高世仁に突っ込む(2020年11/6日分)

気がもめる米大統領選挙結果 - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 まだ最終結果が確定してないとは言え、小生自身はそんなに気がもめては居ません。
 トランプは「郵便投票は不正がある、無効だ。訴訟を起こす」と根拠レスで無茶苦茶なことを言い始めた。これは「そう言う無茶苦茶なことを言わなければ勝てない」とトランプが自覚していると言うことです。
 「トランプ政権時に最高裁判事を任命し、トランプ派判事が増えた。最高裁まで争えばお手盛りで俺の主張をトランプ派の判事共が認めるかもしれない」という「卑怯極まりない考え」です。
 一方、バイデン*1はこんな馬鹿なことは何一つ言ってない。もちろんトランプが本当に訴訟を起こせば、バイデンも優秀な訴訟チームを組織して受けて立つでしょうが、余裕綽々です。はっきりと「トランプ陣営が本当に訴訟を起こし、その無茶苦茶な主張が裁判所で認められない限り、自分の勝利は動かないだろう」という趣旨のことまで言っている。
 もちろんそうした「無茶苦茶が通る可能性はゼロではない」ですが、当初恐れられた「トランプが卑劣な手段に打って出なくても、ヒラリー*2が敗北したときのように、僅差でトランプ勝利」などという最悪の事態は避けられたわけです。

 私は今の国際情勢においては、アメリカの決定的凋落は非常に危険だと思うので、トランプにはぜひ退場してもらいたい。

 「今の国際情勢」が何を意味するのかよく分かりませんが、「いや、問題はそこじゃねえだろ?」て話です。
 もちろん「トランプのような無茶苦茶な男」が大統領では「米国の国際的イメージ」は打撃を受け、「米国は凋落し続け」、それは国際政治に大きな影響を与えるでしょう(負の影響と言っていいかと思います)。
 とはいえ、トランプの最大の問題点は、国際情勢とか「米国の凋落」とかそう言う話ではない。

 選挙戦のなかではトランプの非道ぶりがむき出しになっている。
 テキサス州の高速道路で30日、トランプ支持者の車数十台が、バイデン陣営のキャンペーンバスをとり囲んで威嚇し、バイデン陣営が「安全上の懸念」を理由に3つのイベントを中止する事件があった。FBIも捜査に乗り出したのだが、トランプは、バスをとり囲む動画をシェアして「I LOVE TEXAS!」とツイ―トし、危険な行為を煽っている。
 投票日翌日の4日午前2時半(日本時間午後4時半)ごろ、まだ優劣がはっきりしない段階でトランプは一方的に勝利を宣言した。
《米メディアは一斉に批判。CNNアンカーのジョン・キング氏は「ここは米国だ。ベラルーシではない。大統領が当選者を決めるのではない」と批判した。》(朝日新聞
 さらにトランプは票の集計に不正があるとの根拠のない陰謀論を振りまき、不利な州では票の数え直しや開票作業の中止を求めて法廷闘争に持ち込むという。常軌を逸している。
 ワシントン・ポスト紙は「トランプ氏の誤った勝利宣言や、票の集計中止を求めることで選挙を破壊する試みは、国家の安定への最も深刻な威嚇」と非難。日本から見て、こういう駄々っ子のようなアブナイ人物が半数近い票を集めているのが不思議でならない。
 ニュースによると、いくつかの開票所に、銃を持ったトランプ支持者が押しかけているという。これが民主主義の先進国なのか・・。
 トランプのせいでひどく分断されたアメリカでは、次期大統領は「癒す人」であることが求められる。バイデンに勝ってもらうしかない。

