新刊紹介:「経済」12月号(追記あり)

【最初に追記】
 こういうデマ記事を書いて発表するような人間と共著を発表する大学教授というのも、最低限の常識を疑う - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)でこの拙記事が

◆菅政権のデジタル戦略と「超監視社会」(大門実紀史
◆「デジタル・ガバメント」による公共の破壊(内田聖子

の参考として

「監視社会=暗黒」の図式で中国を語る日本、重要な視点が抜け落ちている:朝日新聞GLOBE+
 2億台以上ものカメラが市民の生活を監視する中国。(中略)しかし、「幸福な監視国家・中国」(NHK出版新書)の著者である梶谷懐・神戸大教授によると、多くの中国人は現状にむしろ肯定的だという。なぜなのか。(構成・畑中徹)

を紹介した部分を「高口康太*1と梶谷懐・神戸大学教授を批判する」という文脈で紹介頂きました。
こういうデマ記事を書いて発表するような人間と共著を発表する大学教授というのも、最低限の常識を疑う - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)については

◆こういうデマ記事*2を書いて発表するような人間=高口康太
◆共著=梶谷・高口著『幸福な監視国家・中国』(2019年、NHK出版新書)
◆大学教授=梶谷懐・神戸大学教授

ということです。いつもありがとうございます。しかしぐぐったら分かりましたが高口が「千葉大学客員准教授」ねえ。
こういうデマ記事を書いて発表するような人間と共著を発表する大学教授というのも、最低限の常識を疑う - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)をもじれば

◆こういうデマ記事を書いて発表するような人間を客員准教授にする国立大学(千葉大学)というのも、最低限の常識を疑う

ですね。
【追記終わり】

「経済」12月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
世界と日本
◆コロナ拡がるアメリカ(髙山一夫*3
(内容紹介)
1)「外出自粛などをする民主党系知事を経済を破壊しているなどと悪口雑言する(一方でトランプ自身や多くの共和党系知事はコロナを軽視し、特に対策しない)」などの無為無策によってコロナ感染を拡大するトランプ政権が批判的に取り上げられています。なお、この点はトランプの落選により一定の改善が期待できます。もちろんトランプが落選した大きな要因はコロナ失政への国民の反発でした。
2)コロナ感染、死亡者については明らかに「貧困格差(貧困者の死亡率、感染率が高い)」があり、そして貧困者の率は「黒人やヒスパニックが高く」、当然ながら「黒人やヒスパニック」の死亡率、感染率が高い。コロナ禍は米国の貧困格差や人種差別を改めて表面化したわけです。
3)コロナ禍を米国で深刻にさせた一要因として、筆者は米国に「国民皆保険制度がないこと(その結果、貧困層が安価で良質な医療を受けがたいこと)」をあげています。筆者の認識ではオバマケア(トランプら共和党は廃止を一時画策していましたが)がなければ状況はより悪化していたろうとされます。


