今日の中国ニュース(2021年6月19日分)(副題:楊海英の馬鹿さに心底呆れる)

◆楊のツイート

楊海英
 日本人のみなさん、モンゴルに「スーホの白い馬」はいませんでした。あれは、日本共産党中国共産党プロパガンダ合作で、モンゴル人を歪曲した作品。教科書から消えて欲しいです。

 「日本共産党に対するデマも大概にしろ、楊、手前ふざけんな」で終わる話です。

スーホの白い馬 - Wikipedia
 モンゴルの民族楽器であるモリンホール(馬頭琴)の由来にまつわる物語。
 日本での初発行は福音館書店が発行する月刊誌「こどものとも」1961年10月号の『スーホのしろいうま』(大塚勇三・やく、赤羽末吉・え)である。1967年、大型絵本『スーホの白い馬』(大塚勇三*1・訳、赤羽末吉*2・画)が出版された。その翌年から光村図書出版の小学校国語教科書「二年・下」に収録された。
 第41回日本児童文学学会奨励賞を受賞した『「スーホの白い馬」の真実:モンゴル・中国・日本それぞれの姿』(ミンガド・ボラグ著、風響社、2016年)によれば、「スーホの白い馬」は、1950年代に中国人作家の塞野が紹介した「馬頭琴」という話の翻訳である。また、この話は、モンゴル伝統社会の中で口承により伝承されてきた民話ではなく、中国建国後に新たに創作された中国共産党に都合の良い「新民話」であるという(「スーホの白い馬」実は…: 日本経済新聞など参照)。
◆あらすじ
 ある日、遊牧民の少年スーホは白い子馬を拾い、その子馬を大切に育てる。それから数年後、殿様が自分の娘の結婚相手を探すため競馬大会を開く。スーホは立派に成長した白い馬に乗り、見事競馬大会で優勝する。しかし、殿様は貧しいスーホを娘とは結婚させず、スーホに銀貨を3枚渡し、さらには白い馬を自分に渡すよう命令する。スーホはその命令を拒否し、殿様の家来たちに暴行され白い馬を奪われる。命からがら家へ辿り着いたものの、白い馬を奪われた悲しみは消えなかった。
 その頃、白い馬は殿様が宴会をしている隙を突いて逃げ出したが、逃げ出した際に殿様の家来たちが放った矢で体中を射られていたため、スーホの元に戻った時には瀕死の状態であった。看病むなしく白い馬は次の日に死んでしまう。スーホは悲しみのあまり幾晩も眠れずにいたが、ある晩ようやく眠りにつき、夢の中で白馬をみる。白馬は自分の死体を使って楽器を作るようにスーホに言い残した。そうして出来たのがモリンホールである。

「スーホの白い馬」実は…: 日本経済新聞
 「スーホの白い馬」を初めて読んだとき、「何かが違う」という思いが胸の中に湧いたのだった。生まれ育った中国・内モンゴル自治区から日本にやってくるまで、私はこの話のことを知らなかった。
 「スーホ」という名前は中国語の発音だ(モンゴル語では「スフ」が一般的)。
 1961年にこの物語を日本に初めて紹介したのは児童文学者の大塚勇三さんだ。大塚さんに直接尋ねたところ、「中国民間故事選」(58年刊行)に収録された「馬頭琴」が原作らしいことがわかった。中国人作家、塞野の作である。
 ではこの作品は民話そのものなのか。私は内モンゴル馬頭琴の発祥伝説の調査をした。すると「盗まれた白馬が数年後に傷だらけになって帰ってきた」という話が人口に膾炙(かいしゃ)していることがわかった。塞野はこうした民間伝承を元に創作したのである。
 「中国民間故事選」に次のような序文がある。
「中国の民間説話には、各民族の歴史における労働、闘争及び理想が深く反映されている。中国のプロレタリアートの百折不撓(ふとう)の意志や気迫が溢(あふ)れている」
◆色濃い政治思想
 塞野の創作には当時の政治思想が色濃く反映している。純朴なスーホと、彼をいじめる殿様という構図は、無産階級と搾取階級の対立の図式になっている。物語の根底には階級闘争の思想が流れているのだ。
 調査をもとに「『スーホの白い馬』の真実」(風響社)という本を書いた。政治的な背景があるとしても、私はこの物語を否定的にはとらえていない。むしろ(ボーガス注:モンゴル人力士の活躍があるまでは、身近でなかったモンゴルへの親近感を日本人に持たせていることについては)「スーホの白い馬」には深く感謝しているのだ。