 と高世も言う「トランプの無茶苦茶さ」が一番問題の訳です。極論すればトランプがまともであれば、いくら「米国の国際的地位が凋落しようが」ある意味何ら問題は無い。トランプ批判派は「国際的地位の凋落」なんてことはある意味「何ら問題にしてない」。
 民主主義とは単純な「多数決」ではない。そこで大事なのは「ルールを守ること」「公明正大であること」です。だから例えば「自民の強行採決」や「河井夫妻の公選法違反行為」が批判される。
 ところが「勝てばインチキしてもいい」と言うのがトランプと側近連中です。だから根拠もないのに「郵便投票は無効だ」と自分たちにとって不利(郵便投票はバイデン支持が多いとみられるので)と見られる郵便投票を全否定しようとする。
 スポーツで言えば「審判を買収してもいい」「試合の前にライバルの食事に毒物を入れて体調不良にしてもいい」「ドーピングしてもいい」「とにかく勝てばいい、ばれなきゃいい」などというのがトランプです。
 そんな人間が公職についていい訳がない。
 そして「これが民主主義の先進国なのか・・」と書く高世ですがトランプのような「勝てばインチキしてもいい」などというレベルの低い人間が大統領に当選し、共和党からは彼を引きずり下ろす動きが出ず、再選目指して出馬、あげく今「郵便投票は全て無効だ」とトランプが暴論を言い出すという時点で、「昔はともかく今のアメリカ」は何ら「民主主義の先進国」ではないでしょう。
 今回トランプが敗北して、「トランプの負の遺産」を全て清算しなければとうてい「民主主義の先進国」ではない。むしろ「民主主義の後進国」でしょう。トランプ打倒の動きもそうした「このままでは米国は民主主義国家などとは言えない酷い国になってしまう」という危機感があった。

 CNNアンカーのジョン・キング氏は「ここは米国だ。ベラルーシではない。大統領が当選者を決めるのではない」

と言うのもそう言う意味です。このままでは「選挙不正を行ったあげく、それを認めずに大統領が居直り、勝利宣言したベラルーシと米国と何が違うのか?」「トランプとベラルーシ大統領と何が違うのか?」「トランプをいい加減打倒しなければいけない」という深刻な危機感がトランプ批判派にはある。
 もはやトランプ批判は「ウォーターゲートニクソン*3など許せない」「リクルート疑惑の竹下政権など(竹下*4首相、宮沢*5蔵相、安倍*6幹事長、渡辺*7政調会長など幹部連の名前が疑惑の政治家として浮上)」「崔順実疑惑の朴槿恵政権など」「モリカケ桜を見る会の安倍*8など」と同じで「政策の是非」と言う話ではない。
 そもそも米国大統領選挙の「勝利者の総取りシステム」からして「民主主義の観点」ではかなり問題があります。
 「49対51」の激戦でも「80対20」の大差の圧勝でも選挙人の「勝者の総取りシステム」だと何ら違いがつかないわけでこれはおかしい。
 民主主義の観点からは「フランスや韓国の大統領選のような直接選挙」にするか、せめて「勝利者の総取りではなく、得票数に応じた選挙人の比例配分」にすべきでしょう。
 「カリフォルニアなど民主党の票田」「南部など共和党の票田」では「勝利者の総取りシステム」のために「いくら南部の民主党員やカリフォルニアの共和党員が投票しても何の意味も無い」「だからそれらの州では投票率も下がる傾向にある」「どちらに選挙結果が転ぶか分からないいわゆる激戦州の結果だけで事実上選挙が決まる」「だから、激戦州以外の選挙運動が軽視される」なんてシステムは俺には到底支持できません。
 確かに「勝者の総取りシステム」なら「票田では確実に勝利が期待できます」。「激戦州だけ力を入れればいい」ので「ある意味省エネになる」。
 そう言う意味では共和党にも民主党にもある意味メリットがある。だから「いつまで経っても」勝者の総取りシステムなんでしょうが民主主義的観点からは問題がありすぎる。
 前回選挙も「フランスや韓国の大統領選のような直接選挙」や「勝利者の総取りではなく、得票数に応じた比例配分」なら「恐らく僅差でヒラリーが勝っていた」というのは有名な話です。総得票数ではヒラリーが上回っていますので。その結果、「勝者の総取りシステムでなければヒラリーが勝っていた可能性が高い。そもそもこんな勝者の総取りシステムなんて他の国はやってない」として俺みたいな批判意見も米国では広がりつつあると言いますが、それでも現時点では「制度改正までには残念ながら至ってない」わけです(追記:ネット上の指摘に寄れば一部の州では「得票数に応じた比例配分」に制度変更されたようですので訂正の意味で追記します)。

 バイデンは5日に行った演説でこう語っている。
 《この選挙が終わったら、選挙運動の激しい言い合いは後ろにおこう。熱を冷まそう。もう一度互いを見て、相手に耳を澄まそう。互いに尊敬しいたわり合おう。団結しよう。国としてまとまろう。
 簡単なことではないのは分かっている。甘い見方はしていない。誰もが甘くは考えていないだろう。たくさんの問題で、いかに深く激しく意見が対立しているか、分かっている。
 しかし、次のことも分かっている。
 前に進むためには、相手を敵として扱うのをやめなければならないことを。》

