どおりだと言ったものだから、今度は学生の方が怒って、それなら最高裁判所に行きましょうと言うことでいま最高裁にかかっているのが現状です。これはたとえば日本国内である所有権者が不法占拠者に明渡しを請求している裁判があった場合、それに日本政府が介入して、裁判所の言うのは違う、こちらが正しいとか、そんなことは言えない、当り前のことですがそれが三権分立とみんなが言う問題ですね、これが一つです。
もう一つの側面は、この裁判があろうがなかろうが、この留学生寮は国交正常化に伴って当然所有権は中華民国から中華人民共和国に移るべきものかどうかという国際法上の問題で、この二つの側面がある。中国はこれを混同しているようですが、故意に混同しているのかどうかわかりません。この第二の側面は大変に興味のある問題で、国際司法裁判所にでも行って争うに値するくらいの問題なのです。なぜかといいますと、ある国の政府が倒れて革命政権ができ、その新しい革命政権を承認したときに当然所有権が移る財産というのは、前の政権時代の大使館、領事館の土地建物とか、もし通商代表部のようなものがあればその土地建物、そういうものは当然新しい政府の方に移る。これはもう国際法上の通説ですからだれも疑わない。その次は、文化センターのようなものがだんだんグレー・ゾーンに入ってくる。そこで、留学生の寮というのは一体大使館の土地建物のようなものか、それとも単なる一私有財産かという問題なのです。
中国では、留学生というのは政府派遣であって、その留学生がどこでどういう生活をして勉強するかは、国の政策に関するものである。だからこの留学生の寮というのは基本的に公の財産である。したがって大使館などと同じように国交正常化のときにその所有権は中華人民共和国に移っているのであり、その措置をとらなかったのは日本政府の怠慢だと、こうなっていくわけです。これは国際法上の一つの立場であるかもしれません。ところが、他方われわれの体制の国では、留学生のために外国に政府財産を持つことは殆どない。ですから、留学生寮というのは私的なもので、そこには政府留学生ばかりでなく、私費留学生も入ってくるわけですから、寮の管理も政府が直接やるのではなくて、寮の自治会とか、別の管理機関が管理するというような形になる。そういうたぐいの財産は、大使館の土地建物と同じように当然に所有権が移転するかどうかという点について、日本の国際法学者の多数説は、当然に移転するものではない、大使館などとは違うということなのです。しかし、移転するという立場をとったっていい。それは判断の問題で、どちらでもいいということです。ところが、中国の国際法の学者は一人の例外もなく、これは当然移転すると言う立場をとっています。体制が違うのですからこうなるのでしょう。
それでは世界の国際法学者はどうかというと、これはさまざまでどうしても法的に決着をつけたければ国際司法裁判所にでも行くより方法がない。国際司法裁判所まで持っていくためには、日本と中国の間で特別合意書というものをつくり裁判にかける。こういう問題を裁判にかける場合、その合意書をつくるのに二、三年はかかるでしょう。そして、その判決が出るまでにさらにかなりの年月がかかります。一棟の寮の問題ではありますが、ことの性質上、こういう問題こそあいまいな政治的解決ではなく法律的にきちんとするのが、長い日中関係から見ていい解決だと私は思っているわけです。
しかし、中国はまだこれは政治問題だといい張り、いま問題にしているのは大阪高裁の判決ですが、これは三権分立の制度の下では最高裁の判決がでるまでは行政府としては何とも言えないし、できない。どうしようもないから最高裁の判決をまちましょうということです。
そのとき注意をしなければいけないまず第一のことは、先程申し上げたようにこの裁判が求めているのは不法占拠の明渡し請求であって、財産の所有権を争っているのではないということです。ですから判決そのものの中で、この財産の所有権者は「中華民国」と書いてあるけれども間違いで、中華人民共和国のものであるというようなそんな判決は出てこないのです。留学生は出ていくべきかいかざるべきか、それだけが判決ですね。法律というものはそういうものなのです。
では判決の中でどこに問題があるかというと、その「判決理由」の中で、財産の所有権はだれだとか、その所有権は国交正常化のときにどうなったかというようなことにもし触れますと、これがすなわち中国の大変な関心事になるわけです。ではそういう方は心配はないかというとこれは心配ない。なぜならば、日本の憲法には国際約束は誠実に遵守すべしと書いてある(第九十八条第二項)。ある事案が憲法違反かどうかということを決める最終の権威あるととろは最高裁判所です(第八十一条)。ですから、日本の最高裁判所は日本憲法に反するはずがない。言いかえるならば、国際法に反することを書くはずがありません。
中国は一つ、そしてその正統政府は中華人民共和国政府であるということで、これは共同声明と日中平和友好条約に明記してある。ですから、この国際法に反するようなことを最高裁判所が判決理由に書くはずがない。私は、光華寮問題についてはきわめて楽観しておりまして、いまは静観するほかはないし、出てくる判決も心配することはない、最高裁判所を信頼しております、一国民としてはそれが正しい立場です、というのが私の見解です。
「 三権分立を放棄するのか最高裁 」 | 櫻井よしこ オフィシャルサイト『週刊新潮』2007年5月3・10日号
