今日の中国ニュース(2021年7月12日分)

【編集者のおすすめ】『中国共産党 暗黒の百年史』石平著 衝撃の事実をありのまま - 産経ニュース

 これまでわが国で主流とされた中国近現代史のほとんどは、共産党が人民を解放し、人民のための新中国を建設したとする「革命史観」に沿って書かれてきたと著者は指摘します。

 よくもまあここまででたらめなことが書けたもんです。今時そこまで「中国共産党万歳」の本もないでしょう。まずは石や産経には彼らの言う「わが国で主流とされた中国近現代史のほとんど=革命史観の著書」とは具体的に誰の著書なのか書けと言いたい。
 ちなみに「現代中国」でググると比較的近年の著書としては

【刊行年順(刊行年が同じ場合は著者名順)】
天児慧*1『現代中国』(1998年、東京大学出版会
◆興梠(こうろぎ)一郎*2『現代中国』(2002年、岩波新書)
◆梶谷懐*3『現代中国の財政金融システム』(2007年、名古屋大学出版会)
◆唐亮*4『現代中国の政治』(2012年、岩波新書)
◆西村成雄*5『中国の近現代史をどう見るか』(2017年、岩波新書)
◆光田剛*6編著『現代中国入門』(2017年、ちくま新書)
◆毛利和子*7『現代中国外交』(2018年、岩波書店
◆毛利和子『現代中国:内政と外交』(2021年8月刊行予定、名古屋大学出版会)

と言ったものがヒットします。


チベットの新主席大臣が安倍元首相と議員らにご挨拶と感謝の意を表明 | ダライ・ラマ法王日本代表部事務所
 おいおいですね。現役の首相時代ならまだしも、まさか「モリカケ、桜発覚後」に安倍相手にこんなこびへつらいをするほどダライ一味がクズでバカだとは。現役の首相時代なら「アンチ安倍」の俺も「寛容な態度で許すつもり」ですが無役でこれとは常軌を逸してますね。


<独自>中国、日本の地方議会に圧力 「意見書は内政干渉」(1/2ページ) - 産経ニュース
 抗議内容の是非はともかく「抗議すること自体が内政干渉」とは言いがかりも甚だしい。もちろん一般論としてなら「不当な決議」なら抗議して当然です(なお、今回の決議が不当としているわけではない)。
 そもそもその産経の理屈なら「サンフランシスコ市の少女銅像」に「大阪市は抗議すべきではなかったこと」にならないのか。いつもながら論理性のかけらもない産経です。


【正論】いまこそ「中国共産党」の研究を 評論家・江崎道朗 - 産経ニュース
 タイトルからして「は?」ですね。当たり前ですが中国共産党についての研究ならいくらでもある。

 中国共産党創立メンバーの陳独秀や李大釗らは日本留学組

 「だから何?」ですね。当時の日本は「日露戦争でロシアに勝ったこと」で「近代化に成功したアジアの国」として高評価されていたし、中国の隣国なのだから留学に来るのは何ら不思議ではない。もちろん「留学生イコール左翼」でもない。

 シナ事変を契機に中国では、国民党と共産党が「抗日」を理由に連携し、第2次国共合作が成立した。シナ事変が起こらなければ、中国共産党は国民党によって滅ぼされているところだった。

 「今時、日中戦争でなくてシナ事変かよ(呆)」ですがそれはさておき。
 もちろん「日本が蒋介石打倒を画策しなければ」、江崎の言うように中国共産党蒋介石に打倒されていたかもしれない。
 しかし、それは「日本政府・軍の行動」が中国共産党に操られていた(江崎などが放言)という馬鹿げた陰謀論ではない。単に「蒋介石など簡単に打倒できる。蒋介石より弱い中国共産党など蒋介石を打倒した後にもっと簡単に打倒できる」「日本が蒋介石に戦争で勝ち続ければ米国や英国もいずれ蒋介石を見捨てる」と甘い考えだった日本政府・軍の思惑が「完全に外れた」だけの話です。蒋介石は日本に屈服せず、英米も蒋を見捨てなかった。
 「日中戦争では中国共産党が有利になったから、中国共産党が黒幕」という江崎らの理屈なら