◆インドのコロナ感染拡大(西海敏夫)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

急速に感染者増えるインド 新型コロナウイルス|NHK2020年9月25日
・インド政府では3月25日から「全土封鎖」を実施しました。生活必需品の買い物などを除いて外出を禁止する、世界でも最も厳しい感染対策の1つと評され、13億の人口を抱えることから「世界最大のロックダウン」と言われました。
・しかし、数日後には早くも“ほころび”が出始めました。一時は人がいなくなっていた路上に、失業した出稼ぎ労働者たちがあふれたのです。インドでは農村部から都市部にきた出稼ぎ労働者が多く、全国で1億人を超えると言われています。インド経済の発展を陰で支えてきた存在ですが、今回の「全土封鎖」によって多くが失業しました。
 こうした出来事に象徴されるように、全土封鎖によって経済に深刻な影響が出たため、2か月あまりがたったころ、政府は段階的な緩和にかじを切り始めました。そして感染に歯止めがかからないまま、経済活動や公共交通機関が次々と再開し、感染拡大に拍車をかける事態になったのです。当初は大都市が感染の中心だったものの、人の移動や接触が大幅に増えたことで、いまでは感染が全国に広がっています。「世界最大のロックダウン」は感染拡大と経済の落ち込みを招いた失敗だったという声も専門家からは上がっています。
 インド政府は広がり続けるウイルスにどう対応しようとしているのでしょうか?。13億の人口を抱えるインド。政府は、ある程度感染が広がるのはしかたない、それより外出制限を強めれば経済が破綻し、より多くの犠牲が出ると考えています。驚くかもしれませんが、これだけ感染が広がっていても、インド政府は「ある程度対策はうまくいっている」という認識を示しているんです。
 根拠としているのが人口100万あたりの感染者数や死者数、そして感染した人のうち亡くなった人の割合です。これらのデータはアメリカやヨーロッパの国々と比べて低く抑えられています。
 新たな感染者数が6万、7万、8万とどんどん増える中で、数字だけを追っていると、正直に言って感覚がマヒしてくることもあります。経済対策を優先する姿勢に危機感も感じます。一方で、インドの社会構造を考えると政府の方針もしかたがないと思うのも事実です。
 いま再び厳しい外出制限を行えば、(ボーガス注:失業者となり)生きることが難しくなる人が大勢います。インドではそもそも、数億人にのぼる貧困層の生活を守るだけのセーフティーネットが十分ではないのです。新型コロナの危機の中で、市民の生活を維持するだけの実効性のある政策も予算もないのが実態です。経済成長を続け、大国への道を突き進んでいたインドですが、図らずも今回のコロナ禍でさまざまな課題が浮き彫りになりました。

 まあインドを「親日国家」とべた褒めし、中韓を「反日国家」とけなしたがるウヨ連中ですが、少なくともコロナ対策については中韓が「封じ込めにほぼ成功した」のに対し、無為無策で状況を悪化させる「失敗国家」がインドのようです。
 西海論文はただでさえヒンズー原理主義色の強いウヨ政治家のモディがコロナ失政をごまかすために支持者受け狙いで「さらにヒンズー右翼化することが危惧される」としています。

 
◆韓国・減らぬ産業災害(洪相鉉)
(内容紹介)
 正義党(中道左派系野党)が議員立法として提出した重大災害企業処罰法案について論じられています。

参考

https://news.yahoo.co.jp/articles/a6cb853771f769cce69488095ce42f392565d42d2020.10.28
 今年4月、京畿道利川(イチョン)市の物流倉庫の工事現場で火災が発生し、労働者38人が死亡、10人が負傷した。火災の危険性の高いウレタンフォーム発泡作業と配管溶接作業を1つの空間で行い、火の粉が飛んだためだった。発注先の執拗な「工期短縮」要求により、施工会社と下請・孫請会社が一度に突貫工事に突入したのが直接的な事故原因になった。
 当時、警察は「元請と発注先にほかのどの事件よりも重い責任を問う」としていたが、起訴状は冴えなかった。起訴された事件の責任者9人のうち、発注先の所属は経営企画チーム長1人(業務上過失致死容疑)のみ。いくつもの安全保健措置に違反したことで発生した労災にもかかわらず、産業安全保健法(産安法)違反で起訴されたのは、末端の管理者である施工会社の現場所長と下請け会社の事業主の2人だけだった。責任ある者は避け、現場の管理者にだけ軽い処罰を下す現行の産安法の限界をそのまま示している。
 もしも重大災害企業処罰法があったとしたら、違っていただろうか。
「ずさんな安全管理の構造的原因を提供した元請けの事業主にも刑事責任を問うことができたはずで、元請け企業にも懲罰的損害賠償を請求することができたでしょう。もしかしたら重い処罰を避けるため、最初から元請けが規定を守って事故が起きなかったかも、ということもありえます」。
 「第21代国会、正義党第1号法案」として重大災害企業処罰法を代表発議した(ボーガス注:正義党の)カン・ウンミ議員は、こう説明する。
 重大災害企業処罰法は、2000年代初めから労働界が主張してきた「スローガン」だったが、第21代国会では「法律」として結実する可能性が高いとみられる。ここ数年、労災死亡事故と大型惨事が相次ぎ、「企業殺人」に対する国民の法感情が厳しくなったからだ。泰安(テアン)火力発電所で労災で死亡した非正規労働者キム・ヨンギュンさんの母、キム・ミスクさんが上げた「重大災害企業処罰法制定請願」が、10万人以上の同意を得て9月に法司委に送られたのも変化の証拠だ。
 (ボーガス注:最大与党)「共に民主党」が立場の変化を示していることも大きな進展だ。民主党のイ・ナギョン代表が重大災害企業処罰法の制定を約束しており、年内の立法の可能性もささやかれている。

