野原燐(id:noharra)に突っ込む(2021年8月17日分)

和解のためのパラヴァー(徹底的話し合い) - noharra’s diary
 詳しくはリンク先を見て下さい。要約すれば「野原の主張は何か」と言えば野原が「マンデラ真実和解委員会 - Wikipedia」のような方式を「現実主義」として評価しているという話です。確かに多くの人間は「刑事責任追及で、反発した相手の武力蜂起で内戦などになるよりはマシ」として評価するでしょうし、俺も評価します。
 積極的評価と言うより「内戦などよりまし」という評価ですが(正直、マンデラがどう「きれい事」を言おうと内戦回避という「現実主義」は明らかにあるでしょう)。俺は「割と理想主義」と自分を認識していますが、とはいえ、「マンデラの和解」を「内戦などよりまし」と評価する程度には「現実主義」です。まあアパルトヘイトで殺害された被害者の遺族などは「マンデラに失望した!」「マンデラは腰抜けだ!」「アパルトヘイトで殺された人間への侮辱だ!」かもしれませんし、それは俺も人情として「解らないでもない」ですが。
 「マンデラ的な和解」としては例えば「中国の日本人戦犯対応(中国帰還者連絡会 - Wikipedia)」などもあげていいでしょう。中帰連については藤田茂「中国人民の寛大政策について」(筆者の藤田茂 (陸軍軍人) - Wikipedia中帰連初代会長(日本軍での最終階級は第59師団長))を紹介しておきます。
 ただし一方でもちろん時事解説: 弁護士マンデラのプラグマティズムと真実和解委員会 - アジア経済研究所等も指摘しますが、「カンボジアポルポト虐殺*1」「ユーゴ内戦*2」「ルワンダ虐殺」は「国際法廷の設置による刑事処罰(東京裁判ニュルンベルク裁判同様、幹部連限定ですが)」がされており、話は「マンデラ方式が当然の対応」というほど、「単純な話でない」ことは指摘しておきます。例えば「マンデラを見習ってポルポト虐殺についても刑事処罰すべきでなかった」という意見が強いというわけでは必ずしもない。
 それはともかく、「マンデラの和解方式(民族融和のためにあえて加害者を厳しく処罰しない)」を「現実主義」と評価する男が、北朝鮮に限っては「打倒北朝鮮」「脱北者を世界各国が受け入れれば北朝鮮金正恩政権は崩壊!」というのは全くもって「でたらめ」というべきでしょう。
【参考】

【ググってヒットしたマンデラ関係著書:刊行年順】
◆山本浩『真実と和解:ネルソン・マンデラ最後の闘い』(1999年、NHK出版)
◆阿部利洋*3『紛争後社会と向き合う:南アフリカ真実和解委員会』(2007年、京都大学学術出版会)
◆阿部利洋『真実委員会という選択』(2008年、岩波書店
◆堀内隆行*4ネルソン・マンデラ:分断を超える現実主義者』(2021年、岩波新書

