今日の産経ニュース(2021年8/15日分)

終戦の日、靖国で国民集会 憲法改正求める声相次ぐ - 産経ニュース

 「英霊にこたえる会」の寺島泰三会長は(中略)昭和50年を最後に途絶えている天皇陛下靖国神社へのご親拝(しんぱい)実現に向け「われわれの代表である国会議員、首相、閣僚の参拝が必要だ。菅義偉首相にはぜひとも参拝をいただきたいと念願し、活動を今後とも継続していく」と語った。

 「いい加減、天皇参拝は諦めろ」「そんなに参拝して欲しかったら、『富田メモ』などから『参拝しない最大の理由』と思われる『A級戦犯の合祀』は最低限辞めろ*1」つう話です。現在の皇室が参拝する考えがあるとはとても思えない。いずれにせよウヨ的には未だに「一番偉いのは天皇」であり「天皇参拝がない限り、首相参拝だけでは意味がない」「天皇参拝ムードを作るための首相参拝」の訳です。
 なお、この寺島氏、

寺島泰三 - Wikipedia参照
 陸上自衛隊東部方面総監、陸上幕僚長統合幕僚会議議長など歴任

だそうです。「元航空幕僚長」田母神といい、「ひげの佐藤(第二次安倍内閣防衛大臣政務官、第四次安倍内閣外務副大臣など歴任)」といい、この寺島氏といい「自衛隊は右翼の巣窟なのか」とげんなりします。

 ジャーナリストの門田隆将氏*2は、中国を念頭に(中略)冷戦期の旧ソ連に対する北大西洋条約機構NATO)を引き合いに「相手に手を出させない『アジア版NATO』をなぜつくらないのか。憲法改正ができないからだ。」と語った。

 呆れて二の句が継げませんね。どこと「アジア版NATO」を作るのか。韓国か。東南アジア諸国ASEAN諸国)か。
 韓国も東南アジア諸国も「ノーサンキュー」と断ってくるでしょう。


【日曜に書く】受け継がれてゆく声なき声 論説委員・藤本欣也 - 産経ニュース
 今回の「声なき声」も安保闘争時の岸*3首相と同じで「ただの居直り」です。
 もちろん「声なき声」と言った場合「声を上げたくてもあげられない少数派(例:最近は状況が改善されたとはいえ、アイヌ民族)や弱者」ということもあり得ます。
 例えば「声なき声」でググってヒットした

◆小林トミ*4『「声なき声」をきけ:反戦市民運動の原点』(2003年、同時代社)

などは「少数派や弱者の声」でしょう。
 ただし、産経や岸のような連中の場合残念ながらそうではありません。


【主張】終戦の日に 再びの敗戦を絶対に回避せよ 乾正人論説委員長 - 産経ニュース
 コロナ蔓延を「不適切な対応(対米開戦)で事態を最悪にした戦前日本の二番煎じ」と見るならば、確かに現状は「再びの敗戦」ではあるでしょう。
 とはいえ、産経は「コロナに打ち勝て!」と叫ぶだけで具体的提案をしないので心底呆れます。


安倍前首相が靖国参拝「御霊安かれとお祈りした」 - 産経ニュース
 首相在任中は「米国の批判」に震え上がり、「1回で靖国参拝を辞めた男」が首相を辞めたら「参拝を再開」とは本当にわかりやすい。
 心底軽蔑しますね。


【産経抄】8月15日 - 産経ニュース

 戦死者の慰霊まで遠慮するのは、独立国の指導者としてあってはならぬ。

 慰霊がしたいなら「政教分離」や「戦犯合祀」の問題がない千鳥ヶ淵に行けばいいでしょう。
 そして「以前も書きましたが」
1)戦没者であっても「戊辰戦争彰義隊、白虎隊」「箱館戦争で戦死した土方歳三(元新選組副長)」「西南戦争西郷隆盛*5」など「賊軍」が靖国に合祀されてないこと
2)戦没者でない