 中道左派系のハンギョレなので「割り引く必要」がありますが是非成立してほしいもんです。なお、「正義党提出法案」で「与党提出法案」でないことでわかるように、「共に民主党」はこの法案の制定に必ずしも積極的ではありません。そうした「共に民主党」は日本や欧米の価値観ではとても左派政党とは言えないでしょう。どう見ても、せいぜい「中道左派」でしかありません。


日本学術会議新会員6名の任命拒否を巡って(柴垣和夫*4
(内容紹介)
 もちろん柴垣氏は菅の任命拒否を「学問への不当介入」と批判していますが、一方でそれにとどまらず、元経済理論学会代表幹事(経済理論学会は日本のマルクス主義経済学者の学会(公式サイト。詳しくは経済理論学会 - Wikipediaも参照)。柴垣氏もマルクス経済学の立場)という立場からの興味深い発言がされています。 
 柴垣氏は「第19期学術会議会員」には「経済理論学会会員」の柴垣氏が選ばれたが「第20期、第21期会員」では経済理論学会が推薦をしたものの、会員が選ばれず、「恐らく今の学術会議会員にはマルクス主義経済学者がいないこと」を指摘し、フジ産経など右翼連中の学術会議に対する「左翼の巣窟」呼ばわりに「我々、経済理論学会が推薦しても、マルクス経済学者がメンバーに選出されない団体のどこが左傾なのか」と批判しています。
 と同時に柴垣氏の立場としては当然ですが「マルクス主義経済学者を選出しない現状はおかしいのではないか?。是正すべきではないか?(とはいえうかつなことをいうと菅と同じ、学問への不当介入になりかねないので柴垣氏としても具体的な改善案は特に出さずに、現状への疑問提出にとどまっていますが)」と主張されています。
 なお、柴垣氏に寄れば経済理論学会

◆『経済学分野の教育「参照基準」策定についての要望書』(2013年10月5日)
◆『経済学分野の教育「参照基準」の是正を求める全国教員署名[呼びかけ文]』(2013年10月28日)
◆『経済学分野の教育「参照基準」第二次修正案についての意見書』(2014年3月17日)

という、日本学術会議が発表した『経済学分野の教育「参照基準」』をいわゆる「近代経済学(非マルクス、ないし反マルクスの立場)寄り」で「マルクス経済学に目配りしていない」と批判する声明*5も過去に出しており、それ一つとっても「学術会議=左傾」は完全なデマです。


特集「『デジタル社会』実像と課題」
◆菅政権のデジタル戦略と「超監視社会」(大門実紀史*6
◆「デジタル・ガバメント」による公共の破壊(内田聖子
(内容紹介)
 詳細な紹介は小生の無能のため、省略しますが、大門論文、内田論文共に、菅政権が「個人情報やプライバシーの保護」に消極的であり、菅のすすめるデジタル化は「監視社会化」などの弊害をうむ恐れがあると警戒の念を表明しています。

