リベラル21と阿部治平の「馬鹿さ」を今日も嗤う(2020年10/20日分)(追記あり)

リベラル21 中国の実力はアメリカを凌駕しているかもしれない(阿部治平)

 最近ガンと一発やられることがあった。「日本人の世界経済観は1990年代の時点で止まっている」という文言を見たときのことである。これは2018年度秋学期に東京大学駒場キャンパスで開催された連続講義「現代中国ゼミナール・習近平時代を読み解く」の中で、丸川知雄*1教授が語った言葉である(講義録は今年5月に東京大学出版会から刊行された)。
 リーマンショック以後、中国は「世界の工場」とかつがれたが、私は彼らがどんなにすばやく生産力を高めたところで、先進国の技術をコピーし、農民工などの安い労働力を使って安価なものをつくり、先進国に輸出していると思い込んでいた。これが間違いだった。

 「あんた、バカ?」ですね。「中国滞在経験がある」とはいえ、なんで中国の経済や科学技術研究の専門家でも無い阿部がそんな風に思い込めるのか?

・2019年1月、中国は月面探査機「嫦娥4号」を打ち上げ、月の裏側へ軟着陸させた。アポロ11号による人の月面着陸以来50年ぶりのことである。私は数年前中国が人工衛星の宇宙空間での破壊に成功したときには驚いたが、「嫦娥4号」の月裏側着陸のニュースでは、あらためて中国のロケット技術の躍進ぶりと、宇宙空間を制しようとする意志の強さを見直した。
科学ジャーナリストの倉澤治雄氏によると、ワシントンのシンクタンク『情報技術イノベーション財団(ITIF)』は、2019年4月に、研究開発費、研究人材、知財、ハイテク輸出など36の指標についてアメリカと中国を徹底比較した結果、中国は国際特許の出願数ではすでにアメリカの80.9%にまで迫り、ハイテク輸出では2倍以上凌駕していることを明らかにしたという(『中国、科学技術覇権への野望』中公新書2020・06)。
 倉澤氏自身の見方でも、中国の技術開発能力は、模倣とか窃取の段階をとうに越え、新技術を自ら生み出すところに達している。とりわけ第5世代通信技術システム(5G)では、日本はいうまでもなく、アメリカをも抜き、宇宙工学などの分野でもアメリカに挑戦しているという。
・中国の軍事を含めた科学技術の発展を支えるものは、研究開発費と人材である。2018年の民間も含めた科学研究費は、アメリカ58.2兆円、中国55.4兆円、日本17.7兆円、ドイツ13.8兆円である。日本は中国の3分の1に満たない(https://www.globalnote.jp/post-10315.html)。
 2017年についてみると、科研費中の政府支出は中国24.2兆円、アメリカ13.0兆円に過ぎない。国家の性格から中国が大きいのは当然*2だが、「科学技術進歩法」によって科学技術予算は必ずGDPの伸び率を上回らなければならないと規定されていることもあって、中国政府の科研費は、2000年から2017年までに、名目で約20倍、実質*3で10倍という速さで伸びている(倉澤前掲書)。
・中国が今年5月に新型コロナ感染を抑制した過程は、人権を軽視した強い統制力とともに、高度な技術力が存在していることをあきらかにした。
 繰り返しになるが、中国は国家経済ではもちろん、軍事力・科学技術、さらには防疫分野でも日本を凌駕するレベルに達している。

 阿部とリベラル21のアホさにはいつもながら絶句ですね。
 ここでの文章は阿部の過去文章

リベラル21 密告は習性なのか――中国の大学において教育・研究の発展を阻むもの
 権力維持のために言論統制を強化すれば、密告の土壌は深まり拡大する。だが大学や研究所で、講義や研究さらには人格問題などで密告が行われれば、教育・研究の創造的発展はない。社会科学だけではない。科学・技術の分野でもこれでは定説を越えた新学説が生れにくい。伝統的芸術の革新もできない。実に中国にとって不幸な時代がやってきたといわなければならない。

リベラル21 「中国は社会主義か」という討論について*4
 シンポジウム参加者の何人かから、「党国家体制」が大きな経済発展を導いたことを高く評価する見解が表明されが、高度経済成長は中国だけではない。開発独裁国家の例を挙げるまでもなく、政治がよほどでたらめでなければ、20年もたてば後発国の経済成長はたいがい実現するものだ。