【堀内隆行『ネルソン・マンデラ:分断を超える現実主義者』(2021年、岩波新書)のアマゾン書評】

◆美しい夏
一、概要
〇著者の専攻は南アフリカ史、イギリス帝国史
〇読者によって、様々な読書感想があると思う。私はというと、大変面白かった。外国人の政治家の伝記新書の中では、よくできているほうと思う。
二、私的感想
〇読みやすい。写真も多い。
〇最後に丁寧な文献案内が付いている。諸文献はたぶん読まないと思うが、読もうという気になった時に便利である。索引も年表も出典一覧もある。
マンデラ偉人伝を構成する内容を比較的絞っている。一方、(ボーガス注:マンデラの女性関係など)マンデラ偉人伝にはマイナスになりそうな情報を比較的取り入れている。全体として、バランスのいいマンデラ像ができている。「著者はマンデラへの愛が足りず」と弁明するが、そんなことはない。十分愛は感じられる。
〇著者はマンデラも時代の所産であるが、人物は傑出していたとする。その理由は、他人を感化する能力(人たらし)、自己演出力、リアリズム。
〇リアリズムは別の所では、プラグマチズムと言い換えられている。プラグマチズムというのは、悪くいえば、八方美人、変幻自在、利用できるものは何でも利用していくということになるが、よく言えば、固定観念にとらわれすぎず、現実に合わせて修正していくということになるだろう。
マンデラの結婚歴も面白い。1944年26歳で看護師のエヴェリンと結婚、1956年別居、1957年に離婚し、18歳年下のソーシャルワーカーウィニーと再婚。1996年77歳でウィリーと離婚、1998年80歳でモザンビーク大統領未亡人グラサと再々婚。
マンデラの立身出世志向、学歴志向も興味深い。自分だけでなく、息子、娘にも要求した。80歳の披露宴兼誕生パーティーにはスティーヴィー・ワンダーマイケル・ジャクソンも出席し、マンデラは最上流階級に登りつめた。
〇本書では、マンデラ周辺の人物も興味深く描かれている。まずは家族。
☆最初の妻エヴェリンはマンデラの複数の女性関係を非難して去って行った。
ノンポリで、有名人マンデラの妻に過ぎなかった二番目のウィリーは、夫を助ける活動家へと大変身する。しかし、過激になりすぎて、マンデラと対立し、離婚に至る。
☆エヴェリンの娘マカジウェは離婚後看護師になろうとしたが、マンデラに猛反対され、大学進学し、アメリカ留学する。しかし、マンデラの立身出世志向を批判し続けた。
☆ウィリーの上の娘のゼナニはスワジランドの王子と結婚し、マンデラの勧めで夫婦ともアメリカ留学する。
☆ウィリーの下の娘のジンジスワは戦闘的活動家となり、マンデラのよき理解者だったが、未婚の母となる。
☆エヴェリンの息子ウィリーはマンデラに叱咤激励され弁護士になるが、エイズで死亡。
〇周囲の政治家も個性的である。一番印象に残るのは、親ソ政権下のモザンピークで武装軍団を指揮し、テロリストも送り出していた白人の共産党指導者スロヴォ*5ペレストロイカ後はころりと和解路線に転換し、交渉と妥協を重ね、マンデラ政権誕生を進めていく。
〇第3章に出てくるトロッキスト派も興味深い。トロッキー追放後、南アフリカではトロッキーと連携するグループが共産党とは別路線の闘争を提唱し、カラード教員などの強い支持を得た。彼らはマンデラへの接触を試みたが、共産党との関係の強いマンデラは興味を示さなかった。
◆無気力
 南アフリカアパルトヘイト撤廃に尽力し、黒人初の大統領となったことでも知られるネルソン・マンデラ。そのコンパクトな評伝が本書。ただ、コンパクト過ぎて、マンデラの足跡が随分と駆け足なものに思えてしまうほど。特に獄中生活から大統領に就任するまでは、あっけなく感じてしまった。何なら、その記述の正確性はさておき、ネルソン・マンデラ - Wikipediaの方が情報量は多いくらい。
 とにかく、簡単にマンデラの足跡を知るということ以上のことを本書に求めてはならない。新書なので、それで十分と言えばそれまでだが、最近の専門書ばりに詳細な情報に満ちた新書に接していると、どこか物足りないというのも事実。巻末の「読書案内」は充実しているので、こちらを活用していきたい。

時事解説: 和解の政治家、ネルソン・マンデラ - アジア経済研究所
 アフリカでは「建国の父」などカリスマが長期政権となり、次第に独裁的になるところ、マンデラが「高齢による健康不安」が理由とは言え、「1期5年(1994~1999年)で退任したこと」等が評価されています。確かに「長期政権によるよどみ」で晩節を汚さなかったことは良かったと思います。おそらくマンデラも「晩節を汚さない」「早期に後進に道を譲りたい」と言う思いが強かったのでしょう。


◆野原(id:noharra)のツイート

野原燐がリツイート
KASUGA, Sho(春日匠)
 そう悲観したものでもないかも知れません。例えばイランはイスラム神権国家ですが、女子のSTEM教育*6という観点では日本なんかより積極的な面もある。タリバンも国際社会に受容してもらうために、その程度の穏健さを目指す可能性は低くないと思います。

 タリバンについて「(タリバンが政権奪取してしまったので、願望込みですが)国際社会の目を気にしてそれなりにまともになるかも!」「昔の石像破壊やマララさん銃撃のような無法はしないかも!」というツイートにリツイートする男・野原が北朝鮮に対しては「そういう態度」を何故かとらず「打倒北朝鮮!」ですから、そのでたらめさには心底呆れます。「日朝平壌宣言」や「米朝首脳会談」を考えれば北朝鮮も「そうした穏健路線」の可能性は十分あるでしょうに。
 つうか北朝鮮についての野原発言「脱北者を世界各国が受け入れれば北朝鮮金正恩政権は崩壊!」の時のように「アフガンから亡命する人を世界各国が受け入れればタリバン政権は崩壊!」と言ったらどうなのか?

https://twitter.com/noharra/status/1431051592275423237
野原燐
シモツカレ氏へ
タリバンがまともであるとはどういうことなのか、お前にはわかっていない」、という主張であることが、シモツカレ氏には分からない。

