今日の中国ニュース(2021年9月26日分)(副題:三浦小太郎のバカさに心底呆れる&中国スマホゲーム産業の発展に驚く)(追記あり)

中国ゲーム、オタク聖地を席巻 世界2位「原神」逆上陸: 日本経済新聞

 オタクの聖地アキバを9月半ば、人気スマホゲーム「原神」が占拠した。
 日本アニメのようだが、実は公式サイトに「技術あるオタクは世界を救う」と掲げる中国・上海のゲーム会社、miHoYoが20年9月にリリースしたものだ。
 日本のほか北米でもヒットし、配信開始から半年足らずで10億ドル(約1100億円)の収入を得たとされる。スマホゲームの収益ランキングでも21年上期の世界2位に入った。

 興味深い記事だと思うのでノーコメントですが紹介しておきます。

【参考】

MiHoYo - Wikipedia
 miHoYoのスタッフは『新世紀エヴァンゲリオン』のファンであったため、エヴァンゲリオン由来のものが随所にみられる。例えば初期に発表した同人ゲーム『Fly me 2 the moon』の題名はエヴァンゲリオンのエンディングに使われたジャズのスタンダード・ナンバー『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』に由来している。


【10月16日・東京市ヶ谷】主催講演会 講師:三浦小太郎「漢民族に支配された中国の本質」出版記念 | 一般社団法人 アジア自由民主連帯協議会
 三浦の新刊『漢民族に支配された中国の本質:なぜ人口侵略・ジェノサイドが起きるのか』の版元が

三浦『なぜ秀吉はバテレンを追放したのか:世界遺産潜伏キリシタン」の真実』(2019年)

を過去に出版しているハート出版というのにまず吹き出しました。所詮、三浦など、右翼出版社の大手「新潮社」「文春」などは相手にしてくれない存在、

ハート出版…大東亜戦争関連、スピリチュアル、文芸書、児童書等。ヘミシンクCD、ミニ健康書「ふるさと文庫」も充実。www.810.co.jp
◆倉山満『逆にしたらよくわかる教育勅語:ほんとうは危険思想なんかじゃなかった』(2014年)
◆青柳武彦『日本人を精神的武装解除するために アメリカがねじ曲げた日本の歴史』(2017年)
◆青柳武彦『ルーズベルトは米国民を裏切り日本を戦争に引きずり込んだ』(2017年)
 真珠湾攻撃は米国の罠にはめられたのだ、ハルノートで挑発した米国が悪いという陰謀論
◆落合道夫『黒幕はスターリンだった:大東亜戦争にみるコミンテルンの大謀略』(2018年)
 真珠湾攻撃ソ連の罠にはめられたのだという陰謀論
林房雄神武天皇実在論』(2020年)
 1971年、光文社・カッパブックスの復刻版
◆高田純『脱原発中共の罠』(2021年)

というトンデモ右翼出版社「ハート出版」位しか相手にしてくれない存在でしかないわけです。
 次に著書内容に失笑ですね。

 戦前の中国ウオッチャー*1で「民族戦」などの著書のある長野朗について、アジア自由民主連帯協議会事務局の三浦小太郎が著書を書き下ろしました*2

つうことは当然ながら「長野の批判対象=蒋介石政権(戦前の中国政府)」でしょうから「中国共産党批判」ではなく「見るに堪えないような中国人(漢民族)へのヘイトスピーチ蒋介石への悪口雑言」が書かれてるのでしょう。
 まあ戦前日本はご存じの通り

暴支膺懲 - Wikipedia
 「暴戻(ぼうれい)支那(しな)を膺懲*3(ようちょう)する=(日本に対して)乱暴、無法な蒋介石政権を懲らしめる」の意味
蒋介石を対手(あいて)とせず(第一次近衛声明)
汪兆銘工作
 蒋介石政権の切り崩しを狙ったが結果的には失敗

