今日の産経ニュースほか(2021年6月24日分)

澤藤統一郎の憲法日記 » 天皇教信者におもねってはならない。天皇教信者の横暴を許してはならない。
 確かに宮内庁長官発言は、澤藤氏の言うように、憲法上、問題ですが一方で澤藤氏が指摘するように

「国民の間に不安の声がある中で東京オリパラの名誉総裁など辞退したい」

と現天皇が考えてる可能性を考えたら「やりたくもない行為をやらされている可能性がある=天皇制はある意味当事者の人権を侵害している可能性がある」つう指摘は澤藤氏にしてほしかったですね。「政治的中立性の問題があるからこうした発言は問題だ」で終わらせては「天皇がやりたくもないこと(東京オリパラの名誉総裁)をやらされてるかもしれない現状はどうでもいいのか?」「自分の意向に反することをやらされても、天皇は何一つものが言えないのか?、それ、おかしくね?」という話になる。そこで澤藤氏の立場だと「だからといって天皇に好き勝手にものを言われても困る」「だからこそ天皇制は廃止して、天皇は自由な一個人になるべきだ」というべきでしょうが、そこまで踏み込めないのはそれこそ澤藤氏が「天皇制廃止なんか無理」という形で「天皇教」に「精神支配されてるから」ではないのか。
 また「宮内庁長官発言は問題だ」と思うのなら「菅内閣任命責任を問う」「長官を更迭すべきだ」というべきでしょうがそこまで澤藤氏が踏み込めないのも同様の話ではないのか。正直、この澤藤記事は「そんなことはおそらく澤藤氏は思ってないだろう」し「俺の指摘にマジギレする」のでしょうが、「澤藤もずいぶんと腰が引けてる」という感想ですね。


加藤氏 宮内庁長官の五輪発言「長官ご自身の考え」 - 産経ニュース
 やれやれですね。誰が考えても天皇の意向を無視して宮内庁長官がこんなことを言うわけもないでしょうに、「ウヨとして天皇批判も出来ない*1」が、かといって「開催中止も言えない」がゆえに「長官個人の考えだと思う」とは全く無茶苦茶です。「富田メモ」でも「昭和天皇の本心か分からない」と強弁していたのが「この種のウヨ」なので予想の範囲内ですが。
 今が民主党政権で「自民にとって都合の良い発言」ならなら大喜びで「陛下の意見に従うべきだ」等と言ってるでしょうに。
 それにしても「宮内庁長官経由」とはいえ、現天皇がここまで踏み込んだ発言をするとは意外でした。
 なお、コメント欄のご指摘に寄れば西村宮内庁長官(元警視総監)は安倍のごり押しだそうですが、であるなら、政権側は「飼い犬に手を噛まれた」と恨んでいるでしょう。「可能ならば」更迭したいと思ってるかもしれない。しかし、そんな「安倍らべったり」の人間でも天皇は特別なのか。


【産経抄】6月24日 - 産経ニュース

▼田中氏*2の金脈と人脈*3の実態を暴いたリポートが11月号に掲載されると、世の中は騒然となる。田中氏の退陣のきっかけを作った立花さん*4の名前はたちまち知れ渡った。
▼後に振り返って、費やした膨大なエネルギーを他の仕事に振り向けていたら、との思いも強かったという。それでも、『日本共産党の研究』『宇宙からの帰還*5』『脳死*6』『天皇と東大*7』…。著作の題名を挙げただけでも、仕事の領域がいかに広大であったのかがうかがえる。

 「福田(田中内閣で蔵相)、三木(田中内閣で副総理・環境庁長官)、大平(田中内閣で外相、蔵相(福田蔵相の後任))、中曽根(田中内閣で通産相)という有力なライバル(全て後に首相に就任)がいた」「社会党の力が今の立民に比べずっと強かった」「いわゆる狂乱物価での田中批判」と言う要素があったとは言え「田中金脈に勝るとも劣らないモリカケ、桜疑惑」で安倍を退陣に追い込めなかったことは実に無念です。もちろん「退陣にモリカケなどの疑惑が全く関係ない」とまではいえませんがやはり直接の辞任理由は「コロナ蔓延」でしょう。
 それはともかく、あの産経なので立花の業績のウチ『日本共産党の研究』『中核VS革マル』(いずれも講談社文庫*8)でも持ち出して、延々反共演説でもするかと思いきや、今日の筆者はそこまでキチガイではありませんでした。
 なお「仕事の領域が広い」というなら例えば