 はっきりそうはいってないとは言え、これほとんど「事実上の勝利宣言」ですよねえ。
 こういうセリフは敗者の口からは出ない。だからこそ俺も「そんなには気がもめては居ません」。
 いずれにせよ、バイデンが言うように「トランプ敗北」は「政治変革の始まり」でしかない。
 我々の多くはオバマが「黒人初の大統領として当選したとき」、『道は険しいがこれで米国は大きな山は越えた。米国で黒人差別の風潮はなくなるだろう』と思った。
 ところがオバマの後釜が「白人差別主義者」「白人極右」の熱烈な支持を受け「BLM運動を敵視する」あのトランプです。
 我々は「アメリカの政治構造」はそう簡単に変化しないらしいこと、オバマ当選で米国の将来を楽観視したことがいかに甘かったかを「ポストオバマのトランプ当選」で嫌というほど実感した。
 今回だって同じです。「トランプを生み出した熱狂的白人右翼」は消えて亡くなったわけではない。彼らとの闘いは長い間続くでしょう。それを覚悟しないといけない。
 なお、「バイデンが融和を訴えるのはある意味当然」「トランプじゃあるまいし、まさか対立を煽るわけにも行かない」んですが正直「限界がある」でしょうねえ。狂信的白人右翼(トランプ支持層)とバイデン派の宥和なんて現実的に無理でしょう。我々、安倍批判派が「モリカケで安倍を擁護するような連中」と宥和など出来ないのと、あるいは「都構想反対派」が維新と宥和できないのと同じような話です(他にも例はあげられるでしょうが)。
 「宥和」とは「ある程度まともな人間」との間でしか成立しない話です。残念ながらもはやトランプ支持者の多くは「まともとはとても言えない」でしょう。下手に宥和を訴えることは「トランプ支持のウヨ連中を甘やかすこと」にもなりかねません。

 議会選挙では日本なら考えられない人たちが当選している。ニューヨーク州では民主党から、リッチー・トーレス氏とマンデア・ジョーンズ氏が、黒人の同性愛者として初めて連邦下院議員に当選。デラウェア州では、サラ・マクブライド氏(30)が初のトランスジェンダー女性として上院に当選を果たした。マクブライド氏はLGBTQ(性的マイノリティー)の権利団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」の広報主任を務めている。

 トランプのような「LGBT否定の極右」の支持を受ける男が大統領になっていた一方で、「今度大統領になることがほぼ確実なバイデン」は逆に「LGBTの権利擁護」のわけです。そしてそんなバイデンの民主党からはこのように「LGBTの上院、下院議員」も「数は少ないとは言え」誕生している。この点はある種の希望ではあるでしょう。
 まあ、地域差が大きいは思いますけどね。保守的な州ではこんなことは無いわけですから。
 なお、「比例当選とは言え」、そして欧米に比べ数が少ないとは言え、現在、LGBTであることをカミングアウトしてる国会議員としては

石川大我参院議員(豊島区議(社民党)を経て参院議員(立憲民主党))
尾辻かな子衆院議員(大阪府議を経て衆院議員。民主党民進党立憲民主党

がおり、日本に「LGBTの国会議員」が一人も居ないわけではありません。
 また国会議員ではありませんが

小原明大京都府長岡京市議(日本共産党
滑川友理茨城県水戸市議(立憲民主党

などが現在、LGBTであることをカミングアウトしてる「LGBTの地方議員」として存在します
Category:日本のLGBTの政治家 - Wikipedia参照)。
 このように「数が少ない」「過大評価は禁物」とはいえ「立憲民主や共産」からLGBTの議員が生まれる一方で、自民党