ですからね。「右翼活動家」長野の主張もそういうものであろうことは想像がつきます。
 それはともかく、もしかしたら、三浦は、酒井信彦のように「孫文民族主義自体が問題だ!」と言い出すのかもしれない(酒井の孫文への悪口については例えば産経新聞の優れた辛亥革命論 - 酒井信彦の日本ナショナリズム参照)。
 まあ、それは三浦の著書名が「共産党に支配された中国の本質」ではなく「漢民族に支配された中国の本質」という時点である程度予想はつきますが。
 「戦前は蒋介石を敵視していた」とはいえ、「国共内戦での毛沢東勝利」以降は長い間、「敵(毛沢東)の敵は味方」で蒋介石万歳だった三浦ら右翼連中も全くデタラメなもんです。それにしても「長野云々」て、「戦前日本人(それも右翼活動家)の中国評価」が「今もそのまま使える」とでも強弁する気なのか(呆)。
【追記その1】

長野朗というシノロジスト: ものろぎや・そりてえる2009年4月21日 (火)
 ちょっと事情があって長野朗(ながの・あきら、1888~1975年)について調べており、『動亂支那の眞相』(1931年)という戦前の本に目を通した。やはりある事情があって、評論家*4宮崎正弘氏がメールマガジンで長野を取り上げているのを知った。読んでみると、「中国人はこんなにずるい奴らだ、変な奴らだ」と言わんばかりの文脈の中で長野の著作からの引用を並べているのが気にかかった。
(中略)
 西谷紀子「長野朗の中国革命観と社会認識」『大東法政論集』第11号(2001年3月)、同「長野朗の農本自治論」、『大東法政論集』第10号(2002年3月)、同「長野朗の1920年代における中国認識」『大東法政論集』第11号(2003年3月)、劉家鑫*5・李蕊「「支那通」の中国認識の性格:後藤朝太郎*6と長野朗を中心に」『東洋史苑』第70・71号(2008年3月)といった論文に取りあえず目を通した。

 と言うことで小生も「右翼本をきちんと読んでるわけではない」ので知りませんでしたが以前(少なくとも10年以上前)から「反中国のウヨ連中」によって長野は『昔から中国はろくでもなかったと、長野が言っている!』という形で好意的に紹介されてきたようです。また「一部の中国研究者」が長野について研究論文を書いてるようですね。
 他にも

長野朗関連文献 | 『維新と興亜』参照
◆西谷紀子『長野朗の外事評論』(『大正・昭和期の日本政治と国際秩序』(2014年、思文閣出版)収録)

という論文があるようです。

 長野は陸軍士官学校の出身(石原莞爾と同期)。中国へ派遣されたのは辛亥革命後のことだが、1919年の五・四運動、1920年の第二次広東軍政府といった動向を現地で目の当たりにし、中国国民革命の進展を観察していた。1921年に中国問題に専念するため軍を辞め、共同通信国民新聞の嘱託となったほか、『中央公論』『改造』をはじめとした雑誌に寄稿する。行地社の同人となったが、軍と結び付いてクーデターを画策する大川周明たちからは次第に離れ、農村運動に入っていく。

 こういう人間を果たして「中国ウオッチャー」と呼べるのか疑問ですね。「元・陸軍軍人」長野の問題意識は「関東軍参謀・石原」と同じで「陸軍に近い立場(要するに日本の中国権益をどう拡大していくか)からの、右翼活動家の中国分析」ですから。


【追記その2】
 この記事のコメント欄でも触れましたが、長野本を復刻した『右翼出版社』呉PASS出版は

呉PASS出版の刊行著書(復刻版含む)も、長野以外も
・『家族で書いて読んでおぼえる「教育勅語ドリル」』
三田村武夫『戦争と共産主義』(1950年に刊行した著書の復刻)
・山本勝市*7福祉国家亡国論』
など頭痛がしてくるラインナップ