参考

先端技術で監視強化/スーパーシティ法案 大門議員が追及
 日本共産党大門実紀史議員は15日、参院地方創生・消費者問題特別委員会で、人工知能(AI)やビッグデータなどの最先端技術で「まるごと未来都市」を実現すると政府が主張しているスーパーシティ法案(国家戦略特区法改定案)の問題点をただしました。
 大門氏は、先端技術をどう活用するかは住民全体で考えることで、一内閣にこれが未来社会だと示されるのには違和感があると指摘。中国などでは、監視カメラと顔認証、AI技術の組み合わせで事実上の監視社会が実現しているが、監視社会競争に加わるのかと追及しました。北村誠吾規制改革担当相は「個人の行動履歴を個人が特定可能な形で用いる場合は同意等を得ることが必要だ」などと答弁しました。
 大門氏は、現実はサービスの利用に個人情報提供の同意が前提となっている場合があり、生体認証への反発も世界中で広がっていると指摘。政府は新型コロナの経験があるからこそスーパーシティの実現が急がれるというが、いったん立ち止まって考えないと深刻な問題が起きると述べました。

スーパーシティ法が成立/個人の権利を侵害/大門議員反対討論
 人工知能(AI)やビッグデータなど最先端の技術を用いた事業を官邸主導の規制緩和で導入するスーパーシティ法(国家戦略特区法改定)が27日の参院本会議で、自民、公明、維新の各党の賛成多数で可決・成立しました。日本共産党と、立憲民主党や国民民主党などの共同会派は反対しました。
 共産党大門実紀史議員は反対討論で、「個人のプライバシーと権利を侵害する重大な危険がある」と指摘。「スーパーシティ構想は、企業など実施主体が住民の個人情報を一元管理する代わりに、医療・交通・金融などのサービスを丸ごと提供するものだ。個人情報や行動軌跡は集積・分析され、個人の特性や人格の推定まで可能となる」と警告しました。

スーパーシティ法案/大門議員の反対討論(要旨)/参院本会議
・反対の最大の理由は、日本を中国のような「監視社会」に導き、個人のプライバシーと権利を侵害する重大な危険性があるからです。
・監視社会のトップランナーは中国です。政府・大企業が膨大なデータを分析し、国民への監視や統治に活用して、ウイグル族弾圧や民主化を求める活動家の拘束にも監視カメラや顔認証技術が用いられてきました。政府がスーパーシティ構想のお手本としてきた杭州市は、街全体のIT化が世界で一番進んでいますが、裏を返せば、街中に監視カメラが数千台もあるなど監視社会の最先端です。
 一方、スペインのバルセロナでは、個人情報を守りながら、住民の合意に基づき、交通整理や駐車場管理、ごみ集めシステムなど住民に喜ばれるスマートシティづくりを進めています。このような街づくりこそ見習うべきですが、本法案には住民合意を担保するしくみが欠落しています。
 いま重要なことは、個人情報を保護しつつ、先端技術を住民福祉の向上にどう生かすのかという落ち着いた国民的議論と、プライバシー保護という時代の流れを視野に入れた中長期的な企業戦略です。哲学もビジョンも深い考えもなく、目先の利益だけを追う一部の企業家などの拙速な要求だけで、社会のあり方を変えようとする本法案は言語道断であり、撤回すべきです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/deeb88760a98c503e8ba700735b8c29577d2c69b?page=4
 国会審議では、中国の杭州の現状をどう見るかも議論された。自民党片山さつき氏は、杭州*7をスマートシティの成功例として指摘した。村上敬亮審議官は、杭州について「既に二千台以上のサーバーと四千台以上のカメラという膨大な端末をしっかりと渋滞管理や救急車両通行の円滑化などにきっちりと使えて運行実績があると。これだけの膨大なシステムを都市管理できちっと動かしているというところの技術的な先進性というんでしょうか、実績性というんでしょうか、その現場を見たいという思いで私自身も調査団の一員として杭州に行かせて参りました。」と答弁している。まさに、杭州市を絶賛しているのである。しかし、本当に中国・杭州はスマートシティの成功例と言い切れるだろうか。中国では民族的な少数者や政治的反対派は、この監視社会システムによって抑え込まれていることは動かせぬ事実である。
 片山さつき前(ボーガス注:地方創生担当)大臣と中国の国家発展改革委員会のトップとの間で、地方創生に関する日中両国の協力を強化しようと、地方創生の分野で協力するための覚書が交わされている。片山さつき前大臣は昨年8月に、中国に赴き現地調査を行った。共産党大門実紀史議員の質問に対して、政府は中国政府幹部と二国間で対話をしていた際に、先方の幹部との間で協定締結の話があり、その後、協議を経て2019年8月30日に「地方創生の協力の推進に関する覚書」を締結したと答弁している。今後は内閣府地方創生推進事務局と中国国家発展改革委員会の担当部局の間で定期的に協議をするとされていたが、現在は中断している。その片山元大臣が自民党を代表して、この法案賛成の立場でこの法案の質疑を担当した。
 大門議員は、この法案の下で、杭州のアリババ、トロントのグーグルなど巨大IT企業の情報支配による究極的な監視社会が日本でも現実のものになるのではないかという危惧を表明した。