と明らかに矛盾します。
 ということは阿部は過去の見解を今回撤回し修正したのか。しかし阿部は「自らの非を認めることが精神的につらい」のかその点を明確に書かずにごまかしています。そしてそのごまかしをリベラル21も容認すると。呆れたバカ共です。
 ついでに言えば「中国の科学技術の発展」を阿部が知ったのは最近かもしれません(と言うのもお粗末な話だと思いますが)がそんなことは阿部がリベラル21 密告は習性なのか――中国の大学において教育・研究の発展を阻むものを書いた時点で明白でした。
 ついでに言えば、ある意味「中国の科学技術の発展」について阿部が無知だろうとリベラル21 密告は習性なのか――中国の大学において教育・研究の発展を阻むものの指摘はおかしな代物です。

基本的に、理数系の学問振興と政治体制・民主主義の程度は関係ないと思う - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
 そうですかねえ。文科系は、たしかに政治体制や民主主義の程度によって学問研究の自由が阻害されることはありますよ。戦前の滝川事件なんかはまさにそうでしょう。天皇機関説事件などもしかり。あるいは歴史研究なども、神話などの関係から研究の自由が阻害されることもあったわけです。しかし理数系の学問や科学技術などの問題は、直接はそういうこととはかかわらないんじゃないんですかね。いいとか悪いとかはともかく。
 例えば旧ソ連は、米国に先駆けて宇宙ロケットや有人飛行を実現しましたよねえ。また、ナチス・ドイツが兵器とかの関係で、非常に優秀だったのも、私が書くまでもないでしょう。
 それで、我が日本はどうですかね。戦前の日本にまともな民主主義なんかがあったわけではありませんが、しかしゼロ戦とか戦艦大和とか、すごいものをつくりましたし、また湯川秀樹が中間子論を発表するなど、優れた自然科学者も輩出したわけです。繰り返しますが、いいとか悪いとかの問題ではなく、特に民主主義や政治体制などは関係ないでしょう。きっちりした教育システムがあり、研究者を養成するそれなりのシステムが確立してて、予算をつぎこめば、こと理数系に関してはそれなりの実績は出せるということです。

という指摘の通りでしょう。旧ソ連ナチスドイツ、戦前日本が「民主的で無いのに科学大国だったこと」は常識でしょうし、それを知っていれば阿部のようなとんちんかんな認識はそもそも出てこない。
 しかし阿部がこんなことを書くようになった経緯は何でしょうか。あれですかね、週刊新潮当たりの「日本学術会議誹謗記事」である「千人計画ガー」を読んで今回のような文章を書く事になったのか。それとも中公新書で入手しやすい倉澤『中国、科学技術覇権への野望』(2020年06月刊行)を読んだことが理由か?
 ただし入手しやすいかどうかを無視すれば、阿部があの記事を書いた時点(2016年4月12日)で「中国の科学技術が発展している」などという「倉澤本同様の指摘」は既に

伊佐進一*5『「科学技術大国」中国の真実』(2010年、講談社現代新書)
◆林幸秀*6『科学技術大国中国:有人宇宙飛行から、原子力、iPS細胞まで』(2013年、中公新書)

などの刊行物が指摘しています。つうか講談社現代新書である伊佐本や中公新書である林本は充分入手しやすいですからねえ。かつ阿部は現代中国ゼミナール - 東京大学出版会なんて「新書に比べたら入手しづらい本」も入手して読んでるようですからね(苦笑)。
 また中国の屠ユウユウ - Wikipedia氏がノーベル医学賞を受賞したのは「阿部記事(2016年)より以前の」2015年です。
 結局「中国の科学技術の発展を最近まで認識できなかった阿部がバカだ」と言う話にしかならないでしょう。おそらくそう言ったら阿部は激怒するのでしょうが。
 なお、千人計画については拙記事
今日の中国関係ニュースほか(9/7分)(追記・訂正あり) - bogus-simotukareのブログ
新刊紹介:「前衛」7月号 - bogus-simotukareのブログ
今日の中国ニュース(2020年8月5日分) - bogus-simotukareのブログ
今日の中国ニュース(2020年10月13日分)(副題:中国の千人計画) - bogus-simotukareのブログを参照頂ければ幸いです。
 『理数系の学問振興と政治体制・民主主義の程度は関係ない』ことの例としては戦前日本が挙げられるでしょうがそれについては拙記事
新刊紹介:「歴史評論」8月号 - bogus-simotukareのブログを参照下さい。
 新刊紹介:「歴史評論」8月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した広重徹『科学の社会史(上)-戦争と科学』(ただし小生が広重本を読んだわけでは無くネット上の広重本紹介の孫引き。小生自体は広重本は未読です)によれば