鎌田慧:出版年順(出版年が同じ場合は著書名順)】
◆『日本の兵器工場』(1983年、講談社文庫)
◆『ドキュメント失業』(1985年、ちくま文庫)
◆『ドキュメント 去るも地獄残るも地獄:三池炭鉱労働者の二十年』(1986年、ちくま文庫)
◆『鉄鋼王国の崩壊:ルポルタージュ新日鉄釜石』(1987年、河出文庫)
◆『国鉄処分:JRの内幕』(1989年、講談社文庫)
◆『弘前大学教授夫人殺人事件』(1990年、講談社文庫)
◆『「東大経済卒」の十八年』(1991年、講談社文庫)
◆『ドキュメント 隠された公害:イタイイタイ病を追って』(1991年、ちくま文庫)
 富山ではなく『対馬イタイイタイ病カドミウム中毒)』を追ったルポ
◆『反骨:鈴木東民の生涯』(1992年、講談社文庫)
◆『ドキュメント 造船不況』(1993年、岩波同時代ライブラリー)
◆『六ヶ所村の記録:核燃料サイクル基地の素顔』(1997年、講談社文庫→2011年、岩波現代文庫)
◆『ドキュメント 屠場』(1998年、岩波新書)
◆『椎の若葉に光あれ:葛西善蔵の生涯』(2006年、岩波現代文庫)
◆『いじめ自殺:12人の親の証言』(2007年、岩波現代文庫)
◆『教育工場の子どもたち』(2007年、岩波現代文庫)
◆『死刑台からの生還』(2007年、岩波現代文庫)
 再審無罪判決が下った死刑冤罪・財田川事件がテーマ。
◆『狭山事件の真実』(2010年、岩波現代文庫)
◆『新装増補版・自動車絶望工場』(2011年、講談社文庫)
◆『残夢:大逆事件を生き抜いた坂本清馬*9の生涯』(2015年、講談社文庫)など

本多勝一(出版年が同じ場合は著書名順)】
◆『ニューギニア高地人』(1971年、講談社文庫)
◆『アラビア遊牧民』(1972年、講談社文庫)
◆『カナダ・エスキモー』(1972年、講談社文庫→1981年、朝日文庫)
◆『アメリカ合州国』(1981年、朝日文庫)
◆『戦場の村』(1981年、朝日文庫)
◆『中国の旅』(1981年、朝日文庫)
◆『北海道探検記』(1985年、集英社文庫)
◆『憧憬のヒマラヤ』(1986年、朝日文庫)
◆『冒険と日本人』(1986年、朝日文庫)
◆『検証・カンボジア大虐殺』(1989年、朝日文庫)
◆『子供たちの復讐』(編著、1989年、朝日文庫)
◆『植村直己の冒険』(編著、1991年、朝日文庫)
◆『日本環境報告』(1992年、朝日文庫)
◆『マゼランが来た』(1992年、朝日文庫)
◆『釧路湿原:日本環境の現在』(編著、1993年、朝日文庫)
◆『先住民族アイヌの現在』(1993年、朝日文庫)
◆『新版・山を考える』(1993年、朝日文庫)
◆『きたぐにの動物たち』(1998年、朝日文庫)
◆『アイヌ民族』(2000年、朝日文庫)
◆『新・アメリカ合州国』(2003年、朝日文芸文庫)
◆『日本人の冒険と「創造的な登山」』(2013年、ヤマケイ文庫)など

なども「仕事の領域は広い」のですが産経抄が彼らの追悼記事を書くことはおそらくないでしょう。

 4月30日に80歳で亡くなってから、50日以上も公表されなかった理由はなんだろう。

 まあ、そんなことはどうでも良い話です。まさか遺族に「どうして隠したんですか?」と質問できるわけもないし。
 いずれにせよ50日以上も隠せたと言うことは

2か月弱死が伏せられていたのだから、立花隆もたぶん世間的には「過去の人」だったのだろう(外地・旧植民地で生まれたり育った人たちもどんどん亡くなっている) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
 こういうことを書くと立花ファンは怒り出すのかもですが、タイトルにも書いたように、世間的には立花隆って過去の人だったのでしょうね。

ということですね。そしてこういうことを書くと立花ファンは怒り出すのでしょうが結局彼は世間的には「田中金脈報道の人」でしかなかったわけです。それ以上の業績を彼は結局上げられなかった。ただし、彼の著書