 まあ、ミンガド・ボラグの指摘を信じるならば、もしかしたら「スーホ」は本多勝一氏がエッセイで批判した、ドーデ『最後の授業 - Wikipedia』のような問題点(ドーデの問題点については最後の授業 - Wikipediaにもある程度書いてあります)が「あるのかもしれない*3」(本多エッセイについては腐土記 ドーデ「最後の授業」の読み方・読まれ方等を参照。なお、最後の授業 - Wikipediaによればそうした指摘の存在から現在では『最後の授業』は教科書に掲載されなくなっている)。
 しかし、ドーデ作品が少なくとも日本において『フランス万歳』の政治的道具として受容されてはいなかったのと同様に『スーホ』もそのような受容はされてなかったのであり、楊の物言いは言いがかりにも程があるでしょう。ましてや日本共産党がこの童話とどう関係があるのか。仮に赤羽や大塚が党員、支持者だとしても彼らの行為は別に日本共産党の指示による物ではないでしょう(なお、日本共産党云々は楊の主張であり、ミンガド・ボラグの主張がどうかは不明です。「スーホの白い馬」実は…: 日本経済新聞での物言いを見る限り、楊のような認識ではなさそうですが)。
 「フランス、ドイツ」の現状が実体に沿って描かれていたドーデ作品と違い、仮に「スーホ」に封建体制打倒(中国共産党の政治方針支持)の隠喩があったとしても、もちろん話の中に中国共産党が出てくるわけでもなく、それこそ、そんなことは日本において認識されていなかった話です(おそらく大塚や赤羽においてもそうした認識など無いでしょう)。
 なお「スーホ」ですが

産経児童出版文化賞 - Wikipedia
◆1968年(第15回)
スーホの白い馬 モンゴル民話」(大塚勇三、画・赤羽末吉:福音館書店

ということで産経の賞を受賞しています。つまりは産経は楊のような認識を恐らくしてなかったわけですが、この辺り、楊はどう説明するのか。

楊海英
 自民党の数多い不祥事も中国に原因がある。

 吹き出しました。例えば「対中国ODAがらみの汚職」「中国企業の贈賄であるIR汚職」など「中国がらみの問題」ならそうもいえるでしょう。
 しかし、

汚職(贈収賄など)】
◆池田*4首相(役職は全て当時)の九頭竜川ダム疑惑(映画『金環蝕』のモデルとなった事件)
田中角栄*5前首相、橋本登美三郎*6元運輸相らのロッキード事件
岸信介*7元首相らのダグラス・グラマン事件
◆中曽根*8前首相、竹下*9首相、宮沢*10蔵相、安倍晋太郎*11自民党幹事長、渡辺ミッチー*12自民党政調会長等のリクルート事件
◆橋本*13元首相、野中*14官房長官、青木*15官房長官らの日歯連疑惑
安倍晋三*16前首相のモリカケ、桜疑惑
◆甘利*17経済財政担当相(現・自民党税制調査会長)のUR疑惑
◆河井夫婦や菅原元経産相公選法違反
【失言】
◆中曽根の「単一民族発言」
◆渡辺ミッチーの「アッケラカのカー発言」
【女性スキャンダル】
◆宇野*18首相(首相を辞任)
◆中川*19官房長官官房長官を辞任) 

