先月28日から東北を旅していた。
山形の実家に墓参りに行ったついでに、青森まで足を延ばして、三内丸山遺跡、酸ヶ湯(すかゆ)温泉、棟方志功記念館、恐山、八戸を回ってきた。
なるほどしばらく高世のブログ更新が無かったのはそう言う理由の訳です。
で、まず墓参りに菩提寺の珍蔵寺へ。
ところで、毎回、お寺を訪れるたびに発見があるのだが、今回は、本堂に昔の写真が飾ってあるのに気がついた。
戦争のために金属を供出させられたときのものだ。
友人の長野県の地域史家、桂木恵さんによると、「渋谷のハチ公も2代目」だそうで、金属回収は全国で広く行われた。
日中戦争が本格化し、1937年、国民精神総動員運動、1938年、国家総動員法が施行されると、対米関係悪化を想定して金属製品の回収が活発化したという。(日独伊三国同盟を契機としてのアメリカの鉄くずなどの対日輸出禁止は1940年)
1941年9月(対米英宣戦布告の3か月前)に金属回収令が出された。
1942年5月にはお寺の梵鐘仏具の「譲渡」命令が出る。
この件でぜひ知って欲しいと桂木さんが挙げたのが、長野県信濃町にある称名寺の石の梵鐘だ。
1942年10月に供出させられたときのことを忘れないために今でも石の梵鐘を吊しているという。
1943年には、企業対象の金属回収が強制的に行われ、長野では、善白(善光寺ー白馬)鉄道が強制的に事業停止となり、レールは政府が回収した。
まさに総力戦だったのだ。
冷静に考えれば「そんなんで米国相手に戦争して勝てるのか」という話です(もちろん敗戦した)。ちなみに「梵鐘の供出」と言えば、横溝正史「獄門島」でそう言う話が出てきます。
「獄門島」では「復員詐欺*1」なんて話(この詐欺話が「獄門島」では重要な問題となってきます)も出てきますし、金田一耕助自身が復員兵です。
「犬神家の一族」では「ニセの犬神佐清*2」の顔が「焼けただれ、常にゴムマスク」だったのは戦争被害でした。
「悪魔の手鞠唄」で「殺害された詐欺師」が詐欺に手を出したのは「トーキーの普及で活動弁士を首になったから*3」です。詐欺師はだまし取った金を持って「満州国への逃亡」を計画していましたが、それに気づいた被害者が激怒し、彼を殺害します。
ということで横溝作品の中には「時代を感じさせる話」がいろいろあります。
なお、「かなりネタばらし」になりますが「犬神家の一族」「悪魔の手鞠唄」では、横溝が作品で良く多用する「二人一役トリック(二人の人間が一人の人間を演じる)」または「一人二役トリック(一人の人間が二人の人間を演じる)」が登場しますね。
小生の知ってる横溝作品だと他にも
【金田一作品では無い】
◆真珠郎(探偵・由利麟太郎が活躍。ただし、古谷一行の金田一シリーズ(1978年版、2005年版)では探偵役は金田一に改変)
【金田一作品:あいうえお順】
◆悪魔が来りて笛を吹く
◆女怪
◆病院坂の首縊りの家
◆幽霊男
が確か「二人一役トリック」または「一人二役トリック」です(横溝全作品を知ってるわけではないので他にもあるかもしれない)。
このごろなぜか、戦争の話に引き寄せられる。きな臭さをどこかで感じているからだろうか。
どのあたりが「きな臭い(火薬の匂いのことを言い、戦争の前兆を感じることを意味する)」んですかねえ。
まあ、PKOでは無い「米軍との海外(イラク、シリアなど中東辺り)での集団的自衛権行使」という「自衛隊の海外派兵」については今後、警戒が必要ですが、ただしそれは「総力戦ではあり得ない」わけです。
もはや先進国にとって自国経済を犠牲にする「総力戦」はありえない。
また、高世が「台湾有事の恐れ」「朝鮮半島有事の恐れ」「イラン有事の恐れ」というならそれは「まずあり得ない話」でしょう。
もちろん「今の米中対立」「台湾・蔡英文政権と中国との対立」が「望ましいとは思いません」がそれが「武力での戦闘」になることは考えがたい。
「台湾が独立宣言しない限り侵攻しない」としている中国がその公約を破って侵攻する(中国への国際的批判は避けられません)とか、そうした中国の牽制を無視して台湾政府が独立宣言したあげく米国が支持を表明し、「中国の武力侵攻の可能性」が本当に出てくるというのは考えがたい。
米国トランプ政権がイランや北朝鮮に対して、対立的態度とは言え朝鮮半島有事もイラン有事もまずあり得ないかと俺は思っています。