◆『サイエンス・ナウ』(1991年、朝日新聞社
◆『脳を究める:脳研究最前線』(1996年、朝日新聞社
◆『サル学の現在』(1996年、文春文庫)
◆『サイエンス・ミレニアム』(1999年、中央公論新社
◆『脳とビッグバン』(2000年、朝日新聞社
◆『人体再生』(2003年、中公文庫)
◆『小林・益川理論の証明:陰の主役Bファクトリーの腕力』(2009年、朝日新聞出版)

などを考えるに彼個人は「科学ジャーナリスト的な分野」に最も興味があったように思いますが(できの善し悪しはひとまずおきます)。
 まあ、「早死にしたこと」もあって立花隆以上に悲惨な(?)扱いの、世間的には「越山会の女王」云々の人でしかない「一発屋」の児玉隆也*10て人もいますが(苦笑)。
 それにしても「たちばなたかし」とひらがなでグーグル検索をかけると「立花隆」ではなく「立花孝志(N国党党首)」がヒットするのにはさすがに唖然としました。
 なお、

2か月弱死が伏せられていたのだから、立花隆もたぶん世間的には「過去の人」だったのだろう(外地・旧植民地で生まれたり育った人たちもどんどん亡くなっている) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
 2001年に出版された本です。

ですがこれは、俺も購入したり、図書館で借りたりしてきちんと読んだわけではなく、立ち読みでのうろ覚えですが

1)
 立花『臨死体験』(2000年、文春文庫)など晩年の一部の著書がオカルトがかってる事への批判(ろくな根拠もないのに死後の世界があるかのように記載)
2)
 立花の晩年の一部の科学関係著書が「功成り名遂げたが故に、名義貸しでゴーストライターに書かせたものを、ろくにチェックもしないで立花名義で出してるのか」「立花本人の執筆だが、立花自身に科学知識が欠如してるのか」、いずれにせよ科学的な間違い記載が多い

と言う批判*11だったかと思います(立花の科学分野著書への突っ込みであって、田中金脈、ロッキード日本共産党革マルなどの政治分野著書への突っ込みはないです)。


【阿比留瑠比の極言御免】財務省文書改竄 忖度説の崩壊 - 産経ニュース
 黒塗りで中身がさっぱり分からないのに良くもデタラメなことが言えたもんです。そんなことを言うのは黒塗りが全部取れてからにしたらどうなのか(というか、まずは阿比留が黒塗り除去を政府に要求すべきでしょう)。しかも「有料記事」と言うのが笑えます。そんなに主張に自信があるなら無料記事にして皆に読んでもらったらどうか。


【主張】夫婦同姓は合憲 家族制度の原則を守った - 産経ニュース
 やれやれですね。
 まず第一に「合憲という判断の是非」はともかくそれは「違法ではない」と言う意味でしかありません。産経のように同姓制度を褒め称えて「別姓制度を導入せず、今のままで続けるべき」としているわけではない(なお少数反対意見として違憲意見がついています)。
 第二に「事実婚で別姓の方」「旧姓使用の方(外見上は別姓と変わらない:例としては例えば丸川珠代)」に大変失礼でしょう。彼らの家庭は崩壊してるとでも言うのか。
 いずれにせよ
1)世論調査では選択的夫婦別姓容認派が多数
2)野田聖子*12など自民党内の夫婦別姓支持議員の存在
3)丸川珠代*13の存在
 丸川が「旧姓使用(丸川の場合)と夫婦別姓は違う」と強弁しようとも、彼女が夫「大塚拓*14」の姓「大塚」を日常で使用してないことは事実
4)政治的イデオロギー色が比較的薄い(夫の姓に変更すると生活が不便という要素が大きい)
と言う中、俺個人は「願望込み」ですが、「近い将来、夫婦別姓は実現するだろう」と事態を割と楽観視しています。
 しかし『夫婦別姓死刑廃止』を自らの公約としながら、法相時代に「夫婦別姓法案を提出しない」どころか、在任中に死刑執行した千葉景子*15については俺は今でも怒りを禁じ得ませんね。
 「法相在任中に死刑執行しなかった左藤恵*16」の前例を考えれば、千葉氏は「自らの公約違反」について言い訳など出来ないでしょう。

*1:ただし内心では天皇を恨んでるでしょうが。

*2:岸内閣科学技術庁長官、池田内閣蔵相、佐藤内閣通産相自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)等を経て首相