 久しぶりに野原ツイートを見たら「シモツカレ(俺のことでしょう)」云々とツイートしていたのでここで紹介しておきます。
 滑稽なのは「俺が野原ツイートを見なければ」俺は彼がこんなツイートをしてることには気づかなかったと言うことですね。
 要するに「俺はシモツカレを批判した!」という格好さえつけば、野原にとっては「俺が彼のツイートに気づかなくてもいい」んだと言うことです。
 何か俺に伝えたいなら「俺のブログ記事にコメントすればいい(タリバンと野原について触れた記事はこの記事なのでたぶんこの記事への『反論』なのでしょう)」のにそうしないのは要するに「俺に反論されたくない」のでしょう。どこまでも滑稽で卑怯な男です。それにしても「野原が何が言いたいのか」よくわかりません。

野原燐がリツイート
masanorinaito
 カルザイ*7大統領は、同志社での講演で、「宗教が原因ではない。欧米諸国が西欧の『国民国家』を押し付けることが(不安定の)原因だ」と言い切った。欧米に追随する日本のメディアは、この発言の意味をよく考えてほしい

 内藤正典*8同志社大学教授がhttps://twitter.com/masanorinaito/status/1427265546173620229で「好意的に紹介し野原も賛同してるらしい」カルザイ発言の是非はともかく、これって「中国には中国の民主主義(全人代や政治協商会議など)がある、欧米型民主主義をおしつけるな」つう「中国の主張」と「うり二つ」に見えるのは俺の「邪推や偏見ではない」と思います。
 野原は「中国には中国の民主主義がある、欧米型民主主義をおしつけるな」つう主張には否定的な「アンチ中国」だったかと思いますが、それとこの「カルザイ発言支持」とどう両立するのか説明してもらいたいもんです。
 なお、中国型民主主義については以下を紹介しておきます。
【拙記事】
新刊紹介:「経済」2021年9月号 - bogus-simotukareのブログ2021.8.15
【浅井基文氏の記事】
「中国的民主」とは何か|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ2020.5.2
「人民」と「中国的民主」|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ2020.5.27
中国の「全過程民主」|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ2020.6.13

*1:カンボジア特別法廷 - Wikipediaによればヌオン・チア元国会議長、キュー・サムファン元首相、イエン・サリ元副首相、イエン・チリト元社会問題担当相(イエン・サリの妻)らが裁かれた。

*2:旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷 - Wikipediaによればラドヴァン・カラジッチ元スルプスカ共和国大統領、ラトコ・ムラディッチ元スルプスカ共和国参謀総長、スロボダン・プラリャク元クロアチア防衛評議会司令官らが裁かれた。

*3:大谷大学教授

*4:金沢大学准教授。著書『異郷のイギリス:南アフリカのブリティッシュアイデンティティ』(2018年、丸善出版

*5:伝記:ジョー・スロヴォ、反アパルトヘイト活動家によれば南アフリカ共産党書記長で、マンデラが議長を務めるANC(アフリカ民族会議)の幹部だった人物。マンデラ政権において住宅大臣を務めた。

*6:「Science, Technology, Engineering and Mathematics」すなわち科学・技術・工学・数学の教育分野を総称する語(STEM教育 - Wikipedia参照)。STEM教育についてはググってもあまりヒットしないのですが、ヒットしたSTEM教育を単に「理系人材育成」と考えたら大間違いだ|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト(2019.1.23)、日本は最低レベル──世界で進む「STEM教育」の重要性 | ワールド | for WOMAN|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト(2021.3.10)を紹介しておきます。

*7:アフガニスタン暫定行政機構議長(2001~2002年)、アフガニスタン移行政権大統領(2002~2004年)、アフガニスタン大統領(2004~2014年)を歴任(ハーミド・カルザイ - Wikipedia参照)

*8:著書『トルコのものさし日本のものさし』(1994年、ちくまプリマーブックス)、『絨毯屋が飛んできた:トルコの社会誌』(1998年、ちくまプリマーブックス)、『ヨーロッパとイスラーム』(2004年、岩波新書)、『イスラーム戦争の時代』(2006年、NHKブックス)、『イスラムの怒り』(2009年、集英社新書)、『イスラム』(2011年、集英社新書)、『イスラームから世界を見る』(2012年、ちくまプリマー新書)、『イスラム戦争』(2015年、集英社新書)、『限界の現代史』(2018年、集英社新書)、『イスラームからヨーロッパをみる』(2020年、岩波新書)、『プロパガンダ戦争』(2020年、集英社新書)など