 ということで「今月号の大門論文」と「大まかな内容が一致する」大門氏関係の記事(大門氏のスーパーシティ法案(国家戦略特区法改定案)関係の国会質問に触れた記事)をいくつか紹介しました。
 大門氏のように「監視社会化で手放しで評価は出来ない」と「批判的に見るか」、片山のように「スーパーシティ、スマートシティの成功例」と「手放しで礼賛するか」はともかく「杭州市が非常に近代化していること」は明らかであり、「ついに中国もそこまで発展したか」という感慨を感じます。

主張/スーパーシティ/「未来都市」の幻想振りまくな

“自己責任の新自由主義か、おおもとからの転換か”これが政治の対決点/BSフジ番組 小池書記局長が討論
 小池氏は、菅政権が掲げる「デジタル化」をめぐり、「行政の“デジタル化”をすすめるのは必要だ」としながら、運転免許証への「ひも付け」などマイナンバーカードの普及推進に対し、「普及しないのは、個人情報の漏えいなど行政に対する国民の不信だ。強権的に普及を拡大させて日本をいっそうの監視社会にすることは反対だ」と主張しました。

 大門氏が先端技術で監視強化/スーパーシティ法案 大門議員が追及スーパーシティ法案/大門議員の反対討論(要旨)/参院本会議で簡単に触れた中国の監視社会化問題については「監視社会=暗黒」の図式で中国を語る日本、重要な視点が抜け落ちている:朝日新聞GLOBE+も紹介しておきます(なお、先端技術で監視強化/スーパーシティ法案 大門議員が追及スーパーシティ法案/大門議員の反対討論(要旨)/参院本会議でもわかるように、阿部治平、産経など一部の反日共産党分子の誤解や曲解とは異なり、日本共産党は別に中国共産党に好意的なわけでもありません。つうか文革の時に中国共産党に酷い目に遭わされてるのが日本共産党の訳ですが)。
 個人的には「大門は中国に悪口雑言しすぎじゃね?」つう気がしないでもありません。

「監視社会=暗黒」の図式で中国を語る日本、重要な視点が抜け落ちている:朝日新聞GLOBE+
 2億台以上ものカメラが市民の生活を監視する中国。企業は人びとのネット通販やスマホ決済の利用履歴を収集し、膨大な個人データをもとに国民一人ひとりを格付け*8する「監視社会」だ。しかし、「幸福な監視国家・中国*9」(NHK出版新書)の著者である梶谷懐*10・神戸大教授によると、多くの中国人は現状にむしろ肯定的だという。なぜなのか。(構成・畑中徹)
◆畑中
 2019年に出版された著書「幸福な監視国家・中国」では、監視社会化を肯定的に受けとめる中国人に言及されました。これは日本人にとっては驚きの事実ともいえますが、多くの中国人はなぜこうした流れをポジティブに受けとめているのでしょうか。
◆梶谷
 「監視社会化」は、人びとのプライバシーが政府や企業に筒抜けになるという負の側面があるとともに、多くの人びとにとっては行政や金融、医療などのサービスがより便利で効率的に受けられる便益も伴っています。この二つを比べて、便益の方が圧倒的に大きいと感じている人が多いので、監視社会化が支持されているのでしょう。
 日本でも、まさに新型コロナウイルスなどのパンデミック(世界的大流行)への対策という点で(ボーガス注:コロナ患者の把握を口実に)監視社会化が一気に進んでいく可能性はあります。
 パンデミックへの対応を含めて、監視社会化は世界的な動きではありますが、その進行や監視技術の受容は、国や地域、社会や民族の固有の文脈によって異なる経緯をたどると私は考えます。ですので、やや迂遠に思われるかもしれませんが、中国も含め、個人情報の管理やその統合がどのようにして可能になっているのか、各国の歴史を踏まえた理解を深めることが、建設的な議論のために必要になるかと思います。