*3:確か、ロッキード事件でも名前が出た国際工業社主・小佐野賢治(小佐野曰く、田中は『刎頸の友』)が田中と繋がる政商として紹介されたかと思います。

*4:1940~2021年。著書『田中角栄研究・全記録』、『日本共産党の研究』(以上、1982年、講談社文庫)、『中核VS革マル』(1983年、講談社文庫)、『農協』(1984年、朝日文庫)、『「知」のソフトウェア』(1984年、講談社現代新書)、『文明の逆説』(1984年、講談社文庫)、『アメリカジャーナリズム報告』、『アメリカ性革命報告』(以上、1984年、文春文庫)、『田中角栄新金脈研究』(1985年、朝日文庫)、『青春漂流』(1988年、講談社文庫)、『サイエンス・ナウ』(1991年、朝日新聞社)、『脳死再論』(1991年、中公文庫)、『脳死臨調批判』(1992年、中央公論社)、『ロッキード裁判とその時代』、『ロッキード裁判批判を斬る』(以上、1994年、朝日文庫)、『脳を究める:脳研究最前線』(1996年、朝日新聞社)、『サル学の現在』(1996年、文春文庫)、『電脳進化論』(1998年、朝日文庫)、『ぼくはこんな本を読んできた:立花式読書論、読書術、書斎術』(1999年、文春文庫)、『サイエンス・ミレニアム』(1999年、中央公論新社)、『脳とビッグバン』(2000年、朝日新聞社)、『証言・臨死体験』(2001年、文春文庫)、『「田中真紀子」研究』(2002年、文藝春秋社)、『21世紀 知の挑戦』(2002年、文春文庫)、『人体再生』(2003年、中公文庫)、『巨悪vs言論:田中ロッキードから自民党分裂まで』、『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』(以上、2003年、文春文庫)、『脳を鍛える:東大講義「人間の現在」』(2004年、新潮文庫)、『シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界』(2004年、文藝春秋社)、『解読「地獄の黙示録」』、『東大生はバカになったか』(以上、2004年、文春文庫)、『政治と情念』(2005年、文春文庫)、『小林・益川理論の証明:陰の主役Bファクトリーの腕力』(2009年、朝日新聞出版)、『四次元時計は狂わない:21世紀文明の逆説』(2014年、文春新書)、『武満徹・音楽創造への旅』(2016年、文藝春秋)、『知的ヒントの見つけ方』(2018年、文春新書)、『死はこわくない』(2018年、文春文庫)、『自分史の書き方』(2020年、講談社学術文庫) 、『思索紀行』(2020年、ちくま文庫)、『新装版・思考の技術』(2020年、中公新書ラクレ)、『知の旅は終わらない:僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと』(2020年、文春新書)、『サピエンスの未来:伝説の東大講義』(2021年、講談社現代新書)など(立花隆 - Wikipedia参照)

*5:旧版が1985年、新版が2020年、中公文庫

*6:1988年、中公文庫

*7:2012~2013年、文春文庫

*8:前者が1982年刊行、後者が1983年刊行

*9:1885~1975年。大逆事件(幸徳事件)で死刑判決をうけるが、特赦で無期懲役。著書『大逆事件を生きる:坂本清馬自伝』(新人物往来社

*10:1937~1975年。著書『一銭五厘たちの横丁』(2000年、岩波現代文庫)、『淋しき越山会の女王・他六編』(2001年、岩波現代文庫)など(児玉隆也 - Wikipedia参照)

*11:ただしそうした批判(特に2)について)は「科学音痴」の俺も正しいかどうか判断が付きませんが。

*12:小渕内閣郵政相、福田、麻生内閣消費者問題等担当相、自民党総務会長(第二次安倍総裁時代)、第四次安倍内閣総務相などを経て、現在自民党幹事長代行

*13:第三次安倍内閣環境相、五輪担当相などを経て、現在、菅内閣五輪担当相

*14:自民党衆院議員。第3次安倍内閣法務大臣政務官、財務副大臣など歴任

*15:日本社会党副書記長、社民党副党首、民主党総務委員長、鳩山、菅内閣法相などを歴任(千葉景子 - Wikipedia参照)。

*16:中曽根内閣郵政相、海部内閣法相、羽田内閣国土庁長官など歴任(左藤恵 - Wikipedia参照)