本能寺の変の黒幕は、信長死後、天下人になった秀吉
朴正熙暗殺の黒幕は朴の死後、大統領になった全斗煥
大久保利通暗殺の黒幕は大久保死後、首相、貴族院議長、枢密院議長など要職を歴任し、明治新政府の中心人物になった伊藤博文

になるでしょう。もちろんこれらの事件において秀吉も全も伊藤も黒幕ではなく「結果的に彼らが一番有利になった」にすぎませんが。


J・チェン氏「入党希望」 香港親中派、中国紙が報道 - 産経ニュース
 もちろん「ジャッキー発言がどこまで本心か」と言う問題はあります。
 一方で中国共産党としても、「外部の一支援者」と「党員」とどちらが都合がいいかといった場合に「当然、党員です」とは限らないでしょう。
 ということで現時点ではどうなるかは様子見ですね。


中国の南シナ海「支配」着々 5年迎えた裁定骨抜き - 産経ニュース
 民事裁判判決というのは「中国vsフィリピン」のような国際裁判に限らず、一般的な「個人vs個人」「企業vs企業」の場合でも「あえて判決を店ざらしにすること」はもちろんある。そしてその場合「強者が弱者を恫喝して、不当に泣き寝入りさせてる」ケースでない限り「当人もそれなりの考えがある」わけですから、部外者がどうこういう話ではない。 
 正直「フィリピンの政治的判断の是非」はともかく、「フィリピンが中国に脅されて泣き寝入りしている」と言うほど話は単純ではないでしょう。「アンチ中国」産経はそういう「単純な話」にしたいようですが。

*1:早稲田大学名誉教授。著書『鄧小平』(1996年、岩波書店)、『中国改革最前戦:鄧小平政治のゆくえ』(1998年、岩波新書)、『中国とどう付き合うか』(2003年、NHKブックス)、『中国・アジア・日本』(2006年、ちくま新書)、『中華人民共和国史(新版)』(2013年、岩波新書)、『日中対立:習近平の中国をよむ』(2013年、ちくま新書)、『「中国共産党」論』(2015年、NHK出版新書)、『中国政治の社会態制』(2018年、岩波書店)、『巨龍の胎動:毛沢東vs.鄧小平』(2021年、講談社学術文庫

*2:神田外語大学教授。著書『中国激流』(2005年、岩波新書)、『中国・目覚めた民衆:習近平体制と日中関係のゆくえ』(2013年、NHK出版新書)

*3:神戸大学教授。著書『「壁と卵」の現代中国論』(2011年、人文書院)、『日本と中国、「脱近代」の誘惑』(2015年、太田出版)、『日本と中国経済』(2016年、ちくま新書)、『中国経済講義』(2018年、中公新書

*4:早稲田大学教授。著書『現代中国の党政関係』(1997年、慶應義塾大学出版会)

*5:大阪大学名誉教授。著書『中国ナショナリズムと民主主義』(1991年、研文選書)、『張学良』(1996年、岩波書店)、『20世紀中国の政治空間』(2004年、青木書店)

*6:成蹊大学教授。著書『中国国民政府期の華北政治:1928ー37年』(2007年、御茶の水書房

*7:早稲田大学名誉教授。著書『中国とソ連』(1989年、岩波新書)、『周縁からの中国:民族問題と国家』(1998年、東京大学出版会)、『現代中国政治を読む』(1999年、山川出版社世界史リブレット)、『日中関係』(2006年、岩波新書)、『中国政治:習近平時代を読み解く』(2016年、山川出版社)、『日中漂流』(2017年、岩波新書