靖国神社 - Wikipedia参照
【維新殉難者:多くは薩長土佐、水戸の尊王攘夷派】
安政の大獄で死刑になった橋本左内吉田松陰
◆井伊大老暗殺(桜田門外の変)の実行犯である水戸浪士(現場の戦闘で死亡したもの、後に自決したもの、捕縛され処刑されたものすべてを含む)
◆「土佐藩重臣吉田東洋暗殺の罪で死刑となった「土佐勤王党」首領・武市半平太
池田屋事件 - Wikipedia新撰組に殺害された長州藩士・吉田稔麿
寺田屋事件 - Wikipedia薩摩藩に粛清された薩摩藩士・有馬新七
結核で病死した「奇兵隊」首領・高杉晋作
 奇兵隊首領として幕府との戦争に関わったとは言え、「戦争前から患っていた結核」で死んだ高杉は戦没者ではありません。
◆「天狗党の乱」の首謀者で死刑となった武田耕雲斎
京都見廻組に暗殺された坂本龍馬中岡慎太郎
堺事件 - Wikipedia切腹した土佐藩
◆不平士族に暗殺された陸軍大輔・大村益次郎長州藩士)
 大村と同じように不平士族に暗殺された政府高官でも「俺の認識が間違いでなければ」、紀尾井坂の変の「内務卿・大久保利通」は確か、靖国に合祀されてないのでこの点、不勉強なので「合祀の判断基準は何だろう?」とは思います。
昭和殉難者
東条英機*6元首相のような死刑となったA級戦犯
小磯国昭*7元首相(終身刑)、東郷茂徳*8元外相(禁固20年)のような服役中に病死したA級戦犯
 なお、小磯と同じ終身刑でもいわゆる逆コースによる仮釈放と公職追放解除後に政界に復帰し「池田内閣法相、自民党政調会長(池田総裁時代)」等を務めた賀屋興宣*9元蔵相、東郷と同じ「有期懲役」でも「禁固7年を服役後、公職追放も解除され政界に復帰し、改進党総裁、日本民主党副総裁(鳩山一郎総裁)、鳩山一郎内閣外相を務めた重光葵*10」といった「服役中に死亡せず、娑婆に出てきた人間」は合祀されていません。
松岡洋右*11元外相のような(判決を受けないまま)裁判中に病死したA級戦犯

などが合祀されてる時点で靖国は「戦没者慰霊施設」ではありません。「殉難者顕彰施設」が靖国です。
 靖国には「賊軍が合祀されてないこと」については靖国神社に会津藩など「賊軍」も合祀を 亀井静香、石原慎太郎両氏が申し入れ - 産経ニュース(2016.10.12)を紹介しておきます。
 それにしても「桜田門外の変の実行犯」というテロリストを靖国に合祀しながら「義士・安重根」をテロリスト呼ばわりできる産経ら日本ウヨには「アホか?」と心底呆れます。

▼平成以降に首相になった政治家は、17人を数えるが、このうち在職中に靖国神社を参拝したのは、橋本龍太郎*12小泉純一郎*13安倍晋三*14のたった3人。だが、3人の平均在職期間は5年3カ月と長い。では、靖国を参拝しなかった首相の平均在職期間は、どれぐらいか。
▼わずか1年1カ月である。

 こじつけが酷すぎて吹き出しました。
 まず第一にこれらの首相のうち安倍は、確かに「第二次以降」は長かった物の、第一次は約1年(平成18年9月~19年9月)と短命で終わっています。
 それとも産経は第一次の短命を「靖国参拝しなかったからだ」と強弁する気か。
 第二に安倍は「米国の抗議」で(その後も玉串料の奉納はした物の)参拝を「第二次内閣発足の1年目のたった一回」で辞めています。
 産経の理屈なら「安倍が参拝を辞めたこと」で2年目以降に政権基盤がぐらつかないとおかしい。
 第三に平成以降の首相の辞任は例えば

◆宇野*15首相
 女性スキャンダル
◆細川*16首相
 熊本県知事時代の佐川ヤミ献金疑惑と国民福祉税騒動による新党さきがけ社会党の政権離脱
◆小渕*17首相
 急病死
鳩山由紀夫*18首相
 故人献金疑惑や「沖縄基地問題」による社民党の政権離脱

