高世仁に突っ込む(2020年11/13日分)

アメリカでよみがえる「社会主義」3 - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 高世仁に突っ込む(2020年11/11日分) - bogus-simotukareのブログで取り上げたアメリカでよみがえる「社会主義」2 - 高世仁の「諸悪莫作」日記の続きです。

 激しく敵対し憎悪しあう民主党極左とトランプ支持の極右はともに「負け組」

 この高世の文章には非常に問題があります。
 後述しますがまず第一に「民主党支持層」は「最左翼のサンダース支持層」ですら「極左」と呼べるかは疑問です。まあ、「右翼(?)国家」米国においては極左かもしれませんが「サンダースの主張(国民皆保険制度の導入、高等教育の無償化など)」は「日本共産党や欧米社民政党(一時は政権与党だった英国労働党、フランス社会党、ドイツ社民党など)」と大して変わらないので「日本や欧州の基準」では何ら極左ではありません。
 第二に、4年前の初当選時はともかく、今のトランプ支持白人は必ずしも「負け組」とはいえないこと(もちろんトランプ支持の負け組白人もいますが)は

バイデン氏、ラストベルトの2州で勝利…白人労働者層の一部切り崩す : アメリカ大統領選挙2020 : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン
 米大統領選で、民主党ジョー・バイデン前副大統領がラストベルト(さびついた工業地帯)に位置するミシガン州ウィスコンシン州を制した。

ということで今回「負け組白人が多いいわゆるラストベルト」でバイデンが勝ったことで明白でしょう。
 むしろ

トランプ支持者の素顔、実は白人富裕層 WEDGE Infinity(ウェッジ)
 実際にトランプを支持しているのは白人富裕層だ。
 理由として、民主党政権になった場合、現在の富裕層への減税措置が廃止され、高い税率に戻ることが確実であること、法人税も引き上げられ、株式の配当にも影響が出る可能性があるからだ。
 若者がバーニー・サンダース氏を支持した理由は「公立大学の学費無償化」「公的健康保険」「公立の保育園」「学資ローンの減免」などだ。
 しかし富裕層は子弟を奨学金なしに有名私大に通わせることができるし、(ボーガス注:公的健康保険がなくても企業経営の)最高の健康保険を持っているから最高のケアも受けられる。それができない人々に自分たちの税金が回されることを実は快く思っていない。