 「これは日本人にとっては驚きの事実ともいえますが」という朝日・畑中記者の認識は正直言って「間違ってる」と小生は思います。「中国人に対する偏見ではないか」とすら思います。一方、梶谷氏は小生同様「日本人(あるいは欧米人)と中国人の間にそれほど大きな価値観の違いは無く、日本や欧米でも『コロナやイスラムテロの脅威』などを口実に監視社会化は充分起こりうる」と考えてるようです。

日本の防犯カメラ、500万台に迫る:日経ビジネス電子版
 三菱電機ビルテクノサービスが実施した意識調査では、「様々な場面で防犯カメラがついていると安心するか」という問いに、8割が「安心する」と回答した。防犯カメラによって見守られ、犯罪が抑止される安心感があるようだ。

監視社会と日本人の奇妙な関係
 2018年夏以降、首都圏を走るJR在来線・新幹線のすべての車両に防犯カメラが導入されつつある。
 近年、電車内や駅構内でのトラブルはあとを絶たない。痴漢事件は頻発し、さらに新幹線車両内で殺人事件まで発生した。こうした動静をふまえれば、互いに見ず知らずの人々が集い、何が起こるか分からない物騒な電車内に防犯カメラを導入することは、鉄道会社が果たすべき当然必要な措置だと受け止められることだろう。

などが指摘するように、日本人だって「犯罪防止を理由に監視カメラ設置を求める人間は多数いる」わけでいわゆる監視社会問題についての「中国人の価値観が日本人とは大きく違う」とは小生は全く思いません。いずれにせよ「監視社会化」は梶谷氏が指摘するように単に「上からの圧力」と考えるのは適切ではありません。「メリットがあるから支持する」「反対するのは後ろ暗いところがある奴だけだ」という認識が「社会の多数派」にあれば「民主主義国家」だろうといくらでも「監視社会化」は成立しうるでしょう。


◆「デジタル・トランスフォーメーション」とは何か(高野嘉史)
(内容紹介)
 「デジタル・トランスフォーメーション=社会や経済のデジタル化」であり、日本政府の目指そうとする「デジタル・トランスフォーメーション」について筆者の認識が述べられていますが、小生の無能のため、詳細な説明は省略します。


◆米国の対中経済覇権に与する5G新法(薄木正治
(内容紹介)
  赤旗の記事紹介で代替。ただしタイトルで想像がつくように薄田論文においては「米国の対中経済覇権に与する」という点を中心に批判がされている。
通信4社 内部留保増/笠井氏 5G法案批判
5G支援は不要不急/衆院委 笠井議員が反対討論/促進法案が可決
法人税減税をやめよ/笠井氏、5G促進法案追及
米政権にくみする/岩渕氏 5G促進法案で指摘


◆菅政権のデジタル化政策とD・X(デジタル・トランスフォーメーション)法、D・P(デジタル・プラットフォーマー)法(中平智之
(内容紹介)
  赤旗の記事紹介で代替。なお、菅政権のデジタル化政策は「デジタル庁の発足」以外には具体的な物がまだほとんど無く、その「デジタル庁」もまだ法案が提出されるほどには具体化されてないため、「菅政権のデジタル化政策の前提」になるD・X(デジタル・トランスフォーメーション)法、D・P(デジタル・プラットフォーマー)法(いずれも安倍政権下で制定)について批判的に触れる内容となっている。