ですね。
 三田村は三田村武夫 - Wikipedia三田村武夫とは - コトバンクだけでも『極右活動家』ということがわかります。
 三田村には「大東亜戦争ソ連の謀略。近衛ブレーンの尾崎秀実(ゾルゲ事件で死刑)が日米戦争を政府首脳に働きかけた」という立場の陰謀論本『大東亜戦争スターリンの謀略』(1987年、自由社)があります。
 もちろん尾崎がそのような働きかけをしたから日米戦争になったというのは嘘ですし、『戦争したくないのに、スターリンの手先である尾崎にはめられた』と言いながら、一方で『東南アジア解放の聖戦』というのだからウヨ連中の嘘つきぶりには呆れます。
 『尾崎の謀略で戦争になった』と『東南アジア解放の聖戦』を矛盾なく理解するには『尾崎のおかげで東南アジアは独立した。尾崎は東南アジア独立の恩人だ』しかありえませんが、勿論ウヨはそんなことは言いません。
 こんな三田村ですら「要職には就けなかった」とはいえども三田村武夫 - Wikipediaによれば「一時は自民党衆院議員だった(岐阜1区選出)」と言うから絶句します。

*1:長野朗とは - コトバンクによれば「猶存社」「行地社」「農本連盟」「自治農民協議会」「全国郷村会議」などの右翼結社の構成員に過ぎず、中国問題のジャーナリストでも研究者でもない。中国ウォッチャーと呼べる御仁では到底ありません。彼を中国ウオッチャーと呼ぶのは「桜井よしこ(国家基本問題研究所理事長)や三浦小太郎を『中国をネタにした著書』があるからといって、中国ウォッチャーと呼ぶ」ようなもんではないか。ちなみにウィキペディアには長野の項目はないし長野朗とは - コトバンクの記載内容も内容が薄い。長野が「三浦の所属する右翼業界はさておき」、一般的にはほとんど忘れられた存在であることは間違いない。なお、長野の著書は『支那の真相』(2017年、呉PASS出版)、『アジアの怪奇・中共』、『支那三十年』、『民族戦』(2020年、呉PASS出版)が復刻されています。マイナー右翼出版社である版元『呉PASS出版』については呉PASS出版 - 呉PASS出版を紹介しておきます。

*2:書き下ろしと言えば聞こえはいいですが、1)長野などと言うマイナー右翼活動家を取り上げた、2)三浦の駄文などまともな雑誌は連載してくれないと言うことです。

*3:暴戻」「支那」「膺懲」すべて今の日本ではほぼ完全に死語ですが。

*4:評論家と言うより「反中国の右翼活動家」とでもいうべきでしょう。

*5:著書『近代日本知識人の中国観:後藤朝太郎と長野朗』(2003年、現代知識出版社)。なお「現代知識出版社」は中国の出版社で、中国語での刊行のようです。しかし、『私見では』後藤はともかく長野は『知識人』とはいえないと思います。

*6:1881~1945年。東京帝国大学講師、日本大学教授など歴任。著書(復刻版)に『支那民俗の展望』(2002年、大空社)、『支那庭園』(2007年、大空社)、『支那行脚記』、『支那風俗の話』、『支那の山寺』(以上、2009年、大空社)、『支那通』、『支那の下層民』(以上、2010年、大空社)、『支那の体臭』(2013年、バジリコ)、『最新支那旅行案内』、『南洋の華僑』(以上、2014年、大空社)、『土匪村行脚』(2014年、君見ずや出版)、『長江千里』(2019年、大空社出版)(後藤朝太郎 - Wikipedia参照)

*7:1896~1986年。 京都帝国大学経済学部卒。戦前、和歌山高等商業学校(現在の和歌山大学経済学部の前身)教授、文部省国民精神文化研究所所員など歴任。戦後、政界に進出。鳩山内閣通産政務次官自民党政調副会長など歴任。政界引退後、大東文化大学教授(山本勝市 - Wikipedia参照)