・研究費の増大と諸機関の連絡調整の促進という点で、著しい前進をもたらしたのが、日本学術振興会(以下、学振)であった。桜井錠二や古市公威、小野塚喜平次の学会長老らの呼びかけで、1931年に学士院に集まり、協議したことをきっかけに、1932年に正式に誕生した。学振の意義は、その桁違いの額の大きさであり、商工省や学士院の補助金を合わせても、その3倍近い額にも上った。
・このような豊富な資金と、近代化への志向とに支えられた学振は、また、日本の研究水準を上昇させた。たとえば、(ボーガス注:湯川秀樹朝永振一郎という)2人のノーベル賞受賞者を出した原子核宇宙線の研究は、学振の第10小委員会によって、本格的軌道に乗った。戦争へ向けての科学の国家的動員の中で、初めて研究らしい研究が行われ、世界水準に近づくことができた。
・第6章「科学技術新体制」では、日中戦争の長期化に伴って登場した科学動員の新しい側面について述べられる。新しい要素とは、第一に1938年の内閣改造で、(ボーガス注:第一次近衛内閣文相の木戸幸一が退任し)陸軍大将荒木貞夫が文部大臣になったことを契機に、文部省による科学行政の積極化が始まったということである。
 1938年8月にはさっそく科学振興調査会が設置され、ここで文部省の諮問に応じて科学振興に関する重要事項が調査審議されるようになった。そして、調査会自らの建議で、1939年文部省科学研究費交付金(以下、科研費)が創設され、その事務を担う独立課として科学局が1942年発足した。この科研費の創設の背景には、基礎科学が十分でないとの認識であり、荒木は、科研費は何の役に立つかなど言わずに、使い捨てにするつもりでなければならないと述べている。

そうですが「学振のできた1932年」と言えば「満州事変の翌年」「515事件で犬養首相が暗殺された年」であり、その後、日本は軍国主義の道を進み、当然、民主主義も形骸化していきます。
 しかし広重曰く「学振の豊富な資金」によって1932年以降、日本の研究水順は向上するわけです。
 あるいは1939年に「科研費」を創設し、日本の科学技術研究の向上を目指した「第一次近衛、平沼内閣文相」荒木貞夫は民主主義者なのか。一般に「陸軍皇道派のボス」「元A級戦犯」荒木をそう評価する人は居ませんし、阿部もさすがにそうは言わないでしょう。まさに「理数系の学問振興と政治体制・民主主義の程度は関係ない」わけです。
 なお、上で紹介した広重徹の著書『科学の社会史(上)(下)』は岩波現代文庫で入手が出来ます。他に広重の著書としては『近代科学再考』(朝日選書→後にちくま学芸文庫)、『思想史のなかの科学』(共著、平凡社ライブラリー)があります。
 さて、阿部のリベラル21 中国の実力はアメリカを凌駕しているかもしれないについては

以前のリベラル21 密告は習性なのか――中国の大学において教育・研究の発展を阻むものでの主張
>権力維持のために言論統制を強化すれば、密告の土壌は深まり拡大する。だが大学や研究所で、講義や研究さらには人格問題などで密告が行われれば、教育・研究の創造的発展はない。社会科学だけではない。科学・技術の分野でもこれでは定説を越えた新学説が生れにくい。伝統的芸術の革新もできない。実に中国にとって不幸な時代がやってきたといわなければならない。
(引用終わり)
と全く主張が異なりますが、過去の主張は撤回されたのですか?。そうならばその旨、はっきりと明記して下さい。