参考
実効性ある規制要求/笠井氏 DP法案に修正案
禁止行為明記が必要/DP法案 笠井氏「問題対応する整備を」


◆デジタル社会における働き方の現実:スマホと自転車(高田好章)
(内容紹介)
 「スマホと自転車」という副題は「スマホで注文して自転車(もちろん自動車やバイクでもいいですが)で配達するウーバーイーツなどの出前サービス」をさしています。つまりどんなに経済や社会をデジタル化しようとも「ロボットに完全に代替しない限り(そしてロボットに代替することの是非はともかくそれは当面どう見ても、やりたくても、技術的に無理でしょうが)」自転車での配送のような「デジタル化できない肉体労働的な部分は残る」し、そうした部分が「非常にわかりやすい*11」ですが、デジタル化しようとも労働問題は消滅しないという話です(ある意味当たり前ですが)。デジタル化しようとも「テレワークで自由な働き方が出来る」というバラ色の話ばかりではあり得ない。
 例えばウーバーイーツ労働者が配達中に交通事故に遭えば、それは労働問題にならざるを得ません。ただしウーバーは「配達員は社員ではなく個人事業主」として法的責任を逃れようとし、また現在、ウーバーへの法的規制が不十分な点に問題があるわけです。


◆岐路に立つNHKの経営戦略(須藤春夫*12
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

NHK経営計画案 視聴者の声を取り入れよ|論説|佐賀新聞LiVE
 NHKの最高意思決定機関である経営委員会は、信頼を損なう言動を重ねている。かんぽ不正の報道を巡り、総務省OBの日本郵政首脳らの抗議に過剰反応し、当時のNHK会長に厳重注意した。経営委員の番組干渉を禁じた放送法に抵触する疑いが強い。
 その経緯を記した経営委の議事録に関しても、NHKの第三者機関が情報公開すべきだと答申したのに、経営委は先月、一部しか開示しなかった。説明責任を果たそうとしない経営委が、視聴者目線の経営計画を作れるのか。委員一人一人が問われている。(共同通信・原真)

(社説)NHK経営計画 スリム化は結構だが…:朝日新聞デジタル
 計画案には「NHKらしさ」という言葉が何度も登場する。その基本は、人々の知る権利を充足し、健全な民主主義の発展に貢献することだという。
 そうであるならば、政権との距離感の欠如が指摘される報道や、番組への違法な介入が疑われながら説明責任を果たさない経営委員会のあり方も、早急に改革すべき対象だろう。

NHK経営計画 視聴者への配慮足りぬ:東京新聞 TOKYO Web
 権力との関係についても指摘したい。NHK経営委員会のメンバーは国会の同意の上で首相が任命するが、番組内容への介入は放送法が禁じている。
 だが、かんぽ生命の不正販売報道をめぐり、日本郵政から抗議があった後、経営委が当時の上田良一会長に対し番組内容について厳重注意した。今回の計画案とは別に、かんぽ報道をめぐる経緯についても一層の説明が必要だ。経営委と会長とのやりとりなどをより丁寧に説明しなければ「介入があったのでは」との疑念は払拭できないだろう。


◆コロナ禍と米中デジタル技術覇権戦争(夏目啓二*13
(内容紹介)
 米国トランプ政権のファーウェイなど中国デジタル企業への圧力が取り上げられています。ただしトランプの行為は違法の疑いが濃厚な上、米国IT企業は必ずしもトランプの路線に好意的ではなく、バイデンが当選したことにより状況の変化があるとみられます。欧州諸国や日本政府はトランプほど中国企業に敵対的ではなく、トランプ時代の「中国デジタル企業敵視」がバイデン政権によってどうなるかは様子見と言ったところでしょう。当然ながら「中国の人権問題批判」は必ずしもトランプ流の「中国デジタル企業敵視」を意味しません。