「足立区滅びる」に批判集中 自民党議員はなぜLGBTへの問題発言を繰り返すのか:東京新聞 TOKYO Web2020年10月9日
 LGBTなど性的少数者を巡り、東京都足立区の自民党区議が区議会で、同性愛が広がれば足立区が滅びる、との趣旨の発言をし、批判を浴びている。ここ数年だけでも、少子化に絡み、自民党議員から同様の発言が相次ぐ。なぜ、問題発言は繰り返されるのか。(奥野斐)
◆足立区議発言は「人権軽視」「差別的だ」
 足立区議会での発言は9月25日、白石正輝区議(78)の一般質問で出た。少子高齢社会への対応を問い、「L(レズビアン)とG(ゲイ)が足立区に完全に広がってしまったら、子どもが1人も生まれない」「LだってGだって、法律で守られているじゃないか、なんていうような話になったんでは、足立区は滅んでしまう」と述べた。
 これに対し、LGBT当事者らは「人権を軽視している」「差別的だ」などと批判。発言の撤回と謝罪を求めるネット署名も始まっているが、白石区議は9日現在、謝罪していない。
◆「議員の理解足りない」
 自民党議員によるLGBT関連の問題発言はこれまでも度々あり、その都度、非難されてきた。2018年7月、杉田水脈衆院議員が月刊誌に「生産性がない」と寄稿。昨年1月には、現復興相の平沢勝栄衆院議員が、性的少数者について「この人たちばかりになったら国はつぶれてしまう」と発言し、炎上した。
 こうした発言の背景を、自民党衆院議員の政策秘書を務める大河内茂太さん(49)は「議員にLGBTの知識がなく、理解が足りない。(ボーガス注:先天的に決まるものであって、趣味や政治信条、宗教のような自分で選べるものではないのに)同性愛は趣味だからと誤解している人がまだ多い」と説明する。
 大河内さん自身、兵庫県宝塚市議だった15年、市議会一般質問の際、同性パートナーシップ制度の導入*9に絡み「宝塚に同性愛者が集まり、HIVエイズウイルス)感染の中心になったらどうするんだ」と発言。批判の電話やメールが何百件と寄せられ、テレビや新聞で連日報道された。「当時は、支持者らから寄せられた声をふまえ、自信満々に話していた。当事者を傷つけている意識はなかった」と振り返る。
 予想外の反発を受け、大河内さんは寄せられた当事者の怒りや悲しみの声に全て目を通した。勉強会を自ら開き、基礎知識から学んだ。「思春期に『自分はおかしいのでは』などと悩み、(ボーガス注:自ら命を絶ち)命を落とす人もいると知れば、少なくとも言い方は変わるはず。今は悪いことを言ったなと思う」と反省しているという。
 その後、市議時代の16年、自民党の「性的指向性自認に関する特命委員会」の立ち上げに関わった。党は同年、「正しい理解の増進を目的とした議員立法の制定を目指す」との基本的な考え方を公表した。党は同年、「正しい理解の増進を目的とした議員立法の制定を目指す」との基本的な考え方を公表した。
 「同性愛って、ちょっとついていけないなあー。」という言葉から始まる政策パンフレットでは「本人の意思や趣味・嗜好の問題との誤解が広まっている」とし、「このようなテーマについても、目を背けることなく」向き合う必要性を説く。
 28項目のQ&Aでは、控えるべき表現として「レズ」「結婚しろ」なども挙げている。こんなパンフレットがあるのに、なぜ党内に浸透していないのか。
◆優先度上がらず
 大河内さんとともに特命委員会に関わる一般社団法人LGBT理解増進会(神戸市)代表理事の繁内幸治さん(59)は「依然として政策課題としてのプライオリティーが上がらない。『LGBTの課題は自民党が取り組むものではない』との思い込みがある」と話す。

ですからねえ。もちろん「自民党員」でも「大河内氏のような人間」については俺も「一定の評価をします」が、「杉田の暴言を処分もしない」自民党の差別体質には本当にげんなりします。

*1:オバマ政権で副大統領

*2:オバマ政権で国務長官

*3:アイゼンハワー政権副大統領を経て大統領

*4:佐藤、田中内閣官房長官、三木内閣建設相、大平、中曽根内閣蔵相、自民党幹事長(中曽根総裁時代)などを経て首相

*5:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、福田内閣経済企画庁長官、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相。首相退任後も小渕、森内閣で蔵相

*6:三木内閣農林相、福田内閣官房長官自民党政調会長(大平総裁時代)、鈴木内閣通産相、中曽根内閣外相、自民党幹事長(竹下総裁時代)などを歴任

*7:福田内閣厚生相、大平内閣農水相、鈴木内閣蔵相、中曽根内閣通産相自民党政調会長(竹下総裁時代)、宮沢内閣副総理・外相など歴任

*8:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官などを経て首相

*9:現在、宝塚市長は「社民党衆院議員だった中川智子氏」であり、まあ、左派が一定程度強い政治風土ではあるのでしょう。兵庫自体が「土井たか子社民党党首」の選挙区でしたしね。