とコメントしておきました(bogus-simotukareが投稿者の名前だと掲載拒否がほぼ確実なので、今回は投稿者名はあえて別の名前にしました)。阿部だと多分「このレベルですら」コメント掲載拒否でしょうが。

【追記】
 今回は俺の予想は外れ

リベラル21 中国の実力はアメリカを凌駕しているかもしれない
ありていに言えば、国威を発揚する分野、権力の意図する分野のイノベーションは特異な発展をとげる、とくに軍事技術においては、ということに尽きると思います。

というコメントがつきました。
 しかしはっきりと「撤回しました」と書けない点は実に阿部らしい。
 なお、「国威発揚」云々、「軍事技術」云々つうのが阿部らしいですね。そんなことに話を限定する必要はどこにも無いでしょうに。つまりは「政権批判につながりそうにない場合」「国益増進につながりそうな場合」は「政府は発展を支援する」つうことですよね。そんなことは前からわかりきったことですが。
【追記終わり】

立憲民主党など野党勢力が、新しい政策を提起する時期が来ていると改めて考えるのである。

 最後の一文ですが「とってつけたような文章」で吹き出しました。
 新しい政策も何も「中国の科学技術勃興に日本がどう対応するか」なんて「日本も科学技術予算を増やそう」以外に何の回答があるのか(どう増やすのかという問題はひとまずおきます)。「少子化による労働力不足にどう対応するか」→「子育て世代に対する経済支援などで少子化を克服する(出産数を増やす)」「移民導入」「ロボットの開発」「今まで働いてなかった専業主婦や高齢者にも働いてもらう」みたいな「複数の回答がありうる話」じゃ全然ないでしょうに。
 そしてその程度の事なら「野党勢力ガー」もない。「自民、公明は科学予算を付けろ」といえばいいでしょうよ。
 「沖縄基地問題」「外国人地方参政権問題」などで自公に「沖縄の声を聞け」「外国人地方参政権を導入しろ」などと要望してもほとんど望み薄であり、「野党に期待する」つうならわかりますけどねえ。それとも阿部は「そんなこと(科学予算の増大)は自公に期待できない」と思うほど自公に否定的なのか。
 たぶんそうではなく「リベラル21が野党共闘支持を建前」としているがゆえに「野党への期待の言葉(?)」を「とってつけただけ」でしょう。いつもながら本当にくだらない男です。

*1:著書『現代中国の産業』(2007年、中公新書)、『チャイニーズ・ドリーム』(2013年、ちくま新書)など

*2:何が当然なのか、何が「国家の性格(一党独裁のこと?)」だか阿部の言いたいことがさっぱりわかりません。もしかして「独裁国家だから福祉予算をあまり使わなくて済む(だから科学研究費につぎ込める)」とか言いたいのか?。いやそう言う話じゃないと思いますけどね。

*3:「実質」と言うのはおそらく物価上昇率を考慮してるのでしょう。

*4:この阿部の駄文についてはリベラル21と阿部治平の「常軌を逸したアンチ中国」を今日も嗤う(2020年8/22日分) - bogus-simotukareのブログで批判しました。

*5:科学技術庁出身。文科省宇宙開発利用課課長補佐、中国大使館一等書記官など歴任。その後、退官し、公明党から出馬し、衆院議員。第4次安倍内閣財務大臣政務官。政治家としての公式サイトはいさ進一 Official Website伊佐進一 - Wikipedia参照)。まあ、「講談社現代新書から本を出したり、公明党の要請で途中退官して政治家になったりする」のだから(仮に創価学会員だから政界進出の声がかかったのだとしても)有能な人ではあるのでしょう。

*6:科学技術庁研究開発局宇宙政策課長、科学技術庁原子力局政策課長、文部科学省科学技術・学術政策局長、内閣府政策統括官(科学技術政策担当)、独立行政法人宇宙航空研究開発機構副理事長、独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター上席フェローなど歴任。著書『理科系冷遇社会:沈没する日本の科学技術』(2010年、中公新書ラクレ)、『科学技術大国 中国』(2013年、中公新書)、『中国科学院』(2017年、丸善プラネット)、『中国の宇宙開発』(2019年、アドスリー)など(林幸秀 - Wikipedia参照)