◆医療・福祉拡充、20人学級の雇用・経済効果(有働正治*14
(内容紹介)
 医療・福祉拡充、20人学級による雇用・経済効果*15を高評価し、そのような「医療、福祉、教育充実の施策」へ舵を切ること、一方で「無駄な公共事業」「野放図な軍拡」が批判されていますが、小生の無能のため、詳細な説明は省略します。

*1:中国問題を持ちネタとするフリーライター(現在は千葉大学客員准教授でもある)。梶谷氏との共著以外にも中国ネタでは『なぜ、習近平は激怒したのか:人気漫画家が亡命した理由』(2015年、祥伝社新書)、『現代中国経営者列伝』(2017年、星海社新書)、『中国S級B級論』(編著、2019年、さくら舎)、『プロトタイプシティ:深圳と世界的イノベーション』(編著、2020年、KADOKAWA)といった著書がある。

*2:デマ記事についてはこういうデマ記事を書いて発表するような人間と共著を発表する大学教授というのも、最低限の常識を疑う - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)で批判的に紹介されています。

*3:京都橘大学教授。著書『アメリカの医療政策と病院業』(2020年、法律文化社

*4:東京大学名誉教授。第19期日本学術会議会員(2003年7月~2005年9月)。元経済理論学会代表幹事。著書『日本金融資本分析』(1997年、東京大学出版会)、『マルクス=宇野経済学とともに』(2011年、日本経済評論社)など

*5:「俺には経済学の見識などありません」ので、こうした学術会議『経済学分野の教育「参照基準」』に対して批判的な経済理論学会声明についての評価はしません。ここで指摘したいことは、この声明で分かるように「学術会議は左傾などしてない」ということです。

*6:参院議員。日本共産党中央委員。著書『「属国ニッポン」経済版』(2003年、新日本出版社)、『新自由主義の犯罪:「属国ニッポン」経済版〈2〉』(2007年、新日本出版社)、『ルールある経済って、なに?:社会的公正(ソーシャル・ジャスティス)と日本国憲法』(2010年、新日本出版社)、『カジノミクス』(2018年、新日本出版社

*7:浙江省省都

*8:政府ならともかく企業が借金履歴や商品購入履歴などを元に、個人について「その企業にとって理想的な顧客かどうか(未返済の借金が多ければ非理想的、高額商品の購入が多ければ理想的など)」をランキングすることは果たして「監視社会」なんでしょうか?。いずれにせよ「政府の反体制派監視」などとは大分性格が違うし、日本や欧米でもあることだと思いますが。

*9:高口康太との共著、2019年刊行

*10:個人ホームページ梶谷懐のホームページ。著書『「壁と卵」の現代中国論』(2011年、人文書院)、『現代中国の財政金融システム』(2011年、名古屋大学出版会)、『日本と中国経済』(2016年、ちくま新書)、『中国経済講義』(2018年、中公新書)など

*11:そうした部分以外、例えば頭脳労働において労働問題が無いわけでは勿論ありません。

*12:法政大学名誉教授。著書『デジタル放送で何が起こるか』(編著、2001年、大月書店)など

*13:龍谷大学名誉教授。著書『アメリカIT多国籍企業の経営戦略』(1999年、ミネルヴァ書房)、『アメリカの企業社会:グローバリゼーションとIT革命の時代』(2004年、八千代出版)、『21世紀のICT多国籍企業』(2014年、同文館出版)など

*14:参院議員(日本共産党)。著書『史録革新都政』(1984年、新日本出版社)、『革新都政史論』(1989年、新日本文庫)、『まちで雇用をふやす:公共事業より巨大な社会保障・医療の経済効果』(2004年、自治体研究社)

*15:もちろん最大の評価ポイントは雇用・経済効果ではなく「医療、福祉効果」「教育効果」と言った本筋ですが。