などがどう中国と関係するのか。当たり前ですが、「権力の近くには利権が生じる」ので日本のように「自民党長期政権」だと、政治の腐敗が起こりやすいのは分かりきった話です。そして自民党政治家に贈賄するのは何も中国だけではない。
 例えばロッキードリクルート中国企業ではない。

*1:1921~2018年。アストリッド・リンドグレーンの「長くつ下のピッピ」シリーズ、「やかまし村の子どもたち」シリーズ、アルフ・プリョイセンの「スプーンおばさん」シリーズ、ルーネル・ヨンソンの「小さなバイキング」などの翻訳で知られる。1968年、「スーホの白い馬」で赤羽末吉とともにサンケイ児童出版文化賞を受賞(大塚勇三 - Wikipedia参照)

*2:1910~1990年。1962年に、『日本の神話と伝説』(あかね書房)で小学館児童出版文化賞佳作賞を、1965年に『ももたろう』(福音館書店)と『白いりゅう黒いりゅう:中国のたのしいお話』(岩波書店)で、サンケイ児童出版文化賞を、1968年に『スーホの白い馬』でサンケイ児童出版文化賞を、1973年に『源平絵巻物語 衣川のやかた』(偕成社)で講談社出版文化賞受賞。1980年には斯界において最も権威のある賞とされる「国際アンデルセン賞・画家賞」を受賞。著書『絵本よもやま話』(偕成社)、『私の絵本ろん:中・高校生のための絵本入門』(平凡社ライブラリー)など(赤羽末吉 - Wikipedia参照)

*3:現時点では「ある」とは断言しません。

*4:大蔵次官から政界入り。吉田内閣蔵相、通産相、石橋内閣蔵相、岸内閣蔵相、通産相などを経て首相

*5:岸内閣郵政相、池田内閣蔵相、佐藤内閣通産相自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)などを経て首相

*6:池田内閣建設相、佐藤内閣建設相、官房長官、運輸相、自民党総務会長(佐藤総裁時代)、幹事長(田中総裁時代)等歴任

*7:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、日本民主党幹事長、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相

*8:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相

*9:佐藤、田中内閣官房長官、三木内閣建設相、大平、中曽根内閣蔵相、自民党幹事長(中曽根総裁時代)などを経て首相

*10:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、福田内閣経済企画庁長官、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相。首相退任後も小渕、森内閣で蔵相

*11:三木内閣農林相、福田内閣官房長官自民党政調会長(大平総裁時代)、鈴木内閣通産相、中曽根内閣外相、自民党幹事長(竹下総裁時代)など歴任

*12:福田内閣厚生相、大平内閣農水相、鈴木内閣蔵相、中曽根内閣通産相自民党政調会長(竹下総裁時代)、宮沢内閣副総理・外相など歴任

*13:大平内閣厚生相、中曽根内閣運輸相、自民党幹事長(宇野総裁時代)、海部内閣蔵相、自民党政調会長(河野総裁時代)、村山内閣副総理・通産相などを経て首相。首相退任後も森内閣で行革等担当相

*14:村山内閣自治相・国家公安委員長小渕内閣官房長官自民党幹事長(森総裁時代)など歴任

*15:小渕、森内閣官房長官自民党参院幹事長、参院会長など歴任

*16:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官等を経て首相

*17:小渕内閣労働相、第一次安倍、福田内閣経産相麻生内閣行革等担当相、第二次、第三次安倍内閣経済財政担当相、自民党政調会長、選対委員長(第二次安倍総裁時代)などを経て、現在、自民党税制調査会

*18:田中内閣防衛庁長官自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田内閣科学技術庁長官、大平内閣行政管理庁長官、中曽根内閣通産相、竹下内閣外相などを経て首相

*19:橋本内閣科学技術庁長官、森内閣官房長官自民党政調会長(小泉総裁時代)、幹事長(第一次安倍総裁時代)など歴任