トランプ支持の強力なパワーの源は、白人を頂点とする米社会の「カースト制度」 | 渡辺由佳里 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
 筆者は1995年にアメリカに移住し、2003年から民主党共和党の両方の大統領選の集会に参加して観察し、いろいろな立場の有権者から話を聞いてきた。だからこそ、「アメリカの白人労働者階級に食べる余裕ができたら、LGBTQ*1、人種差別、女性の人権などの問題を配慮することができる」という意見に同意することはできない。というのも、ウォール街の金融関係者や、企業の重役など、収入がアメリカのトップ1%以上に属する特権階級の白人には隠れトランプ支持者がかなりいるからだ。トランプの集会に行ったり、テレビの取材に応えたり、目につく場所でトランプを支持している多くは「白人労働者階級」かもしれない。だが、政治献金をして陰でトランプを支えているのは「裕福な白人」なのだ。
 (ボーガス注:ウォーターゲートで辞任に追い込まれた)リチャード・ニクソン*2や(ボーガス注:セックス疑惑(不倫疑惑やセクハラ疑惑)の)ビル・クリントン*3を含め、倫理的なスキャンダルを起こした大統領はこれまでにもいた。だが、これほど徹底して倫理観に欠ける大統領は、近年の歴史ではトランプ以外には考えもつかない。それなのに、婚前交渉を禁じて性教育も許さないほど厳格な「ファミリーバリュー(家庭重視)」を売り物にしているキリスト教保守派の指導者たちは、いまだにトランプを強く支持している。部外者にとっては、不思議でならない現象だ。
 この現象を分析する記事や本をいくつか読んだが、その中でもっとも納得できたのが、イザベル・ウィルカーソンの『Caste:The Origins of Our Discontents』(カーストアメリカの不満の源)だった。
 アメリカは元々白人男性に有利な社会なので、特に裕福な家庭で育った白人は、本人に特別な能力がなくても最高の教育を受けて良い仕事に就くことができる。家でも、学校でも、職場でも、店でも、最高の扱いを受ける。だから、すべての言動に自信が溢れており、交渉相手を説得しやすく、成功もしやすい。生まれたときから下駄を履かせてもらっている結果なのに、彼らはすべて自分の才能と努力による達成だと信じている。ゆえに、貧困者と犯罪が多い都市部で育った黒人に対して「奴隷制度はずっと昔に終わった。いつまでも他人のせいにせず、もっと努力するべきだ」といった批判をするのだ。
 ヨーロッパの貴族や、アパルトヘイト時代の南アフリカの白人がそうだったように、現在のアメリカの白人は(ボーガス注:白人に有利な)「カースト制度」が壊れるのを恐れている。
 アメリカにおける(ヒスパニック系を除く)白人の人口は、第二次世界大戦直後の1950年代には9割近くを占めていたが、2019年には6割まで減っており、2044年ごろには過半数を切ると考えられている。「白人である」というだけで、これまで許されてきたことが許されないかもしれない世界がやってくる。それは、多くの白人にとって、不安で、恐ろしいことなのだ。
 カーストの最上層の特権を謳歌してきた白人には、民主党が主張する(ボーガス注:性的少数派(同性愛者など)や民族的少数派(黒人、ヒスパニックなど)、宗教的少数派(イスラム教など)への配慮を主張する)ポリティカル・コレクトネスは彼らの特権を奪うためのスローガンに聞こえる。
 この本を読んでいるうちに納得できたのは、近年の大統領選挙で白人票の過半数を獲得した民主党候補がいないことだ。最近で最も多く白人票を獲得したのは1992年のビル・クリントンで、49%だった。2000年のアル・ゴア*4は43%、2004年のジョン・F・ケリーは41%、バラク・オバマは2008年に43%獲得したものの、2012年には39%と激減した。
 (ボーガス注:オバマという)黒人の大統領が生まれたことで「アメリカには人種差別はもうない」と主張する者がいたが、ウィルカーソンも書いているように、多くの白人にとっては「自分の生まれつきの身分を忘れた uppity (思い上がった、身の程知らずの)黒人」に対する嫌悪感をいだく、許せない出来事だった。「黒人が思い上がったことをしたら、自分の身分を思いださせるようにお仕置きしなければならない」という奴隷時代からの考え方を引き継いでいる白人たちは、これまで以上に黒人に対して頑なな態度を持つようになった。オバマ大統領が誕生したために、そのバックラッシュとして黒人に対する暴力事件がかえって増えていった。
 2016年の大統領選で堂々と白人の優越感を鼓舞したトランプが白人票の58%を獲得し、クリントン*5が37%しか得られなかった最大の理由は、アメリカに存在するカースト制度なのだ。
 トランプがどんなにスキャンダルを起こしても支持者が見捨てないのは、カースト制度の最上層の地位を失いたくない白人にとって、トランプが「最後の砦」だからだ。彼ほど厚顔無恥に白人の地位を守ってくれる大統領はこれまでいなかったし、これから先にもいないだろう*6。それがわかっているから、何があっても彼らはトランプを選び続けるのである。

ということでメディアの報道には「勝ち組白人がトランプを支持してる(負け組白人が支持という印象論はもはや正しくない)」という指摘があります。
 高世が「トランプ支持層、白人」でググるだけでヒットする、こうした指摘を知らないなら「テレビドキュメンタリー会社元社長」のくせにあまりにも情報収集能力がなさすぎますし、知っていて「自分の主張したい話(トランプ支持層は負け組白人)」を展開するのに「不都合だから故意に無視した」のなら不誠実です。
 まあどっちにしろ高世については「そんな無能or不誠実だから会社をつぶすんだよ」感が否定できません。

 アメリカ最大の社会主義政党DSA(アメリカ民主社会主義者)について調べてみたら、思ったより影響力のある組織のようだ。
 DSA(アメリカ民主社会主義者)は2018年、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏を民主党から下院(任期2年)に送ったが、実はもう一人の活動家も当選していた。この二人はともに今回、大統領選挙とともに実施された下院議員選挙で再選を果たし、さらに新たに2人のメンバーが当選確実になっている。4名も連邦議会に送り込むとは大したものである。
 アメリカの若者がめざす「社会主義」とはどんなものなのか。
 DSAはホームページによると、(中略)当面の政策として、全国民向けの健康保険制度の確立、人種・性・宗教などのあらゆる差別の撤廃、気候危機*7に対する抜本的な対策、最低賃金の大幅アップ、富裕層への増税、反ファシズムなどを掲げている。

 「え、その程度で社会主義なの?」ですよねえ。この程度の主張なら欧州社民政党日本共産党とほとんど変わりません。

*1:同性愛者など性的少数派のこと

*2:アイゼンハワー政権副大統領を経て大統領

*3:アーカンソー州知事を経て大統領

*4:クリントン政権で副大統領

*5:オバマ政権で国務長官

*6:つまりは「九条改憲を最優先するウヨ連中(産経、日本会議など)」が「モリカケ桜を見る会」などどんな疑惑が起こっても安倍を見捨てなかったのと話は同じです。

*7:温暖化のこと