・3月27日の最高裁第3小法廷で藤田宙靖*5(ふじた・ときやす)裁判長らが下した判断は、司法が政治を慮り、その影響を受けたのか、或いは特定のイデオロギーに染まったのかと疑わざるを得ないものだった。
・光華寮は1961年に台湾の中華民国政府が所有権を登記し、台湾学生たちの寮とした。そこになぜか、大陸系の中国人学生が入居。台湾政府は67年9月6日、彼らに寮の明け渡しを求めて京都地裁に提訴した。
他方、日本国政府は(ボーガス注:田中*6首相訪中により)72年に大陸の中華人民共和国と国交を樹立し、台湾との国交を断絶した。
京都地裁は先の訴訟に関して、77年、光華寮の所有権は台湾から中華人民共和国に移転されたとの判断を示した。敗訴した台湾側は控訴し、大阪高裁は台湾の主張を認めて審理を京都地裁に差し戻した。その結果、京都地裁は、逆転判決で台湾の所有権を認め、大阪高裁も87年、同様に台湾の所有権を認めた。ところが、光華寮に定住した大陸系の中国人寮生が同件を最高裁に上告したのだ。これが87年、今から20年も前のことだ。以来、最高裁は光華寮問題を塩漬けにしてきた。事態が突然、動き始めたのは今年1月22日だった。
民主党(ボーガス注:判決当時。現在は自民)衆議院議員の長島昭久氏*7は、この事案には極めて不透明な要素がつきまとうと指摘した。
「調査してみると、20年間放置された事自体、他に例がないのです。上告審は現在、平均数カ月で判断が示されますから、20年間の塩漬けが如何に異常かがわかります。にもかかわらず、今年1月22日に突然、審理が開始されたと思ったら、中国側、台湾側の双方に、3月9日までに各々の立場を釈明せよというのです。この裁判についての人々の記憶が消え去るほど長く放置したあと、わずかひと月半で釈明せよと命じる性急さ。裏にどんな事情があるのか、司法は納得のいく説明をしなければならないはずです」
◆最高裁の不可思議な態度
台北駐日経済文化代表処の許世楷*8代表も指摘する。
「突如、最高裁の審理が始まり、ひと月半で裁判所の質問に答えよという命令です。20年の間に担当弁護士は80代、90代の高齢になりました。書類を精査する時間もいります。そこで私たちは回答期限の延長を求めましたが、却下されました。そして、3月27日、最高裁はこれまでの判決を覆し、台湾には光華寮の所有権はないとした*9のです。余りに政治的な判断ではないでしょうか」
長島氏も指摘する。
「1月22日に最高裁が動き出した途端、25日には中国外務省副報道局長の姜瑜氏が定例記者会見で、光華寮事件は民事訴訟ではなく政治案件だと発言したのです。3月27日に最高裁判決が出ると、直後に中国の国営新華社通信が至急電で『日本の最高裁判断は、台湾当局は訴訟権を持たないと認定し、事件を一審の京都地裁に差し戻した』と高らかに勝利宣言を行いました。
また、今回の判決はまさに中国側の訴訟代理人の回答書の理屈そのものによって成り立っています」
訴訟当事者の一方の側の論理を重用したからといって、判決が偏っているとは、必ずしも言えない。だが、光華寮事件を中国側が「政治案件」ととらえるなか、今回の判決は最高裁が中国の影響を受け、中国側に偏ったと思わざるを得ない要素は多い。そもそも光華寮の所有権を中国側に認めるのには大きな問題がある。
ちなみに最高裁判決が出た「2007年3月」は「第一次安倍政権」時代であり、そのこともよしこらウヨにとって「最高裁判決は安倍の政治的画策か?(安倍が俺たちを裏切ったのか?)」と言う疑念もあったようですね。
そしてまた(?)安倍は「習主席国賓訪日」です。ウヨの「安倍が裏切った」という思いがまた復活したわけです。
*1:これは勿論残念ですね
*3:ウヨ宗教モラロジー研究所(右翼団体・日本会議にも参加)が母体のウヨ大学。高橋以外にも古森義久(元産経ワシントン特派員)、西岡力(救う会会長)、八木秀次(日本教育再生機構理事長、安倍政権教育再生実行会議議員、元「つくる会」会長)といった右翼活動家が麗澤大の教員をつとめている。モラロジーの極右性については例えば「歴史認識問題研究会」とは何か→モラロジー研究所なんだよなぁ…… : ネトウヨとはコインの裏表の関係参照
*4:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相、自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相
*5:東北大学名誉教授(行政法)。著書『行政法学の思考形式(増補版)』(2002年、木鐸社)、『行政法の基礎理論(上・下巻)』(2005年、有斐閣)、『最高裁回想録 学者判事の七年半』(2012年、有斐閣)、『裁判と法律学: 「最高裁回想録」補遺』(2016年、有斐閣)など(藤田宙靖 - Wikipedia参照)
*6:岸内閣郵政相、池田内閣蔵相、佐藤内閣通産相、自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)などを経て首相
*7:鳩山、菅内閣防衛大臣政務官、野田内閣防衛副大臣、希望の党政調会長、地域政党未来日本代表などを経て、自民党衆院議員(長島昭久 - Wikipedia参照)
*8:津田塾大学名誉教授。著書『日本統治下の台湾 : 抵抗と弾圧』(1972年、東京大学出版会)など(許世楷 - Wikipedia参照)
*9:「破棄差し戻し(過去の裁判判決には真理に不十分な点があるのでもう一度、一審の京都地裁から裁判をやり直せ)」なので「台湾の所有権はないとした」わけではありません。「過去の不十分な審理では台湾に所有権があるとは言えない(一方で無いとも言えない)」が正しいですね。