などということでその退任理由(小渕氏の場合は退任と言うより死亡ですが)は靖国参拝とは全く関係ない。
 第四に「3人の平均在職期間は5年3カ月と長い」云々というのが完全に詐欺ですね。確かに「安倍は7年8ヶ月(平成24年12月~令和2年9月)、小泉は5年5ヶ月(平成13年4月~18年9月)」で長いですが橋本は「2年7ヶ月(平成8年1月~平成10年7月)」で大して長くない。ちなみに海部*19が「2年4ヶ月(平成元年8月~平成3年11月)」で橋本に近い在任期間です。まあ、だからこそ「平均」というインチキをするわけですが。
 そもそも本当に「靖国参拝で政権基盤が安定する」なら、「産経に言われなくても多くの首相が参拝する」でしょう。
 そして今の菅*20が「靖国に参拝しよう」ともコロナ問題を解決しない限り支持率が上向くわけもない。
 もちろん「靖国に参拝した閣僚である岸防衛相(安倍の実弟)、西村コロナ担当相(追記:岸、西村は8.14時点。その後8.15に閣僚の参拝としては小泉環境相と萩生田文科相、井上科学技術担当相の参拝が報道された)」が高評価されることもない。岸や西村を高評価するなど極右だけでしょう。むしろ西村については「コロナ蔓延の戦犯の一人」として批判されてることは言うまでもないでしょう。
 それにしても「緊急事態宣言下での不要不急の外出」を辞めよと言ってる「コロナ担当相の西村」が「靖国議連がコロナ予防を理由に参拝を控えた(ただし議連メンバーの中には個別参拝した人間も一部いるようですが)」というのに「参拝実行」とは心底呆れますね(勿論コロナがなくても政教分離上、外交上、問題ですが)。

*1:戦犯合祀を辞めたところで「政教分離の問題」があるので結局、参拝すべきではないですが、そもそも靖国側には「A級戦犯合祀中止」の考えはないでしょう。

*2:『この命、義に捧ぐ:台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(2013年、角川文庫)、『蒼海に消ゆ:祖国アメリカへ特攻した海軍少尉「松藤大治」の生涯』(2015年、角川文庫)、『新聞という病』(2019年、産経新聞出版)などウヨ著書多数

*3:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、日本民主党幹事長、自民党幹事長(鳩山一郎総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相

*4:1930~2003年。市民グループ「声なき声の会」の中心メンバーとして反戦活動に従事(小林トミ - Wikipedia参照)。そもそも「声なき声」の最初は「小林氏らの運動」であり、それについて意見を聞かれた岸が「声なき声はむしろ安保条約支持だ、今日も後楽園球場は野球ファンで満員だ」云々と居直ったという流れになります。

*5:明治新政府で参議、陸軍大将、近衛都督

*6:関東憲兵隊司令官、関東軍参謀長、陸軍次官、陸軍航空総監、第二次、第三次近衛内閣陸軍大臣、首相を歴任

*7:陸軍省軍務局長、陸軍次官、関東軍参謀長、朝鮮軍司令官、平沼、米内内閣拓務相、朝鮮総督を経て首相

*8:東条、鈴木内閣外相

*9:第一次近衛、東条内閣蔵相

*10:東条、小磯内閣外相

*11:満鉄総裁、第二次近衛内閣外相など歴任

*12:大平内閣厚生相、中曽根内閣運輸相、自民党幹事長(宇野総裁時代)、海部内閣蔵相、自民党政調会長(河野総裁時代)、村山内閣通産相などを経て首相。首相退任後も森内閣で行革担当相

*13:宇野内閣厚生相、宮沢内閣郵政相、橋本内閣厚生相などを経て首相

*14:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官などを経て首相

*15:田中内閣防衛庁長官自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田内閣科学技術庁長官、大平内閣行政管理庁長官、中曽根内閣通産相、竹下内閣外相などを経て首相

*16:熊本県知事、日本新党代表を経て首相

*17:竹下内閣官房長官自民党副総裁(河野総裁時代)、橋本内閣外相を経て首相

*18:新党さきがけ代表幹事、細川内閣官房副長官民主党幹事長などを経て首相

*19:自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田、中曽根内閣文相を経て首相。首相退任後も新進党で党首

*20:第一次安倍内閣総務相、第二~四次安倍内閣官房長官を経て首相